2024/08/11 のログ
ご案内:「『数ある事務所』」にDr.イーリスさんが現れました。
ご案内:「『数ある事務所』」に九耀 湧梧さんが現れました。
Dr.イーリス > 落第街に出現した紅き屍骸を湧梧さんが倒し、イーリスが復活しないよう屍骸の処理を行った後、“王”との戦いに備えてイーリスは湧梧さんから魔剣を借り受ける事になった。
そうしてイーリスが済む落第街の裏通りにある『数ある事務所』へと移動。
エルピスさんが出迎えてくれた。(エルピスさんは、「おかえり。お客さん……あっ、湧梧さん。水と茶菓子持ってくるね。」との事。エルピスさんのプロフにて&エルピスPL様より引用許可いただいております)

右脚がないイーリスは機械仕掛けの車椅子で移動して、湧梧さんを応接間にご案内した。
イーリスの傍らにはメカニカル・サイキッカーもいる。

「どうぞお掛けくださいね」

応接間で、微笑みながら湧梧さんお掛けしてもらうよう促した。
やがてエルピスさんも応接間にやってきて、お水が入ったグラスと羊羹をテーブルに置いて出ていった。(エルピスさんは「……お待たせ。僕はちょっと出かける用事があるから、行ってくる。」との事。エルピスさんのプロフより)

「アンデッドを滅する聖なる魔剣……。それはどのようなものでしょう」

拳を傾げる。
どのような魔剣なのだろう。
湧梧さんが魔剣を集める理由の半分が、魔剣の力み魅入られて暴走しそうな者などからその危険物を取り上げる事だという。
魔剣には危険なものも多い……。

九耀 湧梧 > 案内されてやって来た黒いコートに赤いマフラーの男。
顔見知りに出迎えられ、軽く手を振り応える。

(――成程、一緒に住んでるってのは…。)

いちいち口に出すのも無粋なので、その辺りは黙っている事にした男だった。
椅子を勧められれば、素直に腰掛け、出掛ける少年にまた軽く手を振る。

「――さてと、ま、一口に魔剣と言っても色々ある。
それこそ、魔剣どころか邪剣と言っても差支えがない、危険な代物もな。

今回は流石にそういう所からは選ぶ事はしないが――。」

言いながら、改めて和綴じの本を取り出し、応接室のテーブルの上に置く。
達筆な筆文字で「捜刃録」と書かれた表紙をぱらり、と捲れば、
次の頁からは見事な墨絵で描かれた剣や刀がずらずらと並び始める。

そのまま、確かめ直すようにぱらりぱらりと頁を捲り、やがて手が止まる。

「――あった。
まず真っ先に思いつく所は、これだな。」

指差す先には、墨絵で描かれた日本刀の絵。
その隣には、やはり筆文字で《加牟豆美之刀》と記されている。

Dr.イーリス > エルピスさんとは、「ただいま」「ありがとうございます」「いってらっしゃい」といったやり取りをした。
そうしてエルピスさんは外出する。

「……魔剣は、色んな伝説を耳にする事もありますね。邪剣となると、まさしく邪悪なる力が込められているわけですね」

危険な魔剣もある……。
“王”を滅する手段を手にするために、リスクは覚悟の上……。
イーリスは《捜刃録》を眺める。
開かれていたページにあるのは、日本刀の絵。

「《加牟豆美之刀》……。見たところ日本由来の魔剣……妖刀の類になるのでしょうか? どのような妖刀なのでしょう……?」

《加牟豆美之刀》の絵を興味深く見入りつつ、きょとんと小首を傾げる。

九耀 湧梧 > 「これは魔剣・妖刀…というよりは、御神刀の類だな。」

すい、と、黒い装甲に覆われた右手の指が墨絵をなぞる。

「またの呼び名を霊刀カムヅミ。
古事記に名前が語られる、オオカムヅミの加護を得た刀だ。
イザナギの根の国行の逸話…まあこれは長くなるから端折るが、怒ったイザナミの差し向けた黄泉醜女(ヨモツシコメ)黄泉軍(ヨモツイクサ)
具体的に言えば冥界の軍勢から逃げるイザナギが、黄泉と現世の境目に立っていた桃の木から桃をもぎ取り、
軍勢に投げ付けると、黄泉の軍勢はその霊力に逃げ帰って行った。
その桃の木に、自分と同じような困難に遭った者を助けて欲しいと願ったイザナギが名付けた名がオオカムヅミ。

