2024/09/20 のログ
ご案内:「委員会用病棟 個室」に追影切人さんが現れました。
■追影切人 > 相変わらずこの辛気臭い部屋の空気は慣れない。仏頂面でベッドに寝転がりつつ、無事な左腕でポチポチ端末を弄る。
『――で、許可は下りたんですか?なら早速取り掛かりますが…基本形状は日本刀でよろしいですか?』
「――あァ、それでいい。…あと変な機能とか仕込むんじゃねぇぞ、そういうギミックは苦手なんだよ。」
『…いやぁ、そこは保証できませんねぇ。何せこの銃の機能は中々面白いので。まぁ貴方のお陰で真っ二つですが。』
「…ケッ、無傷で手に入る訳ねーだろうがよ…。」
『…まぁ、どういう風の吹き回しか知りませんが…引き受けましょう。念を押しますが許可は下りてるんですよね?』
「――あァ、風紀の方で検分とかはもう済んでるし、本来廃棄処分だから別にいいだろ俺が再利用しても。」
誰かとそんな会話をしつつ、仏頂面のままちらり、と外を見る。既に夕方に差し掛かる時間帯だがまだまだ明るい。
■追影切人 > 『――まぁ、承りましたよ…お代はそれなりに頂きますがね。
…あぁ、でも貴方が他の監視対象に頼み事なんて非常に珍しいですから。
…そうですね、少しだけ割引でもしてさしあげましょうか。』
「――適任がテメェしか居なかっただけで他意はねぇよ。鉄道委員会辺りだったら喜んで魔改造しそうだがそっちに知り合いいねぇしな。」
『貴方、本当に友達居ませんからね…あぁ、失礼私もでした。本当、一級監視対象はぼっち属性強いですよねぇ』
「――テメェのその戯言が直ぐに出る癖は何とかしろや。
…まぁいい。取り敢えず退院したら受け取りに行く。」
『はいはい、それまでに仕上げておきますよーお任せを。
そういえば、【無限山脈】君や【血濡れの戦犯】ちゃんは元気してます?
彼らにも最近会えてないんですよねぇ…。』
コイツは…と、嫌そうな表情を僅かに浮かべつつ、わざとらしくクソでか溜息を漏らして。
「いいからさっさと仕事しろや。金は例の口座に振り込んどきゃいいんだろ。」
『はいはい、毎度ありー。では良い刀に仕上げてみせますのでお楽しみに。
あ、それと【凶刃】クンはそろそろ浮いた話でも出――』
うるさいので問答無用で通話終了してやった。本当、こいつは有能な癖に余計な話をしたがるから疲れる。
■追影切人 > (――まだ”処分”の通達は来ねぇか…案外遅ぇな。)
どうせあの”代理”のクソ野郎は俺を処分する気満々だったから、直ぐにでも通達が来ると思っていたが。
まぁ、”上”の事情なんて知ったこっちゃないし興味も無い。どうでもいい。
端末は無造作にロックを掛けてからベッドサイドに放り投げておく。
さっさと怪我を治してこの辛気臭い病室からおさらばしたいものだが、中々直ぐにとは行かなそうだ。
傷そのものを”斬って”無かった事にしてしまえばいいだけなのだが、そこまでの出力は出せない。
…全身に埋め込まれた異能抑制装置がやっぱりクソ面倒だな、とつくづく思う。
ご案内:「委員会用病棟 個室」に麝香 廬山さんが現れました。
■麝香 廬山 >
「──────ほんと、自分でもビックリする位元気なんだよね~。」
辛気臭い部屋の空気を一蹴するような、
余りにもとぼけたような明るい声。
何時からそこにいたのかさえ、わからない。
ただ、そこにいる人物は本物であった。
追影切人のベッドの傍ら、付き添う人のようにいた。
確かに先程まではいなかったのに、確かにいる。
人を食ったような笑顔のまま、楽しそうな視線を切人に向けていた。
「誰と話してたの?ゼロちゃん?
