2025/01/13 のログ
ご案内:「Free1 時期外れの初詣」に杉本久遠さんが現れました。
ご案内:「Free1 時期外れの初詣」にシャンティさんが現れました。
杉本永遠 >  
 ――一月も半ば、杉本ドラッグ、もとい杉本家にて。

「はーいはい、兄ちゃんは自分で着付けも出来るんだから行った行った!
 準備ができたら先に神社で待っててよね」

 そんな事を言いながら、兄を追い出し、兄の婚約者の手を引いて、杉本家の小さな和室へと連れて行く。

「ほら、『義姉(ねえ)ちゃん』もこっちですよー。
 ふふふん、このパーフェクトな妹の着付けの腕をお見せしちゃうんですからー!」

 そんな事をいいながら、盲目の『未来の義姉候補(ねえちゃん)』の手をゆっくりと引いて、部屋へと案内する。
 用意されているのは勿論、彼女のために用意した振袖。
 こういったことにやたらと準備がいい杉本家、あらため、杉本永遠。
 自称、万能のパーフェクトな妹であった。
 

杉本久遠 >  
 ――なお、追い出された兄ちゃん、こと、久遠だが。

「うーん、何故、家からも追い出されるんだ?」

 婚約者の振袖姿をお預けされ、ぽけーっとしながら自分の着物に袖を通していた。
 

シャンティ > 「義姉ちゃん?」

少々首を傾げながら、着付けの部屋へと連れて行かれる。目こそ見えないが、手を引く必要などないのだけれど。そう思いつつも、素直に女は引かれていく。

「うわ、肌すご……」
「そう?」

女同士、他に目もなく。二人だけの会話をしながら着付けをされていく。

「うん、この色! よく映えてるなー」

そうして、出来上がった振袖姿。

「それじゃ、いってらっしゃい!」

元気に送り出すのであった

「……久遠、とは……違う、元気、さ……よ、ねぇ……」

女はどちらかといえば静寂を好む性質ではあるが、不快は感じなかった。


「……さ、て……」

着物は紺の落ち着いた色に、シンプルな白い花が咲く、
足元はブーツ。慣れない履物にするくらいなら、格式張らなくてもいいでしょう、という心遣い。

こつり、こつり、と女は約束の場所まで歩き始めた。

杉本永遠 >  
「そ、お義姉(ねえ)ちゃん!」

 力強く、永遠は応える。

「――なんて、兄ちゃんがちゃんとシャンティさんを幸せに出来るなら、だけど」

 朴念仁だからなぁ~、なんてため息を吐きつつも、手際よく、そして丁寧に。
 美しくもミステリアスな、彼女をしっかりと着飾らせて。

「その、あんな兄ちゃんだけど、悪い事は出来ないから。
 ――よろしくお願いします!」

 なんて、神妙に口にしたり。
 着付けが上手くいけば、永遠は少々頼りない兄の元へと彼女を送り出した。
 

杉本久遠 >  
 ――そして一方朴念仁たる兄の方だったが。

「うーむ、本当に永遠に任せて大丈夫だったか?」

 妹と婚約者は、明らかにそのテンション――勢いが違う。
 辟易させていないといいが、なんて思っていれば。
 間違えるはずもない、よく知った歩みの音。

「――おお」

 現れた婚約者の姿に、呼びかけようと挙げた手が固まる。
 恐らく落ち着いて静かな着物だろう、とは思っていたものの。
 白い花を咲かせた彼女の姿は、しっかりと華やかで、美しかった。

「――すまん、見惚れてしまった」

 そんな事を言いながら、婚約者の元へと歩みより、自然とその手を取る。
 久遠の指には、いつか贈った婚約指輪とペアの指輪がひっそりと。
 ほんのり頬を赤くしているのは、とても分かりやすく、読み上げるまでもなく、その様子は想像に難くなかっただろう。
 

シャンティ > ゆったりと、いつもの歩調で歩く。予定の時間に遅すぎもせず、早すぎもせずにたどり着き……

「……」

男の様子が、目に入る

『「――」男は一言を漏らし、手を挙げた姿勢で固まる』

くすり、と女は笑いながら読み上げる。
そのまま、男の差し出す手に、そのまま手を取られていく。

「ふふ――たい、して……かわ、らな、い……わ、よぉ?」

小さく首を傾げる女。

「それ、に……して、もぉ……初詣――ね。はじ、めて……な、のよ、ねぇ……これ」

そもそも風習として持っていなかった上に、神に祈る、ということもしない。
そんな女にはある意味、物珍しい儀式ではあった。

杉本久遠 >  
「ん゛――頼むから、そういうのは読み上げないでくれ」

 あからさまに恥ずかしそうな咳払いをしつつ、繋いだ手に安心感を覚える。
 今日も彼女がここにいてくれる。
 それが何より嬉しいのだ。

「いや、浴衣の時とはまた違って、うん。
 あぁ、えっと――すごく綺麗だ」

 こういった語彙が少ない男である。
 言葉を探して、出てきたのは結局、率直なその言葉。
 けれどその一言に、幸福や愛おしさ、いくつもの感情がたっぷりと込められていた。