そのオオカムヅミの力を打ち込んで鍛えられたのが、この刀だ。
相手がアンデッド――「死者」なら、充分通用するだろう。」

最後に、墨絵をくるりと囲むように指先で円を描く。

Dr.イーリス > 「御神刀……神道由来の刀でございますね。妖刀と呼んでしまったのは罰当たりでした……! ごめんなさい、御神刀!」

墨絵の刀に慌てて頭を下げて謝罪していた。
後で神社にもお参りにいこう。

「オオカムヅミのご加護を得た霊刀カムヅミ……。とても由緒正しき御神刀ではございませんか……!? 黄泉の軍勢を追い払った桃……。その桃の神様のご加護が宿られているなんて……まさしく、死せる魂を絶つための刀……」

湧梧さんの説明を聞き、霊刀カムヅミの墨絵を眺めつつ目を見開いていた。

「……まさしく神話由来の刀、という事ですね。霊刀カムヅミなら、アンデッドを葬る事ができます」

なにせ、黄泉の軍勢を追い払った逸話のある桃、その神様のご加護だ。
アンデッドを断ち切るために存在する刀と言ってもいいように聞こえる。

「凄いです……! このような刀があるなんて……!」

イーリスは双眸を輝かせている。

九耀 湧梧 > 瞳を輝かせる少女に対し、コートの男は少し難しい顔。

「確かにこれなら「アンデッド相手」に効果は期待できる筈だ。
ただ、決定打になるかと言われると――余計な期待を持たせたくないからハッキリ言うが、保証は出来ない

何しろ、アンデッドといっても古今東西で色々だからな…。
例えば西洋のヴァンパイアにはもっと致命打を与えられる手立てがある。白木の杭なんかが代表格だ。」

さり、と、左手が顎髭をかるく撫ぜる。

「まあ、早い話がアンデッドの特性なり力の根源なり、そういった物が分かるなら、それを潰せるか
潰し切れなくても、確実に力を削ぎ落せる手段は用意出来ればした方がいい、って事になる。

まあ、通用する手立ては多い方が良いだろうし、恐らくだがこれならお前さんでも「扱い易い」だろう。
取り合えず、貸し出し一つ目という事でな。」

ちょいと失礼、と、墨絵で描かれた霊刀に指を置き、何事かを小さく呟きながら軽く指を動かす。
すると、墨で描かれた絵と名前が光を放ち――まるで門を開くように、光の環となる。
そこからするりと姿を見せたのは、鞘に収まった一振りの小太刀。

「…最初にこの刀を勧めた理由が、これでもある。
このサイズなら、直接振るうのがお前さんでも然程苦労はないだろ。」

ほい、と、鞘に入った霊刀を掴むと、少女の方に差し出す。

Dr.イーリス > 相手はアンデッド。
神話の由来からして、その効力はアンデッドにとても有効なのは想像に難くない。

「神話では、黄泉の軍勢を追い払った桃の神様……。確かに、ヴァンパイアとなると他の方法が有効足りえるというのはその通りな可能性もありますね……」

アンデッドの一口に言っても多種多様。
紅き屍骸にどれ程通用するかは、扱ってみないと分からないところもあるのは理解できる……。

「紅き屍骸は、次々に感染していく特性があります。“王”は紛れもなく屍骸達の王たる存在ではありますが、その“王”ですら紅き屍骸の一体でしかないでしょう。屍骸達は意思疎通しています。それらを統括する“力の根源”と呼べるものは、もしかしたらあるのかもしれません」

