2024/06/29 のログ
ご案内:「鞘師華奈の部屋」に鞘師華奈さんが現れました。
鞘師華奈 > 本日は、大分久しぶりに『友人』と会う日だ。
かなり唐突にこちらから誘う形となってはしまったが…彼女は元気だろうか?

「……彼女の異能を考えると、また心身疲労とかありそうで心配だけど。」

辛そうなら自分の異能で軽減してあげたいが、こちらの異能のデメリットは友人も知っている。
疲労を軽減するといっても、それは吸収であり肩代わりだ。つまり負担は女が背負う形。

(…薫の事だから絶対に遠慮しそうだよね…。)

薄く苦笑いを浮かべつつ、流石に蒸し暑い季節になってきたのでドリンクは冷たい物を幾つか既に冷蔵庫に用意してある。
既に昼食の時間は過ぎ去っているし、互いに空腹ではないだろうが喉は乾くだろうから。

ちらり、とリビングにあるデジタル時計を一瞥する。ぼちぼち友人も来る頃合だろうか。
同居している猫――キジトラ猫の『ティガ』は、すっかり成猫になっていた。
まぁ、今はゴロゴロとソファーを占拠して欠伸を噛み殺している有様だが。

ご案内:「鞘師華奈の部屋」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
約束の時刻、誤差1分以内。
来客を知らせるインターホンが鳴る。

「久しぶり。元気してた?」

同じ寮住まいであるから、時間の調整自体は
然程難しくはない。それを踏まえても約束の
時間に遅れないように、かつ早く来過ぎて
プライベートに踏み込まないようにと神経質に
気遣う様子は以前の来訪時と変わらない。

「これ手土産。あーし話し出すと長くなるし、
 箸休め? 的なの、あった方がイィと思って」

今回のお土産はカヌレ。お高いものではないが、
華奈の趣味を考慮して『珈琲に合う品』として
店員に見繕ってもらったものだ。

鞘師華奈 > 「…おっと、噂をすれば…かな。」

ソファーで寝転がる猫に「これから僕の友人が来るからね」と、声を掛けて軽く頭を撫でておく。
ティガは欠伸をしつつ、にゃ~、と、覇気の無いのんびりとした鳴き声で返事。

それを見届けつつ、玄関へと移動しつつ鍵をがちゃり、と開ける。
パっと見た感じ、最後に友人と会った時とそんなに変わらない…ように見えるけれど。

「やぁ、久しぶり。唐突に誘って悪いね。顔も見たかったし『課題』の成果も報告したくてね。」

正直、本当に唐突だったので断られたりする事も当然視野に入れていた。
こちらは元気…ではあるので、それには小さく笑って頷こう。
彼女の神経質…なくらいな気遣いも矢張り変わらないなぁ、と内心思いつつ。

「おっと。わざわざ有難う薫。…これは…成程。」

受け取ったお土産をザっと確認する。カヌレ…と、なると矢張りコーヒーかな、と思いつつ。
そういえば、こちらの趣向は割と把握されている気がする。悪い気は勿論しないが。

「まぁ、取り敢えず上がって。控えめだけど冷房は利かせてるから。」

と、脇に体をずらして「どうぞ」とジェスチャー。彼女が入ったのを確認してから扉を閉めるだろう。

「あ、薫は覚えてるっけ?うちの飼い猫。大人しいし人懐っこいけど苦手なら遠慮なく言って。」

と、リビングに案内するが…件の猫様はソファーの一角でゴロンしていた。太々しい。

黛 薫 >  
「だいじょぶ、こっちも急ぎの予定とかねーし。
 魔術の掘り下げだって1人でやるばっかじゃ
 煮詰まるしな」

細やかさより臆病が感じ取れる気遣い、それに反して
丁寧から掛け離れた口調。しばらくご無沙汰気味で
あったものの、大きな変化は感じ取れない。

強いて言うなら、最初に会ったときからずっと
身に付けていたパーカーは新調したようだ。
見るからに古ぼけていたし、買い替えたのだろう。

「助かる。梅雨入ったんだか入ってないんだか
 分かんなぃ気候なのに、気温だけは夏みてーに
 なってんだもん。暑ぃよな、ココ最近」

「ティガのコトは覚えてる。苦手だとか
 判断できるほど猫にゃ慣れてねーけぉ。
 1回会ってるし、まー何とかなんだろ」

と、部屋に一歩足を踏み入れた所で立ち止まる。

「……ティガってこんなデカかったっけ……?」

早速不慣れを露呈する。猫だって成長するんです。

とりあえずおずおずとティガに頭を下げ、
邪魔にならないよう自身は水筒から呼び出した
水球状の使い魔……『ニクシー』を浮遊させて
そっちに座る。人間はお猫さまには勝てないのだ。

鞘師華奈 > 「そっか…なら良かったよ。」

そこは素直な気持ちを短く吐き出して。
あまり自らお誘いを掛ける、という事が無い女だ。
緊張、とは違うがちょっぴり勇気が必要だったのは事実。

同時に、友人の様子…臆病さも感じるくらいの気遣い。
それに対しての砕けた口調。このチグハグさも相変わらず。
そういう意味では、お互い表面的な変化は少なくともほぼ無いのかもしれない。

(…いや、でも何時も着ていたパーカー…新しくしてるのかな?)

