2024/08/12 のログ
ご案内:「永遠夜の幻終」に紅き月輪ノ王熊さんが現れました。
紅き月輪ノ王熊 > この日を、どれだけ待ちわびただろうか。

あの日。
宇宙の中で一番美しい者と出会い

殺さずに敢えて生かした。
呪いをかけた。
仲間を連れて戻ってこいと言った。

だがどうだ、

彼女は死ななかった
仲間を殺す事もなかった
呪いを打ち破ろうとした。



さあ―――
永遠夜の再現と行こうじゃないか。

紅き月輪ノ王熊 > 王は語る。呪いが語りかける。

「イーリス。いるんだろう?」

「ステージへ、上がってくれ。」

「プロポーズに最高の景色を用意したんだ。」

「終わりなき紅き月夜。」

「幻月が織り成す無限の夜。」



「キミが死ねば、紅き永遠夜を背に王様と王女様の結婚式だ」

「王様が潰えれば、永遠夜は幻と消え、再び朝日が昇ることになるだろう」

ご案内:「永遠夜の幻終」にDr.イーリスさんが現れました。
Dr.イーリス > 紅き月に照らされた廃ビルの屋上。

メカニカル・サイキッカーが左腕でイーリスを抱えて、ステージに上がる。
イーリスの腰には普段ない小太刀の鞘。メカニカル・サイキッカーは改造が施されて腕が四本になっており、その漆黒のアンドロイドの腰には剣が三本差されている。

以前、イーリスは“王”により、メカと離されてしまった経験がある。その対策とも言えるのがメカニカル・サイキッカーがイーリスを抱える事だ。
イーリスは“王”を凛と見据える。

「ごきげんよう、《月輪の王》。噂に聞く《三大獣害事件》、《永遠夜》でございますか。今日もまた、お月様が不気味で綺麗ですね」

月に対しての皮肉。それは《月輪の王》への皮肉でもある。

「そうですね、とても禍々しくて素敵な景色ですね。花束を投げ返して帰りたくなります」

薄っすらと微笑む。
結婚式など出来ない、させないと言わんばかりに。

「十年前に、あなたは《永遠夜》を引き起こしました。さて、あなた程の者がどのようにして亡くなってしまったのでしょうね?」

紅き月輪ノ王熊 > 「あっはっはは!!月が綺麗だねと言ったら、キミは不気味だと嗤うのかい?」

王は少しばかり、寂し気に呟いた。
ステージに上がった彼女―――。

「一段と美しくなったね。あの時―――キミを逃がしてよかった。」

心からそう思う。
黒き機械に抱えられた少女は、
この世のものとは思えぬ美しさがある。

結婚式(殺し合い)の前に…少し昔話をしようか。」

キミになら、聞いてもらいたい。
最高の敵であるイーリスに。

「王様はね、あの時、勝利が素晴らしいものだと信じて疑わなかった。」
「王様は、永遠夜を起こし、数多の仲間を得て、数多の敵を葬った」
「王様は、ある時、大勝利を収めた。」

「だが」

「戦いの中で敵も、味方も喪った。」
「その時、」
「全てつまらなくなったんだよ。」
「生きる意味を失った。」

王は口を開き、思い出して語る。
そう
永遠夜は

"月輪の王が討伐されていないのに"

終わったんだ。

そこで一度、言葉を区切った。

Dr.イーリス > 「お月様はとても神秘を感じて、好きですよ。綺麗なお月様があなたに汚されて可哀想ですね。月の女神様もさぞお嘆きの事でしょう」

月は、素敵だ。
白く、美しく、その神秘性は好奇心を擽られる。狂気の象徴とされるのも神秘故だろう。
《月輪の王》は、そんなお月様を禍々しく変える。

「お褒めいただき光栄です。あなたに逃がされたお陰で、人生で二度と体験できない苦しみを味わったのはあなたのお望み通りの事でしょう」

苦痛を味わいはしたけど、イーリスに手を差しのべてくれた人、助けてくれた人、いっぱいいた。
“王”に冷たい態度で接するイーリスだったが、あの日に“王”に敗れて呪われたイーリスを助けてくれた人達を思い浮かべて、イーリスは表情が緩む。
エルピスさんには何度も命を救われたし、手紙さんや蒼さんはイーリスに掛けられた呪いを弱めてくれた。ナナさんはイーリスが困っていると凄く親身に助けてくれた。ギフターさんが課してくれた試練で、イーリスは弱くても……強くなれた。湧梧さんに貸していただいた武器があれば、“王”を討てる。

