2024/12/26 のログ
ご案内:「奇妙な古書店 居住スペース」にシャンティさんが現れました。
ご案内:「奇妙な古書店 居住スペース」に杉本久遠さんが現れました。
シャンティ > 街中にひっそりと佇む古書店
人の目に映っているようで、意識に上ることもない

その奇妙な店の内
無限に続くかのような、もしくはほんの僅かにしかないような
不可思議な本棚の間を抜けて

上に上がるような、下に降りるような、
逆さまになるような、横になるような
異様な道を 女の背を追って行った先に

その部屋はあった

そこには何もない
調度品も、なにも
ただ、虚無のような空間だけがある
生活感というものがなかった

杉本久遠 >  
 そんな、平衡感覚が狂ってしまいそうな隙間を、道を、恋人の背中を追いかけて、やっとの思いで部屋に辿り着いた。

「ふぅ――これはなかなか、骨が折れるな。
 セキュリティには安心したが、これじゃ、気軽に遊びに来るのも大変――だ――な、ぁ」

 そうして恋人の部屋にはじめて訪問を許されたわけなのだが。
 右――なにもない。
 左――なにもない。
 床――なにもない。
 上――当然だが特別なものはなかった。

「――うーむ、
 ある意味想像通りの部屋、なんだが。
 君は本当にこの部屋で生活しているのか?」

 なんて、そう聞かざるを得ないような部屋の様子だった。
 

シャンティ > ゆったりと男の方を振り返る。
いつもと何も変わらない、不思議な笑みが浮かんでいる

「だか、ら……言った、で、しょう……?
 なに、も……ない、わ、よ……って」

確かに、女はそのように告げていた。
それが文字通りの意味として伝わっていたかは別の話ではあるが。

「ええ……そう、よ?
 此処、が……私、の……部屋」

迷うことなく、中に入りゆったりと床に座る。
椅子も、座布団も存在はしない。

「これ、でも……此処、で……生活、して、る……の、よぉ?」

座る?と手で指し示す

杉本久遠 >  
「うむ、だから想像通りではあったぞ!
 きっと君のことだから、単純に興味がないか、身の回りにモノを置くのを好ま胃だろうなあと思っていた」

 そして、ごく自然と床に腰を降ろすのを見れば、こことの心の底から『なるほどなぁ』と納得すのだった。

「まあまあ、待ってくれ。
 今日オレがこの姿なのは訳があってだな」

 よっこいしょ、と背中に背負っていた巨大な風呂敷から、ちゃぶ台を一つ引っ張り出した。

「うむ、まずはこれを置こう。
 部屋の真ん中あたりで大丈夫か?」

 そんな事を聞きながら家主の判断を待っている。
 それこそ、マテをされた子犬のようだ。
 

シャンティ > 「そ、う?」

男の言うことを静かに聞く
なんとなく想像がついていたらしい

「……そう、ねぇ……
 概ね、間違い……では、ない……か、しら……ね」

興味がない、身の回りに物を置くのを好まない
そのどちらの予想も、ある程度正解である
足りないことがあるとすれば、必要性を感じない、という点くらいだろうか

「……………」

男が百貨店に行っていたのは知っている。
何をしていたか、までは見ないことにしていた。
わざわざサンタらしい格好をしてきたからには、なにか用意してきたのだろう、と女も予期はしていた。