ファッションはまだ初心者レベルとはいえ、それに気付く程度の目敏さはある。
友人には余計な不信を招いたり距離を置かれないように黙っているが公安委員会所属だ。
ある程度、観察眼などが無いとそもそも仕事をやっていけないのである。

「…ほぼ熱帯気候だからねこの島は。うっかり脱水症状にならないように気を付けないとね。」

特にこれからが地獄だ。でも、お互いパーカーやらスーツ姿は一貫してそうな気もする。
女の場合、拘りとかではなくスーツ姿が一番落ち着く、というか”楽”なのもあるが。

「いや、薫?…ほら、猫も成長するものだから…あの時はまだ子猫だったけど。」

今では立派な成猫なんです。おずおず猫に挨拶する友人とティガを交互に見て。
ちなみにティガは「ゆっくりしていきな」とばかりに、呑気に「にゃー」と鳴いてた。

「…あ~…うちの猫が何か気遣わせて悪いね。」

女も覚えのある彼女の使い魔…『ニクシ―』を水筒から出し、そこに座る友人を見て申し訳なく思う。
取り敢えず、一度冷蔵庫へと足を運んでアイスコーヒーを二人分。

「薫ー。アイスコーヒーで大丈夫かい?砂糖とミルクは入れる?」

と、そんな質問を。ちなみに女はブラック一択である。

黛 薫 >  
「ホントにな……特に学生通りとか教室棟構内とか、
 コンクリートだかアスファルトが熱せられてて
 暑ぃのなんのって。通学が億劫になりやがんの」

日差しが強くとも湿度が低い気候であれば、
パーカーやスーツは耐暑として機能する。

むしろ世界的にはそれが一般的であるからこそ
季節を選ばないビジネス服として普及したのが
スーツである、と見る向きもある。

しかし温暖湿潤気候にあっては話が別。
風通しが良くない服装だと熱が籠ってしまう。
過ごしやすい気候と呼ばれたのも遥か昔のこと。

「あ、うん。だいじょぶ。
 砂糖とミルク……は、いちお貰おうかな」

猫への気遣いと、飲み物への問いへの回答を
『大丈夫』でひとまとめ。常世島は気候にこそ
難があれ、共用語は便利なものだ。

鞘師華奈 > 「……と、いうか他に周りに人が居ないからぶっちゃけるけどさ。
…薫の場合、異能の事もあるから余計にきついんじゃないかな?」

彼女の異能については本人から凡そ聞いているし、勿論他言はしていない。
そして、一度彼女の疲労軽減をした時にその心身への負担の大きさを”身を以て”痛感している。
肉体の疲労だけならまだしも、問題なのはむしろ精神的な負荷だ。
場合によっては発狂や鬱病になりかねない負担。友人としては未だに心配である。

まぁ、しかし…確かに女もスーツ姿は一貫しているとはいえ、酷暑には勝てない。
魔術などで涼しくは出来るが、それは効率の問題もある。
なので、最近は流石に上着だけは脱いで上はワイシャツ姿の事が多い。
今は自分の部屋なので、シャツにジーンズ、とかなりラフな格好ではあるけど。

「了解。……と、お待たせ。」

手早く、砂糖とミルク入りのアイスコーヒー、そして自身の分のブラックのアイスコーヒーのグラスを用意。
彼女の分を薫にそのまま手渡そうとしつつ、女はニクシ―の隣にあるソファーに腰を下ろして一息。

「…さて。と。あ、先に報告しておくとさ。
『課題』だけど、魔力の結晶化は完全に習得したと思う。
あと、離れた場所への『射出』もクリアしたよ。

…まぁ、まだ『一部現出』に関しては、出来るには出来るけどその状態をキープが難しいかな。」

まずは簡潔に薫先生にご報告だ。彼女のお陰で、女の補助魔術の応用は確実に幅が広がっている。

黛 薫 >  
「……それは、そう」

肯定の言葉は短く、慎重に。

前置きをしてくれたから、気遣いあっての言及だと
理解する。だから虚勢を張らないように、然りとて
苦々しさを声音に乗せないように。

非才を不断の努力で埋めた魔術師としての力量。
違反学生時代の後悔からか、はたまた素からの
性根ゆえか、学業に励む勤勉な姿勢。

にも関わらず、単位の修得は捗っていないし、
校内をはじめ公の場で彼女の姿や名前を目にする
機会はまず無いと言って良い。

その最たる原因が彼女の持つ『異能』にある。

人の多い場所で常に多大な精神負荷を強いられる
彼女の異能は、人を主体とする社会で生きるには
あまりに不向き。特に決まった時間に集まって
学びを得る『授業/講義』と相性が悪いのが困り物。

