2024/12/19 のログ
ご案内:「とある日の放課後」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
とある日の放課後。
寒くなった日。そろそろ冬休みも近い、かつ年末も迫っている。

部活も一段落して、ある程度、放課後残っている人も少なくなっている頃。

「がら……ひょこ……キョロキョロ……」

教室の扉を開けて、顔をちょっと出してキョロキョロあたりを見渡した後。
誰もいなさそうなのを確認して、挙動不審に歩いていく、女生徒が一人。

効果音は携帯ストラップ、から発せられているような気もするが……独り言言ってるような気もする。

なんとも怪しく、廊下に出て、進んでいく……

ご案内:「とある日の放課後」に黒條 紬さんが現れました。
黒條 紬 >
さて、廊下を歩く人影がもう一つ。
渋谷分署刑事課の風紀委員、黒條 紬である。
グレーのニットカーディガンにベージュのプリーツスカートといった装い。

風紀関連で人を訪ねる為に、
渋谷分署からはるばる移動して来て、
用事を終えて帰るところだったのだが。

偶々歩いていたところに見知った顔を見つけた彼女は、
ふむ、と顎に手をやり一言。

「……あからさまに怪しい動き……」

一体何事か。いつも以上に不審な友人の様子に思うことがあったのだろう。
目を細めて、そのまま音もなく彼女の後ろをついていくこととした。

伊都波 悠薇 >  
そんな後ろに誰かがついてきていることに。
姉なら気付いただろうに。そんな気配とかそういうセンスはあんまりない妹は、キョロキョロしているくせに気づかない。

いや、後をつけている人のスキルが高い可能性もあるけれど。

「……よし」

「だれもいないぜー?」

ひょこっと、顔を出して。外へ、歩いていくのは、校舎裏、だ。

人目がつかない方へ、人目がつかない方へ。

カバンを抱えるようにして、小走りしていく。

黒條 紬 >  
視線がちらりとこちらを向けば、
さっと素早く柱の裏に。

『こーんにちはーーーっ!!!』 と。
勢いよく声をかけても良かったのだが、
友人が一人でこっそり何をしているか、というのは気になることであるし。

紬はそのまま尾行を続け。

そこでふと、追跡対象の進行方向が変わったことに気づく。

――気づかれた? そういう訳ではなさそうですかね。

彼女の向かう先は校舎裏。
まさか、虐められたりなどしているのではなかろうか。
或いは、告白の為に呼び出されているとか。

「……これは風紀委員としても友人としても見逃せない事態っ」

一声発して、校舎裏へと駆けていくのであった。

伊都波 悠薇 >  
キョロキョロ。

今度はさっと、振り向いてみたりして。

「誰もイルわけねーって、はるっち。ほらはよいけいけー」

「しっ、松風。何があるかわかりませんから」

とか、一人コントしながら、やってきた。
目的地到着。

そこは、普通の校舎裏。
誰がいるわけでもなく、ほっと一息ついて。

カバンの中から、何かを取り出す。
それは、自撮り棒。設置型の。

そこに端末を取り付けてーー

「よし」

ぽちっと端末を操作。
そして少しすると、何かが流れる。

音楽だ。聞き覚えのある、リズムのある音楽。
流行りといえば、流行り。

その音楽に合わせて‐‐

「わん、つー、わん、つー」

踊りだした。

黒條 紬 >  
さて、校舎裏を見やれば――どうやらいじめっ子らしき影も、
お相手らしき人物も見当たらないようだった。

したがって、謎は深まる。
ならば何故、彼女はこの場所へ訪れたというのか。

真面目に思案顔になる紬の眼の前で繰り広げられた光景。
そして耳に入ってきた音は、彼女の想像の枠から随分と外れたものであった。
 
――踊り、だした……!?

