2024/09/12 のログ
ご案内:「暗雲の果てに」に橘壱さんが現れました。
ご案内:「暗雲の果てに」にエボルバーさんが現れました。
橘壱 >  
落第街 某日 昼下がり。
一部にて異能受動事件として、
ギフターの勢力が幅を聞かせる一方
当然、違反者というのはそれだけではない。
この広大な皆とは、かつて運輸の為に計画されていた。
しかし、ある日プロジェクト自体が頓挫し、
今ではある違反組織の根城となっていた。

既にそこは、爆炎と喧騒が支配する。
錆びついたコンテナが弾け飛び、
多くの風紀委員と違反者が交差する。
上空を飛び交うのは、無数の静音性ヘリ。
混沌としてるが、既に大局には王手が掛かった。


<首謀者の違反生徒 紫雲確保!
 負傷者多数、死者は双方にゼロ!>

<このまま全員護送して引き上げるぞ!>


『……流石西川先輩達だな。
 アレで女好きで無ければもっと尊敬できるのに。』

そんな状況を遠巻きに見ている蒼白の機人。
AssaultFrame(アサルトフレーム)。その身に着込む鋼の兵器。
鉄仮面の奥、モニターに映る情報が瞳に乱反射。
仕掛けから撤退まで、実に鮮やかだ。
今回の作戦、少年はオオトリだ。
既に終わったように見えても、此れは"撒き餌"。
本来の目的は違う。本命と対峙する為、温存されていた。

『……"奴"なら必ず来る。』

保証はない。だが、確証はあった。
此処まで派手に事を起こせば、必ず来る。
大勢の風紀委員がヘリに乗り込み、撤退戦開始中
少年は、機人の一つ目(モノアイ)は、
ただ一点、落第街の地平線を見据えていた。

エボルバー > 太陽が傾き始める。
照りつける陽は地平線へと近づいてゆき
空を徐々にだが赤く彩っていく。
爆炎、そして喧騒...
硝煙の香りと怒号が鉄のアジトで木霊する。

多くの力がぶつかり合っている。
強力な力と力。
力の衝突は望まぬとも変化を生み出す。
だからこそ...


ソレは現れる。


それはぽつりぽつりと。
予報に存在するはずもない黒い粉のようなものが
空から散るように降ってくる。
錆びついた残骸に降り積もりゆっくりと溜まる。
やがてそれは黒い降雪模様のような景色を生み出す。


>ターゲット確認

>レールガンチャージ開始


それは唐突に。黒い雪に埋もれる地平線の彼方から。
空気を裂くような凄まじい炸裂音と共に
蒼い閃光が一直線に白い機人へと放たれる。

橘壱 >  
そろそろ夕日が沈む頃合い。
相手が相手だ。作戦が長引くのも仕方ない。
違反組織『鉄鬼(てっき)』悪の科学集団。
多くの非人道的兵器を横流しにする闇の商人。
だが、それも今日で終わりだ。
ご覧の通り壊滅し、一部の違反組織は弱体化するだろう。

少年は今も尚、注視している。
計測器に、レーダーに、感覚に、
目の前で感じれる"全て"に意識を割いた。
不意に空からしとしとと降る黒い雪。
刹那、<ALERT>音が耳をつんざく。

『─────!』

半身のバーニアを急加速。
青白い炎が瞬間的に吹き出し、
瞬間的加速(クイックブースト)による回避。
直後、轟音と共に地面が抉られ、コンテナが吹き飛ぶ。
射線上のヘリが弾丸を掠め、空中で制御を失った。
海上に不時着し、水飛沫がせり上がる。
強烈な破壊力を持った、電磁の閃光。


<壱!大丈夫か!?>


通信機越しに聞こえる、伊達男の声。

『問題ありません。
 ヘリの方は……よし、航空可能。
 それより、"奴"が来ました。
 退避行動を急いでください。此処からは僕がやります。』

無茶するなよ、の心配の声を最期に通信が切れた。
モニターの向こう側。地平線の奥。
遥か彼方に捉えし黒の影。
間違いない──────。

『……正体不明機(アンノウン)。来ると思っていた!』

戦いの匂いを嗅ぎつけ、必ずやってくる。
何時か襲ってきたあの正体不明機(アンノウン)
目を見開き、声を張り上げると同時に、
肩部に装着された小型コンテナがオープンし、
空を裂き、白い軌道を空中に描く小型ミサイルが発射される。
牽制、先程のお返し程度の攻撃だ。

そう、ご覧の通り今回は前回とは違う。
違反者を鎮圧、捕獲するための装備ではない。
バックパックから、背部に装備された折りたたみ砲身。
各種腕部、脚部に装備されたコンテナ。
腰部にマウントされたライフルまで、全て殺傷兵器だ。
全ては、あれと戦うためのもの。
さぁ、こっちまで近づいてこい────!

