2024/10/26 のログ
ご案内:「『Gibson House』201号室」にノーフェイスさんが現れました。
ご案内:「『Gibson House』201号室」に緋月さんが現れました。
ノーフェイス >  
どうやら合鍵として登録されていたようで、
学生街にあるブラウンストーン作りのアパートメントは、
護衛を任された少女の学生手帳の認証を受け入れた。

寝室のデスクの上には、肉筆に拘ったノートや五線譜。
スタンドには一本のアコースティック・ギター。
積まれた実書籍や、化石めいた再生媒体が、部屋主の趣味を物語る。

そこで出迎えたのは、やはり静かな寝姿だった。



窓から差し込む夕陽に照らされる白皙の貌。
寝台で昏々と眠る様は、平素を知らなければいばら姫にも見えるやも。

金属の荊棘の破片はすべて吸収され、外傷は完治している。
もとより高い体温は、翌日あたりまではひどく高まっていたものの、
いまは呼吸も静かに落ち着いていて、火照りと微熱程度だ。

試練のさなかにうたっていた旋律や、捧げられた歌を、
ときどき寝言として、ぽそぽそと口ずさみながらも。
意識は未だ戻っていない。

緋月 >  
一方、こちらは何とか部屋の主を担いで戻って来た白い服に黒い羽織の少女。

外傷が塞がっているのは確認できたが、熱がひどい。
結局登校を諦めて、こちらも疲労が残る体ながら頑張って熱を冷ませるように
手当に当たる一晩だった。
とは言っても勝手に部屋の中を弄って惨状を増やしたくはないので、古典的だが冷たい水で
身体を拭いたり濡れたタオルを額に当てたりといった具合だったのだが。
意識を失っている麗人が時折口ずさむ詩や歌に小さく手を止めては、手当てを再開するといった事を繰り返し。

そうして、今は黒い羽織を毛布代わりに、居間のソファで横になっている。
疲労もあって眠りが深いのか、寝息の感覚が長い。
 

ノーフェイス >  
「――Famished as a wolf(おなかすいた).」

むくり。
起床はあっさりとしたものである。
よく寝た、と言いたげに伸びをして――周囲を確認。

「うわ……寝すぎ」

充電状態になっていた学生手帳確認。二日ほど時間が飛んでいる。
……そのわりに、だいぶ身体の調子がいいし、汗も……と思うと。
運んでくれたばかりか、しっかり看てくれたらしい。
自分の素性が素性だけに病院を頼れなかったのもあるだろうし、
想定以上に、自分が消耗していたのか――
すこしばつ悪そうに髪を撫でてからベッドから降り、栄養素を求めて寝室から出る。

「――……子守をどうも」

ソファに寝転げる姿を見て、少し安堵する。
スリッパでぽすぽすと歩いて、グレーの前髪をかきあげてやると、
労いがわりに、額に唇を落とそうとして――

緋月 >  
白い服の少女は、黒い羽織を毛布代わりに完全に眠っている。
勿論、部屋の主が意識を取り戻した事も分からなければ、労いの「ご褒美」についてもさっぱり気が付かない。
普段であれば目が覚める所だが、まったく気づいた気配もないまま、額に唇を落とされる。

まさに、その直後。
 

??? >  
『――労いは自由だが、意識の無い間に揶揄う種になるような真似は、
あまりしないでもらいたいものだ。

まだまだ…そういった事柄には初心な所が強いからな、我が……「盟友」は。』

寝ている筈の「彼女」の口から、そう声が漏れる。
紛れもなく、少女の声でありながら、別人としか思えない口調。
 

ノーフェイス >  
ふつうに寝て学校行ったってよかったのに。
そう考えながらも、それができない相手なのだった。
数日を浪費させたことに、さてどう穴埋めしよう。
――いろいろ台無しになったすき焼きも含めて、なにかごちそうしてやろうかな。

