2025/03/11 のログ
ご案内:「伊都波家・道場」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「伊都波家・道場」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
ふとした休日のお昼頃。
昼食よりも少し前に、姉に声をかけたのがきっかけ。

胴着に着替えて、整えて。
ふーっと、息を吐く。

ーーお姉ちゃん、今日、暇? 暇なら、稽古つけてくれない?

突然の誘い。

胸のなかにはある、目標ーー

さて。

姉の支度が終わるのを、待つ。

奇しくも。
とある日、自分に殺が宿る修羅の拳を振るう才があるとわかったのと、同じようなーー

伊都波 凛霞 >  
服装は、道着袴。
古流武術を修める、伊都波家の道場では見慣れた姿。
日々のこと、特に手間取ることもなく、程なくして広く板張りのされた道場に二人、姉妹が向き合った。

「お待たせ。悠薇から、なんて久しぶりだね? ───何かあった?」

珍しいな。
そう思って。
それでも、よほどのことがなければ妹の要求に姉が応えないことはない。
二つ返事で快諾し、今、こうして向き合っている。

伊都波 悠薇 >  
「ううん。たまには、スキンシップ? も大事かなって」

姉と接する時間は、最近やはり家でくらい。
姉くらいになると忙しいのもあるし、そう思ったのは本当だ。
でも、半分はーー

「……風紀委員、やめたほうがいいかもって言われたとき以来かも」

そんな風に。

「よろしくお願いします。師範代」

茶化して、礼。

伊都波 凛霞 >  
「やっとそう思ってくれたの?」

くすりと笑う。
くっつきすぎると、迷惑そうにしたりもするから。
最近はスキンシップも姉からは控えめにしていたところ。
そう、妹が口にすれば、姉は実に嬉しそうに頬を綻ばせる。

「夏過ぎ、以来か…」

それぞれ、鍛錬や修練はしているけれど。
こうやって手を合わせるのは実に久しい。
合わせるようにして一礼を返し───構えた。

そうなれば、姉の纏う柔和な雰囲気はその一切が消え失せる。
まっすぐに目の前の相手を見据え、強く…圧し潰れるような圧を放つ。
武道とはまた一線を画する、古き流派の持つ強かな空気──それを受け継ぐ者としての姿へ。

伊都波 悠薇 >  
冷や汗が、頬を伝う。
スイッチの切り替わりを感じる。

ふーっと、静かに息を吐いて。
正面を見据えて。

構えず。

力を抜いた、棒立ち。
じぃっと、姉を見つめたあと。

『意識』して、冷たさを纏う。
刃のような鋭さ。いつの日か、姉と組んでいる人のときに見せた……

殺気のコントロール。

『殺気ーそれー』を、姉に、向ける。

向けて、動かないのかと。
圧をかける。狙うは後の先。

しんとした、中。

動いてもいないのに、もう、稽古は始まっていた。

伊都波 凛霞 >  
チリ…、と肌に感じるのは、殺気。
肌に直で感じる、妹の表情からはまるで想像もつかないような、刃の如き殺意。

「(───やっぱり、そうだ)」

古流武術・伊都波の本来の姿を体現できるのは、妹のほうである。
その他の多くが足りていなくとも、真髄に触れているのは自分のほうではなく──。

武としての圧。
宿業としての殺。

でも、それで乱れるほど未熟な姉でもない。

僅か、斜に構え…体重を後ろへと傾ける構え。
そして、片手をつま先よりほんの少しだけ前へと出す。
一見なんの変哲もない構えに見えるこれが、姉・凛霞の得意とする"待ち"の構え。
相手の出鼻さえ見切ってしまえば、確実に後の先…カウンターが取れる。