エボルバー > >目標が回避


機人から放たれる誘導噴進弾。
白い尾を引きながら黒い雪で作られた闇へと突っ込んでゆく。
間髪入れずに闇の中から轟音と爆発音。
その轟音は先ほど蒼白の機人が発したものとよく似ている。
何故か。

降りしきる黒い雪がかき分けられる。
空から何かがやってくる。
それは重々しい音を立てて地面へと降り立った。

黒く鋭利的な形...
緑に灯る多眼の目...
左右の手にはそれぞれ異なる重火器...
それはまるで、目の前の彼とは相反する黒い機人。

<...先程の射撃は、50%以上のチャージ率で発射している。
どうやら動きのレスポンスが、向上しているようだ。>

黒い機人が発したであろうその声。
そのノイズが混じるような男の声は電磁波に乗せられて
機械に包まれる青年の頭の中で響き渡る。

動きが前よりも早くなっている。
彼もまた、変化したということか。

橘壱 >  
背後で忙しなく風紀委員達の怒声が聞こえる。
ヘリの駆動音。現場での電撃的行動。
それでも彼等は、"場馴れ"している。
風紀委員会は間抜けの集まりじゃない。
違反組織を摘発する時は、相応の戦力を用意している。
撤退は程なくして、終わるだろう。


つまり、残されたのは二機のみだ


『…………。』

忘れるはずもない。
その鋭利な姿。黒い機影。
あの時あった時と変わらない。
鋼の向こうから感じるプレッシャーも、
その無機質な鋭い視線(アイカメラ)も。
流石に無傷か。問題ない。まだ弾はある。

『……訓練ばかりは続けてるからな。
 それ以上に、僕自信も変化はあった。』

前回出会った時の荒々しさ。
獣のような、戦いに殉ずる少年の声ではない。
理知的で、極めて冷静な落ち着いた声音。
脳裏に響くような声に、逆に全方位(オープン)回線で声が響く。
牙を抜かれたわけじゃない。
ナリを潜めているだけ

その証拠に、鋼の中。
少年の見開いた碧には、
あの時以上に強い意思が宿っている。

腰にマウントした全身が針のように
鋭利となった細いライフルを右手に握り、構える。
鈍く光る白銀の銃口が、黒い機人に向けられる。

『お前に聞きたかった事がある。
 答えてもらえるかはわからない。
 あの時は、楽しむのに夢中だったからな。』

戦いを純粋に楽しみ、獣のように暴れる。
今でも甘美な一時だったのは間違いない。
だが、それ以上に少年は、人として変わった。

『……正体不明機(アンノウン)
 お前は何者なんだ?どうして、戦う。』

自らの事以外に興味を持ち始め、
人間的に大きく変化した。
その対象は、目の前の彼も変わらない。
それが退化か、成長かはさておき、
確かな大きな変化だった。
戦う前に、どうしても聞いておきたかった。
この謎の機人が、何なのか。

青白い一つ目(モノアイ)が光り輝き、
奥で碧の双眸が黒い機人を見据えている。
晴れていたはずの夕暮れは、徐々に暗雲が遮り
まるで、剣呑さを表すように瞬く間にくもり空へ。

エボルバー > 暗く緑がかる視界。
物体を識別する無機質な枠。
それが、この黒い構造体の見ているもの。
枠で囲まれた蒼白の外骨格...
いやそれに内包された彼の中には
確かな心の炎が揺れている。