理知的な会話が出来るのも私的な場あってこそで、
社会生活上では受けられる諸々の保障や精神科の
通院に支えられ、薄氷を踏む危ういバランスで
辛うじて生活している状態が続いている。


黛 薫 >  
「ま、そゆ話は一旦置いとぃて。
 クリアしたトコから発展できる内容考ぇてくか」

異能に関する話を深掘りしなかった理由は
幾つかあるが、そのうちの1つは目の前にいる
友人が負担を『肩代わり』出来てしまうから。
翻って、共有するには憚られる心労の証左でもある。

「おさらいになるけぉ、まず『結晶化』が出来れば
 元々難があった『形の無い物の収納』が可能。
 射出と合わせりゃ戦闘面では相手の魔術とかを
 収納してのカウンターとして運用が出来る。
 ベースが『収納』だから任意のタイミングで
 返せるのが強みよな」

「で、だ。当たり前だけぉ、収納できる対象の
 幅広さは日常での利便性にも大きく寄与する」

座っている水クッションから水球が2つ分離。
容器状に変化したそれの片側に受け取った
珈琲を注ぐと、もう片側の容器へと転送される。

「上手くやれば、冷蔵庫の扉開けなくても
 飲み物取り出したり出来るかもだな?」

鞘師華奈 > 「――そうだね、ちょっと”脇道”に逸れたみたいだ。」

彼女の遮るような、それ以上語る事のない空気に何か察したのか小さく頷いた。
彼女の心労を肩代わりそのものは”出来る”。だが、女の精神がただでは済まないのは明白。
一度、赤い瞳を閉じて何か思う間…だが、直ぐに瞳を開いて。

「そうだね。異能の収納は流石にまだ無理があるけど、魔術に関してはもう何度か試してほぼ確実、かな。
…あと、利点としては『収納』そのものは魔力消費が少ない事かな。『射出』とか『現出』させる方が魔力使う感じだし。」

コストパフォーマンスに優れる…にはまだ課題もあるが、魔力効率は決して悪くない。
そもそも、歪とはいえ『汎用性』を重視もしていた女だ。
魔力の効率的な運用、及び詠唱の破棄、並びにジェスチャーで魔術を発動する簡易高速化も独学で編み出している。

友人も承知の通り、この女は『実践派』なのでまずは実際に試してみるのが優先される。
そこを、独学や薫の豊富な知識の助けで後から補強・修正していくのが今の形に繋がる。

「…日常生活の利便性も出来る限り追及はしたい所だしね。
何も戦闘目的の為だけって訳じゃないから。」

だからこその”補助”魔術だ。戦闘にも日常にも応用が利かなければ本末転倒。
薫の言葉に、コーヒーを喉に流し込みながら、僅かに考える間を置いて。

「…その場合、物体の座標…位置を正確に把握する必要があるね。
私自身が『収納』している物なら、取り出しも範囲内への射出、取り出しは自在だけど。」

【隔離収納】魔術で物体を収めておく空間以外…別の場所、離れた場所から物体を転送するならそれが大事だ。

「…転送をミスると、例えば飲み物を冷蔵庫から取り出せても手元からズレて落下にしかならなそうだし。」

とはいえ、例えば女の部屋の冷蔵庫の中身と位置は把握している。
それならば、薫の言う応用もおそらくは可能だろう。とはいえそれも訓練が必要だが。

黛 薫 >  
「だろーな、目視出来りゃそれが1番楽だけぉ、
 目で見ぇる場所にあんなら手で取ったって
 手間は大きく変わんねーし。

 逆に言や、そこを解決すれば利便性的な意味での
 拡張に繋がるワケだ。例えば『感知』や『透視』が
 出来ればイィ。つっても、この辺になってくると
 華奈の適正からは外れてきそーだからコスパまで
 考ぇるとビミョーか?」

アイデアは自由に。当然自由であるほど現実的な
課題は多く見つかるが、課題は即ち改善点でもある。
クリア出来ればアイデアが形になるとも取れる。

「……もしかしたら『一部現出』が使ぇるかも?
 監視カメラ? みたぃなのを収納しといて、
 レンズ部分だけ現出させて映像拾ぇたら
 視界の拡張に繋がるよな」

「でもそれだと受信が問題になってくるか。
 いちいちスマホだのなんだので確認すんのも
 面倒だし。それこそよくある同期する性質の
 魔導具があるとイィかも。眼の代わりになる
 水晶玉とかあるもんな」

自身も珈琲を口に運びつつ考える。

「……缶コーヒーとはやっぱ色々違うんだな……」

復学してからは多少お金の余裕も出来てきたので、
安物ならコーヒー……というかカフェイン飲料を
口にする機会も増えた。お陰でほんの少しだけ
違いが分かるようになった。

鞘師華奈 > 「そうだね…あと、そのくらいなら普通に手で取らないと体が訛るし。
利便性は出来る限り追及したいけど、何でもかんでも魔術で片づける訳には行かないしさ。」