(皆さん、ありがとうございます……)

柔らかく微笑む。
みんながいてくれたから、イーリスはここまで立ち上がれた。

そして、“王”を凛と睨む。

「昔話ですか。あなたも生前の思い出に耽る事もあるのですね」

かつての戦いの話。
《三大獣害事件》の《永遠夜》で、多くの者が亡くなり、そして多くの敵が討伐されたと聞いている。

「生きる意味を失った。まるで、自殺前のうつ病患者ですね。よもや自害して、わざわざ紅き屍骸になったとは言いませんよね?」

“王”に対しては、イーリスは辛辣だった。
まるでストーカーのような言動、いや、まるでとつける必要はないかもしれない……。
あの日に不良仲間を大量に殺害されイーリスを呪っただけではなく、イーリスが愛するエルピスさんをも苦しめた。
凄く嫌いだし、許せない相手でしかない。

紅き月輪ノ王熊 > 「美しい―――月よりも美しい。
故に、キミは立ち上がり、キミに色んな人が手を伸べたのだろう。
分かるとも。」

多くは語るまい。
だが、この場に立っているというのは―――それが理由だ。
その柔らかな微笑みがどれ程美しいのか。
言葉にするのは最早烏滸がましい。

「あーっはっはっは!いうねえ!イーリス!」

冷たくあしらうような辛辣なる反応も、王は想定内だったようだ。
嬉しそうに言葉を続ける。

「そうさ。王様はあの時、ある種鬱病みたいになっていたといっていい。」
「何もかも喪った。」

「その時、王様の前に―――」

>  


  ザザッ… ピーーーー ザザッ…


 

紅き月輪ノ王熊 > 一瞬。
辺りが紅くなった。

「―――そして王様は理解した。」
「紅き屍骸になれば、良い事しかないと!」

「ま、キミが言うとおり、自殺さ。」

「王様は―――生きる意味を得るために命を差し出した。」

「そして」

「王様は理解した」

「今日この日の為に、キミに会うために、命を差し出したのだと!!!」

情熱的な言葉を、投げかける。
きっと冷たくあしらうだろう?!でもそれでいいのさ。



殺して王女様にするんだからねッ!

Dr.イーリス > 「そうですね、私はみんなに助けられました。私を助けてくれた、私が愛したエルピスさんをよくも苦しめてくれましたね、《月輪の王》……!」

鋭く、“王”を睨んだ。
“王”はエルピスさんを襲撃し、そして呪いをかけた。
イーリスの大切な人を狙ってくるのは、さすが最悪な悪辣さだ。
気に入らない。

「うつ病の末に自害して、紅き屍骸に堕ちてしまったのですか。話を聞けば、あなたも随分と人間味がありますね」

辺りが紅くなったのをイーリスは見上げるも、すぐ“王”に視線を戻した。

思い切りがいい、というのは少し違うだろうか……。
うつ病を拗らせて自害したのだから、その感情は随分とネガティブである事が想像できる。

「では今日この日に備えた私のためにもう一回命を差し出して永眠してください」

当然のように、物凄く冷たくあしらった。

「そもそも、私は非道な大事件を起こした末にうつ病を拗らせて自害し、その上ゾンビとなってストーカーするような殿方は趣味ではありません」

紅き月輪ノ王熊 > 「ん?ああ、エルピスきゅんね!」
「頑張ってる彼氏君に、愛情いっぽ~ん!って思ってね」
「キミの作ったメカを投げつけたりしてみたんだっ♪」

途端におどけておっちゃらける。
イーリスの話は真面目だが、彼については…初めて会った時と同じくらいふざけている態度。
気付くかもしれないが。王は、普段はこうらしい。

「なんかイーリス。王様の事良く調べてるねぇ~!」
「好きの反対は嫌いじゃなくて無関心ともいうし」
「ほんとは王様の事すきなんじゃないのぉ~!」

王は、滅茶苦茶嬉しそうだった。

「永遠に夜が続くか?」
「永遠の夜が夢幻へと消えるか?」

「それはこの世の戦いが決める事だろう!!」



「おぉ~っと!イーリス!」

「ここでキミにサプライズだ!」

「多分キミのお友達からオドロキのお便りだよ!」

「ご紹介しよう!」

> 「迷惑なんだよ死にぞこない!」

「死んでる癖に生きてる2人の邪魔すんな!」

紅き月輪ノ王熊 > 「だーってさ♪」

その声には、少女の方には覚えがあるかもしれない。
まるで他人事のように嗤う王。だが…?

