2024/10/01 のログ
黒條 紬 >  
「おおっ、読んでくれたんですね~っ!
 いやー、流石悠ちゃん、分かってますねっ!
 
 そう、男同士の熱い愛情ってのも素敵なものですよ……
 燃えまくりです、燃えまくりっ!
 
 そして、どうしようもない壁が二人の間にある、切なさもありますし……」

生クリームトーストもニ枚食べ終えて、
悠薇の感想を受けた紬は天井を見上げて思いに耽る。

「ハッ! 一瞬今飛んでましたっ」

物語の世界に、である。

「って、もう食べ終わったんですっ!?
 あんな辛そうなカレーを……!?
 す、すごすぎる……」

そうして空になった皿を見て、驚愕する紬なのだった。

伊都波 悠薇 >  
「えへ」

わかってる、と言われるのが嬉しい。
最近は『ワカラナイ』ことが多かったから。
自分のを押し付けることが、多かったから。
嬉しい。

「あ、はい。いつのまにか。私も今食べ終わったことに気付きました。いつ食べても美味しいからですかね?」

驚愕されているのには、どうしてだろと思いつつも、水をひとくち。
ペリエを飲んでから、カレー完食まで。
以降、初の給水である。

「そういえば、黒條さんは、慰安旅行、行くんですか?」

黒條 紬 >  
「あ、慰安旅行ですか?
 勿論行きますよ~!
 私も、友達少ないですからねぇ……。
 渋谷分署じゃ悪評も凄まじいですし?
 
 でも本庁の皆さんとなら仲良くやれるかもしれないなー、って」

あはは、と困り笑いを浮かべる紬は、
悠薇の方をしっかり見て、首を傾げる。

「悠ちゃんも慰安旅行には行きますよね?
 せっかくの機会ですしっ!
 ぜひぜひ一緒に楽しみましょうよ~っ」

そう言って親指を立てながら、満面の笑みを浮かべる。

伊都波 悠薇 >  
「知らない、だけだと、思うけどな」

ぽつりと、本音がこぼれ出た。
彼女が友達が少ないなんて、いまでも信じられない。『自分と違って』、出来なかった理由があるわけではなさそうだし。

「姉に、引き摺られて、行くことになりそうで。でも大人数、苦手だから、止めようと思ってたんだけど。

黒條さんもいるなら、行こうかなぁ」

黒條 紬 >  
「……だと、良いんですけどねっ」

悠薇のこぼす本音に、少しだけ言葉を詰まらせる紬。
紡ぎだした言葉は、そんなありきたりの言葉だった。

紬は、友達が少ない。
実のところ作れないのではなく、
無駄に作らないようにしている、というのが正しいだろう。
そういう点で、両者には明確な違いがあった。
だが、そのことを紬が口にすることはない。
今は、まだ。

「ふっふっふ、私が居るなら行こう、だなんて
 とっても嬉しいですよ、その言葉っ!
  
 ぜひぜひっ!
 一緒に美味しいもの食べて、あつーいお風呂入って~、
 色々楽しみましょ~!」

元気いっぱいのガッツポーズ。
爛々と輝く目で、悠薇の方を見つつ。

伊都波 悠薇 >  
「……きっと、いっぱい、友達できますよ。旅行で」

出来て欲しいと願う。
こんなに、素敵なのだから。気配りができて。自分とも仲良くしてくれて。

ほら、今だって。

「はい。そのときは、一緒に夜、本読みましょう。持っていきますよ、オススメ」

自分も、頑張ろうと思わせて貰った。

「黒條さん、今日はありがとう。私、黒條さんと、お友達になれてすごく、幸せ」

それは紛れもない本当で。いつもなら隠れるーー本音だけれど。
今日は、なんでかすんなり言えた。

ーー……すぐ我にかえって。前髪を整えて視線をかくしてうつむいてしまったけれど。

黒條 紬 >  
「私も持っていきますよっ!
 それじゃ、読書の秋ってことで……寝る前にお互いのオススメを読んで語り合う、
 読書会でもしましょ~っ!
 うーん、でもそれなら夜は二人きりの方が良いかもですね。
 じゃあ、二人部屋を希望しときますね~」

短いものなら、簡単に読み合いができそうだ。
明るい笑顔を見せながら、紬は胸の前で両の拳をぎゅっと握った。

「私も嬉しいですっ。
 ……悠ちゃんには、救われてますよ、色々と」

それは。ぽつりと口にした、その言葉は。心の底からの、本音だった。
乾ききった心に潤いを与えてくれる、日常の象徴の一つなのだから。

「もー、照れ屋さんで可愛いんですから~っ」

髪を整える様子を見て、悪戯っぽく笑う紬。

「じゃ、名残惜しいですが、今日のデートは終わりにしますか~っ」

そのついでに、そんな風に冗談も飛ばしつつ。

伊都波 悠薇 >  
まさかの方向に話が飛んだ。

「ふた!?」

それは難易度が高い。
ぼっちには、難易度が……

「あ、姉もいれて三人で」

助けてお姉ちゃん。

「……?」

嬉しいのあとはうまくききとれなくて、首をかしげた。

「……や、やめ。えと」

ちがう、と言おうと思ったけれど。

「はい。今日のでーと、『は』おわりで」

なんて、いったあと、やっぱり恥ずかしくて立ち上がり。

「か、かいけい! さき、してきましゅっ」

逃げるように個室のそとへ。

ーーこんなんだから、だめなんだろうけれど。でも、今日はがんばったから、このくらいいい、よね

顔が熱くて、手で仰ぎながら先にすたすた、会計へとむかってーー

黒條 紬 >  
「はいはーい!
 大人数だと、ちょっと読書には向かないかなーって思っただけなので~!
 凛霞さん一人なら大丈夫でしょうっ!」

うんうん、と腕組みをしてそのようなことを口にする紬であった。

「私もお水だけ飲んだらすぐに行きますね~っ」

そう口にして、閉じられた扉の方を見て。

――一歩一歩。いい感じに、前に進めてるんじゃないですかねぇ?
  ギブ&テイク。貰ってる分は、こっちも返しますよ。

誰にも聞かれることのない心の声。
それは、悠薇を静かに見守る、紬の本音。

水を飲んで、一息ついて。

彼女もまた、個室を出ていくのだった――。

ご案内:「学生通りにある喫茶店『 』」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「学生通りにある喫茶店『 』」から黒條 紬さんが去りました。