2024/09/26 のログ
ご案内:「誰そ彼、彼は誰」に紅音さんが現れました。
紅音 >  
「あ」

商店系の部活からは、常世公園を経由するのが近道。
不意に食べたくなった夕食を拵えたあと、
すこし時間が早めだったのと、冷凍庫がさみしかったのもあり。
残暑の頃、そろそろ盛りの過ぎるアイスクリームが押し込まれたビニール袋を手に。

偶然、出くわした。公園で休んでいるそいつに。
眩しい夕焼けの逆光に照らされて、みまちがえようもない立ち姿は、
表情の失せたつくりもの然とした顔で、
めずらしく言葉なしに、じっとみつめているばかり。

ご案内:「誰そ彼、彼は誰」に緋月さんが現れました。
緋月 >  
「あ。」

下校帰りのちょっとの休憩。
ベンチに腰を下ろして、いい加減居候生活も終えて独り立ちでも
する時期かなぁ、と考えて、
さて帰ろうかと立ち上がった時の事。
気配に気づかなかったのは、ひたすらに気を抜いていたからである。
まあ言ってみれば油断であるが。

偶然の遭遇である。
何か用事があるなら向こうから連絡でもしてくるだろうと思っていたし、ここ暫くは
色々と真剣だったり慌ただしい出来事が起こったりで、何か連絡をする余裕がなかった。


「――――何ですかその顔。」

ちょっとだけ、むすっとした雰囲気で一言。
 

紅音 >  
「……………」

かなかなと鳴く寒蝉の音も遠くに、問われて表情を忘れていたことに気づくのだ。
なるほど、言いたいことがあふれると表情が失せるらしい。
すぐにもこたえは返さずに、距離も詰めないままに。
いつかのことを測りあぐねたような距離感で。

「……終わったの?」

表情もないまま、静かに……それでも、届いてしまうその声で。
小さく問いを重ねてしまう始末。
夏祭り、花火の下の涙の理由は、仮面に隠した諸々の事情は、
ひとまず結びまでいったのかと。

連絡を差し出さなかったのは、ひとえにそれを妨げぬようという気遣い。

緋月 >  
「――――。」

その問い掛けには、ふぅ、と小さく息を吐く。
少しだけ、遠くを見るような眼で。

「終わりましたよ。」

短く、そう一言。

「……少しだけ、「いけない事」をやったせいで、
『先輩方』には後でひどく叱られましたけど。」

付け足す様に、そう一言。
遠くを見るような眼だが、その背筋は真っ直ぐに伸びていて、その瞳に
後悔の色は微塵も見られない。

自身の行った結果と、それに対するお叱りはあったが、
それに対する罰も含めて、すべては終わった事。

その結果に対して、悲しみはあったが、後悔はない。
自分が選んだ、結末だ。
 

紅音 >  
……見たことのない貌をする。
辛いこともあったらしく、しかし実りもあったようだ。
こうして何にも阻まれず視たのは、一月と半分くらい。
十代のその期間は、ひとつの夏は、とても長い。
その仔細を問うまえに、まずひとつ。

「そう」

うけこたえもそこそこに。
ひとつふたつと歩幅多く踏み出してから、その背を抱き寄せる。
有無を言わさぬものがあった。取り縋るようでも。
息を吸う。大きくゆっくりな心拍を伝えながら。
お互いに、長い長い旅の途中、ふたたびばったり会って、
伝えなければならない言葉は、まずは、

「…………おつかれ」

耳元に滑り落とすように。
自分でも驚くほど、静かで優しい声が出た。

緋月 >  
「………。」

短い声と共に抱き寄せられ、かけられた言葉は、ひどく短い、
しかし、それゆえにかひどく心に響く、労いの言葉。
そのたった四文字の言葉に、大きく息を吐く。

――全てが終わった訳ではない。
新しく、突然に発生した頭を悩ます出来事もある。
あまり表に漏らす事が出来ない秘密も、出来上がった。

それでも、今は一言だけ。

「――――ありがとう、ございます。」

その一言と一緒に、肩に入っていた力が抜けた。
今だけは、少しゆったりと出来る気持ちだった。
 

紅音 >  
「うん」

しばらくそうして、夏の名残の音を聴く。
温もりも熱も久しくして求めたところもあるけれど、
隠しきれぬ疲れや緊張の色も見て取れたから。
だから言いたいことは、一瞬だけ飲み込めた。