あくまで補助であり、それだけに頼り切るようになったら意味が無い。
日常生活の補助、戦闘の補助、出来る限り汎用性…にしては尖っているが、そこが肝だ。
補助特化型の魔術使いである女だからこそ、そこはブレないように気を付けている。

「――『透視』は難しいな。自分の『透明化』だったら出来るんだけどね…。
感知…だけど、私はそもそも感知より隠蔽に適性があるタイプだから、相性的にも外れそう。」

例えば、魔力の感知よりも隠蔽の方が女は優れている。
その隠蔽能力は、初見に限れば一流魔術師ですら”騙せる”。
迷彩、欺瞞、隠蔽。暗殺者や奇術師じみた、そういう方向性が女の得意分野だ。
なので、今、友人が出してくれたアイデアは理想的ではあるが現実的には厳しい。
とはいえ、そういうアイデアは大事なので何か打開策が見つかるかもしれない。

「…そうだね、『一部現出』の状態をキープする、というのが今の段階での一番の『課題』かな。
それをクリアすれば…うん、同期する為のアイテムが必須だけど可能だと思う。」

魔術+アイテムによる視界拡張。使えたら実際便利だろう。
そちらは、まだ実現可能なレベルなのでコーヒーを飲みながら頷いて。

「一応、珈琲豆もそこそこ良いの使ってるしね。
まぁ、缶コーヒーだってアレはアレで好きだよ。
それに外で手軽に飲めるのが良いし。」

それに最近の缶コーヒーも、メーカー努力なのか味なども格段に良くなってきている。
おっと、自分の魔術の話題ばかりになってしまったが。

「そういえば、薫の方はあれから魔術の研鑽とか順調かい?
ニクシ―に関しては大分洗練されてきてる気もするけど。」

と、水球を見遣る。何か何時の間にか起きた猫がニクシ―に近寄り、ふんふんと匂いを嗅いだり前足で軽く突こうとしていた。好奇心旺盛である。

黛 薫 >  
「あー……『隠蔽』の適正が高いと対極にある『感知』は
 相性が悪ぃのか……確かに言われてみりゃ納得だ。

 つーことは『一部現出』を応用した視覚の拡張が
 可能になりゃ、感知が苦手っつー弱点の克服にも
 繋がるのか。副産物としてはアリじゃなぃ?」

適正が尖っていれば当然苦手な分野もある。

黛薫は素養にこそ恵まれていないが、
その分得手不得手の『谷』の部分は浅い。
そのため汎用性を高めるには向いている。

華奈は得意分野が突出しているお陰で
苦手分野もあるが、適正内なら破格の性能。
そのため『あと一歩』さえ埋められれば強い。

「つっても、これから改善案が見つかる度に
 アイテムが必要ってなったら『汎用性』からは
 遠ざかるよな……選び取んのは『多様性』だから。
 "持ってないから対応出来ない" じゃ困る。
 逆に持ってさえいりゃ対応出来るんだけどさ」

「いっそそーゆー需要を満たす『何か』を作れたら
 理想的なのかな。華奈が求める機能を集約した、
 あーしで言う『ニクシー』みたいな何か。
 多少大規模になっても華奈なら『収納』できるし」

遠い展望、理想論。けれどもし実現出来れば。


黛 薫 >  
「缶コーヒーもなー、よく分からずに買った
 インスタントよかよっぽど質がイィのよな。
 流石に豆からってのは難しぃけぉ、なんだろ。
 口に入れて、味わう前の時点で何か違うもん」

知識が足りないので感想はふんわりしている。

「こっちは、うん。練度は上がってきてんだ。
 ただ便利になればなるほど依存度が上がって、
 結果的に『ニクシー』もウィークポイントに
 なり得るよーになってんのが課題なのよな」

本体が弱いから使い魔に機能を集約したら、
使い魔の損耗が致命的になってしまった。
便利すぎるというのも考えものである。

「だから最近は弱点を埋めらんねーかなって考え中。
 例えば消化や浄化が間に合わなぃ毒や汚染への
 対象として、解析機能を強化したりとか。

 お陰でポーションとか液状の薬剤の複製が
 出来るよーになった。薬効の再現だけだから、
 見た目や味は制御出来ねーけぉ」

例えば珈琲の再現なんかは出来ない。
なお、ティガにつつかれたニクシーは分裂して
ぽよぽよと転がり中。良い遊び道具になりそう。

鞘師華奈 > 「インスタントも良いのは勿論あるけど、ちょっとお値段がね…。」

なので、手軽に飲むなら缶コーヒー、家とかでゆっくり飲むならドリップ式とか分けている。
女も、別にコーヒー知識が豊富…とは言い難い。
好きで飲んでいる内に、ちょっぴり拘りを持つようになった程度。

