2024/08/01 のログ
■エルピス・シズメ >
「えっと……うん。使う時は気を付けるね。」
"迎撃機能かな……"なんて内心で思いつつも、
今日もイーリスが楽しそうなので良しとした。
「確かに2つあれば、色々出来る。……そうだね、1個を使い潰しても問題なくなるから、遠慮なく使って、イーリス。」
上手く使えば強大な力になる。
グレードアップにもなるし、バックアップとしても有効だ。
少なくとも彼はそう認識した。
「イーリスの呪いが更に弱くなったんだ。それなら……安心して仲間に会えるし、ラボにも行けるね。」
「メンテナンスもラボでやって貰った方がよさそう。腕も少しガタがきてるし、"成果物"のことを考えると腕以外も……」
義腕を動かす。
実の所は"大分"ではあるのだが、不安にさせないようにおくびにもださない。
「……ただ大がかりになるだろうし、今は僕の身体よりイーリスの強化が優先かな。
王には勝たないと。あと、呪いだけど……」
言うかどうか迷ったが、戦局に関わることだ、正直に告げる。
「"少しおかしくなった"。……何と言うか、残滓みたいのが紛れこんだ。
今の所問題はないけど、どんな弱め方をしたのか聞いてもいい?」
エルピス自身も気になっていた。
呪いで繋がっていた影響が歪に出ているような、何とも言えない感覚。
エルピス自身が呪いを受け持つことを『不要』ではなく『必要な役目』と認識していたのも、あるかもしれない。
「……そうだね。僕は一人じゃない。一人でやるべきことはあっても、独りではない。」
イーリスの言葉はすんなりと受け入れることが出来た。
かつてある教師から聞いた助言を思い返すものであったから。
(『決してそれは一人であっても"独り"のものではない』。)
(ファレーマン先生の言ってたこと、あの時は呑み込めなかったけど……)
抱擁の後、背中を叩かれた。
その柔らかい力が、優しくも頼もしく感じた。
「がんばる。……ありがとう、イーリス。」
■Dr.イーリス > トルネード・サイクロン機能が迎撃機能なんて微塵も考えていなかったイーリスだった。
「『エルピス』さんから受け継いだものという事に加えて、あれだけの高機能な炉ですから、有効的に活用するべきではあっても潰してしまうのは勿体なくはありますよ……」
バックアップは良いとしても、使い潰すという使い方には首を横に振ってしまった。
せっかく受け継いだ物なのだから……。
「エルピスさんが望むのでしたら、メンテナンス時に炉を二つ搭載できるよう改造を施せるか確かめてみてもいいかもしれません。実際に改造が出来るかどうかは義肢の構造を見ないと何とも言えませんけどね。そうですね、書類にエルピスさんについて詳しく書かれているかもしれませんし、それを読みつつ色んな所メンテナンスしていきましょう」
腕を動かすエルピスさんを眺め。
「見た所、腕は結構ガタがきているようですね……」
メカの開発に携わっているのだから、機械がどのような状態なのかは目で見て把握できる。
「お心遣いありがとうございます。“王”と戦う準備は大分整っていますからね。先日、私を鍛えてくださったとても親切な方がいらっしゃったのですよ。あの方のお陰で、私、“王”に打ち勝つ自信を持てました」
イーリスの方は、“王”との戦いを待つだけの状態。
エルピスさんから託された炉は、ちょっと特殊な形で搭載しているけど馴染んでる。炉を使った“王”を倒す手段も編み出した。
「残滓が紛れ込んだとはどういう事なのでしょう……。この島には神様もいらっしゃるじゃないですか。風紀委員に属する破壊神の方に、解呪の魔法で呪いを一部壊してくれたのです。私の呪いが弱まれば、それに伴ってエルピスさんの呪いも弱まると思っていたのですが……」
残滓が紛れ込む、というのはどういった状況なのか分からない……。
「その意気です、エルピスさん。『エルピス』さんの死を伝えにいくのは辛い話になりますので、楽しい話もしましょう。せっかくの夏です。二人で夏らしい所に行きませんか? 私、ずっと落第街にいたのですが、表では海開きしているらしいじゃないですか。最近はリゾート施設が開業したとも聞いています」
辛い事が終わったら、楽しい事があってもいいと思う。
世間は夏休みで、常世の人々も夏を満喫しているのだろう。
「応接間に書類取ってきますね」
そう言って一旦部屋を出て、書類が入ったファイルを抱えて再びエルピスさんの横に座った。
■エルピス・シズメ >
「もしもの話。でも、確かに使い潰さなくて済むならそれが良いね。」