「おや…?」

………違和感。
今、イーリスに向いているスキを突かれたか?

「ま、いいや。ソッチはソッチでやっといてもーらお♪」

向き直り、お便り紹介のコーナーを終わった。

Dr.イーリス > 「……!? エルピスさんは酷く重傷を負っていて、義手義足も壊されていました……。私のメカを使っていたのですね。よくも……!!」

気に入らない、嫌いな“王”に冷静に皮肉を言っていたイーリスだったが、眉をつり上げてしまう。
あの日の戦いでイーリスの不良仲間が大量に殺されてアンデッドになったが、その時に“王”との戦いに備えて造っていたメカをも随分と持っていかれた。

「あなたの事は嫌いです! 宿敵のデータを集めている事を好意だと感じるなんて、死亡しているのに都合の良い脳をしていますね……!」

嬉しそうな“王”に、イーリスは腹が立った。

「夜はいずれ終わり、朝がくるものです。それは今日も変わりません」

そんな時、聞こえてくるナナさんの声。
その声は竜の咆哮のようでもあった。

「ナナさん……!!」

ナナさんのお声を聞き、“王”のペースに流されて冷静さを失っていたイーリスは落ち着きを取り戻していく。
イーリスが誰かに騙されそうになったりなど、ミスをした時はナナさんが助けてくれた。今回も、“王”の口車のまま、冷静さを失いそうになっていた。

「ナナさん……。エルピスさんと私のために、ありがとうございます……」

そう呟くと、一旦瞳を閉じた後、再び凛とした表情に戻った。
ナナさんの想いを感じる。その想いはイーリスの中で温かく膨らんでいく。エルピスさんが託してくださった《感情魔力混合炉》が、その膨らんだ想いをエネルギーに変えてくれる!
ナナさんも一緒に戦ってくれている……!

「《月輪の王》、楽しい決戦(デート)にしましょうか!」

メカニカル・サイキッカーは三本の内、二本の剣を抜いた。
四本の腕の内、下部の右腕に端正な拵えの鞘に収められた直刀《甕布都神(ミカフツノカミ)》、上部左腕に全長90cm程のタルワール《羅睺・日喰月呑》。

「……ぐっ!!」

甕布都神(ミカフツノカミ)》を抜く時、その神性に故に神氣にやられて気力を削がれるが、イーリスは険しい顔をしながらも耐えていた。

紅き月輪ノ王熊 > 「いや~、愉快な車があったからね、相当イカすなア!って思ってね♪」
「面目なぁい!自動車保険でもかけときゃよかったかね~」

エルピスきゅんにも同じ事言ったけど。
ま、いいや。

「いやあ、決戦の舞台がどんどんどん盛り上がっちゃうねえ!」
「配信はしてないけどさ。」

前の舞台だって、凄く盛り上がった。
今夜も、そうだ。
観客は王様一人だけ。
素晴らしい特別な舞台。

「いーや」
「今日からここは永遠夜だ」
「もう元には戻らない」

「さあ」

「始めよう」

決戦(デート)を」

「そして」

「終わらせようか」

「君の一生を」

漆黒の機械が2つの剣を抜く。
ただならぬ気を感じる。
こいつはヤバい。
直感した



一撃で終わらせる

紅き月輪ノ王熊 > 「血塗零月―――ッッ!!」

紅き月光が無数の殺戮の槍に形を変える。
改めて見て理解出来よう。
月光に照らされている者を即座に殺戮するソレは、
天から"降ってくる"のではない。
今まさに"現れる"のだ。

"時を止め"でもしなければ、対処は不可能―――

もっとも。
彼女は以前をそれをして見せた。

だから"最低限時を止める程度の事はしてくる"と理解した上での一手目

この大魔術を"隙を作らせる"為に使う!

Dr.イーリス > 「生憎、エルピスさんは随分と回復しましたし、あなたの思惑通りにはなりませんよ」

湧梧さんから借り受けた《甕布都神(ミカフツノカミ)》でエルピスさんの呪いを弱められたし、後はナナさんを信じる。

「ここが永遠に終わらぬ《永遠夜》というのは空しき夢のようですね。朝になったら覚めますよ」

イーリスには、“王”の次の行動がまるで手に取るように分かっていた。
エルピスさんが、紅き死ノ花園との戦いで見せたまるで未来が見えているかのような動き。
ギフターさんの試練、その夢の中でイーリスが目覚めた可能性。