「――機能を集約したはいいけど、一極化による弊害、か。
ニクシ―が仮に機能不全に陥った場合の”予備策”を考えるか…。」

あるいは、薫が口にしている通り、弱点を埋める為の機能の拡張だ。
ただ、その場合はより複雑化する事が目に見えているので制御方面も少し問題が出そうな気もする。

「いやいや…薬効の再現が出来るだけ十分に凄いと思うね私は。
再現って、魔術や何かの機能に限らず色々と大変だからさ。」

オリジナルと寸分たがわず、あるいは出来るだけ近似値の結果を示さないと再現とは言えない。
それが出来るだけで、既に凄いと胸を張って言えるものだと女は思っている。

で、ティガはといえば、分裂したニクシ―とじゃれあっていた。
爪は立てていないし、噛み付きも甘いので加減はしっかりしている模様。
まぁ、ただの猫なのでそれでニクシ―がどうこうなる事はまず無いだろう。

黛 薫 >  
「基本的にゃ分裂体の『ジェリー』に任せる形で
 解決出来んだけどな。んでも分裂体である以上
 統率個体よか機能が落ちるのは避けられねーし、
 機能集約してるから結局連れ歩くのはニクシーだし。
 保険なんていくらあってもイィかんな」

下位互換であれ、普段使いに大きな支障はない。
ただ、支障が無かろうと上位互換に慣れていれば
些細なことで不便を覚えるものだ。

ほんの少し読み込みが遅いスマホやパソコン、
明るさの調整が出来ない照明、冷え方が弱い冷蔵庫、
ワット数や予熱温度の上限が低いオーブンレンジ。
そういった物を使っているときに感じる不便と同質。

「あとなー……機能を集約すんのって『楽しい』から
 良くなぃ。集約するほど機能不全が怖くなるなら
 冗長性を持たせてバックアップ増やすべきだけぉ。

 単体で完結した性能、何にでも対応できる一点物
 っての、魔術師っつーか技術屋からすっと作んの
 楽しくて、お陰で機能不全の危険から逃れらんなぃ」

機能美という観点から見れば『ニクシー』は
芸術品と呼んでも過言ではない代物である。
お陰で凝り性な黛薫は必要性より楽しさ優先で
拡張を進めてしまうこともままある。

その分高性能なので、仮に猫が本気で噛みついたり
引っ掻いたりしても損傷しない程度には柔軟である。
何せ元がスライムの怪異、耐物理性能は折り紙付き。

鞘師華奈 > 「まぁ、保険は幾つあってもいいからね…。
私は、そういう技術的方面はいまいちだから薫の試行錯誤は素直に凄いと思う。」

実践派なので、どうしても典型的なトライ&エラーになりがちだ。
まぁ、実際にやってみて感覚を掴んだりするのが向いているタイプだとは思う。
そういう意味では、下地に知識、そしてそれに裏打ちされた技術基盤がある友人のあれこれは羨ましいものだ。

「…確かに、言われてみれば薫は魔術師というより技術者な感じがするなぁ。
いや、魔術師としてのあれこれが土台にしっかりあるからこそ、それを取り入れた技術がしっかり根付いてるんだろうけど。」

だからこそ、楽しくなってしまうと中々歯止めが利かないのだろう。
あれやこれや、これをこうすれば更にアレが出来る、などと突き詰めたらキリがない世界だ。
なまじ、正解なんて無いからこそ自分のアイデアと腕次第。
…うん、友人はやっぱり技術者的な面が色濃い気がしてきた。
ただ、楽しくなると他が疎かになりがちなのは女にも覚えがある感覚だ。
多分、誰しも多かれ少なかれある感覚だろうし、そこは共感できるものがある。

珈琲をまた一口飲みつつ、会話の合間に土産で頂いたカヌレも頂こうかと思う。
…うん、やっぱりコーヒーに合う。友人のチョイスは流石だと思った。

ちなみに、猫はといえば分裂体ジェリーに半ば埋もれながら”香箱座り”をしていた。
ひんやりしていて柔らかいのがベストなのか、目を閉じてご満悦である。

黛 薫 >  
「ただ、技術と理論をベースに試行錯誤すっと
 改善点を見つけてのサイクルが長いのよな。

 ミスがあったら何で上手くいかなかったのか
 洗い出して、正常に動かすにはどーすべきか、
 修正に伴って他に影響はないのかとか検討を
 繰り返さないとだから」

俗にいうPDCAサイクルというやつ。
Check, Act の部分を感覚で理解、実行可能な
経験ベースの人と比べて時間が掛かるのが難点。

「実践的な試行錯誤っつーか、肌感覚での微調整?
 そーゆー分野に必要な経験値、やっぱ足んねんだ。
 華奈が『結晶化』習得の際にやってみせたみたいな
 積み重ねにゃまだ遠ぃなってカンジ」