それでもまた、この声はいつぞや雨のように、
それ以外のすべてを遠ざけるように。

「……あのさ」

十二分、時間をとってから。
それでも重なったまま、声を次ぐ。

緋月 >  
「………。」

ただ、静かな時間。もう、夏も終わりが近い。
その証拠に、日の沈む時間が日に日に速くなってきている。

もう夕方かと思う頃だった筈の空は、気が付けば
より赤さを増して、暗くなろうとしている。

「……何ですか?」

問う声があれば、短く答える。
先程と同じ、穏やかな調子で。
 

紅音 >  
ひょい、と手に持っていたビニール袋を取り上げて。
そのほっぺに、キンッキンに冷えたアイスクリームの涼気を触れさせる。

「……じゃーあー連絡しろよ。真っ先にボクにしろよ」

少しだけ離れて向き合うと、いつもの表情を取り戻す。
言い募る不機嫌そうな顔でまくしたてはじめた。

「そのチョーシだと終わったの、きのう、きょうの話じゃないよな。
 あれからボクがキミのことまったく考えてなかったと思う?
 ほったらかして、好感度が据え置かれてると思うのはちょっとナマイキなんじゃなあい?」

ずい、と間近間近に顔を寄せた。
待つ、なんて奥ゆかしいコトをしてしまったのがそも不覚であるものだから。
それはもう――ずっと考えるほどには、意識を割いていた。
魔は機嫌を損ねるのだ。

緋月 >  
「わぷ。」

つめたい。いきなりアイスクリームを頬に当てられた。
流石にいきなりの不意打ちには眉を軽く吊り上げる。

「何するんですか。というかお菓子を遊びに使わないで下さい。」

ド正論で返した。
不機嫌そうに連絡しろと言われ、更に言葉を続けられれば、ぐぅ、と
少しやられたような表情で返す。

「そ、それは……悪かったです、すみません。

でも、ここ数日、そんな暇もなかったんですよ…。
お世話になってる先生が、昼食の真っ最中に血を吐いて
倒れてしまいますし、何より――――」

あ、と少し拙そうな表情をして、周囲に気を配る。
――色々と妙な事に詳しい目の前の麗人だったら、何かしら知っている、かも知れない。

だが、下手に口に出すのはまずい気がする。
そうでなければ、指での書き文字など使わないだろう。

「……その、私も、そちらのお見舞いで、ちょっと時間取られてまして…。」

嘘である。意識不明の状態で、面会は謝絶だ。
兎も角そんな事を言い募りながら、生徒手帳を取り出し、ちょっと覚束ない
手つきでスケジュールアプリ――と見せかけながら、こっそりメモ帳を起動。
ちょいちょいと指差しながら、ポチポチと指を動かして文字を何とか入力。

――件の先生がやった事を覚えて置いてよかった。
 

紅音 >  
「あそび……?真剣な抗議だよ、コレは。
 ボクだって筆まめなほうじゃないケド、業務連絡くらいはちゃんとするもん」

弁舌も回る回る。よし、調子が戻ってきた。
がさりと音を立てて袋を持った腕を垂らす。

「しっかり休めてないってのはなんとなくわかってるケド。
 ……いろいろこっちも大変だったからこれくらいは言わせてよ。
 特にあの――我慢して――ボクだってなぁ……ッ……!」

なんか本当に辛いことがあったらしい。ちょっと涙ぐんだ。
それでも、不意に剣呑な言葉を聞けば首を傾いで。

「ええ、なんだソレ。たのしいランチタイムが台無し……。
 ……先生。ああ、えっと……もしかしてポーラ?大丈夫なの?」

色々タイムリーな話題であるが、入院してたなんて知らなかった。
彼女に託されたことを成したのはつい昨日のことだ。
そして――なにやらもちもちとメモアプリを頑張って操作して、
自分に伝えようとしている仕草……苦笑しつつ覗き込みながらも。