しかし

「あ、は……」

思わず、笑い声が漏れた。
妙に大きな袋を持っている、とは感じていた。
しかし、である

「なあに、それ……ふふ。
 まさ、か……プレ、ゼント……?」

くすくすと笑う

「いい、わよ……置いて、も」

杉本久遠 >  
「そうそう。
 でもまあ、一人でただ寝泊まりするだけだったら、特に何も必要じゃないもんな」

 案外、人間というのま、物がないなら無いで生活出来てしまうものなのだ。

 そして超大袋から取り出した小さ目のちゃぶ台は、家主のどこか楽しそうな様子と共に、無事、部屋の中央付近へと設置された。

「まさか。
 こんなのはプレゼントというか、それ以前の準備段階みたいなものだぞ。
 えーと、次はこれだな」

 そしてまた袋から出てきたのは、厚みのあるしっかりとした座布団だ。

「女の子が床に直座りなんてよくないからな。
 身体を冷やしたらよくない」

 そう言って今度は一枚の座布団を恋人へと渡し、もう一つは自分ように、ちゃぶ台を挟んで向き合う形で座った。
 

シャンティ > 「ええ……そう、ね」

最低限さえあれば、生きるだけならできる
その最低限のラインで生活している
女の生き方はそんな様であった

「あ、ら……そう?」

準備段階ということは、まだなにかあるのか
そういえば、風呂敷はだいぶ大きい

「座布団?」

首を傾げながらも受け取って下へ敷く

「だい、ぶ……持ち、こんだ、わ……ね、え?」

わかっていることは面白くない、とそのようなことを伝えてはいたが。
なるほど、サプライズとしては成功かもしれない。

「な、ら……まだ……ある、の……だろう、けれ、ど……
 ふふ。ま、あ……お任せ……ね」

先をねだっても面白くない
相手の予定のとおりにさせてみよう、という腹づもりになる

「それ、に……して、も……
 どこ、か……じゃ、なく、て……うち、を……わざ、わざ……選ぶ、なんて、ね?」

杉本久遠 >  
「まあ君の生き方は何もなさすぎるくらいだけどな」

 そして久遠は再び袋を漁る。
 どれだけの物を持ってきたのやら。
 もしかしたら、意外と四次元ボックスになっているのかもしれない。

「あった――うむ、やはりこれが無いとそれらしさも半減だからな」

 と、取り出されたのはミニチュアツリー。
 とはいえ、流石にちゃぶ台の上に載せるには大きいので、ちゃぶ台の隣に置いて、天辺に星を置いた。

「ああいや、お任せされても、ほんと、季節ものを用意してきただけだぞ。
 なにせイブ前からずっと色んなところのクリスマス行事手伝ってたからな。
 お礼にって色々貰ったのも持ってきただけだから」

 そしてどことなく次を期待されている気がすると、なんとなく居心地が悪い。

「ああええと、そうだそうだ。
 クリスマスと言えばこれも欠かせないよな。
 クリスマスケーキ」

 そして取り出したケーキの箱はつぶれたりもしていない。
 やはり久遠の持つ袋が特殊な何かなのかもしれなかった。

「シンプルなイチゴのショートケーキだが、食べられるか?」

 そう訊ねつつ箱を開ければ、やはり偏りも型崩れもしていないショートケーキが二切れ。
 取り皿もフォークもスプーンも用意しておいたため、さっさと取り分けてしまえば、甘い生クリーム特有の香りがするだろう。
 

シャンティ > 「ふふ……そう、ねぇ」

何もなさすぎる、と言われても女はくすり、と笑うだけであった。
指摘の通り、何もなさすぎる、のだろう。
心の動きすらも

「ツリー? そんな、もの……まで、用意、した……の、ねぇ」

面白げに置かれるツリーの様子を見る。
何の変哲もない、といえばそれまでだが部屋に置くには十分なツリーであった。

「別、に……なん、でも……いいの、よ?久遠、が……なに、を……どう、用意、して……持って、きた、か……それ、を……見定、める……だけ、だ、もの?」

くすくすと笑う
ここで何が出てきても、別に構わない
何の捻りもなかろうが、あろうが
ただ、でてきたものを見るだけである

「別……に、平気、よ……禁忌、は……ない、し」

好み、というものもあまりない
食べられるものか、食べられないものか。
その程度の違いでしかない

「ふふ。定番、は……大体、揃った……かし、ら?あぁ……ごちそう、くらい……用意……す、る?」

くすり、と眼の前に置かれたケーキを眺めるようにしてから男に問うた

杉本久遠 >  
「オレが何を持ってくるかって――そんな気の利いたものを持ってこれるわけないだろう?
 まあ――君が笑ってくれるなら、用意した甲斐はあったと思うが」

