2024/06/10 のログ
ご案内:「いつかの夜の学生通り」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
「ごめんなさーい、通して、通して…」
遡ること数日。
夜に風紀委員に通報があり、当直が近くに住んでいる風紀委員へと二次連絡。
現場は──学生通り。
そんな場所で?と、連絡を受けた風紀委員は皆思ったに違いない。
幸か不幸か、比較的近い自宅にいた凛霞は慌てて支度をし、現場へと急行する。
ところどころ髪が跳ねているけど、言ってる場合じゃない。
「わ。もう防止線張られてる…。被害者の子は…?もう、運ばれたかな…」
遠ざかる救急のサイレンを聞きながら、風紀委員の腕章を腕に通し、防止線を潜り抜ける。
■伊都波 凛霞 >
既に現場に到着していた同僚から概ねの話を聞く。
連続性があるようなら、改めて刑事課にも…という話。
辺りを見回せば、破壊損壊の規模はそこまで酷いものではない。
ただ、力任せにへし曲げられた道路信号が犯行を行った者が常人でないことを物語っていた。
「…異能者なのかな」
『いえ、それはまだちょっと』
既に被害者は搬送済み。
犯人も現場を離脱している。
通報があり、すぐに招集をかけたが間に合わなかったという。
可能な限りの目撃証言の収集などは既に進められていて、みな一様に語るのは犯行を行った男の執拗性。
それこそ、まるで蜘蛛のように獲物を追い詰め……。
報告を聞いただけでも、余り気持ちの良いものじゃなかった。
■伊都波 凛霞 >
「ありがと。まだ色々わからないだろうけど、ちょっと視てみるね」
そう言って小走りに向かうのは、歪に拉げた道路信号。
少なくともこれは犯人が自ら破壊したものに違いない。
物質や人に残る残留思念を読み取る異能。
手を触れ、集中すれば、頭の奥でキーン…という甲高い音が聞こえ、次第に朧げながらも映像として再生されはじめる…。
「(暗い…夜だったから? ……じゃ、ない…?これ……)」
強烈に焼き付いた残留思念。
それは人が発するものに他ならない。
故に、時折こういうモノに遭遇する。
そう、夜よりも真暗い──マイナスの感情。
「っあ…!?」
突如、闇の中から現れた鈍色の触腕に視界を閉ざされるような形で、映像は終わる。
破壊の音が耳に残り、込み上げるものを感じて思わず、蹲る。
「ぅ……」
やばい、戻しそう。
それぐらいに強い、負の感情が残っていた。
■伊都波 凛霞 >
『大丈夫!?』
心配した同僚が慌てて駆けてくる。
突然うめき声をあげて蹲ったりしていれば、当然かもしれない。
「だ、大丈夫…。ちょっと、今のところは手がかりは視えなさそう…」
立ち上がって、とりあえずそう告げる他ない。
理解ったことは…犯行に及んだ存在が、ドス黒い感情と明確な害意を以って行為に及んだこと…。
『…本当に大丈夫? 顔色悪いよ?』
「…あ、う、うん…平気……。
今日のところはあんまり手伝えることもなさそうだし、また何か手が必要だったら刑事課に連絡して」
ふぅ…と呼吸を落ち着けて──。
学園にもほど近い学生通りで起こったこと。
妙な胸騒ぎだけは感じつつも、大事にならないといいな…。そんな淡い希望だけを思い留めてその場を後にした…。
ご案内:「いつかの夜の学生通り」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「Free1」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「Free1」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「伊都波家・道場」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「伊都波家・道場」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 悠薇 >
「ごめんね、お姉ちゃん。朝早くから」
緑の地味ジャージに身を包んだ少女が相対する相手に、軽くそう告げた。
休みの朝、ご飯を食べているところに、姉に持ちかけたのはーー
稽古。実践的な組み手、だ。
(……なぁにが、がんばれ。何様のつもりー……!!?)
