2024/12/20 のログ
■黒條 紬 >
その吐露を、静かに聞いていた。
真剣な表情で、その髪の下にある目を見て、
最後の一言が絞り出されるまで、聞いていた。
望まぬ異能。彼女自身を苦しめる異能。
それを、知っているからこそ。
彼女の痛みが、重みが、胸にのしかかる気分だった。
紬は、少しばかり伏し目がちになった後――
逡巡の後に、ぽつりぽつりと言葉を返す。
「悠ちゃんが背負ってる重さ。改めて伝わってきましたよ。
怖いに違いないですよ、自分の異能が誰かを傷つけてるかも、って。
そんな風に想像してしまったら……。
でも、一言だけ言わせてください。
誰かを泣かせない為に、自分を傷つけるのはやっぱり違いますよ。
その言葉だけ切り取れば、格好いいかもしれないですけど。
それって、本当に凛霞さんや……みんなのこと考えてくれてます?
悠ちゃん自身のこと、考えてます?
本当に泣きたいのは……悠ちゃんなんじゃないですか?」
そこまで口にして、深い溜め息を一つ。
「私が言いたいのはそれだけですよ」
と、そこまで真剣な表情だったのだが。
■黒條 紬 >
「……キマった?」
顎に人差し指と親指をあてがって、決めポーズ。
目をキラリと輝かせんばかりの勢いで、そちらを見やった!
結局のところ、紬は紬であることを崩さないのである。
■黒條 紬 >
「……へくしっ」
冷たい風が吹いてきた!
全くキマっていなかった!
■伊都波 悠薇 >
「いや、あの。私は別に重たくなくて。むしろ姉にばかり重いといいますか」
そう、実際。妹は別に『それでもいい』のだ。
できなかった自分を嘆きはする。
それは‐‐『天秤がなかったら』、のお話だ。
あったうえで、できないのなら。姉の力になっているのなら、いい。
そういう、人間性であり、そうであったから大きな大きな、姉妹喧嘩をしたのだ。
でも、姉が、泣くほど傷つくのならーー別の話。
「……いつかの、仕返しですか?」
ぷっと笑い、なにそれ、と返す。
まるで旅行の時の、やきまし。配役が逆、なだけで。
余裕がない、と口にさせた、ときのよう。
「泣きたいことは、特別ないです。でも、そうですね」
思い返す。
「テストが零点、だったのは。背筋が凍るくらい、寒くなりましたね」
器具をしまいながら、わせわせと、帰る支度。
「帰りますか」
検査はまだ先。まだ、そうと決まったわけじゃない。
「……黒條さんは、異能とか調べたことあります?」
■黒條 紬 >
「私としてはそれが心配なんですよっ。
ま、悠ちゃんらしいと言えばらしいんですけど」
それも一つの人間性であるし。
仕方ないな、と首を振って。
「やられたらやり返すッ! がモットーですので」
どや顔でそう返す紬。
無論、そんなモットーは特にない。
ただ、悠薇の笑顔を見れば、顔を綻ばせる。
「0点はなかなか大変な状況ですねー。
今度一緒に勉強会します~?
あ、私20点でしたけど!」
などと言いつつ、こちらも帰る構えで。
「え、異能ですか?
そりゃ、入学当初に調べましたからっ。
健愛交獣。
動物と仲良くできる異能――今度猫や犬に会ったらお見せしましょう」
どや顔だった。
■伊都波 悠薇 >
「またまた」
勢いだけかもしれない、とたまに思うようになったのは付き合いがちょっと、でき始めたからか。
「……なんか、異能研究の先生みたいなこと言いますね、先生は逆で、それをうまく使えばいいなんていってきましたけど」
確かなんだったか。
「その異能が真実であるならば、風紀委員と逆のポジションが映えるんじゃないか、とか。逆ってなんですかね。わかります? 逆の委員」
片付けも終われば。
「癒やされそうですね」
帰るように歩き出す。
「研究させてください、なんて言われなかったですよね? 私、定期的に見させてくださいって言われたんですよ
わからないことがわかるまでって条件で、診てもらうことにしたんですけど。
‐‐そうやってはっきりわかってくれてたほうが、よかったなぁ」
ぼやき。
■黒條 紬 >
「風紀の逆……風紀はこう、私が言うのもなんですが……
結構引き締まってる感じがしますし……楽しそうな式典委員会とか?
あとは、表でバンバン目立ってる人達も多いですし……
その逆なら、生活委員のインフラ整備や、ああ、物流なんかも……。
……考え方次第じゃないですかね?」
うーん、と唇に人差し指を当てつつ、空を見て。
「いや、研究させてくださいなんて言われたことないですね~。
悠ちゃんの異能はやっぱり貴重な異能なんですかね?
検査で、何かわかるといいですねっ」
悠薇から聞いた、研究者の言葉。
心の内に多少のきな臭さも感じつつ、のんびりとした口調で
紬はそう口にする。
「その日まで、勝手に倒れたりすることがないようにっ!
良いですねっ!」
びしぃ、と指をさした!
■伊都波 悠薇 >
「そういうのなのかな」
いろいろ出してくれた案に、あーだ、こーだ。
「どうなんでしょう。本当にそういう異能だとしたら限定的で使いにくいものだと思うんですけどね」
びしっと、言われると。
「善処します」
‐‐なんとも、安心できない返答であったとさ。
あーだこーだ、言えるのも、縁が深まった証だ。
■黒條 紬 >
「善処してください」
それを聞いて腕組みして、
満足げに歩き出した。
寒空の下でも、少しばかりあたたかい。
それはきっと、お互いに深まった縁を感じているからだ――。
■黒條 紬 >
信頼できない答えが出てくることも分かっている。
「いつでも私が隣に居る訳じゃないんですから。
次はせめて水分補給だけでも、忘れずにっ」
そう口にして、振り返れば。
穏やかに微笑みを見せるのだった。
ご案内:「とある日の放課後」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「とある日の放課後」から黒條 紬さんが去りました。