「…………」

瞑目のまま紡がれた声に、うっすらと瞳をあける。
常の焔の黄金ではなく、蒼玉(サファイア)の碧眼だ。

「すーっかり忘れてた。キミがいっしょにいるんだったな?」

顔を離して前髪を直してやると、難しい顔をして溜め息を吐く。

「寝てれば気づかないだろうに。起きてる間にしろっての?番犬ちゃん?」

??? >  
「――それを種に後々揶揄われたら、我が盟友が後々悶える。
まあ、「我」が居るからそういった接触や睦言がやりづらい、というのは理解できるし、同情はするが。」

声を掛けられれば、少女の身体がゆらりと揺れ、目が開かれる。
瞬間、蒼い炎のような光が一瞬双眸に灯り、紅い筈の瞳はやや緑を帯びた青色へと変わり。
同時に、髪の色もより白に近い灰色へと変化し、更に頭頂近くからひょこん、と毛の塊…否、「耳」が飛び出す。
犬、というには少々尖っている、狼の耳。

「やるなとは言わないが、揶揄ってやるのは程々にして置いて欲しい、という事だ。
……先日の件で、盟友の不器用さは理解できたであろう?
あまり煙に巻かれると、またぞろ暴走しかねない。
それは――我も望む所ではないから。」

そう語る合間にも、ひょこんと小さく狼の耳が揺れる。
 

ノーフェイス >  
「しいちゃんがキミを緋月に託した理由。
 ……半分は、嫌がらせ(それ)だと思うね」

苦笑した。とはいえ邪険にするつもりもない。
自分にとって、"友"は――重くはないけど、大きいもの。
違う人生を辿ってきた緋月とは違う風景を見てはいるだろうけど、
もう半分は、そういうことだろう。

「額への接吻(キス)は、"祝福"のイミがある。
 こんど教えてあげて?ボクがいないときでいいから」

唇のまえに指を立てて、悪戯っぽく微笑んだ。

「いやあ?今後もからかいも弄びもしますよ、ボクは。
 もっと、ボクのことで頭をいっぱいにしてくれないと!

 でも。こいつなりに真剣に悩んで、考えて……苦しんでも。
 もう……歩む道までは、悩ませない。こいつの成長のために。
 ……ボクは手を離さなかった、離せなかった。
 リードは引くさ。責任ってヤツかな」

言ってから、ソファの前にしゃがみこんで。

「にしても――似合ってる。そのお耳。
 緋月からしてわんこ(そっち)系だもんな……Hey、お手!」

すっ、と掌を差し出した。

??? >  
「だろうな。あの御使いの事だ、その位の悪戯心…だとしても少し悪辣だとは我も思う。
…まあ、我の厄介払いという所も大きかっただろう。
我は、我等が神の下にあるには、少し強く「己」を持ち過ぎた。
この身の主以外を継承者に選ぶ事を、考えられぬ程には、な。」

ふぅ、と息を吐きながら毛布代わりの羽織を取ると、軽く腰を浮かす。
何処から出して来たのか、ひょい、と尻尾が出て来た。
ふさふさである。

「――本当に、誰も彼も困ったものだ。
「あちら」は遊び心があり過ぎて困る、「こちら」は暴走が激し過ぎて困る。

おまけに我も使える力はまるで残っていない。
精々が、迷える霊や生ける者、死せる者を見分ける位。
後は、盟友の意識がない時にこうして表に出て来る事が出来る位だ。

――ああ、それについては後日教えておこう。
恥も外聞もなく悶える姿を、盟友は汝に見せたくはなかろうからな。」

言葉を選ぶなら、「武士の情け」というものか、と、語りつつ、くぁ、と少女の身体を借りる者は小さく欠伸。
お手の掛け声と共に出された手には、

「そういう事は盟友に言う事だ。」

かじ、と指に噛み付く。最も、痕が残らないどころか碌に痛みも無い甘噛みも良い程度のレベルだが。
 

ノーフェイス >  
「はじまりは権能(そっち)が目的だったとして」

おそらく、そういう意図で彼の一派に近づいた筈だ。
類推にはなるが――……愛着が魂を呼んだか、あるいは写し込んだかの。

「いまの緋月は自我(キミ)こそお目当てなんだろう?
 キミが緋月にとって、価値あるものであるならいい。
 で、そのカラダの具合はどうよ。いまダルくない?
 外傷と内傷はしっかり治したけど……あれからちゃんと寝た?」