だからこそ実践派の華奈との論議は実りが多い。
一区切りの合間に、自身もカヌレを口に運ぶ。

「……満喫してんなー……」

ご満悦状態のティガを見遣り、呟く。

実際、固さを調節可能なウォーターベッド、
或いはクッションとしても扱えるジェリーの
座り心地は良いものである。夏場はなおのこと。

鞘師華奈 > 「…逆に実践での試行錯誤は、微調整とかは実際にやって確かめる分は感覚的には掴み易いけど。
理論的なあれこれをすっ飛ばしている所もあるから汎用性…他の人にも分かり易く簡潔に、が難しいんだよね。
例えば、私の感覚が基準点になりがちだから、他の人に教えるとしてもどうしても感覚の”ズレ”が生じるだろうし。」

お互い、魔術の研究等に関しては真逆のタイプだからこその一長一短が矢張りある。
まぁ、だからこそこの友人の視点や助言は大いに有難いのだけれど。

「…うちの猫、地味に順応性高いというか物怖じしないからねぇ。」

ティガさん、「このプヨプヨは俺のものだ」と言わんばかりに私物化してリラックス中。
明確な意思は無いであろうとはいえ、分身体であるジェリーに少し申し訳ない気持ち。
あれは暫く動かないなぁ…と、呆れ半分で猫を見ていたが。
カヌレを美味しく頂きつつ、意識を友人へと戻して。

「まぁ、今の私の課題は『一部現出』の長時間キープかな。
それ以外はほぼ当初の課題はクリア出来たとは思う。」

魔力の結晶化、及び魔術の有効範囲内からの『射出』はマスターした。後はそこが大きな壁。
友人の課題は、矢張りニクシ―の機能面を中心にといった感じだろうか。

「…思ったんだけど、薫の肉体的な負荷くらいなら、ニクシ―のバージョンアップ次第では軽減できそうな気もする。
例えば、スライムの流動性を生かして全身に適度な加圧をしてマッサージとか。」

物凄い日常的なアレになった気がするが、友人の心身の負担はやっぱり心配なので。
せめて、肉体方面の負荷だけでも適度に軽減できれば大分違う気がするのだけど。

黛 薫 >  
「それなー……つっても、理論で構築する魔術も
 先鋭化するほど自己利用に特化してくのよな。
 ニクシーなんか、最早あーし以外が扱ぅコト
 想定してねーもん」

これだけ多機能化すれば然もありなん。

「華奈の課題に関しちゃ、かなり進行してっから
 次の課題探しも考ぇとくとイィかもしんねーな。
 長時間の『一部現出』が出来るよーになった後、
 次伸ばすべきトコの展望あると立ち止まらずに
 済むだろし」

それから、華奈の提案に一瞬の沈黙。

「その手のはなー、魔術で解決出来ない技術が
 必要になっから、思ったより難しぃんだ。
 あと、マッサージ系は行きつけのお店が
 あるから……付け焼き刃で習得したところで
 どう足掻いても及びそーにねー……」

以前チケットを渡したアロマ系のお店。
むしろ通う理由を減らしたくないまである。

「あー、でもあーしそもそも身体が強くなくて、
 筋肉落とすと良くなぃって医者に言われたから
 むしろ運動補助に舵切ってくのはアリかも?」

肉体負荷は増えるが、適度な運動はリラックスに
なるとも聞く。どの程度精神負荷が軽くなるかは
未知数だが、誘導自体は上手く行ったかもしれない。

鞘師華奈 > 「…まぁ、私から見てもそのニクシ―は、完全に薫専用というか。むしろ君しか扱えないと思う。」

何しろ、彼女自身がここまで機能拡張や試行錯誤を繰り返して”進化”させてきたのだ。
当然、彼女の個性や癖といった細かなものも無意識に反映されている筈。
いわば、薫の分身のようなものだ…本人しか使いこなせないのも道理だろう。
おまけに、多機能とくれば尚更に。最低でもその道の専門家じゃないと理解すら難しそうだ。

「…さっきも話題に出たけど、座標をしっかり把握して遠くの物体を手元に転送させるみたいな?
いわゆるアポーツ…だったかな?遠隔操作の延長線上みたいな事は少し目標にしたいかな。」

そもそも、目標とする物体の位置を正確に把握する手段がどうしても必要になる。
こればかりは、魔術だけでなく矢張りアイテムや何かしらの別の補助が欠かせない。
あと、細かい所を言えば消費する魔力の程度、更に物体の転送可能な距離と限界重量などがある。

「…あ~~…うん、成程。何か分かった気がする。」

朧げに察したのか、うんうんと頷いた。
まぁ、そこは深く突っ込まないのが友人としての礼儀だ。
そして、薫の続く言葉にコーヒーにまた口を付けながら。

「…実際、適度な運動はリラックスに繋がるからね。
最初は筋肉痛とかで地獄かもしれないけど、段々それも無くなっていくだろうし。」

誘導?は上手くいったらしい。適度に体を動かせば、むしろ精神的にも気晴らし程度にはなる、といいのだけど。

「そういえば、ニクシ―で少し気になる部分があったんだけど。」

と、言いつつ徐に一度立ち上がり、ニクシ―の傍でしゃがみこんで。
徐に、手を軽く触れてニクシ―に異能を行使する

「…やっぱり。スライム状だから殆ど無いとは思ってたんだけど。
あちこち”歪み”というか負荷が薄っすら蓄積してるね。
これ、取り除いておいた方が機能拡張した時に”エラー”も起き難くなるだろうから、やっておくよ。」

