2024/10/27 のログ
■緋月 >
「……熱が、全然下がらなかったから。
下手に長いこと外して、その間に症状が変わったら怖いですから、簡単に済ませられるもので。」
少し赤くなりながら、看病中の様子と、粗末な食事事情の理由を白状。
まあ、ある意味当たり前な理由ではあった。
口にはしないが、本当に食事も寝る間も惜しんで看病や様子見に時間を費やしたのだろう。
まあ、そのせいもあって少々情けない姿をたった今曝したわけだが。
「……がっかりなんて、する訳ないじゃないですか。
あなたは、どこか…手の届かない場所にいる、神仙…と言うには少々俗っぽいですよね…。
そう――偶像、のほうが正しいんでしょうか。そんな感じが、どこか拭えなくて。
何て言えばいいんでしょうか……安心、かな。
地に足がついて、人並みに悩んで、息をして生きてる、肉もあって血の流れる人間なんだな、って。」
自分と同じ、「生きている人間」で、本当はとても安心したのだと。
「同じところ」に居られるのだ、という思いがある。
そんな言葉を返しながら、自身も食卓へ。
いきなりがっつくと恥ずかしい…のではなく、食が疎かだった胃が驚くと思うので、
少しずつ、慣らす感じでクラムチャウダーを口に運ぶ。
「依頼、ですか。何と言うか途端に固い話題になりましたね…。
いや、お仕事を引き受ける上で、色々とやり取りが大事だというのは分かってるつもりなのですが。
……日雇い以外のお仕事の経験がないもので。」
そんな、ちょっとズレ気味の発言をしながらトーストを一口。
本当に食に気を払う余裕がなかったので、手の入った食事が余計に美味しく感じられる。
■ノーフェイス >
「パンと葡萄酒……」
トーストもけっこうな勢いで食べちゃう。
好物のオレンジジュースもするすると。食べてると、いつしか眼の色が金色に。
そういう感じの仕組みらしい。ワインを飲んだら紫色に、というわけでもないのだが。
「例え話は……煙に巻くなって言われたな……
ボクの血肉を、キミに捧げた。消耗しすぎるとしばらく休眠しちゃうの。
いっぱい心配かけちゃったから、たっぷりお礼させて。……食べる?」
煮込んでいるうち、シャワーと着替えは済ませた。
部屋着のシャツとドルフィンパンツという出で立ち。
シャツの裾を横に引っ張って、引き締まった白いお腹を魅せてみたり。
「……届かない星に、触れ得ざる華に……他人の、人生で一番の風景になりたいから。
お客様に魅せるボク。他人に見せる貌は、完全でなくっちゃ。
本来だったら、ひとりの人間である姿なんてだれにも見せたかないんだ」
それは、うまくいっていた、ともいえる。
それが、彼女の道を阻んでいた、ともいえる。
……雨のときに垣間見せてしまったから、隠していた人間。
剣と鞘の少女と――怪人と人間の二面性。
「それでもそこに拘って、ボクは肝心なコトを見落としてて。
キミをずっと迷わせたまんまで……まったく輝けてなかった。
鬼さんこちら、とでも。恐がらずに手を引いてればって。かっこわる。
……理想のボクには、まだまだ全然及んでないってワケだ。
あーあ。呼吸も血も、何度か夜通し伝えてるはずなんだケドな……?
あれだけしっかり伝えても、不安になっちゃったっていうんだから」
後悔は、それでも、クラムチャウダーと一緒に流し込む。
ある程度は。通じあえて、戻れたはずで。だから、前に進むとき。
だから相手の恥じらいをつっつくような冗談で、混ぜ返しておく。
わざとらしく、首や肩。血が滲むあたりを撫でたりして。
「もともと依頼が趣旨でしょ。今回の……喧嘩の。
ごはん食べてシャワー浴びて。なんなら朝まで寝てからでもイイから。
いまじゃ連れてくの、キミ以外なんて考えらんないから。
……実績次第では、終身雇用も考えるよー?キミが卒業したあとの、さ」
料理は。
華美な衣類、派手な雰囲気……に比べて、やはりどこかおとなしいというか。
家庭的だ。ノーフェイスとして、ではなく、――――としての側面なのかも。
「あ。じゃあ楽しい話する?
――10月31日!きたるハロウィン本番!いっしょにいてよ。
ボクの生まれ故郷……セイレムっていう、小さいとこなんだけどさ。
この時期いっつも、街をあげておっきいおまつりやるんだ。
だからさ。お祭りいって、カボチャのケーキつくってさ。
短歌の話もいっぱいしたいんだー。だれかさんのせいでハマっちゃいそうで」
きゃらきゃらと、楽しそうに。もうお祭りがきたみたい。
そう、夏祭りのときに見せたのと、同じ顔かもしれない。
「……それがボクへの誕生日プレゼント、ってことで」
■緋月 >
「…そこまで私の傷が酷かったんですね。
いや、自覚はあります。第六まで、蓮華座を開いたんです。
第七まではいかなくとも、負担は酷かったでしょう。多分、身体の外より中の方が。」
傷の治療の仕組みを知って、少し真剣な顔。
落ち込んでる、という訳ではない。こんな負担を残してしまう戦い方では、肝心要で倒れてしまう。
もっと、最低限の負担で高い効率を出せる戦い方を考えないとな、と思いながら、
引き締まったお腹を見れば少し顔を赤くしたり。
「誰かに見せる自分、誰かの一番である自分、ですか。
人気者なりの苦労、というものですね…。
それと、理想を求める者の、「楽な方に流されない」者の苦労。
方向性は違っても苦行者みたいです。
それだけ、普段のあなたは光っていて遠い…星のような人に見えますから。」
混ぜっ返されれば、こちらは少々詩的…というには削りの荒い表現。
星の光に惑わされて、目を晦ませてしまった、困った自分を戒めるように。
「それは…そうなんですけど、こう、個人の間でのやり取りって、経験がありませんから。
知った顔な事もあって、どうお話を詰めればいいのか…迷います。
でも、終身雇用か…万一そうなるとしたら、私が里に帰るのを諦めるか、
一度はあなたに里に来て貰わないといけませんね。
いずれにしてもまだまだ先の話だと思いますけど。」
本気なのか冗談なのか、これまた掴み辛い調子のお話。
実際、少女の生まれ故郷に帰るとしたら、どうお話を付けておけばいいものやら。
まあそれも、少女が語る通りまだまだ先の、見えない未来のお話だ。
「ハロウィン…というと、アレですよね。
カボチャをくり抜いた…顔? えっと、灯篭みたいなものを飾る催し。
恥ずかしながらアレが一体何なのか、さっぱり分からないんですよ…。
カボチャを飾り付けの道具にしてしまうとか…いや、お盆には精霊馬を作るから、そんなに問題はないのかな…。
――分かりました、ではお誕生日のプレゼントはそれで。
短歌については、私もそんなに詳しい…というか、歌の才があるわけではないですよ?
あの歌も借り物でしたし……それでもよければ、喜んでお付き合いします。」
そんな話をしている間に、看病の疲れか常より少し悪めの顔色も、元の色を取り戻していく。
そんなこんなで、過酷な一日を過ぎたふたりの時間は過ぎて行くのだった。
ご案内:「『Gibson House』201号室」からノーフェイスさんが去りました。
ご案内:「『Gibson House』201号室」から緋月さんが去りました。