2024/07/13 のログ
ご案内:「訓練施設」に武知 一実さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」に桜 緋彩さんが現れました。
武知 一実 >  
「――よっし、どうにかギリ手に馴染むとこまでは間に合ったか」

訓練施設の一室、運動着に身を包んだオレは小さく呟いた。
腰には小太刀ほどの長さの木剣が丁度背中側で交差するようにホルスターに収められたベルト。
……色々とあったが、ようやく手合わせの約束を果たす運びとなった今日。
体調面はバッチリだ。

「先輩は、本当にもう腕の方は良いんだな?」

肩を回し腕を回し、準備運動をしつつ相対する緋彩へと声を掛ける。
素手での喧嘩から身体能力の高さは把握しているが、あっちは剣術使いが本業。はてさて、オレはどこまで通用出来るのやら。
……と、そんな弱気なモノローグとは裏腹に高揚が抑えきれないのもまた事実だけども。

桜 緋彩 >  
声を掛けられ、部屋の対角でしていたアップを切り上げる。
前後左右に飛び跳ね、簀巻きの木人を木刀でひたすら叩き続けると言う、アップと言うには運動強度が高すぎるように見えるだろう。

「ええ、もうこの通り。
 なにも問題ありませんとも」

しかし本当に問題ないのはその返答でわかるだろう。
汗こそかいているものの、息が切れた様子はない。
ブン、と空気を裂く音を立てながら木刀を横に振って構える。

「さて、ルールを決めておきましょうか。
 急所は無し、倒れたところに追い打ちも無し、ですが起き上がるところへの攻撃はあり。
 こんなところで如何でしょう?」

軽くルールを提案してみる。

武知 一実 >  
「上等ッ。
 大人しく待ったかいがあるってもんだ」

これで期待通り、全力での手合わせが出来る。
期待し過ぎて昨夜は普段よりも3時間早く床に就いたくらいだ。
そんな期待に応えるつもりがあってかは知らねえが(多分ない)、威勢よく木刀を振る姿にはどうしても口角が上がっちまう。

「ああ、それで良いぜ。文句なしだ。
 使う得物はお互いに今手元にある木刀と木剣だけで良いよな?
 それと、異能は……悪い、使うなって言われてもたぶん無理だ」

今ですら気を抜けばバチりそうな程に電圧が上がってるのを自覚している。
これを抑えろってんなら、心臓を止めろって方が幾分か早ぇほどだ。
ルールの提案には肯いて、ベルトに差していた木剣を二本抜き放つ。

桜 緋彩 >  
「随分お待たせしてしまいましたね。
 申し訳ありません」

対するこちらは至って平常心。
立ち合いに際しやはりある程度気持ちは上がっているが、ある意味ではその程度と言うことだ。
楽しみでないわけはないが、そこで心を乱すようでは剣士としてやっていけない。

「了解いたしました。
 異能も勿論使っていただいて構いませんよ」

元より異能を相手に剣一本でやり合ってきた身だ。
今更異能のひとつふたつで文句を言うこともない。

「それでは、始めましょうか。
 いつでもどうぞ」

木刀を構え、正面に立つ。
構えと言ってもわかりやすい剣道っぽい構えではなく、片手で剣を持ち半身を向けた、どこか格闘技っぽい構え。
剣術家らしくないステップを踏みながらも、剣先は彼の顔に向いたまま外れない。

武知 一実 >  
「気にすんな、しょうがねえもんはしょうがねえ。
 ……その分、今日キッチリ耳を揃えて返してくれりゃあ良い」

不満はもう充分にぶつけた。不満以外もぶつけた気がするがそれはそれ。
どっちみちこの手合わせで解消してくれればオレとしては言う事無しだ。

「おう、悪いな。
 アンタがまた火傷しちまうって事だけは無い様に気を付けるからよ」

それくらいの制御は出来る。たぶん。
いや、出来ないとしても無理矢理やる。今決めた。

「ああ、始めよう。
 それじゃ、胸を借りるつもりで行くぜ――」

両手にそれぞれ木剣を持ち、一礼。
それから一つ大きく息を吐いて、深く吸って――
ダンッ!と勢い良く踏み込んで間合いを詰め、左で逆袈裟を仕掛ける。

桜 緋彩 >  
勢いよく飛び込んでくる彼。
ほぼ同時に、自分から見て右斜め下から跳ね上がってくる木刀。

「ふっ!」

それが届く前に、跳ねる。
木刀がこちらに届く前に右に跳ね、木刀の軌道から身体を退かす。
同時にこちらが持つ木刀を思い切り突き出す。
動作も用法も、ジークンドーにおけるストレートリードのような。
流石に顔は狙わず、振られていない木刀を持つ腕の側、右肩を狙った「置く」ような突き。