ちなみに、薫に心配掛けないように、「あ、私への負荷はそんなに無いから平気。」と、補足しておく。
実際、それらの歪みは微細なものなので、女への負担は殆ど無い。若干疲れるくらいだ。

黛 薫 >  
「一旦『収納』を介して即時手元に、ってコトか。
 同じ原理で場所移動、置換、あとは『射出』と
 併用して静止物に運動エネルギーを与える、
 って形にも発展出来そーだ。次の課題としちゃ
 イィ具合なんじゃねーかな。

 空間把握能力が上がりゃ、今より遠くのものを
 対象に取れるよーになる可能性もあるかもだ」

即時性は華奈の『収納』の大きな強みのひとつだが、
対象の認識に時間が掛かれば当然発動そのものも
遅れるはず。入出双方の動作を要するアポーツは
練度の向上にも繋がるかもしれない。

それから、ニクシーに触れる華奈を見遣り。

「あー、あー……そっか、華奈はそっちも対象に
 取れるのか。お察しの通り、ニクシーは結構
 ゴミデータが溜まるのよな……」

何せニクシーが担うのは『電脳魔術』。
キャッシュ由来のダストデータは不可分だ。

「コレばっかりは『電脳』と紐付いてる以上
 どーしても溜まるもんだからな、助かる」

鞘師華奈 > 「あくまで最低条件として、まずは『一部現出』の習得が最優先だけどね。
…まぁ、その『課題』は流石に難易度がまた高そうだから時間は掛かるだろうけど。」

認識さえすれば、即時行えるのが強みではあるが、その認識に誤りがあれば意味が無い。
だからこそ、正確に位置を把握する、というのは次の課題ではどうしても避けられない壁だ。

「あーうん。私の異能は生物/非生物両方に使えるからね。
本来は、私の”疲労”を対象に”押し付ける”のがメインなんだけど。
前に薫にした時とか、今、ニクシ―にやったのはその逆バージョンで、応用みたいなものだね。」

対象に触れて”疲労”…ニクシ―の場合はエラー、ごみデータを取り除く、といった感じになるか。
そのようなエラーも、女には反動で疲労感として蓄積されていく。
幸い、ダストデータの容量は”今は”そこまで多くなかったので、女の疲労感もそこまで深刻ではない。
ただ、若干ノロノロとした動きで立ち上がればまたソファーに身を預けて。

「…取り敢えず、今の時点で溜まっていたダストデータは全部取り除いたよ。
まぁ、またすぐ溜まるとは思うけど…薫の言う通りこればっかりはね。」

電脳魔術の宿命、なのかもしれない。
そういえば、自分の異能の詳細をここまで話した相手は殆ど居ないなぁ、とか思いつつ。

黛 薫 >  
「課題の設定も簡単じゃねーよなぁ……。
 ハードル低くしすぎっと達成してから次を
 検討する無駄な時間が出来るし、かといって
 いきなり目標を遠くに置くとモチベがな……」

達成に至るまでの道のりは地道な積み重ね。
成長は簡単な目標をひとつひとつ達成した末に
あるものだが、ハードルの下げ過ぎは立ち止まる(頑張った)
言い訳にもなるから難しい。

「ダストデータも "疲労" 扱ぃで対象になんのな。
 てコトは、逆に華奈が押し付ける "疲労" も
 対象にとって自然なカタチで発露すんのかな」

金属疲労なんて言葉もあるし。

「……華奈も使ぅ?」

未だくつろぎ中のティガを一瞥した後、
ジェリーを分離させて水球クッションを生成。

ふよふよの手触り、夏に嬉しいひんやり触感。
固さも形も自由自在で全身を預けられる。
魔導具、計算機としての利便性を抜きにしても
この感触だけで十分に価値がある。

鞘師華奈 > 「…実際に昔…二級学生時代に経験あるけどさ。
モチベーションは大事だよ…保てないとそこで止まるからね。」

何かその手の体験があったのか、やや遠い目になりつつ。
そういう意味では、彼女の言った課題の設定は割と大事だ。
高すぎても低すぎてもいけない。今の自分に見合うバランスでないといけない。

とはいえ、タイプは違うとはいえ自分も彼女も一度設定さえしたらひたすら打ち込めるだろう。
…打ち込み過ぎて、お互いオーバーワークになりかねない事も多々あるかもしれないが。

「…例えば、人間にやったら状態異常かな。あちこちに不調が出たりするね。
で、物体…例えば金属にやったら、私の疲労の溜まり具合に応じて対象が”劣化”する。
まぁ、分かり易く言えば触れたら砕ける、って感じかな。対象の固さとかにもよるけど。」