それは常に人を強くする。
故に興味深い。

黒い機人は対照的に感情など宿らぬ
無機質な視線で彼を見つめ続けていた。
戦いの獣から戦士へ。
変革しつつある彼を。

<ボクは、進化を目指すモノだ。
戦いは変化を生む手段の一つ。
だからこそボクは、戦う。>

右腕のレールガンが再び上げられる。
銃身のレール間に電光とともに蒼光が灯り始める。

<キミも、変化した。面白い。
ならば、ボクも変化できる。
可能性を、見せてみろ。>

その電力チャージは長ったらしいものではなく
ほんの一瞬。初撃より威力は控えめだが
間髪入れない3発のバースト射撃。


>ターゲットの回避を分析中...
>分析完了

>火器管制へ反映


先ほどの回避から、傾向を予測し
3発の射線をずらし偏差射撃を行う。

橘壱 >  
無機質な声が、機械的に答える。
機械なのだから当然なのだが、
少し意外だった。少し目を丸くする。
もっと無機質だと思っていたから。

『進化を目指す者……?
 戦いが進化を促すっていうのは
 強ち間違いではないだろうが……!!』

歴史、ひいては技術とは、
皮肉なことに戦争時が一番
ブレイクするーが起きやすい。
ある意味、人類史は戦いの連続だ。
事実、今の時代も大変容があり、
その後に大きく技術革新が進んだとも言える。
何よりも、対戦ゲーム。
娯楽としてこういう争いが残るのだ。
機械の言うことには理解があった。

仮想とは言え、争いで頂点にたったからこそ、だ。

だが、今は戦闘中。忘れてはいない。
<ALERT>音よりも早く、
目視による動きに体が反応する。
全身のバーニアが青白い炎を吐いた。
風を切り、地面を滑るように高速機動。
残影が残ると錯覚するかのように、
轟音を立てる技術力の加速。
全身のGに耐えながらも、一撃目を回避。
二撃目。回避──────。

『!?読まれていた!?』

肩部へと直撃。
コンテナが爆散し、爆風によろめきつつ、
とっさに電磁パルスシールドを展開。
三発目は、目の前で四散した。
偏差射撃にしても、正確だ。正確すぎる。
この前の戦闘データを加味しても、
これは機械の強みなのだろう。
だが、此方も負けられない。
爆風を振り払うように、急加速。
背部バーニアが轟音を燃やし、
一直線へと駆けていく。

『お前にもわかる位変われたってことか!
 だけど、むざむざお前に負ける気はない!』

変わりはしても、根っこまで変わっていない。
即座に向けた針先のような銃口。
青白い閃光が断続的に、空を切り裂き放たれる。
エネルギーを収縮させたビームマシンガン。
実弾よりも弾は小さいが、当たれば鋼を容易く破損させる。
右へ、左へ、マシンガンをばらまき変則的機動で距離を詰める。

『変化を、進化を望んでどうする気なんだ。
 戦いで仮に進化して、その"先"はどうするんだ!』

エボルバー > >目標が回避
>回避傾向を学習

>目標に命中


やはり速い。
此方が弾体を発射する直前に彼はもう動いていた。
この反応速度、機体性能だけではない。
彼自身が成長している事が伺える。

レールガンによる偏差射撃は
命中こそしたものの、致命的な一撃には至らない。
展開されたパルスシールドによって弾体は弾き返される。
そこから彼は滑らかに攻撃動作へと繋げた。

青白い電熱の弾幕が黒いソレの機体へ襲い掛かる。
火花とともに機体の随所が弾け飛ぶ。
その断面は電熱の余波で真っ赤に灯る。
その武器が今までの彼のものとは違う
「殺傷兵器」であるという事を如実に表すかのように。

やがて容赦のないクイックブーストと共に
接近してくる蒼白の翼。
パルスアーマーの防御力に高い機動性。
驚異的な程のそれは彼の強みだ。


ならば、黒い、ソレの強みは何か?


>右腕パージ


黒い機人は右手のレールガンを切り離し(パージ)
宙へ放り投げる。
...しかしそれで終わらない。


>リアセンブル実行


パージされたレールガンは即座に形が崩れていくように
バラバラになってゆく。
だが、その形が完全になくなることは無かった。
代わりにそれは全く別の火器へと変貌を遂げていた
黒い構造体は再び右腕に装着する。

<進化に、終わりはない。
世界が、変化し続ける限り
ボクも、変化し続ける。>

変化した右腕の武装はパラボラアンテナのような
奇妙な銃身が目立つマシンガンのような武器。
一言で言うならば、パルスマシンガン。
高周波パルスを弾体として発射する。
威力はさほど高くないが、パルスには特性がある。
パルス同士は干渉し打ち消しあうということだ。

黒い機人はパルスの弾幕を撃ち込みながら
右、左とスラスターによるブースト。
青年と同じように距離を詰める。
そのシールドを打ち破り、左腕のショットガンで
致命的な一打を与えんと。