「2つの設置は……僕に使いこなせるかどうか不安かも。あるいは武器に搭載する方がいいかな……」
少し悩む素振りを見せた。
感情魔力混合炉は高出力であるが故に、1個あたりのキャパシティも大きい。
それゆえに、『2つ』を使いこなせるかどうかに迷いがある。
「ううん。イーリスの目は誤魔化せないね……。」
"やっぱり"と、隠し事がばれた子供のような苦笑い。
動かす際にも、軋む音が聞こえていたかもしれない。
「それなら準備万全かな。後はどうやって見つけ出すか、か……」
少し悩む。
比較的静かな王の動きに何となく嫌な予感がするが、出来ることはない。
「呪いって言うのは真っ当に解呪すると『返る』側面があるからね。
解呪の際に、行き場を失った呪いがこっちに来たのかも。」
「と言っても誤差かな。行き場のなくなった想いを少し受け止めた程度。
解呪そのものが成立しているなら、影響力自体は減っていると思う。」
彼なりの見解を口にする。
結局のところ、行き場のなくなったものを少し受け止めた程度。
エルピス自身が受け継いだものが『殺害欲』だったため、影響力の緩和を認識し辛かった面もある。
「本来は、この手の残滓も炉にくべられるんだけどね。」
つまるところ"継ぐ"方法を択んだ故に、行き場のないものを継いでしまった多少のバグだ。
「いいね。折角の常世の夏だもん。海やレジャー施設。色んな所に遊びに行こう。楽しい夏も満喫しなきゃ。」
苦労の果てに、楽しいことがあってもいい。
そのためにバイトも増やそう、と日常での戦いも決意するエルピスであった。
「うん。お願い。」
書類を取って戻ってみると、眠たげなエルピスの姿が見える。
「……んぅ、おかえり、イーリス。」
■Dr.イーリス > 「使い潰すのはともかく、バックアップという考えは良いと思いますよ。武器に搭載という手もありましたね。エルピスさんにお借りしている炉は、普段はキャパシティオーバーにならないよう蓄積モードとなるだけで、エネルギー放出しない仕組みを取っていますね」
“王”との決戦用を想定して搭載した炉なので、日常で稼働しないようにしていた。
現在、イーリスの心臓近くに炉を搭載した《パンドラ・コア》が埋め込まれている。
今は詳細を省くとして、この技術を応用すれば炉を二つ搭載という事もできると一瞬考えたけど……そもそも後から色々カスタマイズできる想定で自分で体を改造したイーリスに対して出来たところで、エルピスさんに応用できるか分からない……。
「あなたの腕が心配です……。出来るだけ早く、メンテナンス出来る状況を整えておきますね」
腕のメンテナンスを依頼なされてからもう随分と時間が過ぎている。
イーリスも、早くエルピスさんの腕をメンテナンスしないといけないと思っていた。
「探す方法ならなくもないですね。呪いはただ掛けられて終わりではなく、“王”の方から干渉してきていますからね。やり方次第で逆用も可能です。“王”が次に呪いに干渉した時がチャンスとなり得るでしょう。こうも長く呪いに掛かっているものですから、研究も随分と進みましたよ」
“王”から干渉されない間は待つしかないけど、もし“王”が何らかのアクションを仕掛けてきたのなら、逆探知する準備を整えていた。
呪いを利用する事になるなんて、皮肉な話ではあるけど。
「……それって、エルピスさんの方に私の呪いが移ったという事でございますか……。そう……ですね……。私の方に解呪が施されたなら、呪いがエルピスさんの方に逃げようとするのは考えられる事だったのかもしれません……」
顔が青ざめる。
イーリスは呪いの苦しみから逃れた理由は解呪だけではなく、それにより呪いがエルピスさんの方へと逃げている事も含まれていたという事……。
道理で、イーリス側は随分と楽になったわけである。
「……申し訳ございません。また、エルピスさんに呪いの一端を背負わせてしまっているみたいですね。解呪は確実に成立していますから、殺害欲も減少してはいると思います」
蒼さんはとても優秀な解呪の使い手だった。例えエルピスさんに呪いが移っても、その影響が小さく済むのはその解呪の腕の賜物なのだろう。とても助かった。
しかし、下手に解呪をすればエルピスさんに呪いが流れていくリスクを考慮しないといけない……。
「夏を楽しみましょう。楽しむには……お金、いりますね。お金……。私、お世話になりっぱなしですからね」
また青ざめてしまった。
イーリスも稼ぎ口を探さないといけないと思っていたところだ。