発達した電子頭脳、その演算による未来予測。
それは少し先の未来を瞬時に予測するもの。

「オーバーリミット・キャルキュレイト!!」

そもそも、“王”の初手は前回と全く同じでなのだ。
イーリスの発達した電子頭脳が、その未来を予測してしまう。
紅き月より光の槍が現れる光景。蘇る記憶はとても忌々しいものだ。
未来予測に激しい演算を要するので負荷はある。だがその演算処理の一部を《パンドラ・コア》に任せる事で負荷が軽減される。
《パンドラ・コア》の動力源は《感情魔術混合炉》だ。先程のナナさんの想い、決戦前に受け取ったエルピスさんの想いがエネルギーに代わっているので、そう容易く熱暴走もしない。

時を止めはしない。
血塗零月が発動されるのはほんの少し未来の話だ。
発動される前に潰せばいい。

メカニカル・サイキッカーがタツワールをかざした。
それは《羅睺・日喰月呑》、湧梧さんから借り受けた武器の一つ。

「ふふ、紅き屍骸は、大規模災害級のSSランクに分類されるものです。さて、《月輪の王》は“神話の戦い”についてこれますか?」

大規模災害級はSSランクの怪異である。だがその上に、神話級たるSSSランクの怪異もある。
そして、イーリスが湧梧さんから借り受けた武器の数々は、どれも神話由来のものだ。

《羅睺・日喰月呑》はインド神話で語られるラーフというアスラの血と肉より造られた曲刀。
ラーフはインド神話において、月や太陽を呑み込んだ存在とされている。
この《羅睺・日喰月呑》には、その月や太陽を呑み込む効力がある。

さらに──。

「《神話型魔術生成AI》起動! 《神話顕現・羅睺・日喰月呑》!!

神話を学習し、神話に連なる武器からその逸話に由来する強大な能力を概念的に再現、あるいは神話の力を引き出す、それが《神話型魔術生成AI》だ。
神話の力を扱う技術故に演算処理にかかる負荷がとても大きいが、想いを動力に変える《感情魔術混合炉》がそのリスクをも軽減する。

血塗零月が発動する直前、月蝕が起こる。
神話において、ラーフが月を食べる事で月蝕が起こるといわれている。
その神話が再現されている。
月が喰われた状態では、そもそも血塗零月を発動するための月がない。

紅き月輪ノ王熊 > 「…えぇッ?」

隙を作る事すら出来ない。
月が食われたのだから。

大規模災害、その一つ上を行く力を豪語される。
流石の王も、初手を封殺されたことに驚愕を禁じ得なかった。

先回りされて、最適解を持ってきた。

王はイーリスがした行為に"見覚え"があった。

"この女、紅き死ノ花を始めて討伐したときと、同じ…!"
"相手の弱点を的確に調べて"
"それを実行する恐るべき"

―――それは。
王には通用しないと思っていた。
だが。

だが、

だが、

……これはどういうことだッ!!
遂にそれを王にまで向けるだとッ!?

「良い剣を、持ってきたねぇ…」

―――そして。
この状況は非常にまずい。

王の力の根源、魔力の起点は月光なのだから。

血塗零月は発動できない。
相手に隙を作らせられない。

なにより。

再度月光を呼び出している間は、

実は

王は



"空間を破る事が出来ない"

あの魔術のタネは、
月光を媒介にしての空間魔術
月光が存在する空間でのみ可能となる


王の力は全て月蝕を砕くために注がれる。

だが

戦死者のメモを読んだイーリスはもう―――

すぐに分かるだろう。

紅き月輪ノ王熊 >  
僅かだ。
だが、あまりにも明確な隙を。
王の側が晒す事になった、と。

Dr.イーリス > 先程まで紅く輝く月で照らしていた決戦の舞台。
月明かりがなくなり、辺りは真っ暗。
月蝕が起きてはさも《月輪の王》と言えども、いや《月輪の王》だからこそ動きが止まる事だろう。

イーリスは知っていた。
いや、“王”を倒す手段を必死に調べていたのだ。
月を隠しても“王”は再び顕現させる事ができる。
しかし、ノータイムで月を顕現させられるわけではない。
次に月を顕現させるまでに、大きな隙が出来てしまうのだ。

《月輪の王》の弱点を残してくれた人がかつていた。
その人は《三大獣害事件》の《永遠夜》で、《月輪の王》と激しく戦った人物。
イーリスは“王”の弱点を残してくれたその方に、感謝したい。