いちおう、借りてる側から使い心地は聞いておく。
無理をされても困るので、客観的に問うてみた。

「痛て。……んー、学生手帳持ってくるんだった。
 ふさっふさのお耳にしっぽ。ハロウィンも仮装いらずじゃんか。
 これ。普段から出しとけよ」

細い指を噛まれた。楽しそうに笑って。

「ああ、そうだ」

欠伸する様子には、ふと。

「おやすみ前に。なんて呼べばいいかだけ教えてくれる?」

男女さだかならぬ美声が、そううたう。
名を音にのせること。その詞を求めた。

??? >  
「……そうだな。
確かに、盟友は最初は我が権能を求めていた。
その理由については…既に終わった事だ、語るまい。

――ただ一個の「道具」として扱えばよかったものを。
盟友は、少し優し過ぎた。それこそ、常に我との対話を求め、行おうとする位には。
最初は、漠然とした感情のようなものしか返せなかったが…一度、別れる事になった時には、
もうこのように、人格と言えるモノを持って、会話が出来る程になっていた。
そのせいで、随分と泣かせてしまったが…盟友が、我と在って、少しでも心安らぐならば…
死に傾き過ぎず、「寄り添う」事を忘れずにいられるならば、我はそれでいい。」

困ったものだ、と、小さく耳が垂れる。
「これ」にとっても、困った友人は放っておけない相手であるようだ。

「随分と深く寝たが、まだ少し疲労が残る、といった所か。
意志は別でも身体は同じ。疲労というものは感じられる。
…それだけ、汝の看病に力を使っていたという事だが。」

軽く目元を擦る仕草。
雰囲気も少々ぼんやりしていて、眠そうという感じがよく分かる。

「「我」だから出せるものであって、盟友が出せるかは別の問題だ。
我が言うのもどの口が、だが、あまり弄ってくれるなよ。
そういう玩具があるなら、買ってくれば着けてくれるであろうさ。」

羞恥心については知らないが、と投げやり気味。
流石に本物の耳と尻尾を目にしてしまったら、どれだけ上手いものであっても
玩具の域を出ないとは思ってしまうかもしれないが。

「――我が名、か。
久しく、考える事も無かった。盟友も、「あなた」とは呼べども、名付けはしなかった。
そんな事を考える時間がなかった事もあるし…どう呼べば良いのか、思いつかなかった、とも言えるか。」

つまりは「名無し」。
「埋葬の仮面」と呼ばれては来ても、其処に在る意志に、「名」はまだ与えられておらず。
 

ノーフェイス >  
「寂しかったんじゃないのかな」

ぼんやりと、ふたりの馴れ初めを聞いて思ったのは、そうだ。
緋月がただ仮面に与えたのかといえば、そうではないように思う。
友を求めたから友が生まれたかのような、寓話にもよくある話。
緋月を主体に、緋月から生まれたモノ、と見ていた。妹か弟、よりは影、写し身。

「なんか似てる感じがするから、キミたち」

性格は、むしろこちらのほうが落ち着いているのに。
尻尾は……触ってはいけないのかな。機嫌を損ねる()も多いそうだ。
尖った耳も――髪に易くふれるのは無礼だが。
まあ、持ち主が持ち主だ。指先で、そっと三角の輪郭を振れることは、許されるかな。

「なーんだよ、嫌味ー!?ボクだって相当カラダ張ったんだぜ?
 そりゃ、運ばせるつもりではあったよ。
 でも、ここまでしっかり看病してくれたのはー……
 ありがたい、し……学校も休んだだろうから、悪いとは思ってるケド……」

看病のことを持ち出されると、そりゃ反駁もしちゃうのだが。

「……緊張の糸が、切れたっていうか……」

緋月の迷妄が晴れたことで、安堵したところもあって、ぐっすりと。

「あ。 ……あ~~~~……、いや…… うん、それだけ」

他に消耗する理由って…と思い至ってあんまり言いたくないことが浮かんだのでこれは伏せる。

「…………」

まあ、あえて呼称は必要はなかったのかもしれないが。
呼び名はあったほうが、いろいろ便利。一方通行でも。
手を自分の顎にひっこめて、考えて。

「…………(さく)