分かったように口が回ってしまったことを恥ながら。
ばだばだと、ベットの上で暴れて反省してから数日。
思うことがあったから、やろうと思った。
姉とやるのは。
「あの日、以来だね」
お互いに遠慮をしなかったあの日。
そして。
ふたりのあることが、変わった、あの日、だ。
■伊都波 凛霞 >
「いいよ。どうせ朝の稽古もあるんだし。
ただ組手、っていうのは驚いたけど。…どしたの?急に」
遠慮がちな物言いをする妹に姉は正座をしたまま微笑み、そう言葉を返す。
「あの日…そっか、もうそんなになるっけ…。
じゃ、今の悠薇がどんなものか見させてもらおうっかな」
そう言って、袴の裾をしゅっと払い、立ち上がる。
──この二人の組手は、ただの稽古とは意味合いが異なる。
近所の子どもたちに教えている、いわゆる"武道"とは一線を画す。
極めて実戦的な、禁じ手の一切ない古流武術の組手となるのだ。
おおらかな微笑みを浮かべていた姉も、その目を細め、真剣な表情へ──、
■伊都波 悠薇 >
「…………そろそろ、はっきり、させないとなって」
いつもなら、構えない。
いや、あの時なら構えないのが、少女が好んだスタイル。
それは、対するものが様々な構えを持っていたからだ。
でも、今日は。
「よろしくお願いいたします」
構えた。基本に忠実な半身。
右半身を前にした構え。
空手などでよく見る、相対する構えを、した。
■伊都波 凛霞 >
はっきりさせる。
…何を?。
疑問は、残るけれど、妹はきっとこの組手で何かを確かめたいのだ、ということは伝わる。
一礼し、眼の前で斜に構える妹とは、対になるようにこちらも構える。
「───、いいよ。悠薇」
先手は、譲る。
表情は真剣そのもの。
あの時と同じ、"本気"の姉を、妹は前にする。
■伊都波 悠薇 >
ただ、立っているだけ。
なのに、足がすくんだ。
足が動かない、根を張らされた気がする。
圧。
相対しただけで、それを感じとれる程度“ではある”、ことに心の底で安堵する。
でも。
それだけじゃ、足りない。
「ーーすぅ」
一呼吸。 摺り足。
基本の中の基本。極めたものは始動も感じさせないという、移動歩。
だが、妹のそれはまだそこまで至らず。
起こりがみえてしまうのはーー
至って普通。
前に、するりと移動したあとに、突き出した右手。
これまた、基本に忠実な正拳突き。
遅い。わけではない。
武を知らないものであれば、叩かれるであろうそれ。
しかして。
古武術を使い、熟練を知る姉には児戯にも等しい、あまりにも基本に忠実すぎる、拳だった。
■伊都波 凛霞 >
妹が仕掛ける。
微動だにしない姉は、そのまま──妹の呼吸に合わせるように、僅か、その身を開く。
それはほんの僅か。正中線を真直に保ったままに後ろ足をほんの少し、後げる。
突き出された拳。
起こりも、全て見えてしまう。
その拳の、手首に指をつがえるようにして触れ───。
「ふっ…」
二の腕を打ち。はたき落とす。
瞬間、体幹が崩れれば妹の背を手押し──突きの勢いを、真下へと変える。
つまるところ、空転するような投げを打つ。
■伊都波 悠薇 >
ーぐるん
視線が回る。
重心が、崩されて。
そのまま地面に、突き落とされーー
以前なら、そこから道連れにしようと脳が動いた。
考えるよりも。身体が自然と、動いた。
でも、今は。
「…………びぇ」
受け身を、取るので精一杯。
「ーー…………」
放心。
でも、やっぱり、とも思った。
■伊都波 凛霞 >
「──…?」
受け身がちゃんととれたのは、見事。
基本はちゃんと身についている。でも。
「どうしたの悠薇。構えないと」
放心している妹に一声。
少しだけ、ぴしゃりとした強めの語気。
組手を申し出てきたのは他ならぬ妹である。
…もしかして、調子悪い?
そんなことも頭を過ったけれど、それなら組手を…なんて言い出さない、だろうか。
そんな妹の様子に、姉もまた僅かな動揺を覚える。
■伊都波 悠薇 >
「うん」
むくり、立ち上がり、もう一本。
「お願いします」
仕切り直し。
しかし、何度繰り返しても基本に忠実。
しっかりと、練習したことしかできない。
あのとき感じた、殺、とした鬼気迫ることは1本も出ることはなく。
至って普通。
ーー姉に、拳が届くことは、なく。
■伊都波 凛霞 >
──あの時とは、変わったのだと思う。
精神的な面についても、そして多分、環境も。
妹の繰り出す技はどれも基本に忠実。
道場で教わり、修練し…覚えたもの。
それらの練度はあの時と比較にならない、筈なのに。
姉を緊張させる、姉を脅かす──。
そういった気勢は…妹の武術からは何も感じられなかった。
繰り返される、実直な拳に入り身を合わせ──、無防備になった、その鳩尾へと掌底を叩き込んだ。
あくまでもこれは、古流武術としての組手。立会。
溺愛する妹だからとて───加減は、せず。
■伊都波 悠薇 >
「はあ、はぁ、はぁ」
ピピピ。
アラームがなる。
稽古終わりの合図。
