2024/07/31 のログ
ご案内:「数ある事務所」にエルピス・シズメさんが現れました。
ご案内:「数ある事務所」にDr.イーリスさんが現れました。
Dr.イーリス > 客室に置いていたメカは、既に倉庫に移動し終わっていた。
イーリスの寝所は、今エルピスさんの私室だった。
黄泉の穴から帰った後、なんだかんだあってエルピスさんと相部屋する事になったのだ。

「ふきふき。窓も綺麗になりました」

そんなイーリスは、エルピスさんの私室をお掃除していた。
窓を拭いたり、雑巾がけしたり。
そんなお掃除も大方終わって、お部屋が綺麗になっている。

「使わせていただいているお部屋なので、せめて綺麗にしなくてはですね」

綺麗になっていくお部屋を見渡して、にこっと笑みを浮かべた。

エルピス・シズメ >   
 黄泉の穴から帰還後、紆余曲折を経て相部屋をすることになった。
 ソファーや倉庫で寝続けるのもと言うのもあり、思い切った判断だと思う。
 話の流れと勢いもあったと思う。

「うん、ありがとう。細かい所に手が回らなくて。
 とても助かってるよ。イーリス。」

 と言うこともあって、今は自分の私室にイーリスがいる。
 綺麗に掃除もしてくれて、相部屋をするにも十分な清潔感とスペースが保たれた。
 
「それで、えっと。地下室にある『エルピス』のことだけど……」

 そんなこんなで状況が落ち着いた。
 なので、この話を切り出すことにした。

Dr.イーリス > 「私こそ、エルピスさんにはお世話になりっぱなしですからね。お掃除ぐらいさせてほしいです」

きっかけは多分、イーリスが枕を抱いてエルピスさんのお部屋に訪れ、一緒に寝たいと言った事からだろう。
応接間のソファーで寝ていたけど、少し悪夢にうなされてしまったのだ。
お掃除も一段落ついて、ベッドに腰を下ろした

「棺桶型メカの保存性がばっちりとは言え、何日か『エルピス』さんを地下に安置したままでしたからね。私、『エルピス』さんの周囲に散乱していた書類もまだちゃんと読んでなかったです」

書類が入ったファイルは今、応接間にあったかな、と思い出していた。

エルピス・シズメ > 「そうかな。持ちつ持たれつな気もするんだけれど……。」

 くすぐったそうに、照れ混じりに笑みを零す。
 最近は自然とイーリスを頼りにすることが増えた気がする。そんな気持ち。

 『一緒に寝たい』と枕を持って訪れた時には驚いたものの、少し話を聞けば納得した。
 『イーリスが受けている呪い』は相当削られたとは言え、それの残滓はあるかもしれないし、
 そうでなくとも悪夢を見ることはある何かで夢見の悪さを引き摺ることもあり得る。

 一旦、隣り合うようにベッドに座る。

「そうだね。そろそろ『エルピス』のことも……ちゃんと弔わないと。大丈夫なら、イーリスの伝手を頼りたいけど……」

 今ここにいる僕は『エルピス』の再現や蘇生ではなく、『エルピスの想いを継承した僕の自我』として在ることを決めた。
 だから、その最後の務めとして、『エルピス』に別れを告げなければいけないと思っていた。
 
「書類も……先にイーリスが読んで欲しいな。まだ、ちょっと怖いから。」

Dr.イーリス > 「持ちつ持たれつと言ってくださる程お役に立てているなら嬉しいです」

目を細めて微笑んだ。

黄泉の穴から帰った日、あの日は呪いが時に強まる月夜だった。
エルピスさんが呪いを分かち合ってくれたから、イーリスも大分楽になっていたとは言え、それでもロッソルーナの状態になったり、呪いがイーリスを蝕む事もある。
あの日、枕を抱いてエルピスさんのお部屋に訪れた時にはロッソルーナ状態は解けていたけど、それでも悪夢に脅えてしまってはいた。

「私の知り合いでしたら、慰霊祭の時に訪れたスラムの教会ですね。穴から帰った後に、少し神父さんと相談していたのですよ。弔ってお墓を立てていただけるようです」

『エルピス』さんを弔いたいと思い、神父さんに相談を持ち掛けていた。
神父さんは、教会を頼ってくれるなら快く引き受けてくださる意向を示してくれた。

「分かりました。まず、私から読みますね。この島には『エルピス』さんの知り合いもいるのでしょう……」

『エルピス』さんはこの島で公安として、便利屋として活動していた。その時の知り合いも、いる事だろう……。

エルピス・シズメ >  
「うん。少なくとも電子的なセキュリティもだし、この子も……」

 少し動いて、サーキュレーター型の冷房メカの位置を調整する。
 落第街で冷房を効かせられる環境はとても恵まれている。

「お願い。……『エルピス』も喜ぶと思うから。」

 見方を変えれば『エルピス』は己の死を選ぶことを認めたとも言える。
 『僕』/『エルピス』の選択が間違いでないと気持ちに整理を付けるためにも、丁寧に弔いたい。

「……そうだね。居ない訳じゃない。だから……近々『エルピス』の知り合いに、報告しようと思ってる。」

 胸が締め付けられるような痛みを覚え、俯く。
 そうすることは決めた。ただ、どんな顔をして会いに行けばいいのか分からない。

「でも、傍からみたらエルピスは僕が殺した、って思われてもおかしくないから。」
「……どんな顔で行けばいいかは、分からない……。」

 表向きには『名前』が違うとは言え、一定の事情を知る者にとっては同一人物による生死不明の人間の死亡報告。
 周囲の人間がどう見るかは、自分の決意とは別にあるものだ。

 