つまりは、力の根源は今のところ分からない……。

「それでも、“王”という個体は倒し得るかもしれません」

霊刀カムヅミ……。
相手はアンデッドだ。神話の由来を考えれば、通用するのではないかと、期待できる。

「霊刀カムヅミが出てきました!? 湧梧さんが所持している剣はこの本に収納されているのですね」

霊刀カムヅミが顕現した時には驚いてしまう。

「ありがとうございます、湧梧さん。大切に扱わせていただきますね」

イーリスは貸し出し一つ目の剣、霊刀カムヅミを受け取り大切そうに両手で抱えて、にこっと湧梧さんにお礼を言った。
小太刀。イーリスは刀を扱えるわけではないので、本当にいざという時の懐刀になるだろうか。

「他にどのような魔剣があるでしょう?」

首を捻った。

九耀 湧梧 > 「感染、ね…まるでウィルスか何かだ。
あるいはそう見える「呪詛」なのかも知れんが…。」

またも少し難しい顔で顎をさする。
刀を手にして笑顔を浮かべる少女には難しい顔が少し和らぐ。

「何、人相手に無暗に振るわれなければいいのが刀だが、相手が生きてる者を脅かす存在なら別の問題だ。
その為に振るわれるならそいつも本望だろ、存分に使い倒してやってくれ。」

そう言いながら、ぱらりと再び頁を捲る。

「"王"か……そいつがどんな力を持っているか、どんな技を遣うのか…。
そこらへんが分かれば、何を渡せばいいかの絞り込みようもあるんだが――。」

ぱら、ぱら、と頁を捲る音。

――もしもその様子を少女が見ていたのなら、気になる単語が文字の中に紛れているのが見つかるかも知れない。

一つは、《月呑》。
一つは、《太陽》。

Dr.イーリス > 「感染源の研究は進めておりますが、どういったものかはとても複雑でございますね……。不完全感染であれば治療法が確立しているところは幸いではあります」

研究はしても、紅き屍骸の感染源はまだまだ謎が多い……。
ただ、完全感染に関しては生物的には死亡しており、故に治療法は死者の蘇生以外存在し得ないと思う……。

「私は刀をうまく扱えませんので積極的に打って出るような使い方は出来ませんが、追い詰められた時……いざという時に紅き屍骸から私を守ってくださる刀になると思います。神様のご加護が施された刀でもありますのでお守りにもなりますね」

もし追い詰められた時……。最後の最後で、イーリスを守ってくれる御神刀があるならば、とても心強く感じられる。

「“王”とは、アンデッドの“王”であり、そして《月輪の王》。月の力を使いますね。月が出ている時に強大な力を発揮しますが、厄介な時に“王”自らが月を出現させる事もできます」

イーリスが目に止まったのは、《月呑》と《太陽》。

「《月呑》……。月を呑む……月蝕などをもし表しているのでしたら、月で力を発揮する《月輪の王》をも呑み込む事ができるかもしれません……! それに《太陽》ならば、月すらも掻き消す程の光を発します!」

《月呑》と《太陽》、イーリスが目にしたのはその言葉のみ。
それらの剣が実際にどのような効力を有するのかは分からないけど、言葉だけ見た限り“王”に有効そうなものだ。

九耀 湧梧 > 「まあ、霊刀と言えば大体はそういった「良くないもの」を
持ち主から遠ざける事が役目だからな。そういう効果を期待しても良いと思う。
いざという時の為に、扱い位は練習して置いた方がいいとは思うがね。」

頁を捲り、アドバイスをしながら声を掛ける。
紅き屍骸のあれこれに言葉が及べば、軽く眉の間に皺。

「不完全なら何とかなるのは救いとはいえ、感染源は調査中か…何というかますます「呪詛」染みてる気がするぜ。
しかし、治療法がしっかりしてるって事はやっぱりウィルスの方が近いのか…病魔もある意味呪詛のような
ものだからな…。

