2024/08/25 のログ
ご案内:「『数ある事務所』」にDr.イーリスさんが現れました。
ご案内:「『数ある事務所』」にエルピス・シズメさんが現れました。
ご案内:「『数ある事務所』」に里中いのはちさんが現れました。
ご案内:「『数ある事務所』」に海藤 宗次さんが現れました。
ご案内:「『数ある事務所』」から海藤 宗次さんが去りました。
Dr.イーリス > 先日いのはちさんと出会った歓楽街の路地裏で、イーリスはいのはちさんと待ち合わせした。
その後、落第街の路地裏にある『数ある事務所』にいのはちさんをご案内。

「ただいまです。ここが私達のお家です。遠慮なくおあがりくださいね」

笑みを浮かべながら、いのはちさんにそう促した。

「エルピスさん、いのはちさんがいらっしゃいました。こちら忍者のいのはちさんです。この方がここの家主エルピスさんです。エルピスさんがいのはちさんを学園に通えるよう手続きなどしてくださいます」

いのはちさんとエルピスさんの紹介を軽くした。

エルピス・シズメ >  落第街の裏通りにある、『数ある事務所』。
 増改築が行われた痕跡もあり、周囲の建造物と比べるとやや小奇麗。

 中から漏れる綺麗な湯や洗剤の香りは、定住しているものが居ると示すもの。
 工事の跡も見て取れる。増築の必要性があったのだろう。

 つまるところ、落第街の裏通りの建造物にしては少々目立つ。
 
 そんな建物の中へ、そして応接間へと、
 『右腕が2つある義手』を付けた少女のような少年が案内をする。

 そこそこには警戒しているが、敵意はない。

「えっと、僕はエルピス・シズメ。
 厳密には、学園に通える『いくつかの手段』の紹介と仲介・代行になるけど……忍者さん?」

 いのはちさんと紹介された忍びの装いの男を見て、思わずそのままの感想を口にした。

 分かり易い印象には、目が行きがち。
 
 

里中いのはち >  
時を刻む針が約束の刻限きっかりを指し示した瞬間に、忍びの男は現れる。
恐らくは男の姿を探していたであろうイーリスの隣に音もなく立ち、ニッコリと朗らかな笑みを浮かべてちょっとしたサプライズと挨拶を届けたか。

案内に従い事務所内へと訪れる中、まるでお上りさんが如くきょろきょろと周囲を窺う中で、地理だの窓やらの位置だのを把握するべく努めるのは忍びの性だ。

「お邪魔致す。」

しかしそれもエルピスと対面果たす迄のこと。
イーリスに向けたものと同じ人懐っこい笑みを墨色で描き、軽く頭を垂らしての挨拶としよう。

「然り。日ノ本忍びの里所属……でござった。拙者、里中いのはちと申す。本日はいぃりす殿のご厚意の下馳せ参じた次第。
 えるぴす殿はいぃりす殿の良人とお見受けするが、誓って彼女に不義は致さぬ故ご容赦頂きたく。」

訳すならば、「お嫁さんの厚意に甘えてごめんなさい。見るからに怪しい奴だけど、変なことしないから今日は宜しくね!」になる。
警戒はあれども敵意は窺えぬその視線を甘んじて受けるべく背筋を伸ばした。自身の無手は常にエルピスとイーリス、何方かの視界内に収まるよう意識しながらに。

Dr.イーリス > きょろきょろと待ち合わせ場所で待っていたイーリスは、突然お隣に立っていた忍びの者にとてもびっくり仰天。
びっくりしすぎて、尻もちをつき、不運な事に水たまりにべちゃ!
イーリスのセーラー服が泥まみれになったのであった。

「ううぅ……。どうしてあんなところに水たまりが……」

お尻の部分を中心として泥まみれのままいのはちさんをご案内。
数ある事務所で、イーリスはコミカルな雰囲気で泣いていた。

「申し訳ございませんが、私は着替えてきますね。エルピスさん、いのはちさんを応接間にご案内しておいてください」

そうしてイーリスは二階にあがっていった。
その時に、いのはちさんがエルピスさんに放った言葉で、少し頬を染めた。
いのはちさんはとても鋭い方、さすが忍びの者……!