「……スラムの不良少女ですからね、面接もあまり受けられないです……。面接もばっちり通るバイトメカみたいなのを造って代わりにやらせましょうか。いえ、それは凄く不正してますね……」
やがて書類を持ってきて。
「ただいまです。エルピスさん、今日はもう眠たそうでございますね。私も少し眠気が……。書類に目を通すのは後日にしましょうか」
書類を机に置いて。
■エルピス・シズメ >
「なるほど、それなら……」
"出来る"。イーリスが僕の託したものを十二分に使いこなしてくれていると思うと、再び口元がゆるんだ。
「ありがとう、イーリス。……もう、英雄開発プロジェクトは止まっているからね。」
他にアテはない。
見栄を張ることを止めて、正直な不安を吐露した。
「次が勝負所だね。……どこまで王が見据えているか分からないけれど、勝とう。」
逆探知で捉える準備も出来ていると聞けば、後はイーリスが勝つと信じるだけだ。
少なくともこのエルピスは、そう思っている。
「そうだね。"破壊神"を名乗っているのに解呪の魔法を使ったのは、それだけ丁寧に扱ってくれた証だ。
イーリスが腕の良い風紀委員に出会えて、良かったよ。それに……呪いも想いの一つ。受け止めることには慣れている。」
だから何の影響もないと、イーリスを安心させようとの意思を示した。
「ナナちゃんも頼って一緒に便利屋をしても良いかも。メカを売るだけでもお金にはなると思うけど……」
「でも落第街の地獄の門では働いて欲しくないな。給料は好かったけど、イーリスがセクハラされる所を想像したくないし……」
何かあったのだろうか。
明るい顔から一転して険しい表情になった。
「そうだね。あしたにしよう。先に見てもいいけど、今日はこのまま寝ようか……」
ごろん、と、ベットに横になった。
微睡むエルピスの瞳はあどけなく、見た目相応の可愛らしさを強調する。
■Dr.イーリス > 微笑んでみせて。
「私にお任せください」
それは、エルピスさんを不安にさせない自信に満ちた言葉だった。
エルピスさんの腕の動きで不具合がある事は把握できる。構造を把握すればきっと直せる。
「必ず勝ちます。ここまで呪いを弱めたのだから、そろそろ“王”側からアクションを起こしても良い頃合いですね」
力強く頷いた。
エルピスさんが呪いを分け合ってくれて、蒼さんが呪いを弱めてくれた。
それだけされて“王”のアクションがないというのは考え辛いだろう。
そろそろ、何かしら仕掛けてくると踏んでいる。
「何でも破壊できる破壊神みたいですからね。呪いも壊せるか聞いてみたら、凄い事に壊せてしまったのです。さすが神様。それはそれとしても……あなたがその呪いの想いで傷つくのは、私が耐えられませんよ……。あなたの呪いを解くためにも、早く“王”と決着をつけます」
エルピスさんの胸に、自身の頭を寄せた。
心配にもなってくる……。
今は炉もイーリスが借りている状態だ……。
ただ、エルピスさんのためにイーリスがやるべき事が明白なのも確かである。
“王”倒せばいい。それだけ。
「便利屋の再開、いいですね。三人で便利屋をすれば、きっと楽しいです。でも、ここの資料を漁っていたらレンタル彼女やレンタル彼氏と出てきましたよ……。あれはなしにしましょう……。エルピスさんは私だけのものです。メカを売る、というのは考えた事がなかったですね」
単にお金どう稼げばいいかで悩んだだけだったりする。
楽しい話をしていたら、お金が必要な事に気づいてしまった故。
「地獄の門はあまり訪れた事がないのですが……そのような事をされるお店なのですか……。あれ……? どうしてエルピスさん、そのような事を知っているのでしょう……? セクハラされたのですか……!?」
心配げな視線をエルピスさんに向けた。
「私も、今日は寝ましょうか」
エルピスさんの横で、イーリスも寝転がる。
どこか可愛らしくあどけないエルピスさんを眺めて微笑み、エルピスさんの右手を恋人繋ぎしようとする。
「おやすみなさい、エルピスさん」
■エルピス・シズメ >
「そこ、なんだよね。『解呪』と『破壊』は違う。」
「でも、イーリスは解呪の魔法と言った。」
「だからこそ……凄い人だよ。その人。『破壊神』なら、破壊で済ます楽な道もあったはず。」
「また今度、その人の事を聞かせてね。」
『破壊する』選択肢もあったのではないか。
そうせずに、丁寧な解呪を選んで結果を果たした。
エルピスはそのことを好く思っている、らしい。
「ありがとう。でも焦らないで。」
寄せた頭を抱き留め、安心させるようにそっとに左手で髪を触る。