しかしまあ、「月輪の王」、ね…また大層な名乗りを――――」

と言う所で、少女の発言を耳にして、頁を捲る手が止まる。
顔は、先程よりも難しい顔。

「……成程、名前の通り、「月の力」を扱う怪物、って訳か…。
しかし―――――いや、まずはこっちからにしておこう。」

ぱらりぱらりと幾らか頁を戻れば、現れた墨絵は三日月のような湾曲した刃の剣。
装飾などから、何処かインドやその近辺を思わせる造形だ。
剣の銘は――《羅睺・日喰月呑》。

「……説明の前に訊いておくが、お前さんはインド神話で日食や月食がどう起こるか、については知ってるか?」

念の為らしい質問。
知らなくても解説はしてくれるようだが。

Dr.イーリス > 「ありがとうございます。私を守っていただくための、扱い方の工夫はしようと思います」

“王”との決戦まであとどれぐらいだろうか……。
今からイーリスが刀そのものの扱いを練習したところでそう変わりはしないかもしれない。しかし、イーリスには代わりに科学力(工夫を考える脳)がある。

「呪詛は呪詛で、解呪方法が確立しているものもありますので一概にウイルスとも言えません。そうですね……感染源が具体的にどういったものなのか、この辺りの研究は私も進めてもいいかもしれませんね」

イーリスも紅き屍骸の感染に対する治療法は確立していた。しかし、その感染源に合わせた治療薬をつくったというだけ。どれぐらい分かるかどうか検討はつかないけど、感染源そのものの正体については、もう少し掘り下げて研究してみようか……。

「月の力があれば空間移動や大規模な攻撃範囲をも行える厄介な《月輪の王》です……」

開かれたページには、ショーテルを思わせる湾曲した剣。

「インド神話の日食と月食……。神々と敵対する悪魔(アスラ)たる存在、ラーフが太陽と月を呑み込む事で日食や月蝕が起きるのでしたか。剣の由来と合わせて解説していただきたくもあります」

九耀 湧梧 > 「――成程、文字通り「月」の力を使う屍骸どもの王、という訳か。」

左手を顎に当て、思案顔。
少女が語る逸話には、小さく頷く。

「概ねは、それで合っている。
不死の霊薬であるアムリタをデーヴァの神々が分け合って飲もうとした時、アスラであるラーフが神に化けて
その場に潜り込んでいたのを日と月が見つけてヴィシュヌ神に報せ、ヴィシュヌ神はチャクラムを投げて
ラーフの首を落とした。

だが、既にアムリタを口に含んでいたラーフは首から上…頭だけが不死となってしまい、
告げ口をした日と月を恨んで呑み込もうとして日食や月食が起きる――細かく補足するとこんな話だな。」

そして、ゆるりと曲剣の絵の刀身部分を撫ぜる。

「…この剣は、その時に落ちたというラーフの血と肉…星になったなら隕鉄の方が正しいのかもな。
兎も角、それらを使って鍛えた剣だという。
文字通り、「月や日の力」を「飲み込んでしまう」力を持った剣だ。

元は月に影響を受ける怪物…ライカンスロープの類を退治する為の剣だとかいうが…お前さんが望むなら、
こいつも貸し出そう。ただ、何処まで効くかは未知数だ。どうする?」

真剣な目で、そう問いかける。後は少女の判断と返答次第。

Dr.イーリス > 「逆に言えば、“王”は月がなければ力が軽減されるという事でもありますね。“王”は自らの力で月を出現させられるのでそう簡単な話でもありませんが……」

湧梧さんのご説明に耳を傾ける。
ヴィシュヌ神とは、インド神話における創造神、破壊神に連なる維持神。
破壊神の知り合いを少し思い浮かべたりもする。
そしてデーヴァはその創造神、破壊神、維持神を中心とした神々。

首だけとなっても月や太陽を呑み込むアスラ……神話ながら想像すると、恐ろしくも感じるものだ。

「ラーフの肉体を鍛えた剣……!? それが、《羅睺・日喰月呑》という事でございますか……!? それならば、月をも呑み込んでしまえます……!」

こくん、と頷いてみせる。

「月をも呑み込む剣……。これがあれば、“王”の月をも呑み込む事ができるかもしれません。“王”に、試してみたいです……!」