エルピス・シズメ >  
 泥まみれになっているイーリスを見送った。
 ちょっとしたアクシデントだろうと、気に留める素振りはない。

「行ってらっしゃい、イーリス。」


 緊張と警戒のある、立ち居振る舞い。
 ある種のノンバーバル・コミュニケーション(符牒)を交えながら、名乗りを受ける。

「あ、え、えっと……大丈夫。
 それで、日ノ本忍びの里所属の……里中いのはちさんだね。」

 関係性を気遣われると気恥ずかしさからか、感情が揺れる。
 礼節を以って言の葉を向けられたことも重なり、気を緩めても脳天を貫かれることはないだろうと、緊張を緩めた。

「ひとまず、学園の手続き……と聞いているけれど、説明の前に……
 ……この島を見て、聞きたいこととか、気になること、ある?」

 目の前のものの、現状の認識を尋ねる。
 忍び装束は伊達ではないと判断し、彼の現状認識と疑問を問う。

 シンプルに生活委員のもとに連れて行って異邦人の保護を申し出る、と言った類ではないと判断したらしい。
 

里中いのはち >  
アッ。

イーリスが体勢を崩すと同時に、半ば反射じみた速度で手が伸びかけるも――イーリスとエルピスを夫婦と認識している此の忍び、妄りに人妻に手を触れるべからずと一瞬の逡巡。結果、誠心誠意謝罪することを選んだのであった。

ちょっとした悪戯心が招いた悲劇――!

ということで、イーリス殿には勿論、エルピス殿にも忍びの里に伝わる“必殺アクロバティックDOGEZA”を披露させて頂いたが、詳細は割愛させてもらうでござる。ニンニン。

「……今後は不義をせぬよう努めて参るでござる。」

イーリスが着替えにいくのを姿勢を正し見送り、訂正。萎びた菜っ葉の如くしおしおシュンとしていたそうな。


さて挨拶を終えた後へと場は移る。
エルピスの視線を警戒ごと真直ぐ受け止め、その摩訶不思議な御身体より緊張が緩んだのを忍びは悟った瞬間、萎びた菜っ葉が水を得たが如くニッコー!と明るく朗らかな笑みを模らん。
警戒と緊張が解けた瞬間に、それまでの大人しい姿は音を立てて崩れるのである。

「いやぁ、聞きたいことも気になることも山の如しでござるとも!調べれば調べる程に、拙者の居た世とは似て非なる此の世界!えるぴす殿のその腕は絡繰りでござるな?異能だ魔術だのが蔓延ると聞いているが、それとはまた別の技術なのでござろうか?嗚呼いや、申し訳ない、詮索する気はないのでござる!唯の好奇心故に。そうそう好奇心と言えば――」

なぞと、機関銃が如く如何でもいい話をべらべらべらと並べ立てること暫し。
ふ、と、息を吐いては墨色の瞳を唯々細く引き絞らん。

「――と、このように、拙者未だ赤子が如き無知さでござる。
 このような場に居を構えるのであらば、ご両人は此の島の、所謂暗部にも根を伸ばしているとお見受けするが、」

言葉を一度区切り、反応を隙なく窺う。
それ次第でどういった立ち位置であるかはある程度予測できるという腹積もりである。
まあ、今更謀らずとも、イーリスの善良さを見ていれば瞭然ではあるが、念の為というやつだ。