自分がここに元気でいることを示し、心配はさせまい、と。
イーリスが書類を取りに立ち上がるまでは、そうしていた。
「う、レンタルのそれは無しにしよう。……僕もやだ。
……地獄の門は、うん、お給金が良かったから……どうしても客層も……」
少しだけ遠い目をした。
その時はそれだけで済むのなら……と思ったが、今は別。
戻ってきてみれば、二人ともお眠な状態。
一緒に寝転がって右手を恋人繋ぎで繋げば、幸せそうに笑った。
「うん。おやすみ、イーリス。」
そのまま眠りに落ちる。
ぐっすりと、幸せそうに眠ったことだろう。
ご案内:「数ある事務所」からエルピス・シズメさんが去りました。
■Dr.イーリス > 「……普通に言葉のあやかもしれません。呪いの破壊も、解呪の一種にはなるでしょうから、混合して言ってました。誤解を招く言い方をしてしまい、申し訳ございません。はい、破壊神はとても楽しい方ですからね、またお話しますね」
破壊神の蒼さんは、何でも壊せると言っていた一方、壊す事しかできないとも仰っていた。
なら、呪いは壊す事で削り取られたという事になるはず。
破壊の能力は確かではあるとイーリスも実際に目にしているけど、丁寧さは、面倒くさがりなところが見られる蒼さんの性格からどうなのだろうという疑問はなくもない。
なんだか神様とは思えないぐらい愉快で楽しい方ではあって、イーリスも凄く好感を持っている。
「ありがとうございます、エルピスさん」
頭を抱き留めて髪を触れていただけて、イーリスは安堵や安心感を覚えた。
ちょっとだけ頭をすりすりとして、甘えてしまったりもしてしまい。
「あのお店は落第街の人達が来ますからね。情報収集などには便利でもあるそうです。……もうあんなお店で働いたらいけませんからね……」
セクハラさせるようなお店に想い人を働かせるわけにはいかない……。
そうして、二人は眠りについた。
恋人繋ぎで、幸せに笑い合って、夢の世界に落ちていく。
その日、イーリスが悪夢に苦しめられる事はなかった。
ご案内:「数ある事務所」からDr.イーリスさんが去りました。
ご案内:「駄菓子屋『おおげつ』」に宇賀野 実さんが現れました。
■宇賀野 実 > 「ええと、今日入荷したのはこれとこれで…。」
がたごと。段ボールを開けて、仕入れた物品を確認する。
駄菓子屋とはいうものの、お店に並べるのは駄菓子だけではない。
簡単なおもちゃや魔術素材なんかも取り扱っているのだ。
…正直な話、駄菓子だけではやっていけないのである。
「あっ、アサルト水鉄砲だ。こっちは自動拳銃型、ショットガン型か…。
いやあ、男子たるものこういうの見るとウキウキしちゃうね、いっぱい並べちゃおう。」
蛍光色の銃らしきそれは、一目でおもちゃとわかるデザインだ。
店内にぶら下げるような形で並ぶと、銃砲店……には見えない。
「あとは…ドリンクが良く売れるのとー、すももも凍らせてあるやつが
ストックがないから追加して、と…。」
冷たい飲み物、そして氷菓子。 暑い夏の必需品である。
あえてチープな楽しみを得たい人にも、こういったものは人気があるのだ。
「それから、昆虫採集セット…虫かごと、虫取り網と…。
あ、トコヨオオクワガタ用の拘束符もだね。」
夏休みといえば昆虫採集である。 常世島には普通の虫もいるが、
そうでない虫…上位のそれを狩ろうという人もいるのだ。
「これは…頼んだっけ? ねこちゃんなりきりセット」
可愛らしい猫耳と肉球、そして首輪がセットになったそれ。
発注した覚えもないが…とりあえずお店に並べておこう。
■宇賀野 実 > 「よし、と! 今日もがんばるぞ!」
自分に気合を入れ直してから、お店の外…。
目立つ所にゲーム機とトレンドの商品(今は水鉄砲だ)を置いたら、
開店準備は出来上がりである。
派手な呼び込みで売れる製品が置いてあるわけではないし、
なにより今は夏休みなのである。 生徒たちが来る時間もまばらだ。
「冷房はちょっと強めにして、と…」
自分の服もあるが、なにより来てくれたお客さんが安らげるように
室温もきっちりと涼しく準備する。これでよし。
■宇賀野 実 > 遠くから生徒たちの楽しげな声が聞こえて来る。
セミの鳴き声、車の走る音。
エアコンの低い唸りと、それに呼応するかのような風鈴の音色。
のんびりと過ごしていると次第にまぶたが重たくなってくる。
気づけば身体を丸めてその場でうとうととしはじめるのでありました。
ご案内:「駄菓子屋『おおげつ』」から宇賀野 実さんが去りました。