「……ボクんち行こうぜ。いろいろゆっくり話したいし。
 あ――そういえばもう、学校始まってるんだっけ。明日も講義?」

歩きながらでも、画面は見れよう。
さっき話した、先輩だの、祭りの時に聞いた友人だのの話もききたい。
近くにある住居に誘いながらに、隣り合って歩き出す。
視界の端、その画面に気を配りながら、だ。

緋月 >  
「それは………その、悪かったです! 気が利かなくて!」

謝ったのはいいが逆切れ気味だ。
と、そこで知った名前が出て来たので、ちょっと驚き。

「何だ、紅音ってばあーちゃん先生…失礼、ポーラ先生とも
知り合いだったんですか。

――ちょっと、大丈夫ではないです。まだ意識が戻ってないようで。
大量出血のショック、だそうですけど……。」

少し顔が暗く――いや、難しくなる。
ショックというよりは、解せないといった雰囲気の表情。

「…そうですね、此処でお話してたら折角のアイスが台無しになりそうですし。
講義もありますし…さすがに何時までもご厚意に甘えて居候生活も、
続ける訳にはいかなくなってきた気もしますから、一人暮らしのアテでも探そうかと。」

と言いながら、何とかスケジュールアプリを弄っているかの様子で、
頑張って文章を綴る。
歩きながらのアプリ弄りにちょっと悪い事をしてる気はしたけれど、
こうしないと安全に伝わる方法が見つからない。
 

メモ帳アプリ >  


            《第二方舟、という言葉について、何か知りませんか?
             返事は今は返さないでください。
             私も、先生から指書きで伝えられたので、直接口にすると、何かあぶないかも。》

 

紅音 >  
あーちゃん先生~?」

聞き逃さなかった。露骨に難しい顔になる。

「なんだキミ……わたしのお月様♥とかるなちゃん♥とか呼ばせてるだけじゃなくて、
 あーちゃん♥って呼んでんの……浮気?二股?ボクから連絡しなかったせい?
 たしかに母性が有り余ってる感じだったけど……正直ちょっとヒいてるよボク」

知り合い――であるが。想像以上に色々聞いていた。
怪訝と――ちょっとだけ。嫉妬が覗くのかもしれない。

「気絶するレベルで吐血したってことは胃から上のどこかの臓器。
 ボクの場合は心臓に過大な負担がかかったから――だったけど。
 そのあたりは、意識が戻ったら本人に訊くといい」

なんとなく理由に察しがついてるような、そんな口ぶりで。

「風紀委員と二人暮らししてるところには、遊びにも行けないしね。
 いよいよ独り立ち。緋月にちゃあんとできるかな……?
 ――ああ。明日の講義、全部欠席(キャンセル)しといて。離さないから」

さらっと告げつつ、足を進め……視界の端に飛び込んだ文字列に。
きゅっと眉根を寄せた。

「はぁ…………」

ため息。顔を手で覆って、やっぱりと言いたげだ。
予感はしていたのだ。自分が伝えられたならこいつも、と。

紅音 >   
すこし歩いて。
フェデラル様式の二階建て。『Gibson House』という、高級アパート。
正面玄関を入ったブリックタイルのエントランス。全体的におしゃれな空間。
壁に這う、瀟洒な手すりの階段を上がった201号室。1LDKの居室。
ひとり暮らしの先輩、である。

「んー」

扉を開いて、薄暗い玄関にさしかかる。
無数の紅色の光の糸が浮かび上がり――消えた。電気をつける。

外套(マント)はそっち。いまごはん用意するから」

リビングに入りながら、ハンガーツリーを指さした。

緋月 >  
「呼ばせようとして来るんですよ、圧かけて…。
言っておきますけどかなり前からですよ。あなたを「今の名前」で呼ぶより前。
……機界魔人の事件が終わった辺りごろ、顔を合わせてからです。」