「──、こないの? 開始まってるよ」

薄く鈍色の瞳を細め、殺気を向ける妹へ、そう口を刺した。

伊都波 悠薇 >  
ーー見透かされてる

アテてから、動いてもらい、姉の得意な形から外すつもりだった。
でも姉はこのくらいじゃ、やっぱり動じない。

もう一度、深呼吸。
大丈夫。もともと……

『試行』するための場所なんだから。

踏み込む。駆ける。
いち、に、さん……拍は一定。
基本に忠実。速度は常人程度。
見破るのは容易い。

肉薄ーー

そこから、右足の振り上げ。
頸を狙った上段蹴りへ。

『いつもならそこでおわり』

そのまま、二の矢を仕込む。
囮。

受けるであろうという予測。
受けたならそのまま、体を捻り、そのまま左足をたたきこむ、算段。
まるでダンスのような、カポエイラの動き……

変則的な、自身の経験を活かした挙動ーー

伊都波 凛霞 >  
「(──いきなり?)」

初手には相応しくない、上段の右回し蹴り。
初動作も大きく、見え易い──、故に、初手にそれを選ぶのは"武道"としてのセオリーにはない動きだ。

同じ家に生まれ、子供の頃から道場とそこで行われていることを知る姉妹。
天秤が働き、妹が正しく成長できていなかったとしても──基礎中の基礎、基本は、しっかり出来ている。

つまり───これは誘い。

半歩後ろに下がれば蹴りは空を切り、その後の動作も丸見えとなる。
故にここはそうするのが正解───、でも。

「(そこから、どうするつもり? 悠薇──)」

姉の心に芽生えたのは、好奇心と…期待だった。
妹なりに何かを練り上げ、それを試そうとしている。そう感じる一撃であった故に…。
諸手の構えを崩し、左手で衝撃を流すように、上段蹴りを捌く。
その歳に注視するのは、放った側の軸足。
その体重移動を見逃さず、追撃の一手……それをも、冷静に捌いてみせる。
伊都波の流派にはない動作。
ほんの僅か、姉の表情が驚きを見せ───。

「──甘い!」

それでも。
二撃目を捌いたまま、妹の脚を絡め取り、投げる。
板張りの道場、受け身が取れなければ当然、痛い。
それでも加減することなく、真っ向から向かってきた妹への手加減は感じられなかった。

伊都波 悠薇 >  
(想定内!!)

ギリッと、歯を食い縛る。

ここから、捌かれた後の反撃。
カウンタースタイルを得意とする姉なら、これくらい容易い。

自分の『今』じゃ、そうなる。
でもーー

(『動け』!!)

投げられてる最中の一瞬。
投げの機転となる姉の腕だけを狙う。
狙うは肩関節ーー

受け身なんて二の次。

肩を『毟り』とろうと手を伸ばし。

その狙いはーー姉に悪寒として伝わる。

伊都波 凛霞 >  
違和感───投げられる人間の重心じゃない。
返しを受けることも想定済み──でもそんなのは受け身も取れない自爆行為。
それこそ、良くても相打ちにしかならない───。

「──、…っく…!」

投げの「形」を崩す。
向けられた殺気があった故に、それを察知することも容易くはあった。ただ……。
自身の肩へ向けられたそれをいなし、更に投げを綺麗な形で成立させることは無理に等しい。

──結果。
その指先が触れた凛霞の道着の肩の部分がほつれ、悠薇は受け身を取ることも難しい、歪な形で宙を舞うことになる。

伊都波 悠薇 >  
受け身は取れない。
とれるはずもない。

そのまま投げ飛ばされて、宙へ。
衝撃を身体全部で受け止めながら、ごろごろ転がり、息を何回か吐き出しながらーー無理やり体勢を整える。

それでもーー、これで『死なず』に済んだ。

あのまま、姉の意中通りならその時点で終わりだ。
投げが完遂から、詰めの一手で試合終了。

なら、まだ『前向き』ともいえた。

「ーーッ、こほ、けほ」

ーー『動け』!!