月が隠れる、新月の頃。

「とか?」

どう?と顔を覗き込む。
普段と違う色同士(蒼と碧)が混じり合うように。

??? >  
「寂しかった――――か。

…そういう、ものか。そうかも、知れないな。」

かけられた言葉を小さく繰り返し、咀嚼するように沈黙。
納得するように頷くと、同時に眠気の波がきたのか、瞼がかるく下がる。
尖った耳に触られる事については、突然でもないしあまり強い触り方でもなかったので、
少しくすぐったそうな雰囲気を出されただけで済んだ。大人しい。

「嫌味だったらもう少し厭らしい言葉を選んでいる。
――我以外に盟友に「友」や「先生」といえる者は確かに在るが、
「寄り添う」相手は…恐らく、汝だけであろうさ。
大切にしてやってくれ。」

でなければ噛むぞ、と、小さく歯を鳴らす。
ちょっとシャレにならない。

「――盟友の名誉の為に弁護しておくと、本当に手当て…は、此処に運んだ時には既に傷が塞がっていたな。
看病と身の回りの世話に、疲労の残った身体に鞭打った事が原因だ、と言って置こう。
汝が傷を塞いでくれなければ、重傷者が一人に高熱で寝込んだ者が一人、
あの寂れた社に転がったままだっただろうからな。
傷が塞がっても、あの戦いだ。疲労まで手が回らなかったのは、どうしようもあるまい。」

弁護といっていいのかどうか。とりあえず、そういう事になったらしい。
そして、呼び名を提案されれば、小さく首を傾げ、

「盟友の知識では、月が見えなくなる夜を意味する言葉…だったな。
悪くない。普段は盟友の影に隠れて現れぬ身だ。では今よりそう名乗らせて貰おうか。
――何時の時代も、歌を扱う者は言葉を選ぶ感覚が他人より繊細かつ敏感だな。」

最後の言葉は、「この者」なりの誉め言葉、なのだろう。
 

>  
「――さて、では我は休む。
盟友については、心配するな。もうひと眠りすれば、疲れも大方取れるであろう。

…そうでなければ、食欲か。看病の間、食が少々疎かになっていた。
ああ、嫌味ではない。それだけ心配していたという事だ。」

今度はしっかり釘を刺し直し、ゴミ箱を指差す。
見れば、カロリーブロックやゼリー飲料の容器がゴミ箱の中に。
それこそ、食を惜しんで看病と様子見に勤しんでいたのだろう。

「盟友が起きたら、適度に労ってやってくれ。
ではな――――」

そう言い残し、新たな名を得た者はソファに横になる。
目を瞑れば、すう、と髪は元のグレーに、生えていた狼の耳と尻尾も幻のように消えてなくなる。

そこに寝ているのは、長いペースで寝息を立てる、いつもの少女だった。
 

ノーフェイス >  
護衛(たて)にしようとしてるボクに大切にしろは、ちょっと難題じゃない?」

と、戯けてはみるものの。
碧眼の眼を伏せて、少し考えてから。

「……死を想う暇などないくらいに
 生きてるボクがここにいるんだって、しっかり魅せてやらなきゃな」

おそらく使徒としての役割で。
あるいは、それ以外のなにかを通して、死に触れ続けた彼女と。
傍で生きるというのなら、それほどの生を感じさせねば。
おそらくは、惹かれやすい側だ。剣とは、そういうものなのかも。

示されれば、視線はゴミ箱。
生きていくのに必要十分な、美味しいけど味気なくもなるその数々。

「お褒めに預かり、恐悦至極に存じます――でいいのかな?
 ちょっと辞書を引く用事があって、いろいろ詳しくなったから。
 ああ、うん、おなか空いてるんだね?了解(イエスマム)
 ボクもちょうど腹ペコだったトコ。しっかりご馳走いたしますとも。