にしても、珍しいねぇ~。切ちゃんが誰かと電話なんて。」
「昔と比べて随分と変わったじゃん。
もしかして、そのせいでシクって怪我でもした?ダサ~。」
笑顔は、絶やさない。
放り投げられた端末を拾い上げ、
ぷらぷらと見せつけるように揺らしていた。
■追影切人 > 「……(面倒な奴が来やがった)…面倒な奴が来やがった…。」
心の呟きが思わずそのまま出てしまうくらいには、面倒な奴が何時の間にかそこに居た。
まぁ、コイツが神出鬼没なのは今に始まった事でもないのだが。
しかし、まぁわざわざ見舞いに来る――とも思えない、冷やかしにでも来やがったか?
「俺やテメェと”同類”の武器職人だよ。ちょっと用が出来たから頼み事してただけだ。」
一級監視対象は自分が把握してる限りでは己を除けば5人居る。
一人がこの神出鬼没野郎、一人があの女狐。あと残りの3人の内の一人がさっきの電話の相手だ。
…ちなみに、それ以外の残り2人については片方は生きてるか死んでるか分からんし、片方は面識が無い。
…まぁ、それはどうでもいいとして。どうせ人格破綻者の集まりでしかない。
「――あァ?だったらテメェがアイツ始末してこいよ。」
そもそも、コイツの方が確実だろうにこっちにお鉢が回ってきたのだ。
まぁ、その理由は何となく察しは付くが…全くアホらしい。
相変わらず、笑顔を張り付けたコイツの本心なんてそもそも誰にも分かりはしないだろうが。
「…で、いきなり何しに沸いてきたんだテメェは。素直に見舞いに来るタマじゃねーだろ廬山。」
■麝香 廬山 >
面倒なやつですと言わんばかりの笑顔。
どうも~とヒラヒラと手を振った後
ぽい、と端末を再びベッドへと放り投げた。
人の端末だと言うのに、なんという扱い。
あたかも自分のものかのように扱う始末だ。
「ああ、あの子かぁ……ってことは何?
七ツ胴から乗り換えようって事?
へぇー、案外浮気性なんだ。結構一途かと思ってたのに。」
ぱちくりと目を丸くしたのは、
武具の話ではない。彼の話だ。
それこそ自分の知っている追影切人とは違う。
随分と、当たり前のように学生生活を送っているような風体。
あのガサツで面倒くさがりの切りたがりとは思えない。
おまけに、同じ監視対象に連絡、頼みごとと来たものだ。
ああ、成る程。何となく、聞いてた通りだ。
「え?ボク?面倒くさい。」
当たり前のように二つ返事。
「ナツキちゃん……だっけ?
切ちゃんの頼みならやってもいいけど……。」
付添い人ようの椅子に座れば、
足を組んで顎を手に乗せた。
じ、と見据える橙の双眸は、笑っていない。
切りたがりの視線よりも鋭く、冷たい。
「本当にいいの?」
静かに問う。
託した相手は、自分ではあるまいと。
■追影切人 > 追影切人にはハッキリ”苦手”だと思う人物が二人居る。
――その片方がこの男だ。何故だか妙に向こうから気に入られているが、いまいちその理由が分からん。
と、いうか理由とか別に知りたくも無い。そもそもコイツは底が知れないからだ。
放り投げられた端末を無造作に拾い上げつつ。
「乗り換えるも何も、どっちも使うに決まってんだろ。
まぁ、七ツ胴はそもそも返還要求とか後でうるせーだろうし。」
【雷切】は例の斬奪怪盗の一件から使用許可が下りなくなっているし、いい加減に固定武装が欲しい。
本来、斬る為の得物をいちいち選ぶ必要はないが…今の男は色々と弱体化しているのは事実。
「――んな訳ねぇだろ、テメェに頼む位だったらリベンジしてるわ俺が。」
そもそも、斬り殺し損ねたという事実は揺るがない以上、こっちは”処分”の通達待ちみたいなものだが。
じっとこちらを見据えて来るヤツの目は笑っていない。それを隻眼で見返しつつ。
「…正確に言やぁ、もうテメェどころか俺が出る幕でもねぇよ。後は”アイツら”が片を付けんだろ…。」
【凶刃】は任務を失敗した――【逃亡者】を始末し損ねた。
それが厳然たる事実で、この男があの女と戦う事も斬る事ももう叶わないだろう。