 なんの捻りもなく、シンプルに。
 恋人の部屋(仮定:何一つまともな物がない)を基準にして準備してきただけなのだ。
 だから、期待されても面白がられても、ちょっと困ってすまうのである。
 ――もちろん、それはそれでとても嬉しいのだが。

「ごちそうなぁ、それは用意してなかった。
 ああでも、こういうのならあるぞ!」

 そう言って、すでに大分小さくなった袋から、大きなボトル瓶を取り出した。

「酒屋を手つだった時に、一本わけでもらったんだ。
 マスカット系のワインらしい。
 ――ほら、オレも君も、年齢的には飲んでも問題ないだろ?
 爽やかな味で呑みやすいらしいから、一緒に飲もうと思ったんだ」

 言いながら、こんどはワイングラスを取り出して並べた。
 白ワインの蓋が開けられると、マスカットのフルーティーな香りが部屋に漂った。
 

シャンティ > 「ふふ。別、に……エアー、スイムの……道具、が……出て、きて……も、いい、の、よ?」

くすくすと笑った。気の利いたものを持ってこれるわけがない、ことくらはわかっている。だからそれくらいのことをしても、気にはしない、ということでもある。

「あ、ら……お酒? そう、ねぇ……そう、いえば……ふふ。久遠、は……そう、いう……お店、にも……縁が、ある、よう、だ……し?」

落第街のBar。そんなところにも行っていた、というのは知っている。むしろ、年齢以前から飲んでいたりしたのではないだろうか。

「そう、ねぇ……久遠、は……それ、で……いい?」

自分はこの程度でも十分。なんとなれば何も食べなくてもいいくらいである。しかし。眼の前の男は、そうもいくまい。彼の恵体を見ながら、聞く。

「それ、くらい……なら、用意……する、けれ、どぉ……?」

やるならしっかり、というのは無関心気味の女の不思議なこだわり部分である。

杉本久遠 >  
「さ、さすがのオレでもそこまではしないぞ。
 いやでも、シャンティが選手を目指してくれるなら喜んで――ンッンンッ」

 こうして、なんだかんだで少しずつだがお互いの事を分かってきている。
 久遠は器用でも気が利くタイプでもないし、恋人は身の回りに関心がなく良くも悪くも無関心だ。
 けれど、それをお互いに『好し』と出来るようになりつつあるのは、間違いなく、少しずつ歩み寄って、互いを理解しようとしている結果である――
 ――と、久遠は思いたい。

「うん?
 ああ、姐さんの地獄の門の事か。
 歓楽街と落第街の浅瀬でヤンチャしてた時に、色々と面倒を見て貰ったんだ。
 ――こんどまたお礼に行かないとな」

 久遠が姐さんと呼ぶ彼女のお陰で、恋人と真っすぐ向き合い、関係性を進める事が出来たのだから。

「とはいえ、オレもちゃんとお酒を飲むのは初めてだからな、ちょっとずつにしないと悪酔いするのも勿体ない」

 Barに出入りしていても、飲んでたのはもっぱらミルクばかりだ。
 お子様はこれでも飲んでろ、とばかりに出されてしまうのだから仕方なかった。
 ――なんてことを少し、思い出し笑いしつつ。

「ああ、オレも特別空腹ってわけでもないからなあ。
 でも、シャンティがどんなものを用意してくれるかはすごく興味があるぞ」

 軽食程度でいいから、なんて言いながら。
 恋人からの好意にも素直に甘える。
 以前はきっと、気恥ずかしいやら照れ臭いやらで、こんなセリフなんて出てこなかった事だろう。
 

シャンティ > 「あら……そ、ぉ?」

くすくすと笑う。それくらいやってもおかしくないし、それはそれで可笑しいからよい、と思う。
女はそういう性質(たち)であった。

「へ、ぇ……やんちゃ……ね? 前、に……すこ、ぉし……言って、た……わ、ね。興味、ある……わ、ぁ」

くすくすと、くすくすと笑う。なんとなく、話の端々で男が漏らしていたこと。
それを合わせてなんとなく想像される図。そこから今に至るまでの図。
どれもこれも、物語としてはなかなかに美味しそうである。