休みなく、負けても負けても、挑むのはいつも通り。
だが、どこかアラームの音は無機質に感じた。
「ありがとう、ございました」
礼をして、一息。
そして、天井を仰ぎ見た。
■伊都波 凛霞 >
「──ありがとうございました」
正座し、姉もまた一礼を返す。
そして。
「…悠薇、もしかして調子悪かった?」
立ち上がり…天を仰ぐ妹に白いタオルを手渡しながら。
───何か、確かめたかったのか。
まるで牙を失ったようにも感じられた攻め口。
技量は身についている筈なのに──。
■伊都波 悠薇 >
「ううん」
首を横に振る。
結っていた髪を手解くと、ばさりと髪が舞った。
「あれが、今の“私”。全力だったよ」
苦笑した。
成長している実感はある。
だが、恩恵を失ったーーいや、少なくとも感じない今は、二度とあんな動きができる気が、しなかったのだ。
「薄々ね、感じてたんだけど。ちゃんと、普通に成長しているけど。普通になりすぎちゃった、みたい」
■伊都波 凛霞 >
「………」
妹の言葉に、目を薄く細める。
今の…という言葉。
調子も特に落としていない、という。
かつての妹は、成長できなかった。
姉が、過度に成長しすぎた、反動で。
──そういう、異能だった。
それがなくなり、妹は普通にやればやるだけ。
努力すれば努力する程に、成長できるようになった。
「もし、本当にそうなら……」
少しだけ、視線を外す。
良いにくいことを言おうとする姉は、いつもこうする。
「──風紀委員。辞めたほうが良い…と、思う」
言外に。
あんなに弱くなってしまっていては、無理。だと。
そう告げる───。
■伊都波 悠薇 >
「だよねぇ」
姉なら、そう言う。
「あれが、あったほうが良かったのかなぁ」
あるのか、ないのか、わからないそれ。
そこにしがみつくのはーー
「なんて。冗談」
もう、しない。
「今のままだと、ただの普通、だもんね」
分かっていたこと。自分は天才ではない。
ただ、成長できるからといって、それだけで天才となれるなら世の中天才だらけだ。
「…………」
どうしようかと、思うと、言葉が出なかった。
■伊都波 凛霞 >
「──、別に、悠薇がやりたいことをダメって言ってるんじゃないよ?
その…学生街での事件なんかもあったでしょ?風紀委員は、危険なことも多いから…!」
今のままじゃ、きっと自分の身を守るのも……。
ましてや、異能者や魔術師の犯罪者なんかと出会ったら。
そう思えば…。
「あったほうが良かったなんて、ないよ。冗談でも、ダメ」
あの時、あの異能がどういうものだったかを知った時。
どれだけの自己嫌悪に陥ったことか。───思い出すだけで、苦しくなる。
「………」
「…風紀委員は、続けたいの?」
言葉の出ない妹に、声色を柔らげてそう問いかける。
■伊都波 悠薇 >
「アハハ、お姉ちゃんが狼狽えるなんて、珍しい」
空元気。でも笑顔を見せながら。
「ようやく、慣れてきたしね。せっかくだから、もう少し頑張ってみたい。
とこコレ、もあるし。人手もいるだろうし」
理由をあげたあと、ふぅと、もう一度息を吐いた。
「でも、着いていけなそうだったらやめる。迷惑はかけたくないし」
■伊都波 凛霞 >
「…もう、だから…迷惑がとかじゃなくって…。
悠薇の身に何かあったら私どうにかなっちゃうよ!?いいの!?」
やめるにしてもその理由を聞けば、駄々のようなことを言いはじめる。
「この世で一番大事な妹なんだから、もっと自分のこと大事にしてよ…」
そう言って、はぁ…と大きく溜息を吐く。
迷惑や面倒なんて、自分にならいくらかけられたっていい。
むしろどんどんかけてほしい。
妹が言っていることも理解るけど…わかるけども。
「…危ない目にあいそうになったら絶対逃げることだけ約束できる?」
じ…と心配そうに妹を見つめて。
■伊都波 悠薇 >
「うん。できるよ」
嘘はつかない。
「そんな、お姉ちゃんにお願いがあるんですけどもぉ」
じっと見つめ返した。
■伊都波 凛霞 >
「…ん?何…?いいよ。何でも言って?」
自分とよく似た顔、瞳を見つめ合う。
妹がこんなことを言い出すなんて、とてもめずらしい。
そりゃあ、宇宙一可愛い妹のお願いなんて。
他の何を刺しおいたって聞いちゃうわけだけれども。
なんだろう。
まったく予想がつかない姉。
■伊都波 悠薇 >
「UNKNOWN、って知ってる?」
風紀委員では、知ってる人も多いであろう、呼称。
「学園の生徒みたいで、とこコレに出たいみたいだったから、推薦したの」
姉は感じる、嫌な、予感。
「ホロウさん、っていうんだけど。一緒に出て、助けてあげてほしいな。とこコレ」
■伊都波 凛霞 >
「───え」
「(えええええええええええええええ───!!!)」
何でも言ってとは言ったけど、そんな爆弾が来るとは!?
「いや、えっと、あの…い、一緒にでなくても、お助けはできるんじゃないかな…?」
だらだら、汗がすごい。
目もなんだかぐるぐるしてる。
これだけテンパる姉は貴重である。