2025/01/16 のログ
ご案内:「夜明け、彼は異界より来る」にミア・コレットさんが現れました。
■ミア・コレット >
夕暮れ時。
たまたま近くでバイトがあったけど。
港らへんで騒ぎが起こっていたのでなんとなく近づいてみる。
帆船だ。
マストがあり、船首には少し変わった意匠の女神像?のようなものがある。
異界の船だろうか。
そして周囲が話していてようやく気付いたけれど。
あれはどうにも海賊旗を掲げているようだ。
海賊船? なのかな? それも異世界から来た…?
■ミア・コレット >
最近、門が海側で発生していたとは聞いたけど。
不思議なこともあるものなんだなぁ。
呑気に見物していると。
轟音が響いた。
砲撃音!? そして私の眼の前の海が弾けた。
う、撃ってきてる!? 嘘でしょ!?
直後にパニックになる周囲の人たち。
その中で周囲を見る。
「ちょっと……これはシャレにならないって…!」
正義感だけで行動するのは危険……わかっている、けど。
『──その気持に、嘘はないじゃないですか』
伊都波 悠薇の言葉が脳裏を過る。
「エトランゼーッ!!」
影を操って人型の異形を作り出す。
着物を着た少女にも見えるその異形は、斥力を生み出して私を浮かせる。
「あの船まで連れて行って、キクリヒメ!!」
そのまま海上すれすれを飛びながら異界の海賊船へと向かった。
■ミア・コレット >
高度はあんまり出ないけど速力は十分、
そうそう運が悪くなければ砲撃には当たらない!!
海賊船が近づいてくると、人影が燧発式の銃を撃ってくる。
やっぱそう来るよねえ!
斥力をコントロールしながらその場でバレルロール、力を振り絞って急上昇。
さ、さすがに高度出すのはきつい……!!
そしてマストに降り立つ。
そこで私は海賊船の“乗組員”を見た。
ボロボロの衣服を身に纏った。
骸骨たち、だった。
「風紀案件? 祭祀案件? それとも異界から来たから生活委員会?」
軽口を叩いて戦闘意欲をコントロールする。
「面倒はやめてよね!!」
ロープを伝って甲板に降り立つ!
■ミア・コレット >
海賊の骸が水平に突き出す刃の厚いカトラスを紙一重でかわし。
「戻れ、キクリヒメ!!」
次に撃たれた銃弾をマストの影で回避する。
「海賊には海賊だ、エトランゼ―ッ!!」
自らの影を刃と銃を握った屈強な怪物に変える。
「やっちゃえ、キャプテンキッド!!」
剛刃で私のエトランゼは次々と異界の海賊団を切り捨てていく。
銃弾を弾き、撃ち返し、また次の骸を再殺していく!!
「どこから来たか知らないけどさ、アンタたちちょっとやりすぎなのよ!!」
波状攻撃をしてくる死の海賊たちを、回転切りで粗方切り刻んだ時。
■ミア・コレット >
ぎし、と船板が悲鳴を上げた。
そちらを向くと、生前の身長にして200cmはありそうな。
見上げるほどに大きな骸骨がフックカトラスを持っていた。
いかにもな帽子。
こいつがこの海賊船の船長……!?
「親玉のご登場ってワケ? 言っとくけどこの世界ではこれ以上悪さはできないから」
端的に煽るとキャプテンキッドが巨大な骸に切っ先を向ける。
その切っ先を。
キャプテンスケルトンは。
目にも止まらぬ早業で弾いた。
「嘘!?」
咄嗟に短銃で応戦する私の影に。
「これ使って!!」
と、さっきまで骨たちが使っていたカトラスを投げて渡した。
■ミア・コレット >
切り結ぶ。切り払う。圧し切る。かわされる。押し込まれる。
私のエトランゼであるキャプテンキッドが押されている。
あいつ……生前は相当な強者だ。
ううん、今だって!!
敵は巨躯に見合わぬ繊細な動きで、フックカトラスに引っ掛けて私が渡した剣を再度、弾いた!!
「しまっ……!!」
切っ先がキャプテンキッドを貫く。
ダメージフィードバックで全身に煮えた鉛を流し込まれたような痛みが迸った。
「う、あああぁ!! も、もどれキャプテンキッド…!!」
必死に影を足元に戻す。
……万事休す。大ピンチか…
■ミア・コレット >
再結線だ!!
再び意識を集中して、エトランゼを呼び出さなければ……!!
死ぬのは嫌だ。死にたくない。
でも……生き残るために。
命を燃やせ!!
顔を上げた私の双眸は。
きっと金色に染まっていたことだろう。
「これが覚悟だッ!! エトランゼー!!」
拳を振り上げると、影が再び形を持って行く。
眩い逆光、私にトドメを刺すために剣を振り上げた巨躯の骨が一瞬、怯んだ。
■ミア・コレット >
光あれば、影もまた濃くなる!!
