2024/12/31 のログ
ご案内:「伊都波姉妹 - 恭頌新禧」に伊都波 凛霞さんが現れました。
ご案内:「伊都波姉妹 - 恭頌新禧」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
「悠薇ー、お蕎麦茹で上がったよー」

階下、ダイニングキッチンを兼ねるリビングから声がかけられる。
ゆっくり休ませてもらったおかげで風邪もすっかりよくなって。今はすっかり顔色もよくいつも通り。
色々気を回してくれた家族や、レイチェルさん、見回りを買ってでてくれた妹、たくさん自分も助けられているという実感を得た年末だった。

テーブルに家族分の器、おだしを注いで、鰹節をふんわり盛って、ちょっと贅沢に海老天を添えて出来上がり。
伊都波家謹製・年越しそばである。

リビングは年末特番を流す薄型テレビが点いていて、遅い時間でも賑々しい。

伊都波 悠薇 >  
「はーい」

緑の地味ジャージでとてとて、部屋からやってきて。

「わ。鰹の良い匂い」

出汁の匂いに呟いて、着席。

「お姉ちゃんは、一玉?」

自分は一玉のやつの器を手に取り。

伊都波 凛霞 >  
ジャージ姿の妹。
年末でも過ごし方は変わらないなあ、と微笑んで。

「うん、あんまりたくさん食べると、神社まで歩かなきゃだしね」

そろそろ鐘つきもはじまる時間。
お蕎麦を食べたら着替えて、二人で初詣に参ろう。

「いただきます♪」

父と母もすでに着席し、一家団欒の朗らかな空気。

「それじゃ、お蕎麦食べたら悠薇と二人でお参りにいってくるね。
 天気も荒れてなくて良かった~。…わかってるって、風邪引かないように気をつけます」

そんなやりとりをしながら、温かいお蕎麦をいただく。
この後、父はおせちの最終準備にかかる。
母には自分の着付けを頼んであるし、帰ってきたらお手伝いしようかな、と思いつつ。

伊都波 悠薇 >  
「うぅ……やっぱり行くんだ……」

げっそりしながら、ずるずる。
コシがあって美味しい。
海老天もまた美味…………

「あ、お母さんラー油取って。辛いたべるやつ」

自分用といって過言ではないラー油をとってもらい。
忘れることにする。

伊都波 凛霞 >  
「えー……行ってくれないのー…お姉ちゃん寂しい……」

露骨にしょんぼりした顔をするシスコンの姉。

ここのところ風邪で寝込んでいて、イベント好きの姉がさっぱりイベントを堪能できていなかった。
なので、妹と一緒に年越し初詣はとっても楽しみにしてテンションをあげていたのだ。

「お蕎麦にラー油…」

独特だなあ、と思いつつ。
姉はかけても七味くらい。

伊都波 悠薇 >  
「うぐ、がぎぐげご……」

演技だとわかっていても。

「いきますよー……ちゃんと着付けも、しますぅ……」 

スゥ……と諦めの眼差し。
辛いラー油、おいしい。
うまい。えびてん、うまい。

「……もう少し辛くしようかな」

伊都波 凛霞 >  
妹の快い?返事にやった、と両手を合わせて満面の笑みで喜ぶ姉。
実際には演技半分本気半分。
本気半分なあたりがシスコンすぎる現実。

「悠薇の着付けはお姉ちゃんに任せてね!
 ちゃーんと母様に教わってるから、ばっちり!」

そんな、妹の一言で上機嫌になってしまう姉。
和気藹々とした雰囲気の中、それぞれ食べ終わり──。

………

……



「にしてもあんなにラー油足して、悠薇ってそこまで辛いもの好きだったっけ?」

食後、リビングにて。
妹用の薄い藍色の振り袖を着付けながら、そんな会話。
姉は一足先に桜色の振り袖を母親に着付けてもらい、桃の華の簪をアクセントにいつもとは少し違う形にポニーテールを纏めていた。