割と正当な反論と弁明である。
本当にかなり前からの話だと、件の出来事を知っているなら理解が及ぶはず。

「ええ……その辺りは「色々」話す事がありますから、
先生の意識が戻った時の為に覚えておきます。

目星は付けている部屋はありますけど。
万妖邸…でしたか。異邦人街にすこぶる家賃の安いアパートの宣伝が見つかりまして。
同居してる人とお話したら、そっちに引っ越そうかと。

……講義欠席はしかたないにしても、もう少し時間は下さいよ。
成り行きとはいえ、部活にも入りましたし。サボり部員の汚名は御免です。
――まあ、余程の用事がないなら、部長さん、大目に見てはくれそうですけど。」

そして、顔を覆うのを見れば、小さくため息と共にアプリを閉じて
生徒手帳を懐へと。

「これ見よがしにため息つかないで下さいよ…。
私も心配なんですから……。」

嘘である。変にため息ついてこちらの必死の努力が泡になるような流れに
しないで下さいよ、が正解だった。
 

緋月 >  
ともあれ、案内されたのは舶来風、と言っていい、お高そうなアパートだった。
内装も御洒落。こんな所を借りるとなったら、どれ位お金が必要になるのか。

「お邪魔します。――では、借りますね。」

軽く伸ばして皺にならないようにしつつ、外套をハンガーツリーに引っ掛けてやれば、
その下から出て来たのは革製のカバーのような鞘に収められた、全長120cmはあろうかという片刃の大剣。
刀袋だけでも妙な目で見られそうなのに、何時の間に外套の下にこんな
とんでもないものを背負って歩くようになったのやら。
 

紅音 >  
歩くうち、どうにも呼び名には納得したらしい。
ほうっておくとこうなる。すこし面倒くさいところがある。
彼女に伝えた理想を鑑みれば――多少、どころでない独占欲があるのは自明。 

リビングには人が寝れそうなソファとテーブルセット。過日と同じ。
座って待つように促した。過日と違うのは、卓上のペン立てに万年筆や鉛筆とは別に、
ノック部にクマがついたピンク色の可愛らしいペンがささってることくらい。

「いつから二刀流になったんだ、サムライガール?
 場外までブッ飛ばすホームランバッターに転向をお考えで?」

流し台に進みながら、曰くありげな剣を肩越しに見て、不思議そうに。
片手で振るには難儀しそうな大物だ。となれば、用途を分けた武器(どうぐ)、と見るが。

「……ポーラ(あいつ)な。会話がいつも記録(モニタリング)されてるんだよ。
 ここに――」

紅色の髪を指でさらりと流し、あらわになった耳のあたりをトントン、と叩いて。

「機械がくっついてた。……でも、
 常世公園でも風紀や公安の耳があるかもしれないから、文字に頼ったのは正解。
 それくらいキナ臭い話なんだよな」

そのまま髪を後ろに縛ってから手を洗って、
キッチンに用意されていた寸胴鍋を火にかける。

第二方舟(セカンドアーク)――ってのは、神性(かみさま)の研究をしてるトコ。
 研究区の、正式に認可されてる。表向きには、製剤とか機器の開発が有名。
 ポーラに仕事を頼んだときに、ボクも伝えられてね。
 調べてた……っていうか、きのう見学会に行ったんだ」

頭と足を使う労働は、それなりに
冷蔵庫からボウルを出して、電子調理器具に。
フライパンにバターを引いて、ロールパンに焼き目をつける。手慣れた調子。

「ああ、この部屋の防音スゴいから安心して。まえにもいったよな。
 侵入の形跡もないし、声が外に漏れることはないと思う。
 ――――――――ないても、叫んでも」

終わり際は、ぽつ……とつぶやいた。
部活、何時からなんだろう。それまでに離せばいいのか。

緋月 >  
「貰い物です。色々あって焦ってた頃……今思えばですが、
恐らくあーちゃん先生辺りの差し金で寄越されたんでしょう、
私と「ルーツ(源流)が同じ流派」を使う、狼の能面を被った男の方から、必要になると。