武知 一実 >  
――避けられるか弾かれるか、どちらかと読んでいたが。
読み通り緋彩は一太刀目を躱した。てことは次は――

「……らァッ!!」

右肩を狙っての突きに対し、咄嗟に右手の木剣を逆手に握って、アッパーカットの要領で木刀をかち上げ軌道を逸らし。
そのまま躱された左の剣を胴狙いで振り抜く。
試行錯誤の末、オレが二刀流に行き着いたのは単純に両腕をそれぞれ自由に動かせるからだ。
右で打ち、左で守る。あるいは左で打ち、右で守る。そして左右同時に打つことも守る事も出来る。
それは武器を使う中で一番、普段の戦い方(喧嘩闘法)に近い動きだったからだ。

それはそれとして、さて今度のは緋彩は避けるか守るか――

桜 緋彩 >  
避けると同時に突き出した剣は、しかしもう一方の剣に弾かれた。
なるほど、確か剣は素人だと言っていたはずだが、センスがいいのだろうか。

「甘いッ!」

しかしこちらには彼にはない経験がある。
弾かれた勢いを利用しぐるんと剣を回し、薙ぎ払われる剣を今度はこちらが弾き飛ばす。
ガツン、とフルスイングした木刀同士を打ち合わせた様な重い音。
幾つかの剣閃をまとめた神槍の一撃は、彼の腕に見た目の数倍の重さを与えるだろう。

「はッ!」

その勢いも殺さず、がら空きになった左わき腹目掛けて、彼の背中側からの軌道で剣を振る。
左は弾いた。
右は届いたとしても無理な受け方をせざるを得ないだろう。

武知 一実 >  
「――ちィッ!」

今度はこっちの剣が弾かれた。
見た目よりも重い一撃は、剣ごと肘と手首の関節まで弾かれそうな程だ。
ホント、どっからこんな力が出て来てんだか……!

「な――んのッ!」

感心してる暇もなく間髪入れずに次の一閃が迫る。
左で受けるのは厳しい、右は体勢的に無理すればってとこか。
であれば――オレは両脚に力を籠め、異能によるブーストも乗せて跳躍する。
立ち背面跳び、なんて荒業で木刀を躱し着地の慣性のまま緋彩から少し距離を取る。

分っちゃ居た。分かっちゃ居たが――やっぱ強ぇ。
一太刀一太刀が受ければ痛いじゃ済まないとありありと見て取れる。
強えし怖え。が、それ以上に――楽しい。
バチバチと両脚に残った異能()が興奮に呼応して弾ける。
――やっぱ喧嘩はこうじゃねえと!

桜 緋彩 >  
「ほう!」

バク宙のような恰好で剣を飛び越える。
破天荒な行動に思わず感嘆の声が漏れた。

「――体捌きはやはり流石ですね。
 しかし避けてばかりでは勝負になりませんよ?」

普段なら逃がさず距離を詰める場面。
しかし敢えて追わずにいた。
軽くステップを踏みながら、最初の様に剣を突き付けつつ横に移動。
彼を中心とした円を描くサークリング。
明らかな手加減、と言うより指導のような雰囲気。
「敵」として立ちはだかって欲しいのであれば、怖いところを見せてみろ、と言う挑発のような笑顔を向ける。

武知 一実 >  
「伊達に喧嘩屋やってないもんでな!」

日頃喧嘩ばかりしてりゃ、一対一は勿論、多対一なんて事もザラにある。
基本は徒手空拳(ステゴロ)の喧嘩闘法のオレだが、相手がそんな事に付き合う義理も無く得物を使う事だって少なくねえ。
一発貰えば袋叩きなんて状況、何度も陥って来た所為か多少強引な躱し方だって経験済みだ。