素で内心狼狽する紬。
違反部活に潜入した際、
四面楚歌の状況で銃口を向けられた時よりも、ある意味息を呑んだ。

そこはこほん、と咳払い一つを置いて。

友人のダンスを見届けることとした。
多分これは、応援すべきものであろう。

校舎の角から、友人を見守る紬。
区切りがついたところで、話しかけてみるとしよう。
そう気持ちを決めて――。

伊都波 悠薇 >  
ひとつ、違和感。

趣味、やなにかしら自分が望んでやっているのなら楽しくやっているべきだ。

だけどーー表情は険しく、なにかに追い詰められているような気もする。

そういう、洞察力が優れている、ものや機微に察すれるもの。
そしてこの妹を知っている者なら、そういう。

鬼気迫るもの、を感じ取れるかも、しれない。

「……はっ、はっ」

いつまでも、休まない。
休まず、動き続ける。

明らかに、オーバーワーク。

だろうに。

休憩取らず‐‐

時間は1時間、2時間と、過ぎていく。

そも、この妹が踊りにそんな真剣にやっているとか聞いた覚えはない。
のに……何故か。

異常な、のめり込み用、だった。

黒條 紬 >  
『何やってんだアイツ……』
『しっ、あいつ渋谷分署の風紀委員の……』

校舎裏から角の向こうを覗き見る内、
背後から男子生徒達のそんな声が飛んできて。

得も言われぬじっとりとした感触が心の内を過ぎたもので、
ここは一つ声をかけることとした。

鬼気迫る雰囲気、邪魔するのもどうかと逡巡しつつ。
それでも、いつまでもこうしている訳にもいくまい。

「悠ちゃーん! 何してるんですかーっ!」

ととっ、と足早に駆け寄って、元気いっぱいに声をかける。

伊都波 悠薇 >  
「え?」

声をかけられると、ピタリと止まり……

ふらりーー、体が傾く。
そして倒れそうに、なり。

「あれ? 黒條、さん……?」

足がもたついて、地面にーー

黒條 紬 >  
「わわっ、ちょっと……!」

そう、口で言う前に足は動いていた。
姿勢を低く、一瞬の内に脹脛に力を込め――
程々の力で地を弾く。

そうして倒れ込む悠薇と地面の間に滑り込むようにして
身を置き、そのまま抱きとめるように腕を回した。

足にかかる衝撃を地面に散らして。
前線で違反部活生と殴り合うような力こそないが、
俊敏さならば紬にも自負があった。

「だ、大丈夫でしたか~っ?
 頑張りすぎですよ、フラフラじゃないですかっ」

もー、と。
抱きとめたまま、覗き込むようにその顔を見上げて
不機嫌そうな顔を見せる紬。

伊都波 悠薇 >  
「え……あ?」

抱きとめられる。
汗と、ふんわりと芳香剤が混ざった香り。

「なんで? 黒條、さん」

途切れ途切れの声は、あなたの言葉を聞いていないようで。
少しの脱水と、疲れで朦朧としているのかーー

「……れんしゅう、しないと」

黒條 紬 >  
「何でって、あーそのー?
 なんというか、こう……この状況は偶然の産物? 的な?」

人差し指をピンと立てて、視線は右斜め上、空へ。

――少しばかり脱水症状、起きてますねぇ。

「いやいや、何言ってるんですかっ!
 休まなきゃダメですよ、休まなきゃ~」

水を飲ませるにも、まずは落ち着かせねばなるまい。
校舎側、背を凭れられる壁の方へと誘導しようとしつつ。

「どうして急にこんなフラフラになるまで……」

困惑の色を隠さない声色で、悠にはそう投げかける。

伊都波 悠薇 >  
「次の、検査、までに……うまく、ならなきゃ……」

朦朧としているからか。聞けばスムーズに返してくれる。
お酒を飲んでいるときと同じ、だ。

壁の方まで、連れて行かれれば、そのまま抵抗もなく。

「おねえちゃ……には、だめ、だから」

ぽつ、ぽつ。

そして、体から完全に力が抜けたのか。
重さが、直に、黒條の腕に、乗る。

黒條 紬 >  
「検査……?」