対象に合わせた負荷を強制的に押し付ける…それが女の異能の真骨頂。
…正直、嫌がらせ以外の何物でもない能力だが、応用で人助けが出来るので悪くは無い。

そして、今のちょっとした疲労状態でジェリークッションはいけない。
何がいけないかというと、抜け出せなくなりそうという意味で。
でも、お言葉に甘えてジェリークッションを使わせて貰うのである。

「…あ~~……これ、今の私の状態だと余計にマズいかも…。」

軽く枕のようにセットして頭を預けるだけで全然違う。
…実際、女の顔が若干へにゃっとしているので効果抜群なのだろう。
恐るべしニクシ―、もといジェリー。既にこの部屋の一人と一匹を虜にしている。

黛 薫 >  
「ん。……あーしも、知ってるからな」

甘えた目標。積み重ねてなお微々たる願い。
足を止める言い訳になり、己を慰めるだけのもの。
過ぎた目標。身の丈に合わない願い。
努力と成果を卑小に貶め、己を傷付けるだけのもの。

知っている。

立ち上がることさえままならない諦観を。
どれだけ走っても一条の光さえ見えない暗闇を。

「だから、休む大切さも多少は知ってる」

休んでどうにかなる疲労なら、休むのが良い。
疲れたまま走って折れるよりずっと高効率だ。

自分もジェリーに身体を預けて横になる。
普段なら、弛んだ姿を人前で見せようなんて
思いもしなかったのだろうけれど。

休むなら、誰か1人が変に気を張っているより、
全員休んでいるくらいが丁度良い。

鞘師華奈 > 「…そっか……だったらお互い、尚更に今は”怠惰”にはなれないね。」

かつて自分が”そう”だったからこそ、言える言葉だ。
それで3年間も無為に過ごしたから…そういう怠惰で意味のない時間を友人や他の人に過ごしてほしくはない。

知っている――何もかも唐突に崩れて落ちていく恐怖と諦めを。
知っている――気が付いたら全て終わっていて、己に閉じこもっていた矮小さを。
知っているから…もうあんな日々には戻ってはいけないし戻りたくはない。

「…そうだね。休み過ぎもそれはそれで問題だけど。」

少なくとも薫はちゃんと休んだ方がいいなぁ、と思う。
彼女は自分なんかよりも真面目で、異能の弊害とかもありつつも少しずつ歩んでいる。
だからこそ、気苦労や馴染めない事も多いだろうに。
友人が頑張っているのだから、尚更に私も頑張らないといけないと思う。

とはいえ、このジェリークッションの気持ちよさが強すぎてそんな思考も半ば飛んだが。

「…マズいなこれ…気を抜くとうっかり寝ちゃいそうだ…。」

友人との時間なのにそれはいけない、と思うが瞼がじわじわ閉じて来る。
ちなみに、ティガに関してはもう既にスヤスヤ寝ていた。さすが猫である。

黛 薫 >  
「そーな。戻れないから。戻りたくないから」

低過ぎる目標は怠惰を育む土壌になる。
高過ぎる目標は心を折る痛苦になる。

けれど。

低かろうと、目標を超えることは前進で。
遠ければこそ、人は前を、上を向いて進める。
それを知る限り、歩みは止まらないものだから。

「だから、進捗が確認できた今だけ、な」

課題とは即ち『節目』でもある。
休む前に此処までは進んでおこう、と。
辛くともせめて此処までは頑張ろう、と。
人はそれを繰り返して成長する。

自分だって、休むのが上手い訳ではない。
むしろ下手だと思うし、度々指摘もされる。

けれど、今だけは甘えの誹りをも受け入れよう。
それが友人を休ませるきっかけになるのなら──。

鞘師華奈 > そう、高い低いは関係ない。大事なのは停滞しない事。
…立ち止まるのはいい、だけどそこでずっと留まっていては”何処にも行けない”から。
だから、私は今更だけど自分の道を歩もうと…否、歩んでいる。
もう、怠惰に二度と戻らないように、溺れないように。

「…あぁ…節目は大事…だよね…ほんとう。に。」

駄目だ、先ほどの異能の反動もあるけど、日々の疲れの蓄積もあるらしい。
何より、友人と久々に会えて気を抜き過ぎたのかもしれない。いけないな…。
ただ、そんな思考とは裏腹に瞼が完全に落ちてしまう。

あまり人の前で寝顔を見せるのは好きではない…むしろ露骨に苦手とする女だ。
それでも、友人ならまぁいいか…と、思う。自分の部屋だからというのもある。

「…薫…次は何か食べに行こう…か…。」

お店、何処がいいかなぁ、と思いながら意識が沈んでいく。
ネコと友人の存在を感じながら、女の意識は束の間眠りへと落ちていくだろう。

その日は、友人と猫ともども暫く眠りこける昼下がりだったとか。

ご案内:「鞘師華奈の部屋」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「鞘師華奈の部屋」から鞘師華奈さんが去りました。