立ち上がり、そのまま前進。
息を深く吐きながら、投げ終わりの姉へ間髪いれず、迫り、鳩尾を狙う。

掌打ーー、そこからの『毟蕾』ーー……

伊都波 凛霞 >  
「っ、だ………」

大丈夫!?と…思わず口に出るところだった。
それを、必死に飲み込む───自分に向けられた殺気、それが、
稽古をつけてほしい、といい流れも、妹からの何かの挑戦のようにも思えたから。
……仕合の中に、身を案じる言葉は不要と言い聞かせた。

型にない二段蹴り、奥義に似通った我流の技…。
妹が何かを為そうとする様を、しっかりとその瞳に収めている。───もっと、見たい。

妹は立ち上がる。
受け身も取れずに投げられ、板張りの床に叩きつけられて。
男性の大人だって、そう簡単に立ち上がれるものじゃない。
──それでも妹は即座に立ち上がり、前に進む。

型は、掌打。
基本に忠実で、キレイな型だ。
だからこそ…それをよく知るからこそ、影に仕込まれた殺気が際立つ。

歪とはなった投げの姿勢、体幹は真っ直ぐとはなっていない。
掌打を払えば自然、その胸元はガラ空きとなって───。

「っ───」

ばっ、と。
二人の距離が大きく離れる。
それは、姉が大きく、距離をとったからだ。
姉の胸元、道着には捻じくれた様な、不可思議なほつれが生まれ…。
姉自身の表情にもそれは現れ…平静を保ちつつも、頬に伝う汗が顎先へと流れていた。

伊都波 悠薇 >  
ーー外れたっ

今日この日、初めて。
自分は、なりふりを構っていない。

姉との稽古。
ーーその、メタ読み。

姉なら、こうする、こうなってくれる。

成長すら信じる妹の思考回路は、姉専用の未来予測に近いものとなっていた。

「……つぎ」

ぶつぶつ、呟き没頭する。
構えなき、構えをしながら、自身の、『姉の成長と思考速度』を修正する。

さらに、研ぎ澄ませた殺気をアテる。
まだ、来ないのかと。

『次の毟蕾』を当てる、未来を構築しながらーー

姉の首筋に、刃があたっているような、そんな悪寒が走る、殺気を放ち続ける。

伊都波 凛霞 >  
妹は「稽古をつけてほしい」と言った。
でも、それは彼女の挑戦に他ならない。
師範代としての立場で、その動作や技を俯瞰的に見て…という話とは違う。
視線を落とせば、妹の一撃が掠めた胸元の解れが目に入る。
殺気を感じ取れていたからこそ容易に反応出来た。
容易に、とは言っても姿勢を崩された後の話、触れることを赦した。

──ふぅ、と。呼吸を整える。
ようやく、追いついた

稽古じゃない。
そういうことなら──全開だ(全部出す)

姉の雰囲気が変わる。
落ち着いた、凛としたものから──より気圧される様な…熱を感じさせないものに。
奥義への適正は、妹のほうが高かった。
それは姉の優しさであったり、人間的な、性分や性格といった不向きがあってのこと。

されど───、この姉は、ただ妹にだだ甘いだけの生物には非ず。

「それまで持ち出すなら──、本気で行くよ」

放たれたのは──遠当て。
妹、悠薇の四肢、そして五臓六腑──正確無比なコントロールでそれは打ち込まれてゆく。
実に合理的、触れられぬままに相手を御し、制する。
ダーティに徹することこそ史上、一方的な殲滅こそが、古の戦場での流儀である。

伊都波 悠薇 >  
「ふーっ」

ピリッと、空気が変わったのを感じる。
これでいい。

今のところ『兆候』はない。
なら、どう動いているのか見定めることはできない。

だから、もう少し、この稽古はやる意義がある。
それ以上に。

ーー知りたい。姉の、全力を

いつもは見ているだけで、あこがれて、追い付けないと知って、諦めて。
それでいて、誇らしかった背中。

それが、今、振り返り正面で見せつけられている。

ぞくぞくと、背筋にハシるものがある。

ーー本気、と言ったなら。

こっちがなにもできないような手段を用いるはず。

それは、自分たちの原点だ。

だから、それも。

『想定内』

「っ!?」

一発は受けてしまう。なにせ、自分の身体能力は『普通』だ。それでも致命傷ーー

だった。

予測していなければ、の話。

狙いからずらす、拍を取る。
あたっても、こちらの動きを殺せないように、避けて、避けて。

まるで、踊るように。

姉へと。迫るーー

伊都波 凛霞 >  
妹が狙うのは接近。
それは妹が修めた奥義の性質から以てしても、自然なこと。
長距離(ロングレンジ)中距離(ミドルレンジ)近距離(ショートレンジ)
そのどれよりもより密着した…零距離(クロスレンジ)だ。