Dr.イーリス > 「そういえば、洗濯機も完成しましたね。今朝、脱衣所に設置しました」

ドラム式洗濯機で、比較的スペースを取らないタイプのもの。
この事務所にまだ洗濯機がなかったので、造ったのだった。

「……分かりました。葬儀も行ってくれるらしいです。後ほど、『エルピス』さんを教会にお運びしましょう。その前に、《感情魔力混合炉》は外さないといけませんね」

『エルピス』さんの黄泉の穴に落ちて、悲痛の死を迎えてしまった……。
それでも、『エルピス』さんが亡くなるまで必死に守り抜いたものは、ちゃんと『エルピス』さんを受け継いでいる。
ちらり、エルピスさんを見る。
『エルピス』さんが守り抜いた“子”が今こうして元気に暮らしている。

「……やはり、『エルピス』さんの知り合いに死を報告しなければいけない、という話になってきますよね」

とても辛い役回りだ。
ただでさえ、エルピスさんは過酷な事実に酷くショックを受けていた。
だけどそれで終わりではなく。『エルピス』さんが亡くなった事を伝えるという残酷な役目まで残されている……。
そっ、とエルピスさんの体に両手を回す。

「……エルピスさん。事情をちゃんと……伝えればいいと思います……。ちゃんと伝えれば……きっと、分かってくださいます……。あなたは、『エルピス』さんを継いだ“子”です。あなたは望まれて生まれました」

事情はとても複雑で、それはもうどんな顔をして『エルピス』さんび¥の知り合いに会いにいけばいいのか分からなくなるのも道理だ……。
だから、事実をちゃんと伝えるしかない……と思う。ちゃんと伝えて、分かってもらうしか……。

エルピス・シズメ >  
「うん、確認したよ。3人分の服を手洗いはちょっと大変だったからね。
 洗濯機も買うとものすごく高いし……すごく助かる。」

 極力不安にさせないように振舞っているものの、金銭状況はあまり好くない。
 当然家電を買う余裕はない為、イーリスが造ってくれる家電は重宝している。

 イーリスが造る機械にはたまにすごい機能が付いているものの、
 彼の感覚は慣れによって大分麻痺してしまっている。ツッコミや改善案は、きっとナナに偏るだろう──。

 それはそれとして。

「そうだね。あればかりは外しておかないと。
 ……僕の異能は、エルピスの身体や炉まで再現できるものでも、ある、か。」

 あの炉は危険なものだ。
 彼が本来装備していた炉はイーリスに託したままだが、『エルピス』の炉は損傷した状態で嵌め込まれている。

 イーリスなら破損状態な炉も適切に抽出できる筈だ。
 彼女への強い信頼と、自身の異能の異様さを確かめるように呟いた。

「継いだ以上は、やらないとね。」

 暖かい両手の感触に身を委ねる。
 一人では抱えきれない僕自身の不安を、イーリスに助けられることが凄く多い。

 ……純粋に、嬉しく思う。
 
「うん。正直に、死亡した事実を伝えて、受け止める。」

 知り合いも伝手も多くはない。
 何も言わないで過ごすことも考えなかった訳ではない。
 だけど、向き合うと決めた以上は最後まで向き合う。

(自己満足、かもしれないけど。)

「……僕はエルピスを継いだ"子"で、望まれて生まれてきた。」
「これからは過去じゃなくて未来を向くためにも、ちゃんとやる。」

「これは『僕が未来を向くための試練』だと思うから。」

Dr.イーリス > 「そうですね、手洗いは大変でした。洗濯機に関する注意ですが、トルネード・サイクロンという機能を使う際は気を付けてくださいね。洗濯機から水流を渦状にびゅうううん!! と発射する機能なのです。有効に活用してくださいね。水流に飲み込まれたら危険なので、そこは要注意です」

楽し気に機能の説明をする。
基本は普通の洗濯機。
トルネード・サイクロン機能はなんと、洗濯機から水流を発射して洗うというダイナミックな洗濯方法を取る。脱衣所は水浸しである。

「『エルピス』さんを教会へとお運びする前に、炉は外しておきますね。炉まで継承してしまうのですから、受け継ぐ能力は凄いです。エルピスさんが炉を継承した事で、二つの炉がありますね。エルピスさんの力をグレードアップできそうです」

グレードアップ、とう話でイーリスはメンテナンスの話をふと思い出した。

「先日、私の呪いを弱めて方がいたのです。連動して、エルピスさんの呪いも弱まったりしてませんか? 呪いもかなり弱まりましたので、現状爆弾が爆発するリスクも大幅になくなりました。感染爆発を危惧してあまり落第街から出なかったり人が多くいるところは避けてましたが、もうその必要もなくなりましたし、私の仲間達にも再会しに行こうと思うのです。そうなれば私のラボにも戻れる事になりますので、エルピスさんの義肢のメンテナンスもできますね。一応、この事務所の設備でメンテナンスをできるようにはしてたのですが、ラボの方が設備が整っているのでそちらで行った方がいいでしょう」

呪いの方は、解呪に向けて進展していた。
蒼さんが呪いの一部を壊してくれて、呪いの効力がまた弱まったのだ。
ここまで弱まりリスクが軽減すると、呪いの爆弾が爆発する恐れも当面なくなっていく。

「そうですね……。前を向いて、あなたと一緒に歩めていけたらと思います。もし、伝える勇気が湧かなかった時は……あなたは一人ではないという事を思い出してみてください」

ぎゅっ、とエルピスさんを抱きしめる。
『エルピス』さんの知り合いに真実を伝えにいかなければいけなくても、エルピス・シズメさんは一人じゃない。
これから。エルピスさんと未来を剥いて歩いていきたい。

抱擁を解いて、軽くエルピスさんの背中を押すように叩く。

「だから、挫けてはいけません。頑張ってください」

エルピスさんの背中を押して、微笑んだ。