「そも、拙者のような者を受け入れて頂くことは可能なりや?」

わざわざと強調してみせるその心は。
恐らく初手警戒を抱いたエルピスにならば分かろうものか。

エルピス・シズメ > 「大丈夫大丈夫。イーリスも気にしていないみたいだし、ね、」

 忍びのいたずら心が齎した悲喜劇は気にしてもしょうがない。
 綺麗な土下座から戻るように気にしてないと伝えたり、なんだり。

 閑話休題。

 見送った後は応接間への着席を促して、着替えているイーリスをよそに話を始める。
 目の前には未開封のペットボトルの水があり、飲んでも問題なさそうだ。

「うん。多分いのはちさんが見てきた通り、僕の腕もこの常世の絡繰りの一つ。
 聞く分だと、見聞はいっぱいしてるみたいだね。それはそれとして……」

 抑えられる好奇心と体験談を受け留め、微笑ましそうに目を細める。
 純粋な好奇心の一辺が示されればそのまま受け取った。
 話題は兎も角、雰囲気は和やかなもの。

「ここは暗部に近い所かな。はともかく、の暗部は、ちょっと触れられないけれど。」

 暗部にも、落第街やスラムのような混沌とした下と、秩序が故に触れられぬ上がある。
 『上』の話は実際に暗部と呼ぶべきものではないのかもしれないが、ひとまとめにして言及した。

「学生としての義務を果たすのなら、いのはちさんのような人でも、平等に受け容れるよ。」

異邦人さんなら、保護の手続きもしっかりしてる。」

「学園の中で仕事をして学費を払ったり、授業を受けたり。悪いことを見張る、風紀委員や公安委員や先生はちゃんといる。
 入学時点で札付きや制御不能の異能持ちだと、さすがに保護と観察は入るみたい。」

 認識を告げる。
 少なくとも、入学に際して出自や身分は問われない。
 異邦人であれば特にそうだと。彼はそう認識して、そのように立ち回っている。

「先生としての間口は、もうちょっと広いかな。
 教える力とお仕事さえできれば、生徒以上に身分は問わないみたい。」 

里中いのはち >  
気にするな、と、そう言われてしまえば此の男は食い下がることはなく、しずしずと立ち上がってひと段落。

部屋を移ればまた墨色を転がす最低限の動作のみで各配置を把握せん。
その途中で置かれたペットボトル――未開封の理由を覚っては口布の下で声なく唸るのであった。

促される侭着席を果たす。
一見するならばすっかりと寛ぎ切った様子の自然体にて、雑談じみた中身のない遣り取りに束の間興じて。

「ふむ、此の島は、一つの国が如く立ち位置である、と聞きかじり申したが……成る程、誇張なくズバリそのもの、その通りであると。」

顎を擦る。思案気な空白が僅かばかり。

此方の含みを飲み込んで応ずる姿に極々軽く目を瞠る。
少女と紛う見目、しかしてその中身は――と、横道に逸れた思考を引き戻しながら。

「成る程成る程……随分と親切なのでござるな?」

ある程度迄なら見逃される――少なくとも入学までは、ということか。
手段を選んできた甲斐はあるらしい。

「ほう?」

説明が教師にまで及べば、意外そうに片方の眉が跳ねた。

「その“お仕事”というのは、教鞭を取ること以外に何か?」

Dr.イーリス > 折り鶴でのやりとりの時点で、エルピスさんとイーリスの関係がいのはちさんに把握されている事がイーリスには伝わっていた。
いのはちさんはとても紳士な方であった。
いのはちさんのアクロバティックDOGEZAには、イーリスも慌てた様子で両手をぶんぶん振って、『お気になさらず……! お顔あげてください!』とお顔あげる事を促していた。

エルピスさんとイーリスの相部屋でお着替えを済ませて、やがてイーリスが応接間にやってくる。
セーラー服から白を基順としたロングスカートのワンピースにお着替え。

「お待たせして申し訳ございません」

お話を始めているお二人。イーリスは静かに、席に腰を下ろした。
先生の方が生徒よりもなりやすそうな事については意外に思いつつ聞いている。

そういえば、学園にはとても個性的な方が多い。
間口の広さも、個性的な先生が多くなる理由なのだろうか。

「そうですね、常世島は自給自足を成り立たせるために産業区、農業区なんてものもあります。政府にあたる存在もありますし、まさしく学園が国として成り立っておりますね」

こく、と頷いてみせた。

エルピス・シズメ > 「そうだね。色んな捉え方はあるけど、そう思ってくれて大丈夫だと思う。
 厳密に言えば、常世財団って言う一つの組織に、多くの国が手を加えて……一つの国にしたのかな。
 教える先生にもよるかもしれないけど、僕が座学で習った感じだと、そんな感じ。」