「あなたを討つため、とても素敵な剣を貸してくださった方がいたのですよ」

イーリスの右手の甲に刻まれた剣を意匠化したような痣が少し煌めいた、ような気がした。
その痣は、剣を借り受けた証。そして、生きてその方に返しにいくという誓約の証。

「《月輪の王》、これで終わらせます! ふふ、この《甕布都神(ミカフツノカミ)》は悪神なる大熊を討った逸話のある刀。あなたにとどめを刺すのに相応しいものでしょう。大勢の人々を苦しめ、死に追いやり、そしてエルピスさんを苦しめた、その落とし前、つけていただきますね!!」

エルピスさんには、“王”に有効だけどここぞという時に使う事を勧められた。今こそ、そのここぞという場面!
メカニカル・サイキッカーが握る厳粛な雰囲気の直刀《甕布都神(ミカフツノカミ)》。
それを横薙ぎに一振りすると、広範囲に斬撃が飛んだ。いや、それは斬撃というよりも広範囲に及ぶ光線といえるもの。

「……ッ!」

ただし、《甕布都神(ミカフツノカミ)》は神性の強い刀。その神氣にやられてイーリスは一瞬顔を顰め、メカニカル・サイキッカーも一瞬だけ刀を振るう動きが鈍くなっている。少しばかり、避ける猶予などを与えてしまっただろうか……。いや、今の“王”に月はない。月のない“王”は隙だらけのはず。

甕布都神(ミカフツノカミ)》は古事記において、悪神の大熊を滅した逸話がある。その大熊は毒気を放つとされるが、毒気にやられた者が《甕布都神(ミカフツノカミ)》の力で目を覚ましたという逸話すらもある。

「《神話型魔術生成AI》起動! 《神話顕現・甕布都神(ミカフツノカミ)》》!!」

その逸話に《神話型AI生成魔術》が合わさり、概念攻撃と化する。
その《神話顕現》の概念とは、逸話通り『悪神の如き邪悪なる熊のみを斬り裂く。あるいは、邪悪なる熊により毒を浴びた、感染したなどがあればその全てを浄化する』。
元々逸話のある神話の武器が、その通りに使われる、それを《神話型AI生成魔術》によりさらに神話の力を引き出し、神話の再現を行う。
逸話がもとになった概念攻撃なので該当しないものには何の効力もなく、逆に該当するものは神話級の恐ろしく効力を発揮する。
ただし、広範囲の概念攻撃だが、そこに必中という概念は含まれていないので回避そのものは可能ではある。

「……ッ!!」

《パンドラ・コア》の演算を以てしても苦しい。
ナナさんとエルピスさんの想いがあるから、それらが《感情魔術混合炉》でエネルギーに、イーリスの力に変えてくれているから、それでも耐えられる!

紅き月輪ノ王熊 > 回避はできる。
だが
今の王には大それた空間転移は出来なかった。

「呪いを破り」
「武器を得て」
「そして王様に……ッ?!」

なんという、恐ろしい剣だろうか。
まさしくこの王熊を殺めるためのモノ。
王を殺めるための概念攻撃。
《神話顕現》―――



王は

それを


避けられ





なかった

紅き月輪ノ王熊 >  


「グウウウウウウオオオオオオオオオオオオヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりに苦悶に満ちた咆哮。


 

紅き月輪ノ王熊 > 王熊は、
その強靭なる殺害欲、精神力だけでその概念攻撃を受けてなお、膝をつかなかった。

だが。

確信した。

(……次にアレを喰らえば)

(死ぬ。)

紅き月輪ノ王熊 > コレは。
絶対に。絶対に。絶対にやりたくなかった手だ。

そうしなければ負けると確信したとき以外、やりたくなかった手だ。


だが。

もうやるしかない。

紅き鋼鉄の大蝮 > 突如。
紅き鋼鉄の巨体のナニカが決戦の舞台の宙へ舞い上がる。
まるでビルそのものが飛んでいるかと見まがうような巨体が。

イーリスを目掛けて超威力の熱線を吐き出した。

不意打ちだ。

紅き月輪ノ王熊 > 「ごめんねえ。二人っきりのデート台無しにしちゃって。」

「でもさー。」

「キミも他の人から力借りるんだから、ちょっとくらい許してちょーだい♪」

「いやあ。」

「―――殺すための手段なんか選んでられなくなったね。」



「イーリス」

「死ね!」

王は朽ち果てそうな身を以てなお

殺害欲を滾らせてイーリスを睨んだ。

そう、睨んだ。

残忍な本性がついに明らかになる。