「髪留め、どうする?自分でする?」

きらりと光る、薔薇模様をあしらった髪留め。
前髪を邪魔にならないよう、横へと纏めるためのものだけど……。

伊都波 悠薇 >
「え? うん、激辛が特に」

知らなかったけ?なんて首をかしげ。

「髪留めはいいや。今のままで」

せめてもの、やつ。

「うぐ」

着付けに、グッと息苦しくなり声を詰まらせた。

伊都波 凛霞 >  
「辛いものが好きなのはしってたけど。お蕎麦にまでいれてたかなーって、ね」

言葉を交わしながら、さすがの完璧超人。
着付けもそつなくこなして、そう時間もかけずに整え終えてしまう。

「ちょっとゆったりさせておくね。
 悠薇も、胸おっきいほうだからねー…」

ちょっと苦しげな声を聞けば帯をほんの少しだけ、緩めて。

「それじゃ、襟元飾っとこ♪」

クリップのような形状のそれを胸元へとあしらい、完成だ。

「──それじゃ、行ってきますー父様、母様」

伊都波家の玄関にて少し声を張り上げて、足元のポックリをカラコロと音立てて。

「ほら、外寒いからこれ」

色違いの振り袖にお揃いのストール。
寒くないように妹の首元へとそれを着せ付け、粉雪がちらほらと舞う学生通りへと。
少し遠く聞こえるのは屋台の賑わいと、成り始めた鐘の音──。

伊都波 悠薇 >  
「まぁ、気付けに」 

着付けされるだけに、あはは。

なんて胸中にから笑いしつつ。

「行ってきます」

ストールをつけられると、なんともお洒落だなと思いつつ。

「……お姉ちゃんこそ暖かくね。寒いときにグラビアとかするから、風邪引くんだよ」

ちょっと、意地悪しつつ初詣に向かう

伊都波 凛霞 >  
「だからあれは水着だって知らされてなくって───」

意地悪な妹の返しにもう~、なんて少し頬を赤くしながら、
少し歩けば程なくして、夜にも関わらず煌々とした、居住区の神社通りに差し掛かる。

常世坐少名御神を祀る常世神社。
今日は屋台も多く並び、年越しを迎えようという人々で溢れている。

そこにこんな姉妹が現れれば、どうしても周りの視線を引いてしまうが、
姉にとっては、それもいつも通り…気にした素振りも見せず、妹を促す。

「賑やかー。年一回のお祭りみたいなものだもんねえ。ほら、はぐれないように」

そう言うと、手を繋ごうと差し出して。

伊都波 悠薇 >
「うへ、ひとがおおい」

少し意地悪したので、良しとする。
手を出されれば繋いで。

「注目されてるなぁ」

姉に視線がいくのは仕方ないと思いながら前髪を整えて。

「そいえば、お姉ちゃん。追影センパイと組むときは、気をつけてね」

ふとこの間の見回りのことをいいながら。

伊都波 凛霞 >  
「大丈夫だって、この中でも悠薇が一番カワイイもん」

よくわからないシスコンの理論で妹を安心させよとする姉の図。

妹の主観がどうあれ、一般生徒から見れば振袖姿の美人姉妹が手を繋いで仲睦まじく歩いているのだ。
注目はもちろん、姉にばっかりというわけでもない筈で──。

「うん?」

そういえば、という妹の言葉。
先日、風邪を引いてダウンしていた時に自分の代わり妹に警邏に入ってもらったのだった。
入ってもらった…というよりは、ふらふらのままでも自分が行こうとして怒られて…という流れだったけれど。
監視対象と、その監視役。少し特別な間柄であることもあって、自分が行かなきゃと無理をしそうなところ。
妹が自分の代わりに…なんて、頼もしいことを言ってくれたものだから、少しきゅんとなってしまった。
……で、それにまつわる話らしい。