エトランゼはさらに強くなる!!
「汝の名は海を司る者───エノシガイオス!!」
蒼い巨人が現れ、空中に完全に制止した。
「海の裁きを受けろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
直後、水球が船長の骸を包み込む。
脱出は不可能、そのまま水圧が深海であるかのように増していく!!
「うわああああああああああぁぁぁぁ!!」
これほどの強大なエトランゼ、作ったことがない!!
今は最後まで維持できるように全身全霊を!!
ギシ、と空間と音が軋む音と同時に。
真球に潰れきった悪しき骸が転がった。
「……死ぬかと思った」
「終わってしまうかと思った……」
そのまま他に敵が残っていないか、慎重に船内の捜索を開始した。
■ミア・コレット >
結論から言えば、もう敵は残ってはいなかった。
船室にあったのは。宝。宝。宝。
よほど“仕事”が上手くいっていたらしい。
その中に、奇妙な輝きの冠と。
航海日誌を見つけた。
「何の言語だろ……万能翻訳アプリで読めるようになるかな?」
本を置いて携帯デバイス『ホルスゼフォン6SE』のリアルタイム翻訳機能を使った。
■航海日誌 >
XX月XX日。
今日は実入りが大きい。
船底が重いのは確かだ、今軍艦に追いかけられても逃げられないだろう。
よってこの船、オールドインフェルノは寄港のため舵を取る。
……あの生臭坊主ども、何が『災厄の冠』を持ち出せば何が起きるかわからないだ。
今頃は天国でもせいぜいそう喚き散らしているだろう。
■ミア・コレット >
オールドインフェルノ。
災厄の冠。
そして、骨になった海賊たちに海賊旗。
なんだか、不吉だ。
■航海日誌 >
XX月XX日。
異変は起こった。
病死した船員を海に葬ろうとした瞬間。
そいつが起き上がりやがった。
そいつがまた寝ぼけるまで何十発も銃弾を撃ち込まなきゃならなかった。
何だ。何が起きている。
XX月XX日。
海路がわからなくなった。風もだ。
島一つ見えない。どこまで進んでも鳥一匹見えやしない。
それに……薄気味悪い空の色だ。
責任を取らせた操舵士はまた蘇った。クソ、なんなんだ。
■ミア・コレット >
この時点で異界に飲まれた……?
オールドインフェルノ号は、漂流していたの?
■航海日誌 >
XX月XX日。
フォア・ステーがフォアマストを軋ませる音で目が覚める。
遅い食事を済ませていると船員どもが言い争っている。
ここは異世界で、俺達はもうどこにもたどり着かないと。
何を言ってやがる、馬鹿馬鹿しい。
両方の左手の中指をちょいと短くして手打ちとする。
XX月XX日。
食料が減ってきた。水もだ。
だがまだ航海が続けられないほどではない。
問題は……死んだ船員がアンデッドになって襲いかかってくること。
それと、この船が魚一匹見えない暗い海をもう一週間も彷徨っていることだ。
■航海日誌 >
XX月XX日。
船員たちが総出で俺の元にご登場だ。
キャプテン、今からでも遅くはない。
神に祈ろうと。
これは今までの殺戮の罰なんだと。
くだらねえ。くだらねえぞ。
その場に二本のカトラスと銃を置き。
『じゃあ俺を殺したらそいつが次の船長だ、お祈りでもなんでも好きなだけ指示しろ』
と言い放った。誰も何も言わず、ノロノロと持ち場に戻っていった。
誰だって嫌だろうなぁ、厄介を背負いこむのはよ。
■ミア・コレット >
息を呑む。
次のページをめくり、翻訳機能を続ける。
■航海日誌 >
XX月XX日。
いよいよ船内のアンデッドどもと俺達の力関係が逆転した。
今じゃ小便一つするのも命がけだ。
数で負けてる相手の喧嘩ならともかく。
死んだら死んだだけ敵が増える戦なんて誰が勝てる?
XX月XX日。
俺が最後の一人のようだ。
船長室を出れば、あいつらが待っているだろう。
俺は神に祈らない。神などいない。
それでも、ああ、縋りたくなる。
どうしてこんなことに。
神よ、赦し給え。
■ミア・コレット >
航海日誌はここで終わっている。
どうやら、あの財宝と罪の重さと。
あの災厄の冠、という宝冠がこの船を死者の海賊船に変えたようだ。
「もしもし、海賊船に乗り込んだ者ですが」
「祭祀局祓除課《祓使》、コードネーム『アリスブルー』を呼んでください」
「この船のアーティファクトは、少し厄介そうなので」
振り向くと、金銀財宝。
しかしそれを金貨一枚たりともポケットにいれることなく。
私は去っていった。
この宝は私のものじゃない。
もちろん、彼らのものでも。
ご案内:「夜明け、彼は異界より来る」からミア・コレットさんが去りました。