「そう、か、そうだよな。
 言われてみれば独特の風習なのか。
 なに、さして変わったことをするわけじゃないさ」

 そう言いながら、ゆっくりと婚約者の手を引いて、歩幅を合わせながら、鳥居をくぐる。
 境内の中は、時期を外したとはいえ、ぽつぽつとそれなりの人の姿が見られた。
 その中の視線のいくつかは、久遠の連れた、美しい女性へと向けられている。

「お賽銭を入れて、ちょっとしたことを祈る。
 細かい作法なんかもあるが、まあ、大したことじゃない。
 東の国の信仰は、少し自由過ぎるくらい自由だからな」

 そう言いながら、境内の石畳の上を案内するように、拝殿の前へと手を引いていく。
 しっかりとした造りの拝殿は、厳かであっても、いかめしくはなく。
 どこか親しみを感じるような雰囲気を持っていた。
 

シャンティ > 「……あ、らぁ……? こう、しな、いと……認識、し、づらい……の、だ、ものぉ?」

くすくすと女は笑う。それは事実でもあり、事実の全てではない。
あえて、何を読み、何を読まないのか。

「ん……風習、も……だ、けれ、どぉ……そう、ねぇ……申し、わけ……ない、けれ、ど……神、とか……信じ、て……ない、か、ら?」

だから、祈ったことなどない、とそう告げた。
それでも、手を引かれるままについて歩く。

「ここ、は……特、に……信じ、る……人、多い……し……珍し、い……かも、しれ、ない……わ、よね」

こつり、こつり、と小さな音を立てて歩く。
もちろん、視線など物ともしない。

「……祈り……ね。
 そう、ね……」

ぽつり、と口にしながら拝殿へと上がる

杉本久遠 >  
「ん、むぅ」

 ウソでも本当でも、そう言われてしまうとなんとも言いづらい。
 笑われているのが、嬉しいやら照れるやら。

「祈った事がない、かあ。
 信じる信じないはあまり大したことじゃないと思うが、ふーむ」

 祈ったことがない、は少しばかり考えてしまう。
 言われてみれば、神頼みなんてしないような女性ではあるが。

「言われてみれば多い――んだろうなあ。
 なんていうか、昔から身近な存在なんだ、文化的にさ。
 本当に根っこから神様を信仰してる人ってなれば、こっちでも珍しいと思うぞ」

 これといって、宗教的意味を意識して神社に来て居るわけじゃない。
 昔からそういう文化、伝統として、生活の一部に溶け込んでいるからこその、気安い参詣だ。
 二人でゆっくりとした足音を鳴らしながら、会話の内容は気づけば深みのある物になっている。

「そんなに、考える必要はないさ。
 例えば、今年一年健康でいたい、とか、学業に身が入るようにとか。
 そんな些細な事なんかを――そうだなあ」

 拝殿へと上がりながら、こんなことを口にするのはどうなのだろう。
 そんな事を少し思い苦笑しつつも。

「ほんとうに神様を頼る、というよりも、願掛け、宣誓、みたいなものかな。
 だから新しい一年を、こんな年にしたい、みたいな。
 そんな事を祈る、って形で再確認する。
 宗教的な祈りって言うより、そういった側面が強いもんだと思ってくれたらいいさ」

 そう言ってる間に、賽銭箱の前までやってきてしまう。
 歴史を感じさせる拝殿とそのどっしりとした箱は、色んな人のそう言った『ねがいごと』を聞き届けてきたのだろう。

「あ、賽銭ってのはわかるか?
 こうして、小銭を――箱の中に投げ込むんだ。
 まああえて宗教的に言うなら、供物、って所かな?」

 なんて笑いながら、婚約者の手にそっと、五円玉を握らせる。
 

シャンティ > 「そう――それ、ね。頼む、割に……神、への……信心、が……ある、よう、で……ない。とて、も……不思議、よ……ね。」

神を信じない、というその口ぶりのときよりは興味深げな様子で、女は言う。
今の時代、ある意味神はさらに身近になったとも言えるのだが、それすらも関係ない、と言わんばかりの有り様。
恩なのは奇妙でありつつも、単なる信者よりは面白く映っていた。

「宣、誓……」

人差し指を頬にあて、噛みしめるかのようにして口にする。
その言葉そのものを、口の中で転がし吟味しているかのように。

「あ、ぁ……それ、なら……のみ、こみ……やすい、わ、ねぇ。」

神は、そこにあろうがなかろうが問題はない。ただ、己に向けての意思確認。
それであれば、信じようと信じまいと、何も関係はない。
信仰という名を借りた、ある種の自己啓発。