 ――はいはい、おやすみ、朔。
 緋月(あと)のことはボクに任せて」

す、と意識が落ちたあと。
その衣服に、血の染みが――残ってはいないことを、確認して。
あらためて、羽織りをそこに……すこし考えてから、かけてやる。
もうこの黒は、着られているだけの色ではないはず。

「境内で寝てたとき、(キミ)も気を張っててくれたのかな」

邪魔をせぬようにしよう。
さて、適当になにかつまもうかと思っていたが。

「牛乳は――まだ大丈夫か。
 あんまりレパートリーも多くないからなぁ、ロブスター……は切らしてるから。
 燻製肉と……あ、チーズがある……」

――すこしして。

ノーフェイス >   
眠れる鼻腔に届くのは、いいにおい。
知っている匂いだ。いつかご馳走したクラムチャウダーの香り。
続いて。

「……お嬢様、ごはんの用意ができましたよ」

その耳元に、直に囁く美しい(ASMR)が注ぎ込まれた。

緋月 >  
「…………んぅ…あ~………。」

食欲を刺激される匂いと、耳元に打ち込まれる少々刺激のお強い囁き。
碌な食事を摂っていなかった者には、意識を取り戻させるのに十分な刺激になったようで。

「……あー…うー……あさ…?」

疲労のせいか、胡乱な瞳と返事ながらも、白い服を着た少女がようやっと目覚めて来た。
ごしごしと眼を擦り、少しの間、間抜け面を晒す事に。

「………――――。」

うっかりその名前を口にしたところで、やっとこさ意識がしっかりしてきた模様。

「……あ、あぁ…!
目、覚めたんですか!? 熱とか、大丈夫ですか?
頭がぼーっとしたりとか、痛みが残ったりとかしてませんか!?」

看病していた相手の顔を見て、そうまくしたてた所で、小さく空腹の虫が食事を要求する音。
美味しそうな匂いに気が付いた事もあり、思わず赤くなって下を向いてしまった。
 

ノーフェイス >  
「よる~」

夕方から作り始めたので、もういい時間だ。
昼過ぎから眠っていた少女からすれば、朝にも思えるかもしれない。
いつもと違う碧眼で、じっとみつめて。

「うん、おはよ」

本名(それ)で呼ばれると、暖かさとともに、ずきりとくる痛みがある。
このために――教えた。これは自分に必要な痛み。

「十分寝たから、だいぶしゃっきりしてる。
 起きたときは寝すぎてダルかったけど、ごはん作ってたら調子戻ってきた」

こつ、と額と額をあててみた。高めだがこれが平熱。

「……いっぱい看病してくれてたんでしょ。
 あのキミがだよ。栄養食品ばっかで我慢してたワケだから。
 おなかすいてるかなーって思って……あり合わせで悪いけど。
 ずっと食べてないから、ボクも、もぉー限界……ほら、食べよ?」

きゅる、とお腹が鳴ってしまうのは、こちらもだ。
ぬくもりのうつった隣に座った。いつかよりも、ずいぶん気安い調子。
並んだのはおなじみのポテトがたっぷりなクラムチャウダーと、
ベーコンとチーズのトースト。バターがよく染みたパンも含めて、がっつり系のやつ。

「正式に……ボクから護衛を依頼するにあたってー。
 いろいろ、話しておくためにも。しっかり調子は戻しとかないとな」

もうこっちから試すとか、認めるとか、そういうのじゃなくて。
こっちがお願いする側。それくらいのものを、見せつけられてしまったんだ。

ノーフェイス >   
「……ね。どう?
 ボクが、ひとりの人間で――がっかりした?」

たぶんこの島で一番おいしいクラムチャウダーを口にしつつ。
そう、問いかけるのだ。

つかれればダウンして、不安になれば縋ってしまうこともあって。
……意地になって、伝えるべきことを飲み込んでいたことを、
きっと緋月に知られていて。あんな状況にならなければいえないような。

……自分は護るに、傍に在るに――
寄り添うに足る、生きるモノで在れているのか。
あのときの緋月の想いに、生き様で応えられただろうか。