橘壱 >  
距離200、150、100──────。
最新鋭の試作機、技術の最先端
その一旦であるのは当然だが、
それを使いこなすだげの技術がある。
ただ、優れているだけではない。
その分野においては、突出した例外(イレギュラー)
大企業が、ちょっとした程度で、
目をつけるはずがない。その理由が此処にある。
鋼鉄の翼が青白い炎を吹き出し、
マシンガンの弾幕を盾に互いの目前距離(デッドライン)間近。

『…出たな…!』

前回も見た。武装の変質。
否、彼の言葉に合わせるなら、
それは進化なのだろう。
相手に合わせて、戦いに合わせて、
適切な姿へと進化する。
ある意味、兵器としてみれば理想形。
その機能美には、感服さえ覚える。

変化した歪な兵器は、此方のマシンガンと似ていた。
歪な重心が放つそれは、同じ弾丸ではない

『コイツ……!?』

反射的に展開したパルスシールド。
だが、放たれた弾丸と干渉し、打ち消された
此方の防御兵装に合わせて、
それに対抗できる兵器に進化したのだ。
出力自体は高くない。
揺れは(ドアノック)はしても、
受け続けなければ破壊までは至らない。
装甲自体伊達ではないが、此れは拙い

『……!』

目前距離(デッドライン)だ。
鳴り響く<ALERT>音。
あの形状の武器は、前と同じショットガンタイプ。
近距離で喰らえば、Fluegele(フリューゲル)の装甲でも耐えられない。
だったら……─────!

脚部についていたコンテナを排除(パージ)
小型ミサイルポッドをパルスの雨に放り込み、
互いの間を轟音と爆風が包みこんだ。
爆風により牽制、爆炎による煙幕。
此れで一度、仕切り直し(リセット)だ。

『変化して、進化して、そして戦い続けるのか?
 戦うことだけが目的だったら、限界が来るぞ。
 それとも、自分から火種を撒く危険因子になるつもりか?』

確かに歴史の裏には戦いがあった。
だが、常に行われたわけではない。
平和な時代があるからこそ、
今の種は繋がれている。
兵器は重要だが必須とは思わない
それは、操縦士(パイロット)である自分が、
重々と理解している事だ。

爆煙の向こう側で問いかけ。
手の甲から飛び出す青白い光。
あらゆるモノを切断する、科学の刃。
レーザーブレードだ。相手は機械だ。
既にレーダー類で見えずとも、
此方を捉えているかも知れないが、
この光は、煙の向こうでもよく見える。
"誘い"だ。此処にいるぞ、向かってこい、と。

エボルバー > 2人の機人がぶつかり合う。
目にも止まらぬ速さで。
蒼白と翡翠のスラスター光が線となって
空間に幾何学的な模様を描く。


>左腕射程圏内


パルスシールドを打ち消し
ショットガンの射程圏内(キリングレンジ)へと
彼を収める。ソレが引き金を引き散弾を撃ち込もうとした瞬間。
彼が動かしたのは肩部の武装だ。
放たれたミサイルの空中炸裂によって
衝撃波とともに視界が失われる。
煙幕が空間を包み込む。

<戦いは進化のための、
手段の一つに過ぎない。>

煙幕の向こうに佇む蒼白の機人へ
ソレは言葉を投げかける。
電熱でダメージを受けていたソレの機体に変化が訪れた。
吹き飛んだ部分が徐々にではあるが修復され始めている。
砂が積もるように、損傷が塞がりつつあるのだ。
雪のように舞うナノマシンを利用した自己再生。
発展した機械は環境をもシステムに変える。
言うなれば黒いソレは動いている技術そのものと言える。

