2024/07/29 のログ
■夜合 音夢 >
「ブーストは触れるくらいから……少しずつ……」
音夢の中でダッシュと言えば強く地を蹴って踏み出すイメージだった。
それが最初の急加速に繋がったわけで、まずはその認識から改めていく。
逆に、クイックブーストは急加速を戦法に組み込んだもの。
この二種を使い分けることこそが鋼鉄騎兵を使いこなす上で最も重要と言えるだろう。
どのみち反動にも慣れなくてはならなさそうだ。
「常に動き続けるくらいの気持ちで……弾幕を絶やさない……」
マシンガンの命中精度に拘っても仕方無いという教えに従い、動かぬ的へとクイックブーストで急接近。
間髪入れずアーミーナイフを振り抜いて、両断された的が粒子となって消えてはまた現れる。
そんな基礎練習を何度か繰り返した後、いよいよNPCとの実戦トレーニングが始まった。
「んっ……教わった通りにやれば、負けないはず」
レーダーに表示された敵の反応と瑠音のナビゲートを頼りに探し出し、向こうもこちらに気付いて弾幕を展開してくる。
ナイトホークの装甲で正面から飛び込むのは自殺行為。
横から回り込むようにブーストを噴かせば、追いかけて旋回したところで捉えきれまい。
しかし『言うは易し、行うは難し』とはよく言ったもので……
「(近付くタイミングが掴めない……!)」
相手は重装甲、牽制用のマシンガンは悉く弾かれた。
虎の子のナイフでどこを急所と捉えるべきか、見定めようとすれば弾幕が迫る。
チャンスは一度きり。外せば蜂の巣は免れないだろう。
操縦桿を握る手に緊張が走る。
■黒羽 瑠音 >
「うん、期待してるぞ音夢くん、見事撃破してくれたまえ、なんてね♪」
複座のシートから音夢ちゃんの動きを見守る私、やっぱり近づいた時の感覚の良さは私より圧倒的に上だなぁ
鍛え方の違いだろうか、私ももうちょっと訓練メニューをがんばってもいいかもしれない……来週くらいから
「結構弾幕張るなぁ、私の時より難易度上がってるかも」
それもそのはずで、実は複座に人が乗っている、つまり教習中の場合、アドバイスを貰えるからか難易度がちょっと上がっている事を知ったのはこの後の事だったりして
「落ち着いて音夢ちゃん、相手の弾幕も無限じゃない、リロードの時間を狙うの、そして狙う部位は……」
「重装甲でも、全部の部位が均一な硬さって訳じゃない、どうしても脆くなっちゃう場所があるはずだよ、其処を狙って!」
例えば関節部位、或いは動力部がある部分、機体によって変わるけれど、ゲームとして成立しやすくするためか結構分かりやすく『弱点部位』というものは設定されているのがこのゲームだ
「音夢ちゃんならできるよ、絶対!」
その違和感を、音夢ちゃんなら絶対見つけられるはず――だけど、このくらいはいいよね?
ぽちっ、と画面を操作して、忘れがちなスキル『切り払い』を発動させておく、この手の機体には接近された時の悪あがき用のサブ射撃があるのがお約束だけど、チュートリアルの相手なら初期のレベル1切り払いでも十分対応できるはず……
■夜合 音夢 >
「…………(こくっ)」
集中力が高まり、アドバイスや激励の言葉にも首肯を返すのみ。
目線は常に敵の動きを追い、言われた通りに隙が生じる瞬間を探す。
重装機体だけあってリロード時間は長めだ。近付くには十分な猶予がある。
同時に、可動域を確保する為どうしても装甲が薄くなってしまう箇所の存在にも気付いた。
胴体と脚部を繋ぐ関節、その幹こそが敵の脊椎とも呼べる部位に違いない。
「(そこ―――ッ!)」
狙うべき場所が定まれば、あとは突貫するのみ。
敵がリロードのモーションに入ると同時にクイックブーストで肉薄し、アーミーナイフを構える。
しかし敵も馬鹿ではない。当然、接近に備えた武装は搭載している。
現実でも十分ありうる、というか音夢も採用している『仕込み武器』たるバルカンが、無防備なナイトホークに牙を剥く―――
"ギィィィインッ!!!"
音夢がバルカンの存在に気付いて身構えるより早く、瑠音が用意していた『切り払い』が発動。
激しい金属音とエフェクトを発しながら、致命的な射撃をナイフで往なした。
呆気に取られている場合ではない。すぐに切り替えて動けたのは日々の訓練の賜物か。
「はぁ……ッ!」
逆手に握ったアーミーナイフを関節部位へと突き立てる。
一度でも傷を付ければ、そこにマシンガンの残弾をありったけ叩き込んだ。
それまで微塵も削れていなかった敵の耐久ゲージがみるみる内に減っていき、やがて大破する。
派手な爆発エフェクトに合わせて飛び退けば、ミッションクリアを示す画面が映し出されるだろう。
■黒羽 瑠音 >
「よし、そこ…… おぉっ」
思わず身を乗り出しそうになる臨場感、之が複座の光景――これだけでも一緒に来た甲斐はあったかもしれない
だけど、音夢ちゃんにとってはこの先が本丸、さぁ……!