「――ああ、ったりめえだ。
 良い感じに暖まって来たんだ、そろそろ一段上げてくぜ……!」

ドッドッと高鳴る心臓に併せて体内で雷が迸る。
それは腕を流れて手から逆手に握った木剣へ。青白い雷光の輝きを宿す。
実践するのは初めてだが、自主練では何度か試してる、大丈夫だ――行ける。

「まずは、尾――鼓舞雷(コブラ)

バチッ。身を低く屈め、電気が爆ぜるのを合図に滑るように緋彩との間合いを詰める。
ただし今度は真っ直ぐにじゃねえ。右へ、左へ、波打つように蛇行して迫り――そのままぐるりと背後へと回って逆手に持った両の木剣を牙のように振り下ろす。
狙いは先程の意趣返しじゃねえが、右の肩口――!

桜 緋彩 >  
木刀が青白く光る。
確か前に素手で立ち会った時も彼は放電していた気がする。
なるほど、発電か放電か、とにかくその類の異能か。

滑る様に高速で迫る彼。
左右に蛇行する様はまさに蛇のよう。
しかしその動きに惑わされず、目はしっかり彼の動きを追尾して。

「いい動きですね」

両手を振りかぶる頃には、こちらも振り向き彼に正面から相対している。
腰を落とし、両手で握られた剣。
刀身下げ、それを身体で隠すように後ろへ向ける、所謂脇構えと呼ばれる構え。
後ろ足で地面を蹴り、腰を回して速度を上げた剣が跳ね上げられる。
振り下ろされる左手の刀を弾き飛ばし、全く同時に右手の刀にも同じ衝撃がぶち当たった。

剣閃を分ける桜華刻閃流の剣技、嵐剣である。

武知 一実 >  
「まだ褒められる程の事はしちゃ居ねェ――よ!」

緋彩の振るう木刀と、オレが振り下ろす木剣がぶつかり帯電していた木剣から蒼白い火花が散る。
左手は弾かれて、右手にも同等の衝撃があるがさすがにこっちまで弾かれればお手上げ状態だ。隙を晒すにも程があらあ。
競り合いは捨てて右に腰を捻り、木刀の軌道から右の剣を外すと同時にしゃがんで足払いを仕掛けるが、そんな事ですっ転ぶような女じゃねえのは承知の上だ。

「次いで頭――磨疾雷(マシラ)ァ!」

オレが二刀を選んだ理由、普段の喧嘩闘法に限りなく近い動きが出来る事。
それを最大に生かすべく、手数と機動で挑む。
緋彩の動きから片時も目を離さず、打ち込み、弾かれ、躱し、跳び、屈み、あらゆる動作あらゆる角度からの攻防を仕掛ける。

運動量に応じて心臓の鼓動も上がり、四肢に送られる雷も増す一方で。
高揚する心と同時に冷静にこれまでの流れを見返す頭も働く。
今しがた二刀を弾かれかけた時は両手それぞれに同等の衝撃があった。
そしてその前は異様に重い一撃。複数の衝撃を一発にまとめたような――

桜 緋彩 >  
弾きを片方、しかも嵐剣の方を外された。
不可視ではないとは言え、初見で外すとは。
「やる」とは思ってはいたが、正直ここまでとは思っていなかった。
足払いは軽く脚を上げて外し、返事代わりに目を見開き、口の端をにい、と吊り上げる。
獣のような凶暴さが垣間見える笑み。

「良いですね。
 手数があり、しかも重さもある。
 鍛えればいい剣士になりますよ」

青白い閃光を走らせるような連撃。
右に左に上に下に、縦横無尽に駆け巡る雷光。
それをこちらは暴風のような剣捌きで応える。
受け、払い、弾き、逸らし。
彼の動きに合わせて多少の足捌きは見せるものの、ほぼ移動はせずに体重移動と剣捌きで対応してみせて。
しかも彼の動きを声に出して褒めて見せる余裕すら見せる。

「少し段階を上げますよ!」

宣言し、剣閃を一つ増やす
自身の腕で振るう剣とは別に、独立して別の動きをする斬撃。
単純に倍になった手数で彼の攻撃を捌きながら、こちらからも台風のような攻撃を加えていく。