2024/06/19 のログ
ご案内:「「ひみつの通路」」にノーフェイスさんが現れました。
■ノーフェイス >
古書店街大通り。
瀛州、とも呼ばれている。
雑多な街ではあるが、昼過ぎの盛りにも不思議な静けさがある。
そんな通りに、音を立てない外時計の柱に背を預けている姿があった。
新世代裁判録――「大変容」以降の様々な裁判記録をまとめた文庫サイズのそれを手に。
時間を潰すその姿は、変に浮ついた華やかさ。
鼻歌を立てぬようにしながらも、悪目立ちするその者の目的は――待ち人である。
「……なんだったんだろうなアレ」
ひとりごつ。耳元に手を運み、耳朶に指を這わせた。
すこしおかしくて笑ってしまった。腰を抜かしかけるほど驚いたのは久々だったから。
ご案内:「「ひみつの通路」」にシャンティさんが現れました。
■シャンティ > こつり こつり こつり
硬質の音を立てて、歩いてくる女
いつものように、なにごともなかったように
「は、ぁ……い?
おま、たせ……した、か、しらぁ……?」
歩みの先には、外時計にもたれかかる人物
その相手に、左を小さく振って声をかけた
どこか、浮ついたようにもみえ…
■ノーフェイス >
「ずいぶんごキゲンじゃん。
いきなりボクの耳元にささやいてきたアレといい、なん――」
わずかな心拍、動き。
よく知った相手だ。普段となにかが違うことはわかった。
声をかけられながらそう言って、振り向いた時、レンズの奥の瞳が見開かれた。
「っとぉ、……」
右手からこぼれ落ちた本を、左手で受け止めた。
「……………、そんな待ってないケド…………なにコレ?」
コレ。右手がギプスを指差す。きいてないんですケド。
■シャンティ >
『「――」ソレは、そう言って振り向き女の姿を視界に捉えると、目を見開く。
同時に、手にした本を取り落とし、逆の手で拾う「――」右の腕を指さして、問いかける』
女はいつものように謳うように、読み上げる
見慣れないモノ以外は、何一つ、変わった様子がない
「あ、らぁ……知ら、ない、のぉ……?
これ、ギプス――って、言う、の……よぉ……?
とこ、コレ……とか、に……でる、よう、な……ファッション、じゃ、ない、けれ、ど……ね?」
小さく、首を傾げた。
そして、くすくす、くすくすと、いつもの笑いを浮かべる
本当に何一つ変わらない
「えぇ、と……それ、でぇ……なん、だった……かし、らぁ……?」
右腕を上げようとして――
固められたままのそれは動かず。
諦めて、小さく小首だけをかしげて、考えるような仕草をした
■ノーフェイス >
「あれれ~、お笑い芸人みたいなやり取りがお好み?
ソッチ方面でウケ取りに行く売り方はしてないつもりなんだケドなーぁ……?
キミこそ、ハロウィンの仮装にはまぁだ気が早いんじゃないの~?」
とこコレについて突っつかれると、肩を竦めた。
会場のどこかにいたのだろうか。
独力で識る、という行動においては彼女は自分のそれをはるかに凌駕しているけれども。
(でも――なんだろ……?)
――奇妙な違和感。妙なうわつき。
それはあるのに、いつも通り。いつもどおりなのが、なおさらおかしい。
感じるだけの、妙なもの。しかし、立たせて話させたくもない。
「デート。
いいお店みつけたの。言ったろ。……左は動くの?」
行こ、と踵を返す。路地に入っていく。
なにかと目立つ(主に自分が)ので、日陰へとご案内。
■シャンティ >
「ふふ……私、も……芸人は、遠慮、する、わぁ……
で、もぉ……あな、た……なら……お似合、い……では、なく、てぇ?」
くすくすくすくす、と笑う
少なくとも自分よりはよっぽど、と。
そして……共犯者の仔細、ならともかく、それなりに大きい動きくらいなら把握はしている。
あくまで、大雑把に、だけれど
「そう、ね……
左、まで……駄目、だ、ったら……此処、まで……これ、ない、しぃ……
平気、よぉ……?」
いつもの奇妙な本を左腕に持ち、右腕は固められたまま。
それくらいなら、まだいける
「そ、う……デート……ね?