 設立に至るまで、結構な歴史と異変があったことは座学の上でのみ理解している。
 多少の補足を加えながら、概ね合っていると肯定を示す。

「うん。とても『親切』だよ。いのはちさんみたいな人から、御伽噺の妖怪みたいなものも、いっぱい現れて、受け容れた。
 《大変容⦆があって、その爪痕もまだあるからかもしれないけど、随分と親切な話だと、思う。」

 一つの歴史を口にする。
 語るには長いが、大きな出来事があったらしいと強調した。

「……その親切が合わなくて、あるいは受け取れなくて、このへんに住む人も多い。
 無理矢理地図に嵌めれば歓楽街だけど、存在しない落第街。
 二級生徒として偽造の学生証で、学生の本分から離れてこの街を謳歌しているひとも多いよ。」

 "歓楽街の存在しない地域。"
 彼が公的にここの場所を示す時は、そうしているらしい。
 ここは歓楽街だと、方便を示した。  

「会議とか、事務仕事とか、委員会の顧問とか。教鞭を取るための雑務とか、いろいろかも。
 先生によってはサボっているみたいだけど……学校も組織だからね。」

 思い返す様に視線を上げる。
 サボり魔の先生から、熱心な先生まで色々いた。

「あ、おかえり。イーリス。
 やっぱり、いつものイーリスも可愛くて綺麗だね。」

里中いのはち >  
「学園に牙を向けるは愚に愚を重ねた愚行であると肝に銘じよう。無論元よりその様な心算は欠片もござらんが。」

冗句めかして肩を揺らすが、エルピスの口が再び開くのであらばその間此方の軽口は閉じていよう。

「ふぅむ。正規の生徒と、其の二級生徒、成り立ちや学生証以外の――例えば学園での立場や扱い等に違いはあるのでござろうか。」

存在しないとされる街と同じく、公には認められずとも確かに在るその身分。上が把握していないことなぞ、それこそ在り得まい。なればその具体的な違いとは?生の声でなければ中々得難い情報を求めるよう。

「概ね教師としての立場、それに順ずると。理解致した。」


そうして。
扉が開くよりも一呼吸前、男の顔が其方を向いた。着替えを終えたイーリスが現れると、「おお!」なぞと声と共に表情を綻ばせたのが分かるだろうか。その殆どを頭巾が覆い隠してはいるが。

「いやぁ、一時はどうなることやらと思うたものでござるが、楚々とした出で立ちが野に咲く花の如しでござるなぁ!
 斯様に可憐な乙女は中々出逢えるものではござらぬよ。えるぴす殿は果報者でござる!」

エルピスがイーリスを褒めそやすのを行儀よく待った後で、我が番だとばかりに浮つく言の葉を連ねようか。先刻と同じく男の口はようく回る。独楽の如し。
にこやかな顔をそのままエルピスへ流しては、その様子を窺わん。

Dr.イーリス > 嬉し気に、にこっと明るく笑みを浮かべた。

「エルピスさん、ありがとうございます。ふふ」

エルピスさんの後にいのはちさんにも笑みを向けて。

「お褒めいただき光栄です、いのはちさん」

歴史についてのお話に、イーリスはお口を開いた。

「他の国と比較して特異な点は、生徒主体で国家運営されている事ですね。この世界では少し昔に《大変容》という現象が起きまして、簡単に言えば世界が異能や魔術、異邦人に溢れてパニックになったのです。常世財団が主導として、異能者や魔術師、異邦人といった存在の融和を目指してつくられたモデル都市、それがこの常世島ですね」

