2024/12/14 のログ
ご案内:「配信チャンネル」にHELLO WORLDさんが現れました。
HELLO WORLD > 製作者不明の放置チャンネルが改竄され、動画が投稿される。
投稿されたのは落第街の光景。監視カメラの映像だろうか、画質は荒く定点での映像。

映し出されるのは戦闘現場。戦っているのは風紀委員らしき長いポニーテールの美女と、ボロボロの革ジャンを着た左腕が異形の男のもの。
激しい戦闘は数分間続き、男の暴風雨のような拳を美女が何度もいなしてゆく。

男の荒々しい拳が止まったことで一連の騒動は終了し、その後いくらかの風紀委員の生徒がやってくるが、男をとらえるようなことはされなかった。

男が何者かは、落第街に顔を出す人間なら把握することも難しくないだろう。
落第街の更に深い地、スラムと呼ばれる場所にて度々暴れる姿を目撃される男…正式な名前は不明だが、ヒューリィと呼ばれているその男は、単純な身体機能だけでこれまでも様々な事件に介入している姿が目撃されているものだ。

そしてその男と対峙していた美女に関しても、調べようと思えばすぐに情報が出てくるかもしれない。

どちらにせよ、表舞台に出ない者たちの戦いは世にさらされることとなる。
それがどのような反響を得るかなど、電子の妖精は関知しない。
ただ、情報を輩出し、そしてフィードバックを受ける事そのものが今の電子妖精にとっての目的だった。


理由は、ひとえに自己の更なる学習のため。

HELLO WORLD > 電子空間に偶発して生まれた”ひずみ”の集合存在たるこの妖精は、いくつかの方法を使って情報を収集していた。

一つは、監視カメラ等のハッキング。
今回の映像データのようにいくつかのカメラを使い、映像情報を集めそれを動画データとしてネットワークに拡散させる。
それに対する反応を加えてのデータ収集。反応があれば、それを勘定データとして何度も学習に利用して。

もう一つは、常世島の電脳サーバー内への侵入。
このご時世、一日に発信される情報は数万件を軽く超える。
それらのデータを常に集積、自己学習のベースとして用いることで、電子妖精は簡単な”自我”というものを自立させていっていた。

…この電子の空間では、集められる情報は数に限りがある。
そして種類もまた、限りがあるということを理解するだけの”脳”は、既に培わられていた。

では、どうするか。

HELLO WORLD > ”身体”を作る。
更なる情報収集において、これは早急に必要なプロセスであると妖精は考えた。
身体は一つである必要はない。むしろいくつもの身体を端末として利用し、様々な状況の情報を集めるべきだろう。

身体を構成するために必要な部品は何があるか。
五感と呼ばれる感覚器は必要不可欠だろう。それにマニュピレータ、歩行手段。
それらはどうすれば製造可能かを、いくつもの情報から探ってゆく。


…工業地域の工場を利用するのはどうだろうか。
一時的に生産工場をハックする程度の事は、今の妖精には造作もない事だった。

HELLO WORLD > コズミックエレトクロニクス社にて製造されているAFパーツを利用できれば可能かもしれない。
AFのパーツは人体より巨大だが、一時的な義体としては十分な機能を果たす。
最終的には人型サイズの義体が望ましいが、それは後々作成すれば問題ないだろう。


電子の妖精の肉体探しは、こうして始まった。

ご案内:「配信チャンネル」からHELLO WORLDさんが去りました。