<ただし、戦いは他者にも変化を促す。
効率的な手法とも言える。>

より優れた変化サイクルを実行するためには
世界の方にも変わってもらう必要がある。

黒い構造体の背部が強く灯る。


>オーバーブースター点火



メインスラスターを使ったオーバーブースト。
空気を圧し出し目にも止まらぬ速度で煙の中へ突っ込んでゆく
ショットガンの銃先が眼前を睨む。

それは彼が仕掛けた罠だろうか?
それで良い。
罠の本質は掛かってこそ初めて分かるのだ。

橘壱 >  
『……前も言ってたな。
 僕を殺さない、命を奪わない。
 今ならなんとなく、わからなくはない。
 自らの進化、他者への進化を促す兵器……。』

最も兵器らしくて、兵器らしくない思想だ。』

かつて、本能のままに、
相手の言葉に耳を傾けず戦った。
だが、その言葉の意味がなんとなく、
今なら噛み砕けている気がする。
戦いの歴史、人類史の成長。
恐らく此れは、その在り方を表した兵器(マシン)
戦うために常に最適化し、進化し、
同時に命を奪わず、他者への進化を促す。
兵器とは、結局の所暴力だ。
容易く他者を傷つけ、殺す。
それは、使う自分が理解している。
なのに彼は、人は殺さない。
それだけの殺傷力を以て、そういった。
尊ささえ感じる。理解できる。


ある意味、理想像なのかもしれない


強き力と、慈悲の心。
そして、この世界(そら)で自由な存在。
だからこそ、同時にその危険性さえ感じる。

『……あの時の事は良く覚えている。
 今での楽しいって思えるさ。
 こうしている間も、僕は楽しさを覚えてる。』

『多分、此ればかりは変わらない。』

戦いそのものではなく、AFを動かし、
この肉薄する生死のスリル。
表に出さないだけで、高揚感はあがる一方。
だってそうだ。無意識の口角が上がっていた。
楽しいんだ。こうしていることが、生き甲斐だから。
それでも、鋼の理性を今は持っている。
楽しみだけに、興じない。
見開いた碧の双眸が、より鋭く、
より広く、世界を見始める。

『けど、その手段をやめる気はないんだろ?
 だったら、やっぱりお前は危険だ。
 ……僕は覚えてるぞ。風紀委員という言葉に、
 目の色を変えたお前の姿を、良く覚えている。』

機械(ソレ)のプロセス、
根源が如何なるものかは知らない。
だが、今でもあの一件は覚えている。
あれが、始まりなんだ。
多分、自分の知らないことで同じことをしている。
進化を促すために、選別した相手を
容赦なく戦火に巻き込む兵器(マシン)だ。
どんな理由であれ、火種をばら撒く行為は
見逃しておけるはずもない。

驚異的な集中力が、世界をより、
遅く、先鋭に見せてくれる。

『お前は僕が止める……!何度でもだッ!!』

そう、お前なら、来ると信じていた。
その必殺ショットガンを狙いにくると。
お互いの至近距離(デッドゾーン)に入った直後、

後方へと急加速。

自らの肉体不可を省みず、
ショットガンの絶死の距離を離し、
同時にレーザーブレードをマシンガンを前面は放り投げる。

橘壱 >  
 
             『───────光れェッ!!』
 
 

橘壱 >  
背部にマウントしたコンテナ。
ぬるりと伸びるガトリング砲身。
実弾式の小型チェインガンだ。
この見た目ながら、並の鋼程度なら、
容易く蜂の巣に出来る弾丸が、火を吹いた。
但し、相手ではない。目前の二種の兵器。
強靭な火力に蜂の巣にされ、
二種のエネルギーが、膨張する。
それが一瞬で増大し、破裂した

けたたましいエネルギーの本流。
磁気嵐のような破壊力の塊が広がる。
生憎と、罠なんて上等なものは仕掛けてない。
進化するコイツなら、覚えている。
前の戦闘で見せた強引な急加速の連打ではない。
敢えて、待ち構えることにより、
自らを省みない自爆上等の範囲攻撃
さぁ、反応して後退するか、それとも受けるか。
どちらでもいい。何故なら、
こっちのプランは決まっている。

どのような動きであれ、
此方は更に、前面へとオーバードブースト

エボルバー > <ボクは、停滞するつもりはない。>


>左腕射程圏内


再び訪れる刹那の瞬間。
互いのキルレンジに互いが入り込む。
散弾銃を構える。
しかし、相対する蒼白の戦士は武器を構えなかった。
放り投げたのだ。
だがパージではない。
そういう意図があるのか。
前例のないそれを機械は読めなかった。
散弾を叩き込むべく前へブースト。


>脅威を検出
>高エネルギー反応


ソレが反応した時には遅かった。
青年の武器自体を利用した広域爆破攻撃。
襲い掛かるエネルギーの濁流に
容赦なく黒い機人は飲み込まれてゆく。
右腕武器が弾ける。機体が弾ける。
黒い砂を激しく散らす。