異界の住民であるいのはちさんに、この島のなりたちを軽くご説明する。
そういった事もあって、とても親切。

「二級学生の待遇は、学生証などの偽造技術などにも関わりそうですよね。結局、正規入学できない人なので、違法行為に手を染めている人が多いと思われますが」

ほぼ正規の学生として振る舞っている人、ほぼほぼ不正だとばれそうなもの、色々いるのかな。
だが正規入学できない人なので、違法行為に手を染めている人も多いだろう。
共通しているのは、二級学生なんて存在していないというのが公式見解。

エルピス・シズメ >  
「基本的に二級はバレたらいけない。
 二級って言うのは俗称で、結局は偽造だし違法。ただ……」

 一度席を立ち、応接間に備えてあるPCのデスクから紙の束を取り出す。
 インクの染みた、再生バルブ紙の束。つまり資料。

 その紙束を、目の前の忍──いのはちへと差し出す。

 先程話した内容と、これから語られる幾らかの細かい情報が要約されて記されている。
 内容を信じるかどうかは、また別として。文字は現代のものでカタカナ交じりだが、日本語だ。

「被害者としての二級生徒の存在と事態が発覚して、『風紀委員会によって救出・保護されるケースもある。』
 ……その場合、『殺人などに手を染めていなければ、一年かそれ以上の学費免除と共に正規学生へと昇格される。』」

 言葉と共に、イーリスを見る。
 彼女に当てはめるのは流石に方便を通しすぎかな、なんてことを考えたとか。

「そうだね。僕はとっても果報者だと思う。……えっと、それは嬉しいけど話を戻すね。
 とりあえず二級生徒は存在しないものとして扱われているけど、個々の事例を見るとどうしても出てくる。
 ただ、誰も何も言わないから、多分探りすぎるとよくないんだと思う。僕の見解だけど……」

里中いのはち >  
「なぁに、事実を告げた迄のこと。礼を言われることではござらんよ。」

なぁ、えるぴす殿?と、良人たる彼の人へ水を向けるも忘れずに、忍びの男はニコニコしていた。

イーリスの口から語られる此島の成り立ちは、右も左もわからぬ状態の男でも容易に知ることが出来る程に明らかな、所謂表の側面である。
しかし、それでも実際の住人の口から語られる生きた情報は、金と等しい価値があるものだ。
故にこそ、男はしかめつらしい様で唸る。

「……成る程、分水嶺はそこでござるか。」

殺人。それは世界が違えど、人の世であらば、人の身であらば、忌避されて然るべき罪である。
然してそれは、我が身の存在意義、其其のモノに近しいところに在るものだ。
おもわずと背を凭れへ預けて天井を仰ぐ――と、何ぞ気付いたように瞬くが、その揺らぎはすぐさまに消え失せる程に儚い。

それよりも、身の振り方を考えなければなるまい。
与えられた情報、自身が持ち得る情報、技量、諸々を計りにかけて算盤を弾く――なんて億劫な作業だろうか。鼻から息を抜き、姿勢を正して二人を見遣る。

「拙者のような異邦人は此の島で使えるような金子を持ち得ぬものばかりでござろう?
 そういった場合、学園に帰属しようにも……といった具合な問題に面すると思うのでござるが。」

先刻、学園内で仕事を――と教えられたが、つまりは借金といった形になるのだろうか。
その場合、何処まで我が身を保証していただけるのか。人一人が生きるには、あまりにも多くのものが必要になるが。更には価値観も倫理観も異なるモノとて在ろう。借金――契約を履行させる為の、例えば縛り。異能や異形が蔓延る世だ、男が知らぬような、其れを強制させるような手段もあるのやもしれん。はてさて?