前へ出る足運び、こちらのリズム、呼吸を知ってか知らずか読んで、必死に避けながら前に出ている。

──並の人なら数度は倒れてたよ。なんて。後で言ったらどんな顔をするだろう。

「───」

距離もじわりと縮まり、最後に放った遠当ては、容赦なく悠薇の顔面を狙ったもの。
顔には無数の急所があり──そして、戦意を削ぐための有効打という意味で、理に適う。

伊都波 悠薇 >  
もう少し、もう少しで届く。

届け届け届け届け届け!!!!

一つ、此れを避ければ整う。
いつでも打てる。打つ、打つ、打てば届く。
だから、

ーー避けろ!!

きゅっと、右足親指に力を込めて。
体を宙へ浮かし、回転。

避けきっーー

「は?」

そんな優しいわけがない。
徹底した、芽を潰す戦意喪失の手。

顔面への遠当て。そんなの。

めきりーー

嫌な音がする。
でも。

……それがどおした!!! 『寄越せ』っ!!!!

歯を食い縛る。予見予測できたから、耐えられた。
耐えた、意識を飛ばさず、間合いにはいる。
そして、奮うーー。

とん。

姉の鳩尾、掌が当たる。

……とどーー






かない。
ーーただ、それだけ。

「はっ、はっ、はっ」

ぼたた、と鼻から血が床に落ちて。

かくんと、君と膝から崩れ落ち姉にそうしてないと地面に崩れ落ちそうだった。

俯いた、見えない表情は。
ひどく、ひどく。

『悔しさ』、が滲んだ。

伊都波 凛霞 >  
相手に一切何もさせずに仕留めるが流儀。
だというのに、奥義が零距離を想定したものなのは一体なぜか。
それは、一方的な制圧には必ず事前の準備が必要だから。
煽動、仕掛け、相手を無力化させるための情報。
それらを十全に仕込むことが出来る状況ばかりじゃない。
それこそが、あらゆる武器・火器にまで通ずる古流武術である伊都波が奥義を徒手空拳のものとし、伝えた理由。