■麝香 廬山 >
良く知っている。
その大雑把な所、自分に向ける苦手意識。
良く知っているとも。その能力も、
今のその在り方も、良く知っている。
廬山は良く知っている。人をおちょくるには、
その人のことをよく知ることだ。
特に、気に入っている相手なら、尚の事。
「雷切も……流石に厳しいかァ。
例のダスクスレイくんのも使わせてはくれないよねぇ……まぁ、でも……。」
そんな事より、と目を細めた。
「随分と弱ってるじゃん。
異能抑制が厳しくなった?それとも切ちゃん自身の問題?」
「何れにしても、昔のキミなら獲物を選ぶなんてちゃちなマネ、いらないでしょ?」
その異能も、力も、性質も。
刃自身に獲物は必要無い。
表情こそ穏やかだが、視線は熱を失っていく。
しらけているのだ。人差し指を立てて、首を振った。
「そもそも、人に獲物を渡すなんてらしくないじゃん。
そんなに"彼女達"が信用出来るのかそれとも……。」
気づけば廬山は目の前にいた。
ベッドに居座る切人の顔を覗きこむ。
「──────鈍った?切人。昔のキミなら、何が何でも自分で切ろうとしたのに。」
■追影切人 > 「―――あァ?」
部屋中の気温が一気に下がったかのような。地の其処から湧き出るような怨嗟のような。
そんな、どす黒い声が洩れた。本人の意識に反して勝手に異能が”漏れて”病室のあちこちに亀裂が走る。
…だが、同時に全身に埋め込まれた異能抑制装置のせいで、それも直ぐに収まってしまう。
――舌打ち一つ。ゆっくりと息を吐き出す。コイツに感情を荒ぶらせても意味が無い。
「――認めたくねぇし認めるのも癪だし、何よりテメェに言われるのが業腹だが…あぁ、間違いねぇな。」
追影切人の弱体化は、何も異能だけではない…その、何が何でも斬るという本能的なそれにも陰りがある。
なまじ、中途半端に人間味を得てしまった反動か弊害なのか。彼自身も正直理解出来ていない。
根本は決してブレてはいないが、そこに至るまでの切れ味は確かに鈍っている。
「―確かに、昔の俺が見たら今の俺はクソ滑稽だろうよ。
…あぁ、分かってるっつーの。テメェに指摘されるまでもない。」
異能抑制だとか、力を一部奪われてるだとか。そんなの本来この男には関係ないのだ。
それでも弱くなっているとしたら、男の中に刃以外の何かが芽生えている証左だろう。
まぁ、コイツから見たら今の俺はそりゃ”しらける”だろうな、と思いつつ。
「――だったら、昔の俺をここから今の俺で超えてぶった斬るしかねぇな。」
あぁ、弱くなってるし切れ味鈍ってるし…だからどうした。
俺の根本は変わっていないしブレていない。誰だろうが何だろうが最後は必ず俺が斬り捨てる。
■麝香 廬山 >
病室に亀裂が走る。
地の底に湧き出るような威圧が、
泥土のように肌に纏わりつく。
何も恐れることもない。寧ろ懐かしさまで感じる。
ふ、と口元が笑みを漏らし肩を竦めた。
「切ちゃん。」
顔を離し、じ、と彼を見下ろす。
「無理な事は、口にしないほうがいいよ。」
笑顔のまま出した言葉は激励でもなんでもない。
ストレートな拒絶。表裏なき否定。
口元を右手で覆い、仰々しく首を振ってみせた。
「人は変わるものさ。良くも悪くも、ね。
いや、ちょっと驚いた。キミも人間なんだなって。
……当然といえば当然か。ボクからしてみれば……。」
「その"根っこ"の部分まで、随分と錆びついている。」
粛々とまるで事実ばかり述べるように、
飄々と言葉を繋いでいく。
あの時の刃のような生き様も、
【凶刃】たりえる空気も、
何一つ今の切人は廬山にとって、持ち合わせていない。
これは、明確な挑発である。
自らの額に人差し指を当てて、腕組思案仕草。
「伊都波凛霞……だっけ?キミの監視役。
うん、優しい子だったよね。確か。記憶違いでなければ、だけど。」
「殺してこようか?今すぐ。
ああ、確かナツキちゃんとも仲良かったよね?