Dr.イーリス > 「二級学生に纏わる事は……この島の闇なる部分にも触れてしまいますからね。例えば、二級学生の一人や二人消えても……表向きには何も起きていない……といった風に……」

エルピスさんに気づいて、イーリスはにこりと笑顔で返した。
イーリスもまた、正規入学が叶わなくて二級学生になっている。
近々、正規入学の条件が整うかもしれないが。

「正規入学できるのであれば、それに越したことはないですよね。いのはちさんは、正規入学できる基準に達してそうでしょうか……。門を通ってこの世界に訪れた忍者さんでもありますし……」

エルピスさんに小首を傾げている。

「その……私こそ、エルピスさんとお付き合いできて、果報者でございますよ」

そう口にして、少し頬を赤らめた。

エルピス・シズメ >  
「う、うん。……僕もイーリスと一緒にいれてとても幸せ。」

 促されるに向けられれば、嬉しそうに頷く。

 内心はとても嬉しいし、照れも喜びもある。
 だけれど今はやることをやらなきゃ、と、弁えた理性を優先させていたものの、
 イーリスの一言で見事に陥没し、惚気る。

 先程から所作の一つ一つが僅かに大振りになっているのは、気のせいではなさそうな。

「あくまでこれは一つのケース。殺人以外にも、分水嶺はあると思う。
 ……正直、この辺りは『現場判断』。誰が担当するかで、大きく変わると思う。」
 
 意識を引き締め直す。
 分水嶺はそこだけではない、と、否定と補足を入れた。

「先生とか、生活委員に回ると楽になるんだけど……
『委員』を実行するのも、大体は若い生徒だからね。
 必ずしも、秩序と規則が厳密に施行される訳じゃない。よくもわるくも。」

 ある意味では、委員は自らの意思で判断しなければ場合もある。
 そのことの難しさを思い返して、顔を顰めた。 

「だから……分水嶺はすごく複雑。ひとつひとつの状況で、すべてが変わると思う。
 もしかしたら、これも何かのために、敢えてそうなっているのかもしれないけれど……。」

エルピス・シズメ >   
「お金に関しては、学内で多くの仕事があるよ。だから基本大丈夫。
 ……その仕事が切っ掛けで、落第街に落ちちゃう人もいるけれど。」

 意識がイーリスに向いていたのか、質問を聞き逃しかけた。
 言い忘れていた要素を思い出し、言及する。

 割のいいバイトを探して暗部に落ちるもの、たぶんいる。

「だから、金銭面はまじめにやれば良くしてくれると思う。
 保護したものが悪いことをする場合もあると思うけど、見聞きする限りは普通に生きるのと多分変わらない。」

 付けこむものも居るし、保護に携わるものが恣意的な利用や悪条件を課さないとは限らない。
 それも現場判断の一つかもしれないと思いながらも、表向きには問題のない範疇との認識を告げる。

里中いのはち >  
「非人は人に非ず。業な話でござるな。」

重々しくも然りと頷く。
だが、逆に言えば正規の学徒よりも幾分か自由に振舞える土壌があるということだろう……という解釈は、あまりにも忍びにとって都合の良すぎるものだろうか。
銭の問題を差し引いたとしても、其れを選ぶ利点はあるように思える。元より忍びに個なぞなく、故にこそ倫理観に唾を吐いて善悪の境界を反復横跳びするよな輩故。

「ははは、いぃりす殿は拙者をいたく買ってくださっているご様子。背筋が伸びる心地でござる。」

表面上はにこやかに笑い、内側では滔々と流れる思考を他人事めいて読み解く中。
イーリスとエルピスの遣り取りには水を向けておいて眉を開くか。すぐさま表情を和らげて、「うむ。」と満足そうに頷くのである。

「ふむ? 嗚呼……然り。若者は道を違うものでござる故。」

それのみと断ずるは早計であったか。脳内で得た情報を書き換える。
だがそれはつまり、窮屈さが増すという話でしかない。

慌てて足される説明には眼差しを柔くした。気にするなという代わり。

「そうして堕ちた先は御尋ね者の逃走生活となるのでござるな。そうなってしまっては、帰還はまた遠のいてしまうと。
 ――では、これはあくまでも例え話なのでござるが、

 拙者がえるぴす殿の手を借り、正規ないし二級の学徒になったとしよう。その上で、深かったり浅かったりする理由で身を落としたとして、えるぴす殿らにかかる火の粉は如何程に?」