「あ、ら。久遠、初めて、なの……ね?」

小さく首を傾げる。やんちゃが顔を出すのか、更に元気になるのか。
それともまだ別の顔が隠れているのか。それもまた、興味深い。

「あ、ら……あま、り……期待、しな、い……方、が……いい、わ。特に、今日……は、ね」

軽食、という言葉に合わせるなら、どうするべきか。少し考える。手には、いつもとは違う本があった。女はその本を開く。奇妙なことに、そこには何も記されていない。

『過去より、現代を通り、未来を繋ぐ精霊よ。汝ら、強欲者に愛と心をもたらしたる。かの者が供せし饗応の一端を。この場、この聖夜にもあらわせり。これ、我が書に記されしものなり』

それでも、女は朗々と何かを読み上げた。
その終わりとともに、ちゃぶ台の上に一皿。
切り分けられたローストターキーが置かれていた。

「ほら……ね?」

杉本久遠 >  
「はは、やんちゃって言ったって、ちょっと喧嘩したり、もめごとに頭を突っ込んだりしたくらいのもんだよ。
 ただ、当時は結構補導されることも多くてさ。
 なんだろうな、多分、自分の全力をぶつけられる場所が欲しかったんだと思うよ」

 そうして出会ったのが、エアースイムだったのだ。

「当時はこんなもんしか身長が無かったくせに、血の気は多くてな。
 気に入らないものには片っ端から噛みついていたよ」

 と、当時を思い出すと、苦笑を浮かべた。
 喧嘩に明け暮れていた、なんて自慢げに話せる時期はすっかり過ぎてしまった。

「そうそう、初飲酒だ!
 だからまあその、先に言っておくが、迷惑かけたらすまんな?」

 なんて情けない事を言うのも、やはり久遠なのである。

「ん、期待?」

 恋人の言葉に不思議そうに首を傾げながら見守る。
 彼女の謡う様な読み上げがされると、現れたのは立派はローストターキーだ。

「おお、すごいな。
 相変わらず不思議な技、魔法?
 能力、になるのか?
 面白い物だなぁ」

 そう言いながら、両手を叩いで大絶賛だ。
 そして改めて見てみれば。
 何もなかった部屋も、どこなく、クリスマスの雰囲気が出来たような気がする。
 後は、のんびりと、穏やかにしながら過ごすだけ――
 

シャンティ > 「ふふ。そう、いえ、ば……荒々、しい……こと、も……あった、わ、ねぇ?」

かつてのエアースイムの試合。相手のやり方もあってラフプレイの様な動きを見せたことがあった。その時に、ほんの僅かに漏れこぼれた言葉。それを思い出す。

「喧嘩、とか……ふふ。十分、に……やんちゃ、よ? かわいい、かも……しれ、ない、けれ、どぉ」

悪党としては可愛いレベル、なのか。それとも文字通りの意味なのか。くすくすと、女は笑う。

「いい、わ、よぉ……潰れ、て、も……酔って、虎、に……な、って、も?」

どうなろうと、面白い、と女は思っている。言葉通り、面白がっていた。

「ええ。魔法……よ。使い、勝手、は……悪い、けれ、どぉ……状況、さえ……揃え、ば……なん、でも……創、れる……わ?」

創世すらできる、というのは眉唾にすぎるにしても。それだけのいわくつきの禁呪であった。女はそんなことは口にもしない。

「丸々、一羽……が、一番、なん、でしょ、う……けれ、どぉ。さすが、に……ね?」

それだとボリューミーにすぎる。そこはアレンジをした。元ネタであれば、丸々一羽のほうが正解であろう。

「さ……ベタ……だけ、れど……乾杯、でも……する、の?」

グラスを、つう、と指で撫でた