ちょうどいいや!彼女に凛霞ちゃんの首、見せるとかどう?」
「ちょうどいいサプライズになると思うしぃ、ケジメとしては丁度いいけどなぁ~?」
両手を広げて子どもような語り草。
二人きりの親友に、イタズラを提案しているかのようだ。
実にいきいきとした表情だが、"冗談は言わない"。
一級の名を関する監視対象であり、監視対象たる意味がある。
この廬山(おとこ)は、確実に実行する。
爛々と輝く視線が語る。
■麝香 廬山 >
さぁ、どうする。"風紀委員"追影切人。
目の前で監視対象が暴走したら、お前ならどうする?
■追影切人 > 「―――……。」
その指摘を受けた瞬間、何かがギチギチと音を立てた。
錆び付いた歯車が軋んで動き出そうとするような、見えない鎖を引きちぎろうとするかのような。
――根っこまで錆び付いている?…あぁ、あぁそうかもしれない…それを認めたくないだけなのかもしれない。
――人間?人間だって?刃ですら無いただの人間?…ふざけるな、と赫怒が全身を支配する。
沸騰するようなソレとは別に、気持ちは妙に冷静だ…だけど、それは冷めている訳ではない。
湧きあがる何かをらしくもなく鎮めようとしているだけ…そんなもの、直ぐに決壊する。
不意に、男の全身あちこちから、何かが破裂するような音が響いた。
――【無限山脈】の言葉に、【凶刃】の全身に施された異能抑制装置が。
…異能の出力が高まれば、直ぐにでも彼の異能を強制停止させるそれが。
――刹那の力の急上昇に耐え切れず、全て砕け斬られた。
そして、重傷とは思えない動きで獣の如き勢いで飛び上がり、左手は手刀…何の武器も持っていない、生身のソレ。だけど。
未だ本来の出力には届かずとも、明らかに異常な凶気を纏いながらその手刀を廬山目掛けて振り下ろそうと。
本来なら、手刀の形を取っただけで周囲の全てを斬り刻むそれが、全部纏めて男へと向けられる。
――これでも昔の自分には遠いだろう。だが、だけれども。
■追影切人 > 「――ごちゃごちゃうるせぇ、斬り殺してやる。」
■麝香 廬山 >
何かが破裂するような音がした。
いや、本当に砕けたんだ。
肌から鮮血が飛び散った。錯覚だ。
殺気。異常なまで凶気が肌を撫でた。
自らが斬られたと錯覚するほどに禍々しい鋭い気配。
構えた手刀は、文字通りの刀だ。
一本筋の殺意が自分に向けられている。
心身を焼き尽くす切人の怒り。ああ、怒ってるな。
昔からわかりやすい。ガサツで、かっとなりやすくて。
妙に人間臭い所もあった。その影響か。
自分自身の怒りだけとは思わない。
この男が怒り理由は恐らく───────……。
「……コイツぅ~♪」
なんていじらしい男なんだ。
まだ、そういう顔も出来るのか。
回避をする動作さえ行わない。
走馬灯のように、刃がじっくりとその身に迫る。
その最後の瞬間まで、廬山は笑みを絶やすことはない。
楽しげに口角を釣り上げたまま、左腕がその体に───────……。
■麝香 廬山 >
───────……辛気臭い病室の中。
追影切人は、ベッドの上に居座っていた。
そこには何一つの欠落もない。
廬山が病室に来た時のままだ。
その証拠に、拾い上げたはずの端末がベッドの上に転がっている。
制御装置も元のまま。残ったのは、直前までの感情のみ。
それ以外は、元通り。【無限山脈】の力の一旦。
「────……いい凶気だね。悪くないよ、切ちゃん。」
隣にいる廬山が、微笑みかける。
