2024/09/22 のログ
ご案内:「Free1 児童養護施設『方舟』」に焔城鳴火さんが現れました。
焔城鳴火 >  
「――ったく、あのクソ女ッ」

 鳴火が『ポーラ・スー』の緊急搬送を知って、それから数日。
 養護施設『方舟』は非常に慌ただしい――というよりは、荒々しい院長代理が台所を支配しているために、騒がしいひびになっていた。

『めーちゃんー、ごはんまだー?』

『かいじゅーせんせー、はやくしてよー』

「――っるさい、ガキども!
 喚くだけのヤツは弁当抜き!」

 『ええー!』と上がる子供たちの不満の声。
 それに、ガルル、と唸る鳴火。

「はいっ!
 チビどもは片付けして椅子並べ直す!
 他の奴らはテーブルを拭いて皿を並べる!
 やらない奴は、ほんとに弁当作ってやらないからね!」

 『ぎゃあー!』と騒がしい悲鳴が子供たちから上がる。
 こうして弁当抜きという恐ろしい脅し文句によって、子供たちは無理やり統率させられているのである。
 

焔城鳴火 >  
 なお、普段からここを仕切っている『あーちゃん先生』こと、ポーラ・スーは、こんな無秩序の子供たちを自然と従えているのである。
 鳴火からすれば、一人でよくやるもんだ、と、手伝いに来るたび頭を抱えるのだが。

「あーもう、食べたらさっさと学園行く準備を――おいこら遊びはじめんじゃない!
 ぶん殴られたいの!?」

『わー!
 ぴよちゃんせんせーがキレたー!』

「誰がぴよちゃんだ!
 ほらさっさと行けジャリガキども!」

 そう言って初等教育以上の子供たちを送り――いや、叩きだし。
 それ以下のチビっ子たちには、朝食の後片付けをさせて。
 そこまでやって、ようやく一息つける。
 それも束の間の休息ではあるのだが。
 

焔城鳴火 >  
「――っん、とに、ココのガキどもは。
 元気がありあまり過ぎだっての」

 ソファにぐったりともたれて、天井を仰いだ。
 鳴火もなんだかんだと十年以上子供の面倒を見ているのだが――それでも、まったくなれないものだった。

「一対一ならいいんだけど――ん?」

 端末に着信があり。
 珍しい着信音は、古い『幼馴染』の一人から。

(――なによ、『饕餮(とうてつ)』から?
 珍しい、というか――)

 幼馴染であり、『後輩』でもある女からのメッセージに、首を傾げながらオモイカネを開く。

『――先輩、霊亀(れいき)先輩が倒れたって本当ですか?
 実は、紅天(こうてん)の子たちから、先輩たちに凶兆が出ているって聞いて。
 少し調べたんですけど、『方舟(アーク)』が動いてるみたいで――』

 そこまで読んで、鳴火は『特に問題ない。気にすんな』と、そっけなく返信を送った。

(――『K』のやつ、まだ何かやるつもり?
 『M』の計画は終わったはず)

 額に左腕を載せたまま、少しだけ考える。
 もし――『あの計画(博士の理想)』を『K』が諦めて居ないのなら。
 ――あのクソ女の状況にも合点がいく。

「――二度と関わるつもりはなかったんだけど」

 あの心配性な『後輩』を、不安にさせたままではいられない。
 近いうちに、あの不愉快な『第二方舟(沈没船)』に行くしかないだろう。

(――凶兆に瑞獣の銘が打ち勝てると良いけどね)

 そしてまた深く、『鳳凰』は疲れたようにため息を吐いたのだった。
 

ご案内:「Free1 児童養護施設『方舟』」から焔城鳴火さんが去りました。