一瞬、眉を(ひそ)める紬。
検査。一体何の検査だというのか。
先のダンス……アイドルを目指すなどと、聞いたこともない。

ただ一つはっきりと理解できることは、
この件は伊都波 凛霞(彼女の姉)絡みの件だということだ。

ずしりと乗る、悠薇の重み。
そこには、彼女の疲労も上乗せされているかのようだ。
完全に、脱力した状態。

「ちょっと、悠ちゃん……?」

そのまま抱きかかえるようにして、
校舎の壁際、そこに座らせる。

何か飲ませねばと思いつつ、自販機までは少し距離がある。
そこで、肩にかけた鞄からペットボトルを取り出し、
それを眼の前に差し出しながら。

「一旦、水でも飲んで落ち着きましょ」

水が殆ど残っているそれを、眼の前で振って見せた。

伊都波 悠薇 >  
「うん」

受取、ごくごくと、飲み。そのあと、くたりと脱力。
そばには、妹の鞄だ。

開いていて一枚、紙がはみ出ている。
見えてる文字は、結果、だ。

今の状況なら、妹に気づかれず、なんの紙か、見ることも。
『黒條』なら、できなくもなさそうだが。

「すぅ、はぁ……」

まだ、落ち着くために、時間を要しそうな状況で。
胸を大きく、目をつぶって上下させていた。

黒條 紬 >  
視線の行く先は、一枚の紙。
『結果』と書かれたその紙の仔細。
目を細めて見ようとすれば、見られるのだろうが。

敢えてそれはせずに、は対話を試みる。

とはいえ、相手はまだ息が上がっているし、
急かすように話しかける訳にもいかない。
そう考えた紬は彼女の隣に座って、
静かに待っていた。


「ちょーっと落ち着いたら教えてくださいね~。
 話、聞かせて貰いますから」

彼女にしては少々硬い声色だったろう。
冷たい風が吹き抜けていく。

伊都波 悠薇 >  
‐‐少しして。

ゆっくり、目を開ける。
前髪に隠れて、見えないけれど。

「あれ? えっと」

冬。時間が少し経てば、日もくれる。

「……日が沈んでる」

目をパチクリして。

「あれ」

視界の隅、映る服の端を見て、そちらに視線を移し。

「黒條、さん?」

今日何度目かの。首を傾げながら。
まどろんでいた意識のせいか、直近のことを覚えていなかったようだった。

黒條 紬 >  
冷たい風が吹き抜ける校舎裏。
悠薇が目覚めたその時も、その寒さは彼女の肌を刺したろうか。

半分正解で、半分は――どうやらそうでもないらしい。
悠薇の肩には小さめではあるが、ブランケットが掛けられていて、
首元にはマフラーも結ばれていた。
紬が鞄から取り出したものと、先程まで彼女が身につけていたものだ。

「やーっと起きましたか」

そう口にして、悠薇の目――否、前髪を見やる。

「へとへとになるまでダンスして、
 それで倒れ込んでたんですよっ。
 
 これだけ待ったんですから~!
 どういうことだか、きちんと説明してくださいねーっ」

などと、隣で明るく騒ぎ立てる。

伊都波 悠薇 >  
「あ」

ようやく事情を掴んだらしい。

「……あ、えと、ご、ごめんなさ」

謝ろうとして、止まる。

「でもなんで、黒條さんが?」

はてと、二度目の質問。
覚えていないようだから、仕方がない。

「と、とにかく、ありがとうござ……ダンス?」

はて。
倒れたからというわけではないようで。

「み!?」

がばぁっと起き上がった。ブランケットとマフラーを落とさないように。
なんとも器用だ。

「みてたんですか!?」

黒條 紬 >  
「まぁ、偶然通りかかったもので。
 ついつい気になって後をつけていたら……
 突然踊りだしたから……気になって見てましたっ!」

真実を包み隠さず伝えた!

「というわけで、ばっちり見ていましたともっ!
 頑張ってる姿を! いや、頑張りすぎなんですが……!

 で!
 何であんなにダンス頑張ってたんです?
 ダンスやってるなんて聞いたことないですよ?