「ほんの少し、昔を思い出したかなぁ……。
けど、ゴメン。"今は"ちょっと受け止めれないや。
病室でヤりあったら、ふたりとも首ドーンだよ?」
おどけるように、肩を竦めた。
どんな経緯であれ、何の許可なく
監視対象二人が異能を全力で行使すれば、
互いにそれで終わり。
流石にそれは此方の望むところではない。
からかったのは此方だと言うのに、悪びれる様子さえ無い。
「所でさっきの言葉……アレ、本気?」
感情を持ち得したまま、【凶刃】を超えて見せる。
その言葉に嘘偽りはないか、と。
■追影切人 > 「―――…こンの…クソ野郎が…!!」
躊躇なく、本気で斬り殺すつもりで振り下ろした手刀…の、筈が何故かベッドの上に座っている状態。
…やりやがったなコイツ。苦々しい顔を浮かべつつ、吹き出た凶気の残滓がかろうじて”名残”として残っている。
何もかもついさっきまと同じ状態。この馬鹿のふざけた能力の一端だ。
能力だけで考えるならば、おそらく一番最悪に質の悪いふざけた力だ。
ゆっくりと息を吐く…凶気を鎮める、なんて事はしない。ただ気分を少し落ち着けたい。
「――それでも構わねぇつもりでテメェぶった斬りに行ったつもりなんだがな…クソったれ。」
まだ”足りない”。凶気も昔の感覚も、能力も一部あのクソばばぁに奪われたままだ。
…が、そんなのは言い訳でしかない。今の己の腑抜けさはいい加減身に染みた。
感情はやっぱり刃を鈍らせる。夏輝と戦った時や昨日、凛霞と会話した時も痛感した事だ。
――それでも、そのくらいしてみせなければ。
「――ハッ、当然本気に決まってんだろうが。
感情なんてクソ面倒なモンで鈍になってる俺が、昔の【凶刃】を超えてぶった斬る――最高じゃねぇの。」
嗤った、凶気の名残をその全身に滲ませたまま。
昔に比べれば鈍で、先ほどは昔の片鱗が見えるくらいには切れ味鋭いものを見せた。
――だが、矢張り鈍には変わりない。それでも――だ。
「――そのくらいはしねぇと、テメェを含めた他の奴もぶった斬れねぇだろうが。」
誰にどんな想いや感情を抱こうが、最後は必ず斬る事に帰結する。それが原点。
ならば、感情を得て鈍ろうと関係ない。いずれ必ず、【凶刃】すら俺は斬り捨てる。
■麝香 廬山 >
「褒め言葉どうも。でも仕方ないでしょ~?
昔のキミなら、今のボクはバラバラだったけど、
今は異能ごと斬れなかった。それだけじゃない?」
散々煽っておいてこの言い草。
勿論悪びれてるつもりもないが、
今の制限された出力なら、【凶刃】相手なら死んでいた。
此れは同時に、一つの目安を相手に教えた。
今の切人が、かつての【凶刃】にどれだけ遠いか。
口で伝えるよりは、よりお互いらしい伝え方だと自負している。
「…………。」
どうやら本気らしい。
感情を覚え始めた刃の戯言。
彼も結局は人間だった。いや、それならそれでいい。
少なくとも彼は変わり始めた。
自分の知る【凶刃】とは徐々に離れてきている。
じ、と切人を見つめる表情に笑顔はない。
数刻、数分、何かを考えるように、見据えたまま。
「……そんな状態で、そんな事言えるんだ?
そこは変える気ないんだね?そっか……。」
気づいているのだろうか。
彼は自身の抱える"矛盾"に。
彼が芽生え始めたそれとは対局に位置するのに。
それを分け与えた人々の意味を。
暫しじ、と見つめ続けた後、ふ、と微笑んだ。
「それじゃあ、応援しておこうかな。」