2025/12/24 のログ
ご案内:「通りのどこかにある古ぼけた古書店」にシャンティさんが現れました。
ご案内:「通りのどこかにある古ぼけた古書店」に杉本久遠さんが現れました。
シャンティ > さらさらと雨が降る。
さらさらと雨が降る。

人も、地も、建物も、誰も彼も区別なく雨の色に染まっていく。
底冷えのする寒さに耐えかねて、誰も彼もが足早に散っていく。
そこにある古書店など、誰一人として意識することはない。

その誰もが見向きもしない、古書店の奥。
カウンターと思しき場所に、女がゆったりと座っていた。

「…………」

その姿は、あまりにも生気がない。
ややもすれば、置物のようにも見える。
外から見れば、調度品の一つのように思われたかもしれない。

「……雨、ね」

実際には降り始めてから時は過ぎていたが、初めて気づいたかのように女は呟いた。
静かに、立ち上がる。

「……閉め、よう……かしらぁ」

気だるい声を後に残しながら、ゆるゆると歩を進める。
きぃ、と小さな音を立てて戸を開き表へと出る。

杉本久遠 >  
 恋人たちが楽しく過ごす祭日と言ったら、いつの事だろうか?
 そんなの、祝祭日なら大抵楽しく過ごしてるだろって思う中でも、やはり特別な日を上げるのなら。
 まあやっぱり、クリスマスになるのかもしれない。

「――むう、来てしまったなぁ」

 気付いたら雨が降り始めていた。
 傘も差さないまま、久遠はぼけっと古書店の戸を眺めながら、立ち尽くしているだけだった。

 どれくらいそうしていただろうか。
 すっかり濡れつくしたころに、ゆっくりと戸が開いた事に気づいた。

「あ、おぉ。
 店じまい、か?」

 珍しく歯切れの悪い、ぼんやりとした様子で声をかけ、愛しい相手に右手をあげる。
 その左手には銀色のビニール袋が提げられていた。
 幸いにも口が開きっぱなしの物ではなさそうだが、それでも持ち主同様、びっしょりと濡れている事に変わりない様子。
 

シャンティ > 「……あら」

戸を開けた先にいたのは知っている男。
雨に濡れそぼって立つ姿は、しょぼくれた大型犬の如く。
たまに情けない姿を見せることは在るが、今日はまた一際である

ほんの少し考えたところで、男から声がかかった。

『「あ、おぉ。店じまい、か?」』

そちらを見るでもなく、しかし女は一言たりと違わずその言葉を読み返した。

「……」

また少し、噛み締めるように考えた。といって、それはほんの一瞬に過ぎない。

「えぇ……どうせ、雨……です、ものぉ」

話しながら、立てかけてあった細長い鉄の棒を手に取る。
高く上に伸ばし、多少苦戦しながら旧式なシャッターに引っ掛けてようとする。

「……それで?」

作業を続けながら、女は端的な言葉を投げかけた。

杉本久遠 >  
「そうだな、雨、だもんなあ」

 いつものように読み上げられるのを、ぼんやりと聞きながら。
 しょぼくれたわんこは、彼女の言葉を反芻する。
 そんなふうに腑抜けていても、その手は勝手に、彼女の店じまいを手伝おうとするだろう。

「――ああ。
 なんだろうな。
 無性に会いたくなった、というか、クリスマス、だしな」

 その左手にあるのは、ケーキやプレゼントでも入った袋なのだろうと。
 聡明な婚約者は、この単純な男の事くらい予想がついてしまうだろうか。
 

シャンティ > 「……」

黙って男が手伝う姿を"見る"
どこかそぞろでありつつも、動きだけはしっかりしていて。
しかしやはり、どこか心ここにあらず、という有り様に見える。

「私、は……優しく、ない……わ、よぉ?
 犬は、拾わない、しぃ……世話も、焼かな、い……わ?」

女はいつもの気だるげな口調で、しかし淡々と口にする。
そうして、最後のシャッターを半分だけ開けたまま

「それで、も……寄って、いく?」

ちらりと、見えない目を男に向けた。

杉本久遠 >  
「はは、よく知ってる」

 そんな事を言いながらも、こうして聞いてくれる優しさを持っている。
 そういう所に、甘えたくなってしまったのかもしれない。

「――寄ってく」

 久遠には珍しく、そんな好意に甘えるように、短く答え。
 身を屈めながらシャッターを潜った。

「あ。
 すまん、このままじゃ店を濡らしてしまうな」

 図々しくシャッターを潜った後で、ようやく自分がずぶ濡れな事に気づいたかのように。
 いつものような、とぼけた調子で困った顔をしていた。
 

シャンティ >
「……」

男の普段と違う様子にも、女は黙っている。
ただ、ゆったりとあちら、と指を指す。

「平気、よぉ……
 ここ、は……普通、ではない……から」

ぐにゃり、と足元が曲がったような感覚がする。しかし、視界の中には何も変わったことはない。
ように、思えたが――あるはずの、本棚が見えない。

「ただ……風邪、でも……ひいた、ら……面倒、ねぇ。
 永遠、ちゃん……にも、悪い……しぃ……」

先に立って迷わず歩く。
天と地が入れ替わったような錯覚、足元が消えたような感覚。
奇妙な感覚の先に

「……お湯……でも、つかう?」

小さな部屋に、たどり着く。

杉本久遠 >  
「ん、む?」

 相変わらず不思議の書店に驚きつつ。
 彼女を濡らさないように、一歩後ろをのそのそと着いていく。

「いやまあ、流石にこれくらいで風邪は――っぇぐし!」

 そりゃあまあ、冬ですからね。
 いくら頑丈でも、めちゃくちゃ冷えるし、くしゃみくらいするでしょうね。
 部屋に連れられれば、情けない顔でガタガタ震えていた事でしょう。