 それに、さっきは検査がどうとかって言ってましたけど……」

器用に起き上がる悠薇を横目で見つつ、
流石にじっとりとした視線を送る紬であった。

伊都波 悠薇 >  
「あ、あとを!?」

全然気づかなかった。
やっぱりそういう才能はないな、とか思う暇もなく。
というよりか、包み隠さなかったので、つつく事もできず。

「え、あ、いや、その、趣味ではじめ、まして」

これは本当。

でも。

「検査、は、その……身体の、ことで?」

こっちは、隠そうとする。

あなたとは『逆』。

黒條 紬 >  
「新しい趣味を始めるってのは素敵なことですけど……
 頑張りすぎないようにしないとですよーっ」

人差し指をピンと立てるいつものポーズで、
少し強めの声色。

「凛霞さん絡み、ですよね?」

隠そうとするところを、変に暴こうとはしない。
一歩退いて、それとなく先程聞き取った姉の名を出してみる。

伊都波 悠薇 >  
「あはは……」

苦笑。『やめる』と、言う言葉はなかった。

ドキリ、と身がはねた。
それは人の機微に聡い者が見たらわかるけれど、極力隠そうとした、反応。

「……ち、ちがい、ますよ」

そう、違う。間接的にはそうであるし、この話をしたらそう、だという人も多いだろう。
けれどーー直接的に姉は関係しないから。

ただ‐‐この事実が分かれば、姉が悲しむことは、確定なだけで。

黒條 紬 >
「私は言いましたからねっ。
 頑張るのは良いですけど、頑張り過ぎは考えてくださいね」
 
何だかんだで何回も会ってきたし、ここまで友人として付き合ってきたのだ。
『やめる』という言葉が出ないところに、絆されぬ強情さを感じ取る。
どれだけ言っても、やめるつもりはないのだろう。
故に食い下がることはせず、それだけ口にした。

「その様子を見るに、関係ない訳じゃなさそうですね。
 検査、身体のことなら身体のことで気になりますよ。
 
 どうしても私に言いたくないのなら、
 無理に聞き出そうとは思いませんけど。
 人にはプライバシーってものがありますからね。
 
 でも、いきなり倒れるほどにのめり込んで、
 こんな風になっちゃう友人を心配している人間が居るってことは……
 覚えておいてくださいね」

そこまで口にして。

「紙、鞄から出てますよ」

伊都波 悠薇 >  
「あ」

紙、と言われると、慌ててカバンを手に取り。

「あ、えっと、その。身体が悪いわけじゃ、ないですから」

そう言われると、なんだか、悪いことをしている気分になる。
こういうのは自分とは、違うスタンスだ。

彼女は自分に似ているとか、言うけれど、同じようにへっぽこだと、言うけれど。
全く、そんなことはないと思うのだ。だって、今の発言は‐‐

「……えっと。その」

姉に、似てる。

「ちょっと異能のことで、検査、です」

と、しぃっと。指に手を当ててそれだけ。

でもーーその言葉は、聞く人によっては。

『重い』

黒條 紬 >  
「異能のこと……何か、分かったんです?」

彼女が以前病院で説明してくれた、天秤の話であろう。
彼女の人生を狂わせている一つの枷であり、
彼女を突き動かす力でもある、それ。

変わらず、その鎖に縛られているということのだろう、か。
或いは、また別の何かか。

「さっきの悠ちゃんの頑張りすぎなダンスも、その影響……?」

趣味として始めた。その時の言葉は、どうやら信じて良さそうだったが。

「あ、いや……何ていうかこう、鬼気迫る! っていうか……
 見たこともない、凄いのめり込みようでしたからっ」

伊都波 悠薇 >  
何かと言われるとーー

「なにも、まだ。検査は続行、だそうです」

わからない。わからないから。

「でもーー、天秤、なんて言うんですから」

そう。

「私が、できないことがあったら、その反動が、誰かに行ってても、おかしくない、ですよね」

そしてそれがーー

「姉に帰ってたとしたら、また姉は泣いちゃいます。あのとき、みたいに。姉には、強い味方の幼馴染だっていますし、友人もいます。支えてくれる人だって。でも、だからって泣いていいわけじゃない、ですから」

だから。

「天秤なんて、ないって、示さないと」

頑張った結果が出ればそれに越したことはない。
でも、でなかったらーー

「結果、出さないと」