最後の最後、全てを失えども生き残るために使えるのは己の肉体のみ。
無手にて対象を確実に絶命せしめるための───。

「……っ」

妹の手が触れている。
道着の上から、水月の位置。
本来ならば、届いていたのは胸であり、心臓の位置。
もう一歩近く、もう一つ早く、もう一撃避けられていたら───。

「と……。大丈夫…?」

さっきは飲み込んだ言葉を、今度は口にする。
崩折れそうになる悠薇の身体を胸元へと抱きとめ…顔を覗き込む。その表情は…厳しさの消えた、いつもの"お姉ちゃん"だ。

伊都波 悠薇 >  
あぁ、終わりだ。
姉の言葉を聞くと、この時間の終わりであることを受け止める。

「だ、だいじょ……げほ、こほ」

答えようとしたが、鼻から血がずこっと、吸い込んでしまい口に入って咳き込む。

伊都波 凛霞 >  
「凄かったよ。悠薇の気迫に、最後は少し気圧されちゃった。」

決して加減をしていない、自分の遠当てを顔面に受けてなお怯むことなく、前へと進んでいた。

声とともに指し示したのは、足元の位置…。
お互いが最初に向かい合い、立った位置は…妹の後方にあった。

妹…悠薇が前へと出、姉…凛霞が後ろへと退がったのだ。

咳き込む妹の背を擦りながら、簡単に止血の処置をする。
一瞬の衝撃で粘膜が切れただけの鼻血、根本を少し圧すれば簡単に止まる類のものだった。

「急に稽古なんて言い出したから、おかしいと思った。
 スキンシップなんてつもり、全然なかったでしょ…」

それほど、怖気を感じる程の殺気だった。
荒事に慣れている筈の姉が思わず詰められ、下がってしまう程には。

伊都波 悠薇 >  
「あはは」

笑って誤魔化す。
自分の現在位置、揺れ動き、異変。
それらを知るためのある意味で挑戦だった。
いつもとは違う意識でのーー

「そういえば、向いてないって言われたなぁと思い出したらなんだかモヤモヤ、しちゃったから」

と、表向きに用意した理由を述べながら止血をおとなしくしてもらって。

「……やっぱ、向いてないかもね」

なんて、しみじみと。

伊都波 凛霞 >  
「私が。悠薇の風紀委員の進退について言及したのは二つ、意味があったよ」

笑って見せている、けど。
何かを誤魔化した笑いなんだってことは、伝わっている。
きっと、本当に悔しい気持ちを募らせている。

「一つは、あの時点での悠薇には実力が足りないと思ったこと…。
 それからもう一つは……危険だと思ったこと」

2つ目の理由は、声色重く。
伊都波の術技は多種多様である。
武器術にはじまり、組み討ちも実に幅が広い。
そんな中、悠薇が自分よりも習熟し極めに至っていたのは、"毟蕾"と呼ばれる、対象を確実に絶命させ得る技だけだった。
なぜそうなったのか──、それには"天秤"を含め、いろいろな歪な理由があったに違いない。
普通に戦うことは難しい、でも相手を殺すことは容易に出来る。
それが危険なことくらい、誰だってわかる。───だけど。

「うん…でも」

今日、悠薇が見せたのは、その"先"だった。
そして、その先へ進むために必要な資質が。あの悔しそうな顔からも十二分に感じ取れたから。

「お姉ちゃんはお姉ちゃんだから、もしかしたら過剰に心配しちゃうのかもだけど…」

「向いてない、って言われたってやるやらないを決めるのは本人だもんね。
 悠薇が本気でやる気なら、もう何も言わずに見守ることにする」

それとも大々的に応援する?なんて、しみじみとした言葉を零す妹に笑いかける。

伊都波 悠薇 >  
「……うん」

向いていないと妹が口にした理由と姉の胸中にあったものと同じ理由だった。
殺人の拳。そんなものは、向いていない。
どちらかといえば、姉が見守っているセンパイよりのものだ。

「まぁ、もう少し、がんばってみようかな」

呟いて。今日の気持ちを、胸のうちに閉じ込める。

悔しさと、『安心』を。

「……はぁ、つかれたぁ。シャワーいこ。お姉ちゃんは、このあとは?」

伊都波 凛霞 >  
「血もついちゃったしね。
 じゃ、お風呂上がりに食べれるようにお蕎麦茹でといてあげる♪」

疲れたしお腹も減ったでしょ?なんて、笑って。

「道場の掃除と片付けは私がしておくから、悠薇は先にシャワー浴びちゃって」

そう言って、妹を送り出したなら。

「──………」

自身の道着のほつれた箇所を見る。
肩口、そして胸元。
どちらも鋭く、しっかりと位置を見極め、適切な距離で繰り出したなら──痛覚すらも感じさせず、貫けたに違いない。
殺人の技術、才気。
それは、妹が脳裏に浮かべただろう彼と似ているようにも感じた。

でも、だとすれば…。
己の中で律し、冷たい刃に柔軟な鞘を被せることも可能な筈だ。

頑張れ、でも無理だけはしないように。

妹の背中に、心の中でそう投げかけつつ、悠薇を見送った。

伊都波 悠薇 >  
「うん。じゃあ、あとでね」

手を振ったあと。

「あ、お姉ちゃん。この後暇なら、喫茶店行こう。本が読める、プリンが美味しい喫茶店見つけたからさ」

スキンシップ。
ちゃんとしてもいいだろうと、そう告げて。
道場を後にした。

ご案内:「伊都波家・道場」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「伊都波家・道場」から伊都波 悠薇さんが去りました。