忙し、ない……わ、ねぇ。この間。も……した、ばかり、なの、にぃ……」
笑いながら、しかし、了承とばかりに首を小さく縦にふる
「きっと……いい、ところ、なの、で、しょう、ね」
■ノーフェイス >
「相方はキミだよ?」
ありえないだろ、と肩を竦めた。軽口だ。ボケとツッコミがそこにあったのだもの。
そして、音楽以外の道は存在していないのだ。
「さてね。ボクらふたりがいればどこでもいいところ――にできる自信はあるケド。
このまえみたいな冒険にゃならないよ。さすがにキミが保たなさそう。
これ。このまえこれ買いに来たときにみつけたの」
版上げされた裁判録を振ってから、ポケットに落とし込む。
日陰の路地。そこにもまだ古書店の軒先が並んでいる。
そこで不意に立ち止まると、なにもないレンガ模様の壁をとんとん、と叩く。
なにもない壁。店と店の、ちょうど合間の隙間のような。
■シャンティ > 「それ、は……困った、わ、ねぇ……?」
何も困ってなさそうな顔で首を傾げる。
自分を売り込むのも、芸を披露するのも、自分の仕事ではない。
あくまで、裏方の仕事だ
「あら、裁判……録……? あぁ……」
独りごちるが、眼の前の相手の動きも気になった。
立ち止まった先はレンガ壁の前。
本来であれば、それだけでしかない場所
それも、不思議ではあったが
そこをとんとんと叩く姿に、更に首を傾げる
「……隠れ、た……名店?」
■ノーフェイス >
「ご明察」
指をちょうどいい高さにあてて、縦一文字にすべらせると、
「これをさ――こう」
……くるり。回転して、隠されていた取っ手があらわれた。
横に引けば、狭い通路だ。壁は本棚。天井も低く、奥には開き戸。
「さいきんこういうの、よく見つかるんだよな……
ちょっと狭いから、左側に寄りなよ。壁はざらざらしてないから」
■シャンティ > 「へ、ぇ?」
構造としてはシンプルだ。
ちょっとした手続きを踏めば、隠されたモノが動作する。
「よく、みつか、る……ね、ぇ?
嗅覚、でも、あがった、の、かし、ら……ねぇ?」
相手の言葉に少し気になりながら、問いかける。
「……左、ね?」
言われたとおりに端によってみる。
狭さに思わず、ごつごつ、とギプスがあたった
■ノーフェイス >
「Doggo扱い~?」
うへぇ、肩を竦めつつも、この間だってへんなもの見つけて報告したのだ。
散歩中の犬が飼い主のところに戻ってなにがしか報告するのと――
(いや違うだろ)
違うはずだ。
「ちょっとちょっと」
ごつごつあたってる様子に、そっと、負担にならない程度に肩にふれて寄せてやる。
「…………」
痛みは?
――とは、思いつつも。
■文庫喫茶「ひみつの通路」 >
瀛州のほど近くにひっそりと存在するという喫茶店。
SNSによる存在の共有が禁止されている。
部活一覧から見つけるか、口コミを耳に挟むか、偶然でしかたどり着けない。
数代にわたって部員たちが継承し続けている、そこそこ歴史ある飲食店系の部活である。
文庫喫茶の名の通り、本棚に囲まれて喫食することができる。
レンタル・購入も可能な書店も兼ねているほか、
買った本を持ち込んで休憩することもできる(いずれも注文必須)。
席数、広さはそれなりだが、長居前提になっているのでピークタイムを過ぎると満席になりがち。
「他の席の様子や会話が気にならない・聴こえない・目に入らない」
ようになる欺瞞魔法が仕掛けられており、音楽もかかっていないので静かな読書と喫食が楽しめる。
迷惑行為や食事・読書以上のことに及ぼうとすると部長や部員から叩き出される。
本が汚れないよう蔵書は魔術防護済み。持ち込みにも閉店時間までの防護をかけてもらえる。
メインメニューは紅茶。オリジナルブレンドの茶葉と香辛料で淹れたチャイが人気。
■ノーフェイス >
扉を開く。
書店員らしい簡素なエプロンをかけた少年が出迎えた。
裁判録を差し出す。防護魔法を付与される。
壁や通路を隔てる仕切りもすべて本棚。
複雑怪奇な内装の、そこらの隙間に座席がある――
本屋と喫茶店の合成生物――そんな場所。
「テーブル空いてるって。いこ」