…実際、これがなければ、「目的達成」も危うい所でした。」

肩からかかっている、大剣を背負う為のベルトの留め金をパチンと外し、
外見の割には軽めの――それでも充分重そうな音と共に、床に傷を付けないように
手近な場所に大剣を立て掛けながら説明。

あの先生が何故いちいち回りくどい事をしていたのか、その理由を知ると、少し厳しい顔。

「……ポーラ先生には、「先生」として遭遇する前に一度、
顔を隠した状態で戦いを仕掛けられました。
二度目に、病院で会った時…生徒手帳を受け取った時に、ちょうど、そんな仕草をしてましたが…。」

真相を知れば、苦い顔。

「……会話を検閲されていた、という事ですか。
人の個人的な時間やら何やらを、何だと思って…。」

きり、と思わず歯を鳴らしてしまった。
いかん。冷静にならねば。深呼吸をひとつ、ふたつ。

話が進めば、その顔は唖然としたものになっていく。

「は――――神。神さま、ですか?

……いや、私も確かに、とある御神に信仰を捧げていますし、
実際にその御神の御姿も見ましたけれど……。
…じゃ、つまり、ポーラ先生は、そこと何か関りがあったと、そういうこと……?

と言いますか、見学会って……随分と戸口が広いですね…。
見学に行ったという紅音がそうしているということは、無事に見学会は終わったか……
……何かあったけど、何とか帰って来られた、という事ですか?」

突拍子もなさ過ぎる。
御神に出会っていなければ、それこそ与太話で受け流す所だった。

「――――不純ですよ。」

最後の一言には、ちくりと一刺し。
 

紅音 >  
「……アレだな。えっと……」

ちょっと突飛な話だったが、理解は行く。

「源義経みたいだ。確か、天狗に稽古つけてもらってたとか。
 ひょっとしてそいつ、キミの肉親だったりしない?
 ――目的、ね……ちゃんと、できたのかな……?」

綺麗なお別れ。最高の自分をみせるコト。
少なくとも……いまの彼女に、そんな悲壮な永別の痕跡は見られないけれど。

「あいつ自身、相当黒いことやってきてる人間だろうからな。
 ……いろいろゆるくなってる時代だとはいえ、
 女がカトリックの司祭やれてる時点でただ事じゃない。
 聴かれてるほうと聴いてるほう、どっちに正当性があるかはわからない。
 まあ、いちおうボクが動いたのは、ポーラのため。貸し借りの話」

やがてトレーに乗せて運ばれてきたものは、乳白色のシチューと。
ロールパンに、香草とマヨネーズで和えられた、
大ぶりの海老らしい切り身が詰め込まれたサンドイッチ。ふたりぶん。

「クラムチャウダーと、ロブスターロール。
 どうぞおあがりくださいな、お嬢様。
 ……ひとりで二日分つくってたから、昼は外でだね」

手料理だ。あまり、外でも見慣れないメニューかも。特にサンドのほう。

「今日び、神様――と呼ばれていたモノは珍しくもなんともないんだぜ。
 ……『大変容』が起こった、この世界じゃね」

すこしだけ。
苦々しいものを噛むような顔になりながら、結った髪を解いて。

「とはいえ人間からしたらまだ未解明で強大な異種族扱い。
 神との共存共栄のための研究は、この世界としてはホットな話題――さて」

脚を組み組み、サンドをひとつ取り上げて。

「色々落ち着いて、たのしい部活動をはじめて、ひとりぐらしのおうち探し。
 そんな……すてきな学生生活はじめたばっかりのキミには、まず警告しとく。
 これ以上、踏み込まないほうがいい。絶対面倒なコトになる。
 ……どっちも、純粋な気持ちだからね?言っとくケド」

遊びのない横顔が、流し目でそちらを見遣る。
相手を求める気持ちも――慮る気持ちも、そう。
つまり見学会にいった先でなにかがあったのだ。

「キミがやらなくても、ボクが全部やっておく」

――茶番。
相手の応えがわかっておいて、事前に形だけの警告と本心を伝えただけだ。

「で、どうする?」