>バランサーエラー
>動作不能


しかし、機械に恐怖心など無い。
冷徹にショットガンを睨ませ続ける。
それは唯ではやられないという
進化への異常なまでの執念。

橘壱 >  
激しく迸るエネルギーは、
当然自機にも影響を与える。
蒼白の装甲を削り取り、
特に各種計測器には甚大なダメージだ。
特に、一つ目(カメラ)へ甚大なダメージが入った。
パリン、と乾いた音で目が砕け、
鉄仮面の奥は大部分が暗闇に。
サイドカメラでは、限界がある。
だが、もう見えてるし記憶している

当然さっきのような後退はない。
既にもう、前進あるのみ。
今確実に、相手の動きは止まっている。
どんな反撃を食らおうと、"今"しかない。

『─────確実に!』

左腕部からもう一本、
レーザーブレードを展開し、直進。
空気を張り詰め、轟音弾けさせ、
その胸元目掛けて突き立てる。
それが例え、ショットガンのレンジだろうと、
それもプランの内だ
さぁ、一勝負といこう。
機械が恐怖心を感じないなら、
此方も人間の意地で、勝負を挑む─────!

エボルバー > >目標再確認
>FCSエラー


自壊しながら飛び込んでくる蒼白の戦士。
何故、自ら傷つきながら攻撃を仕掛ける?
生物は傷つく事を嫌う。
何故ならそれは生存を脅かすから。
なのに目の前の青年は...
そうかこれが人間の、

レーザーブレードのまばゆい一閃。
それが黒い機人を一直線に切り伏せる。
左腕のショットガンが宙を舞う。
間に合わず虚しい射撃を舞いながら空へと放つ。
機体が吹き飛ぶ。砂塵が舞う。
頭部の随所が電熱で削れる。
漏れる翡翠の眼光が一層輝く。


>パルスアーマー展開


崩れる黒い機人から翡翠の電光を散らしながら展開したのは
蒼白の戦士が纏わていたものと酷似するパルスシールド。
ただそのシールドの帯電は止まらない。
やがて直視するのも憚れる程の光量へ。

それがヒトの可能性なら
変化する技術の可能性を見るがいい。


>オーバークロック実行


過充填され逃げ場の失ったエネルギーに
シールドは耐え切れず崩壊する。
エネルギーの塊であるシールドの性質を利用した
いわば広域制圧エネルギー砲。

戦えば戦うほどエボルバーは変化する。
それはより適した形に。
機械の進化は止められない。

橘壱 >  
ショットガンを切り落とすと同時に、
割れた青の一つ目(モノアイ)と、
緑の多眼。互いの視界が交錯する。

『僕も、停滞(とまる)ことはしない。
 こう見えて、足りないだらけの人間なんだ。
 皆に追いつくためには、進み続けるしか無い。』

操縦の腕以外、この超社会についてこれない。
異能も、魔術も、超人的能力も、
何もかも少年には持ち得なかった。
それでも、用意された手札で戦う。
夢のために、ひたむきに努力するしか無い。
薄暗い鉄仮面の奥、サブモニターと、
砂嵐の向こうにいる機械(マシン)を、
碧の双眸は決して逸らさず、見据える。

『けど、僕を変えたのは、戦いだけじゃない。』

確かに一つの要因ではあった。
だけど、少年の方向性を、
確かなものへと変えたのは、
多くの人の、繋がりだった。
戦いとは相反する、縁の先。

それは、同時に展開された。
背部のコアから楕円形のシールド装置が、
展開され、全出力がパルスシールドへと回される。
バチバチと互いに干渉、反発し合うように、
膨大なエネルギーの塊が、二つ。

二つの翡翠の太陽が弾ける中、
少年は確かに、微笑みを向けていた。

『……おい、正体不明機(アンノウン)
 もしお互い無事だったら、落第街(ココ)から出てみろ。
 表の世界、常世学園に来るんだ。そうすれば……。』

『僕が変わった意味が、理解できるかもな。』

この命のやり取り、目前を前にして、
少年は機械(マシン)と相互理解を、試みた。
いや、今だからこそしか言えない。
戦いを通して、ある意味似た者同士なのだから。
だからこそ、自らの進化(ルーツ)を勧めたのだ。