■シャンティ >
「ふふ……そう、ね……
いい、わ、ねえ……ワン、ちゃん。首輪、つき……ね?」
くすくすと笑ってからかう。
しかし、その笑いも店に至れば静かになる
まるで、礼儀を守ろうとするように
「……なる、ほど……ね?」
ちいさくちいさくつぶやく
それは、かつて聞いた店
それは、かつて触れた店
結局のところ、そこまで必要としなかったがゆえにあまり機会はなかった。
「えぇ……いき、ましょう、か」
言われたように、テーブルには空きがあるようだった。
それでは、そこにしましょうか、と一箇所を選び……
■ノーフェイス >
「野暮」
からかわれた気がする。じっとりと横目でみてしまった。
――着席。サングラスを外して、仕舞った。
「なににしよっか」
ペン立てと注文用紙。そこに書き込むだけで注文を請けてくれる仕様。
あまり食には拘らないほうらしいが、本読む時もなにも飲み食いしないのだろか。
■シャンティ > 「……」
ゆったりと腰掛ける
その動きは自然で、ゆったりと
「そう、ねえ……お茶、でも……もらい、ましょ、う、か」
何も選ばない
そういう選択肢もあるのだろうか
流石にそこまで無体な真似はしないが
■ノーフェイス >
するり。
ホットとアイスのダージリン。
それと、季節のサンデーがひとつ。
「――それで?」
あらためて、手元に裁判録を置いたまま。
頬杖突いて、まっすぐ見つめる。
■シャンティ > 「……なに、が?」
微笑む
それはいつもながらの微笑みだった
■ノーフェイス >
「なんで治してないの」
ほんとは、まったく違う話を振ろうと思った機会だった。
――が、常々言わせたがる彼女にならって、問いかけははっきりと口にした。
「ずいぶん露骨にとぼけるじゃない」
■シャンティ >
「……」
なるほど。
「あ、ら……?
治し、てる、から……ギプス、では、ない、の……か、しら?」
小さく、首を傾げる
傾げる、が
「……と」
そういったところで、誤魔化されないだろう
そういう相手だ
「……そう、ね、ぇ……
別、に……困ら、ない……し。
ゆった、り……して、も……いい、で、しょう?」
そうして、そこまでを口にする
■ノーフェイス >
「治す手段がこれだけあるとさ」
手を横に伸ばす。
いつのまにかそこにあったグラス、カップ、サンデー。
グラスを引き込んで、ストローをするりと入りこませた。
泳ぐ氷は、音をほんのすこしも立てず。
「残しておきたくなることも、たまにあるから」
大切な経緯ならば。
告げた推論はしかし、解答を求めたものではなくて。
「……いいコトがあった、とかなら。
それでイイんだけどね」
ストローを含む。ひとくち。
■シャンティ > 「そう、ねぇ……」
小さく、首を傾げる
これをどう形容するべきか
隠したい、という話でもない
ただ、説明はしづらい
「花を……愛で……て……」
そこまで口にして
「ぁ……」
ぽつ、と……小さな吐息のような声が漏れる
「……そう」
小さな、小さな、吐息が
何かを悟ったような
何かを想うような
「その……花、は……もう、終わり、が……近、い、の……」
謎掛けのように口から言葉がこぼれ落ちる
■ノーフェイス >
喋ってくれるんだ。
夏のフルーツに飾られたサンデーの中央に、スプーンを差し込んだ。
「………」
ぱく。
冷たい甘みと酸味を含みながら、彼女をみつめる。
「花ね……」
先刻のセンチメンタリズムを思うと、すこしだけその言葉にひっかかりもあった。
果たしてしかし。彼女ともなれば、そうして活けた話よりも。
押された栞のほうが、よほど似合う気もする。――判っている。比喩だということは。
「野の花か」
■シャンティ > 「……そう、ね」
膝の上に、いつもの奇妙な本を置く。
左手を伸ばし、カップを手にする。
そして、琥珀色の液体を小さくすする
「……農場、から……こぼ、れ……おち、て……
野に、放、たれ、た……花」
いつまでも、そこで咲き続けることもできたはずだ
いつまでも、そこの一員でありたかったらと願ったはずだ
それでも、運命はその花をこぼれ落ちさせてしまった