「ふふ……よか、った、わぁ……それ、なら……私、にも……でき、る……わ、ね」

くす、と笑う。
ここまで来ておいて、儀式に乗れない、というのもあまり美しくない。

「捧げ、もの……ね。形、とし、ては……整え、ない、と……ね」

渡された5円玉を、不器用に投げ込む。
弱々しく飛んだそれは、それでもちゃりん、と小気味良い音を立てて賽銭箱へと吸い込まれた。

「……」

礼を2回。柏手を2拍。
ぱん、ぱん、と乾いた音が小さく響く。

「より……」

小さく声に出してから、そういえば、と言うように声を潜め消し続く言葉は静寂に消える。

「……」

ややあって、小さく礼をする。

「ふふ……こう――よ……ね?」

下調べはしてきたのだろう。概ね、それらしい動きをして見せていた。

杉本久遠 >  
「不思議だよな、オレも詳しくはないが、昔からそういう雰囲気の国だったみたいだぞ。
 こんな不思議な習慣を調べたりするのが、民俗学ってやつなのかな」

 なんて、酷く浅い知識で受け答えた。
 神が実際にその姿を表そうと、超能力や魔術が世界に現れても、その根っこの精神は変わらなかったらしい。
 それ程に人々に染みついた習慣というのも、案外珍しいのかもしれない。

「ん、そうかそっか、それなら良かった。
 ――おお、上手く入ったな」

 少しばかり心配だったが、婚約者は上手い事やって見せる。
 それに、見守る間にそれらしい形で参詣してしまう。
 一通りやって見せた婚約者は、いつものように小さく笑みを向けてくれる、が。

「――困ったな、オレが教える事が何もないぞ」

 久遠は苦笑して、頭を掻いた。
 しっかり予習して来たらしい婚約者に、緩んだ顔を見せる。
 そして自分も拍手を二度鳴らし、手を合わせる。

(――皆が健やかにまた一年過ごせるように)

 そして一拍置いて。

(彼女を楽しませて、幸せにできるように)

 そんな欲のない事と、自分の静かな近いを黙して祈り、静かに一歩下がった。

「なあ、君は何を思い浮かべたんだ?」

 婚約者の手を再び取って、拝殿からまたゆっくりと下がる。
 その間に何げなくそう訊ねた。
 

シャンティ > 「そう……ね。ふふ――久遠、も……学問、に……興味、もった……?」

くすくす、と笑いかける。
あくまで話の流れの一言であろう、とわかってはいるが、あえてそう口にする。
本につながる道は、どこにでも空いている。

「あ、ら……教え、たか、った……? 手、とり……足、とり……?」

ああ、しまった、とでも言うように、小さく手を合わせる。

「いま、から……で、も……やり、なお、す?」

小さく、首を傾げて問いかける。無垢な少女のように。悪魔の囁きのように。

「……わた、し?」

問いかける男に、小さく問い返す。

「マナー、違反……じゃ、ない……の、ぉ?」

そして、くすくすと笑い返す。
微笑ましく子どもを見つめるように。

「……そう、ねぇ……」

唇に人差し指を当てて、しばし考えるようにする。

「世界、が……終わ、らない、よう……に……したい……か、しら……ね?」

女は謎めいた笑みを浮かべていた。

杉本久遠 >  
「むっ、失敬な、元々興味がないわけじゃないぞ?
 いやまあ、確かに勉強が出来るわけじゃないが」

 あえて言われた言葉に、律義に反応を返すいつも通りの久遠。
 婚約者である彼女と出会ってから、本を読む量は明らかに増えたが、それが学業の成績に繋がってるわけではないのが笑いどころかもしれない。

「――だはは、そういうもんじゃないだろう」

 そう笑いながら、首を傾げた彼女の髪をそっと撫でるように触れて、無垢そうな表情を浮かべる頬を撫でた。

「ん、そうか、マナー違反か。
 なら仕方ないなぁ」

 笑われると、むぅ、と唸る。
 そのまま一緒に拝殿から離れると、

「――面白いな?」

 冗談か本気かわからない謎めいた言葉に、同じように笑いながら言う。
 勿論、その返答の真意はわからなかったが。
 彼女が大真面目にそう祈っていたらと思うと、素直に面白く――嬉しいと思った。

「オレも似たようなもんかな。
 皆が健やかに一年過ごせるように、ってな!」

 だはは、と大きな口を開けて笑う。
 お互い口にしたのは、随分と大きく曖昧な祈りに聞こえる事だろう。
 彼女になら、きっともう一つの誓いのような願い事も筒抜けなんだろうなと思いつつも、気にする事もなく。