2024/07/09 のログ
ご案内:「麺処たな香」にエルピス・シズメさんが現れました。
エルピス・シズメ >  
 異邦人街オレンジストリート3番14号。
 そこに行くと、妙に意識高そうな店名を残して大衆向けラーメン屋が存在する。

 色々メニューを出しており、街の中華料理屋と見紛うような意識の低さと裏腹に、
 藻塩、海水塩、岩塩を絶妙なブレンドで配合した塩ダレに
 比内地鶏で出汁を取った清湯スープで作られる塩ラーメンは絶品。

 そんな前評判を知ってか知らずか、一人の少女のような少年がラーメンを食べに来た。

「たまには休息も大事だからね。」

 きっかけは単純。
 お友達やっているお店で、が"『今度来てくれよ、ほら割引クーポンの束』"と言ってクーポン券を渡してくれたからだ。

エルピス・シズメ >  
(イーリスちゃんも頑張って信頼できる人と会いに行った。
 不安はあるけど、過保護過ぎるのもよくないからね。)

 『エルピス』の事務所にそんな書き置きがあった為、
 意図的に落第街から離れて、休息を取りに来た次第だ。

(それに多分、王のお気に入りならイーリスちゃんの周りは……
 ……いや、考えるのはよそう。今日はラーメンの気分なんだ。)

 せっかくなのでクーポン券をオールイン。

エルピス・シズメ >  
「えーと、チャーシューメン(920円)にネギチャーシュー丼・辛ネギ添え。」
「それとクーポン券でチャーシューと味玉の追加お願いします。この『餃子6個秘伝のドロドロラー油添え』も。」

「あと、その、お願いできたら……テイクアウトでチャーハン2つと唐揚げと、
『ピリピリ、辛ぁい!鶏唐揚』を包んでください。」

エルピス・シズメ >  
 この男の子、めっちゃ食う。
 説明不要。

「んー、これだけガッツリ食べるのも久しぶりかも!
 味の濃いものを喉に通した時の、『渇き』も華だよね。」

 などと訳の分からないことを言いながら水を『2つ』汲み、準備も万端。
 出来上がるまで暫く掛かりそうなので、スマホを弄りながら待つ。

「この出来上がるまでのワクワク感。
 さてと、どんな料理が来るかなー。」
 

エルピス・シズメ >  
最初に届いたのはネギチャーシュー丼、辛ネギ添え。
米モノを先に食べるか後に食べるかは人によるが──

「いただきます。」

この子は先に食べるタイプだ。
最初にネギチャーシュー丼で食べてから、辛ネギをあえて掻き込む。

「──これは期待できるチャーシュー。」

流れを読むまでもない。これは良いチャーシューだ。
ゴムやハムのような粗末な肉ではない。

(脂も厚みもないチャーシューも、たまにあるからね。
 うん。最初にネギチャーシュー丼から入って良かった。)

エルピス・シズメ >  
「あ、だめだ。持ち帰りまで我慢できない。
 『ピリピリ、辛ぁい!鶏唐揚』のイートンも追加でお願いします。」

エルピス・シズメ >  
 鶏の方も気になってしまった。
 チャーシューとは別軸だが、恒常で唐揚げを出している以上粗末なものではないのだろう。

「誰かに見られたらちょっと恥ずかしい頼み方だけど──いいよね。」

 少々はしたないが、今は一人で来ている。
 己の自我も本能も抑圧せず、欲望全開で行こう。
 

エルピス・シズメ >  
 それから程なくして『本命』が来る。
 そう、チャーシューと味玉を載せた塩ラーメン。

 チャーシューメンとしてのトッピングにチャーシューを足す、
 自重をどこかに置いた注文のため、肉がものすごく並んでいる。

「うん、美味しそう。」

 藻塩、海水塩、岩塩を絶妙なブレンドで配合した塩ダレ。
 比内地鶏で出汁を取った清湯スープで作られる塩ラーメン。

 ──そのバランスを崩してでも、チャーシューを足したい。
 チャーシューメンは、強欲の証だ。
 

エルピス・シズメ >  
「頂きます!」
 
 だけど真っ先に食べるのは麺。
 肉の介入によりバランスが崩れる前に、本来の味を楽しむ。

「ん、美味し。塩ラーメンはインスタントでしか食べたことなかったけど、 
 気合の入った塩ラーメンって『澄んだ味なのに深い』んだ。」

 感嘆。感動。

 少なくとも、彼が食べた塩ラーメンの中では一番美味しいと感じたらしい。
 周囲の目を気にせずに掻きこむ。それはもう一心不乱に。

エルピス・シズメ >   
「次はこの、肉色の欲望を……」
 
 事前調査(ネギチャーシュー丼)でチャーシューの質は分かっている。
 豪勢に並んだチャーシューも、人を『肉』欲を誘うカタチをしている。

 チャーシューを混ぜ込み、塩ラーメンの澄んだ秩序を壊す。
 脂と肉で麺を包み、盛大にすする。

 塩と油で喉が渇くので、水も飲む。
 気づけば1個目の水は無くなっていた。

(カエルム君に見られたら呆れられそう……。)

エルピス・シズメ >  
 まだ少し残しているが、麺と肉の大半は平らげた。
 このタイミングで更なる罪(にく)が届く。

「辛味の効いた鶏唐揚。いただきます。」

 丸ごと一口、にはちょっと大きかったので半分ほど一気に行く。
 舌への刺激と、再びの喉の渇き。

「こっちもいける!」
 
 脳に刺激が届く。旨の『快』と辛の『痛』。
 2個目の『水』へと手を伸ばし、半分ほど飲む。

 

エルピス・シズメ >  
(よし……一通り堪能したところでラストスパート。
 取っておいた味玉から行こう。)

 味玉を箸で割り、色を確かめてから口に含む。
 確かに味が染みてることを認識し、残った麺とチャーシューを啜るフェーズに戻る。

 満腹感が来るまでに駆け抜けたい。
 『この美味しいものを食べたい』欲求に従った突き進み、残しておいた味玉も含めて食べきる。

「ご馳走様!」

 提供されたすべてを平らた。
 遅れて届いた満腹感に身を委ねて力を抜き、お腹をさする。
 

エルピス・シズメ >    
「ふぅ……」

 微睡むのもほどほどにして、会計を済ませる。
 ここ最近のストレスはこの食事で吹き飛んだ。

 お願いしてやってもらったテイクアウトの品々も受け取り、
 会計を済ませる。

「改めて見ると結構な量だね……
 ……でもその甲斐はあった。お腹いっぱいだし、やる気もいっぱい。」

 席から立ち上がり、テイクアウトの品を取る。
 出口まで行けば──

「ごちそうさまでした! おいしかった!」

 満足と感謝を示す言葉を告げ、店を出た。

ご案内:「麺処たな香」からエルピス・シズメさんが去りました。