その花は、落ちることを選んでしまった
「とて、も……綺麗、な……花」
■ノーフェイス >
「キミにとって」
細いスプーンを口に運んでは。
心地よい甘みが滑り落ちた。
「それはなぜ、花たり得たの」
いかな花だったか――は、問わない。
目の前の少女が、それを花と読解したのは何故か。
■シャンティ > 「…………」
静かに、考える
あぁ……そして
その花は、とうとう”真なる開花”を
”最後の芽吹き”を迎えてしまったことを識る
「だ、って……
逆、境……に、咲く……花、は……美、しい……で、しょう?」
そして、いずれすべてが終わるだろうことも、察する
破滅の音が、近づいてくる
「……それ、だけ……よ?」
■ノーフェイス >
「…………」
問われると。
果肉だけをすくって口にふくみ、咀嚼した。
視線をそらして、思案顔。
「ボクは物語と意志を重視しちゃいがちだ」
まっすぐには、はい、と同意できはしなかった。
「逆境ってのは、ボクにとっては乗り越えるべき試練でしかない」
成長のための。
「……人間の話ならだケド。花の力強さ、散るは耽美の……憐れみも。
たしかに、ボクも花を愛でるときには感じてた――……ケド……」
んん……と考え込む。
すこしだけ、サンデーの攻略が後回しになってしまい。
「どっちかっていうと、さ」
そこで、視線をむけた。
■シャンティ > 「そう、ね……物語、は……大事、だわ。
その、花が……どう、産まれ……どう、伸び、て……」
女自身も、それを愛している
だけれど。どうにも、適切な言葉が出てこない
ああ、そうか
今まで、必要としていなかったから、か
「……どっち、かとい、う、と?」
小さく、首を傾げた
■ノーフェイス >
「……みじかい時間でみつめられるのは、花の美しいばしょだけだ」
ストローを含む。ちいさなうわごとは、そこに消えた。
根茎までは覗けない。覗けるはずもない――
自分を、花としてだけ愛でればよいと、そう考えているモノは、そうとらえた。
「その花に、物語を求めたのなら」
質問したかったことは、先んじて述べてくれた。
「ほしくなったんだ。
そこに在るものを、物語か、なにがしかのかたちで、心のなかで補完することを」
彼女が見た花は、そのものではなく。
認識した花を、そうして胸のなかに創り出す。
どれだけ正確に情報を列挙したとて、そこに解釈という誤差が生まれ得る。
本には読み手が要た。
「そうあってほしいという理想に、無自覚にちかづけるはず。
その花を、より美しく咲かせようとする……その、」
甘みが欲しくなった。ぱくり。
「キミがその花に懐いた、解釈――感情。愛しむ……愛でる?
要するに、どこに、いや、どう……揺さぶられたんだろう、って」
視線は、まっすぐ。
花をみつめる、少女の横顔をみつめていた。
花はここにはいない。どこにもいない。少女のむねのなかにしか。
「共感」
儚く散りゆくさだめの色へ。
「憐憫」
見下ろすちいさな命の色へ。
「……郷愁」
いつかに咲いた過去の色へ。
「憧憬」
高嶺に満ちたる誘惑の色へ。
愛とひとことにいっても、どれほどの色がそこにあるか、途方もない。
原初の印象ではなく、理でもって読み解くものには――解釈の義務があるはずだ。
■シャンティ > 「…………」
左の手に持ったカップを再び口にする
中身を飲む、というよりは唇を湿らせるために
「……人、は……ね?
自分、の……ほしい、もの……
自分、の……見たい、もの……
自分、の……寄り、添い……たい、もの……
そう、いう……もの、に……惹か、れる、わぁ?」
つまり、回答は一つではない
それでも、あえていうなれば
「まず、は……『共感』
そし、て……『憧憬』
最後、は……『夢想』」
一つ一つ、指を折り数えて見せる
「……そういう、もの、よ」
■ノーフェイス >
「うん」
彼女の言葉に、うなずいた。
概ね、同意できた。
でも、そう――強欲にも、不遜にも。
"人は"というカテゴリで、いまは、ものを視る気にはなれなくて。
「…………、痛かった……?」
それは、
腕を折られた痛みではなくて。
問うた。