「わ、わるい、借りてもいいか?」

 いつの間にやら、体の芯まで凍えそうに冷えていた。
 そう言いながら彼女に銀の袋を差し出しつつ。
 

シャンティ > 「あら……」

くしゃみ一閃。
体格のいい男から発せられるくしゃみは、小さな空間に大きく響いた。
女がくすくすと笑う。

「ふふ……そう、ね。
 素直に……入って、くると……いい、わ?」

女が指を指す。
飾り気のない部屋に、いつの間にか小さな扉があった

「シャワー……より、お風呂……かし、ら……ねえ?」

小さく首を傾げながら、袋を受け取る。

「お好きな、方で……いいわ、よ。
 タオル、も……着替え、も……好きに……ね」

杉本久遠 >  
「すまん、た、たすかる!」

 ばたばたと、言葉に甘えて扉の中に。
 余裕もないとばかりにアレもコレも脱ぎ散らかして、お風呂の中にと飛び込む勢い。

「あっ、それはあれだ。
 ケーキと、プレゼントだ!
 先に食べててくれてていいぞ!」

 そんな声が、扉の向こうからでもハッキリと聞こえてくるでしょう。
 声を張ると相変わらず大きな声だった。
 なお、ケーキはアソートセットで、色んな種類が立派な箱に詰まっているようで。
 プレゼントは、やけに大きな袋に包まれているわりには、軽い物のようでした。

「――あぁぁ~。
 いきかぇえるぅ」

 そんな、緩んだ声まで筒抜けなあたり、気が抜けてると本当に声が大きいおバカさんでした。
 ところで、タオルはともかく、着替えはどうなるのでしょうね。
 とにかく温まる事しか考えてなかったおバカさんは、お風呂の後の事なんて想像してないのでした。
 

シャンティ > 「さ、て……」

無の部屋に、テーブルが現れる。
その上に、袋を置き……中身を取り出してみる。
ケーキを開けだし、プレゼントと思しきものは横に置く。

「……」

少食な女は、食器だけを出して待つ。
色々な種類が入っているようなので、大きな皿に一通りを出しておく。

「……ふふ。単純、ねぇ……」

風呂場から響く大きな声に、くすくすと笑う。
温まった分で、少しは気持ちに余裕ができたのであろうか。
女は、そんな推測をする。

「さて……」

小さなつぶやきとともに、タオルが風呂場に置かれる。
そして……着替えと思しきものも

「……」

くすくすと、女は笑った

杉本久遠 >  
「――ぬぉっ?
 なんだこ、んんんっ?」

 しばらくすると、風呂場から困惑した声。
 しかし、単純な男は愛しい婚約者の好意と思って、しっかりと着替えるのである。
 こうして気遣ってもらえるだけで嬉しくなってしまうから仕方ないのだった。

「うぉぉぉ――!
 メリーッ!
 クリスマッス!」

 風呂場から飛び出してきたのは。
 めでたい色の紅白衣装。
 ご丁寧に付け髭までセット。
 うーん、流石抜け目ない。

「――なんで?」

 飛び出してきて、彼女の前まで来ると。
 すん、と冷静になって、ポツリと呟いた。
 

シャンティ > 男の困惑した声が響いてくる。それはそうかもしれない。
しかし"場にふさわしい物"であればこそ。
ここに現れることを許される。すなわちそれは――

「あ、ら……久遠。今日は……何の日か……知らない、の……かし、らぁ?」

くすくす、と笑う
眼の前には律儀にその服を着こなしている男。

「それ、と……もぉ……私、の……とか、が……よかった、の……かし、らぁ……?」

くすくす、くすくす、と女は笑う。
実際に着た場合には羞恥やそういった以前に体格差でなんともいえないことになりそうである。

「これ、だけ……ふさわしい、ものも……あるの、だし?」

あえて見えない目を向けた先には、テーブルの上にあるケーキとプレゼント。
ケーキは開けだしてあるが、プレゼントは未開封のままである。

「……ま、あ……パーティに……きた、のでは……ない、かもしれない、けれ、どぉ……?」

さきほどのしおれた姿を見れば、単に騒ぎに来た、というだけには見えない。
もちろん。気分転換に、という可能性もないとはいえない。
探るように、女は男を虚ろな目で見る。

杉本久遠 >  
「いや、君の茶目っ気を味わって驚いてる」

 大真面目に素直だった。

「まあ確かにパーティーというか――純粋に君に会いたかっただけというか」

 なぜか正座するサンタ久遠(ON付け髭)。
 しょぼくれてる顔よりは、どことなく間の抜けて情けない顔をしている方が、まだ『らしい』かもしれなかった。

「しかしまいったな。
 いや、むしろアリなのか?
 まあいいか――君へのクリスマスプレゼント、という事で」

 そう言いながら、避けてあったプレゼントの袋をそっと差し出す。
 中身はなんというか、ある意味でこの男らしいというか。
 間の抜けた事に、これもまた紅白のめでたい色の衣装なのでした。