「気をつける、って?」

なんのことだろう?
警邏は、気をつけることは当たり前だけれど、彼と組む時は…という言い方には疑問符が浮いた。

伊都波 悠薇 >  
「いや、いいから。そゆのは」

ちゃんと分かってるからと、ぶんぶん、首を横に振る。

「センパイから、話があると思うけど。センパイ、決着? つけたいことがあるみたいだから」

からんと、下駄を鳴らしてひとつ。

「……お姉ちゃん、センパイに協力するんでしょ?」

伊都波 凛霞 >  
軽く流された。
結構本気で思ってるんだけどなあ。

「そっか」

返答は、簡潔。
彼がそう口にしたのなら、そんな事情があるのだろうと思った。
彼が誰にも嘘を吐かないことはよく知っている。
じゃあ、そのうち私にも話してくれるだろうと。

「…どうかな」

「手を貸して欲しいと言われれば貸すし、
 助けがいるって言われたら助力もする。
 でも手を出すなって言われたら、出さないと思う…」

「実際に話を聞いてみたいと、事情はわからないけどね」

そんな会話をしながら歩けば、境内へと辿り着く。
除夜の鐘つき、参加してく? なんて横へ問いかけてみよう。

伊都波 悠薇 >  
「あれ」

思ってたのと違った。
眼をぱちくり。でもそういう見守る関係なのかなと思いつつ。

「話はあるんじゃないかな。少なくとも私には無理そうな感じだったよ」

たまたま、うまくいっただけ。
姉ならと思っているからこその言葉だった。

「うーん……お姉ちゃんは?」

参加したい? と質問に質問で返した。

伊都波 凛霞 >  
「あくまで事情次第!
 きっと話してくれるだろうから、その時を待つよ」

もう監視役として彼に付き添ってそれなりの時間が経った。
ある種の信頼関係は、すでに築けているのだ。

「人には得手不得手があるからね。
 無理そうなことだったとしても気落ちは不要!
 私は、悠薇が私の代わりに警邏に行くって言ってくれた時嬉しかったよ」

少しだけ照れくさそうにはにかみながら、ゴォォォン…と響く、少し大きく聞こえてきた音に視線を向ける。

「せっかくだし、一緒に撞いていこ♪」

ほらほら、と手を握って引くように、並んでいる列へ…。

いっても鐘を鳴らすだけ、そう時間を待つこともなく鐘の前へと二人で立ち、撞木に繋がる縄を手にとれば、妹にも一緒に持つように促して。

伊都波 悠薇 >  
「……お姉ちゃんが無理するのは、もう望んでないからね」

昔なら、そう。
でも今はそうじゃないから。

「わ」

姉の意見を聞けばそちらに振り回される。
でも、それが良いのだと思うと自然と口が緩んだ。
一緒に、手にとって。

「せーの」

たまには、こういう日があっても良いなと。
締めでありスタートの日に思った。

伊都波 凛霞 >  
「人生長いんだもん!少しくらい、たまには無理はするかもしれないけど、
 もう身を滅ぼすような無理はしない、よっ…!」

ゴォォォォン───……

姉妹で撞いた鐘は重苦しい音を響かせる。
これで何回目なのかはわからない。
百八回、一つずつ煩悩を退散させるべく叩かれる除夜の鐘。
眼の前で撞くと、結構大きな音でわっと驚いてしまったりもしたけれど。

「煩悩、って一口に言っても難しいよね。
 私は…ちょっと甘いものへの誘惑を控えようかな…」

苦笑しつつ、鐘から二人で離れる。
境内もまだまだ人は多く、妹はあまり居心地が良さそうではなかったこともあって、こっちへ、とまた手を引いて──。

境内の裏手。
小綺麗に掃除された、小さな石段へと訪れた。
少し喧騒から離れ、他に人の姿は見当たらない。

「少し休もう~。慣れない履物だと、疲れちゃうね」

うーん、と背伸びをして、石段に腰掛ける。
綺麗にされているみたいだし、ちょっとくらいは汚れないだろうけど、
姉はこういうところはちょっと図太い。

伊都波 悠薇 >  
「煩悩……」

自分はパッと浮かんだので、顔を真っ赤にしたあとぶんぶん横に振ったタイミングで。

ぐいっと引かれて場所移動。

「そんなにはしゃぐから」

苦笑しながらその姿を見つめ。

「……なおってよかったね、かぜ」