伝えたいことは伝えた。
後は、ぶつかり合いだ

Reject Armor(リジェクトアーマー)、展開──────!』

本来防御兵装とした電磁パルス。
此れに全ての出力を回し、
拒絶の力を破壊力に転換する
同じくして広域制圧エネルギー砲。
互いの自機を前にして、二つの翡翠が弾け、
凄まじいエネルギーの本流は、
曇天の空を、異常なまでに明るく輝かせ、
周囲には轟音、強い衝撃が蒼白の装甲を、
機械の全身を軋ませ、吹き飛ばし、ぶつかり合い──────……。

エボルバー > <それが、キミの可能性か。>

強大なエネルギー波の衝突は
周辺を燃え上がらせる熱波を生み出す。
錆びた拠点の跡が赤化し溶けてゆく。
構造物が解け崩れてゆく。

彼の放った言葉、常世学園。
多くの特異な人が集う場所。
戦いという無秩序とは異なる
社会という秩序の中の可能性。


>致命的なエラー
>構造維持不能


エネルギー波に揉まれた黒い機人が粉塵へと変わってゆく。
バラバラに、空へと舞ってゆく。

<興味深い。>

激しいノイズに塗れたその声が
ソレの発した最後の言葉だった。


周囲を焼き尽くすエネルギーが収まるころには
黒い機人もこの場を支配していた黒い雪も最初から無かったかのように
消えていた事だろう。
ただ一つ。
地面に突き刺さった、
崩れかかった進化機械のショットガンを除いて。

橘壱 >  
ガコンッ!!
急な衝撃が、不意に意識を揺らした。
否、引き戻した。強い衝撃に、
どうやら一瞬、意識を失っていたらしい。
周囲の安全、民間人の保護、
全て他の風紀委員がやってくれたはず。
だから、こうして存分に戦えた。

『どう、なった……!?』

恐らく失ったのはあの時だ。
互いのエネルギーがぶつかりあった瞬間、
あの瞬間に不覚にも意識を失った。
それだけの衝撃だった。
今どうなっている。
慌てて四肢を動かそうに、動かない。
駆動系が何もかも、ダメになっている。

『全く……!』

マニュアル動作で機体を開き、
鋼鉄の鎧から這い上がった。
蒼白の装甲は弾け飛び、起動不能。
修復には時間がかかりそうだが、
今はそれどころじゃない
白衣の裏側から眼鏡を取り出し、
レンズ越しに周囲を見渡した。

曇天の空の下、周囲は見る影もない。
戦闘の影響下、凄まじい熱量が肌を撫でる。
そこら中穴だらけ、瓦礫だらけ、溶接だらけ。

「……勝った、のか……。」

周囲に黒い機影は見えない。
あの黒い雪も見えない。
どうやら、勝つには勝ったらしい。
どんな形であれ、勝った。
自然と口元に笑みが溢れる。

「……また会える気がするな。」

意識は失っていた。
けど、あのノイズ混じりの声は、覚えている。
今度は別の形で会えたら嬉しいが、どうだろう。
地面に突き刺さった、ショットガンの先。
それをじ、と見たまま、通信機を取り出す。
気づけば曇天は晴れ、夜空が広がっていた。

「此方風紀委員、橘壱。
 正体不明機(アンノウン)を撃破。
 二つの作戦は完遂した。機体は大破。
 回収を求めた……し……!?ごほっ……。」

吐血。
瞬間、全身を激痛が走り、
膝から崩れ落ちるように、倒れる。
それもそうだ。アレだけの高機動、
そして、最期のぶつかり合い。
全部、集中力で誤魔化していたに過ぎない。
白衣の裏から、赤いシミが滲み出る。
こりゃ、外も中も酷そうだ、
何と顔だけを上げて、ショットガンを、指差す。

「こ、今度……ち、治療費請求……する……から……。」

最後の最後に、
わけのわからん負け惜しみ。
そのままぐったりと、意識を手放し、
程なくして、風紀のヘリが上空へ。
AFと少年の回収、そして、
正体不明機(アンノウン)の残骸も。
後は生活委員会等の仕事だ。
暫く、このあたりの修繕のため、
また、忙しなくなるだろう。

エボルバー > 空を舞う黒い砂塵。

それは常に可能性を求め続ける。
変わる世界に適応するために。
そして、存在し続けるために。

黒いツバサは飛翔を止めない。

ご案内:「暗雲の果てに」からエボルバーさんが去りました。
ご案内:「暗雲の果てに」から橘壱さんが去りました。