「上手いっ」
思わず唸る、あの動きならきっと『切り払い』が無くても致命は避けていたと思う、それでも自分の準備が役に立ったことは嬉しくって口元がにやついちゃう、見られてなくてよかったぁ……
「―― よし、これなら…!」
一度装甲が剥がれれば、特殊なスキルでもない限り修復は出来ない、後は消化試合――そう思った通り、音夢ちゃんは危なげなく敵を撃破した
『チュートリアルクリア―― ボーナスポイントを獲得します』
チュートリアルを勝利で終えた分のポイントが音夢ちゃんのカードに振り込まれる、之だけだとあまりできる事は無いけれど、こういうコツコツとしたポイント貯めが大事なんだよね
「おめでとーーー!」
後ろからぎゅーっと音夢ちゃんの首元に抱き着く、いやぁ、生徒が優秀でよかったなぁ、なんて冗談めかして言いながら
「どうどう、楽しかった?見てるだけでもたのしかったけど、自分でロボを動かすのって凄いでしょ!」
何て興奮冷めやらぬままに感想を聞くのです
■夜合 音夢 >
「はぁ、はぁ…………ふぅっ……」
無機質なアナウンスをどこか遠くに聴きながら呼吸を整える。
気が付けばゲームだということも忘れて熱中していた。
それほど没入感が凄まじかったということでもあり、VRゲームの持つ力を身に染みて実感する。
「わ……っ。あ、ありがと……」
半ば放心状態だったこともあり、後ろから抱き着いてくる瑠音にも無抵抗。
ほんのり汗ばんでしまっているようで、少し気恥ずかしく感じた。
「ん……すごい迫力だった。のめり込むのも分かる気がする」
そう答える様は、普段と比べてどこか高揚していた。
眼前まで迫ってくる立体的なグラフィック、臨場感のある音響、操縦桿から伝わる手応え。
視覚以外にも働きかけるリアルさがこのゲームの醍醐味なのだろう。
1プレイの区切りとして更新・排出された自身のカードを手に取って眺める。
「(……橘くんもAFに乗る時、こんな気持ちなのかな)」
ふと知り合いの顔が頭に浮かんできて、僅かに目を細めた。
■黒羽 瑠音 >
「ふふ~隙ありだぞ音夢くん♪」
ぎゅーっと抱き着きながらじゃれながら笑って
「でしょ?いやー音夢ちゃんにも伝わってよかった、それにやっぱり慣れるのも早かったし、これなら直ぐにでも実戦にでれそうだね!」
「はじめはフレンドIDで同じチームでやるとして……慣れてきたら対戦もいいね、とりあえず家庭用で練習するのもいいと思うけど……あ、コントローラーは私の貸してあげるから……おっと」
危ない危ない、思わずめちゃくちゃ早口になっちゃってた
こほん、と一つ咳払い
見れば音夢ちゃんは排出されたカードを手に取ってみていた
「ふふ、それが之からの音夢ちゃんの戦いの証、なくさないように、大事にしてね?」
何て、ちょっとだけ先輩ぶりながら自分のカードも構えて笑う
「さ、次の人もいる事だしでよっか、他のゲームもやってみてほしいし、音夢ちゃんのゲーセンデビューはまだまだこれからだよ?」
何て言いながら手を差し伸べる、そう、まだまだ楽しいゲームは一杯あるんだ、次は何をしよう、音夢ちゃんに決めてもらうのもいいかもしれない、なんて考えながら
■夜合 音夢 >
「瑠音に後ろを取られるなんて、私も修行が足りない……」
冗談めかして言いつつ、されるがままな辺り満更でもないらしい。
ついつい語りに熱の入る様を微笑ましげに傾聴する。
「ん……大事にする。
これがないと遊べないし、何より……瑠音との思い出の証でもあるから」
他人が思うより、このカードに対する思い入れは人一倍だ。
友達と初めてのゲームセンターで、印象に残るゲームを遊んで。
ここから他にも色々なゲームを遊ぶことにはなれど、一番の思い出として鮮烈に刻まれたのだから。
「他にもどんなゲームがあるのか教えてね、先輩」
小さく笑って、差し伸べられた手を取るのだった。
■黒羽 瑠音 >
「ふふ、私も日々成長してるんだからねっ♪」
そのまま仲良く筐体を出て
「―― ん、ふふ、思い出は之からも一杯出来るけど、そういってくれると嬉しいなぁ、えへへ」
何て、ちょっと照れ臭いけどまっすぐな音夢ちゃんの言葉にこっちもほおが緩んでしまう
今日は、今まででいちにを争うくらい楽しいゲーセン遊びになりそうだ
「おまかせあれ~~、じゃあまずはクレーンゲームから……」
ぎゅ、と繋いだ手を強く握って、ゲームセンターという戦場へと友達と共に立ち向かっていくのだった……。
ご案内:「常世島ゲームセンター/メタラグ筐体前」から黒羽 瑠音さんが去りました。
ご案内:「常世島ゲームセンター/メタラグ筐体前」から夜合 音夢さんが去りました。