2024/08/26 のログ
■Dr.イーリス > やや頬を染めつつにこにこと幸せそうな満面の笑みをエルピスさんに向ける。
惚気つつも、エルピスさんの思う通り、今はお話を邪魔しない程度という事で視線をいのはちさんに戻した。
「……生まれ育ちが卑しくて、まるでいない者かのように扱われて、入学手続きもまともに通らない……そんなの悲しいですからね……。この島には、正規入学出来ず、二級学生にならざるを得ない人達も多くいます……。出来れば、いのはちさんにはそうなってほしくないとは思ってしまいますからね……」
少し暗い表情で、イーリスは視線を落とした。
スラムで育って、学園に正規入学できず、最近までは不良少女だった。
イーリスが所属していたフェイルド・スチューデントもそういった人達……。
エルピスさん達にふりかかる火の粉、その言葉にイーリスは少し弱めな口調でいのはちさんに問う。
「……仕方がない事情がある場合はあります。そういった深い事情にまで口出しする気はないのですが、いのはちさんは身を落とす可能性が高い、という事なのでしょうか……?」
■エルピス・シズメ >
「真正面から委員会総合庁舎に行って、生活委員を介して異邦人としての保護と入学を申請する。」
「この場合、そもそも僕の手を離れるから、誰にも火の粉は飛ばないと思う。」
真正面から生活委員を通して、異邦人としての待遇から正規の生徒になる。
委員会総合庁舎の場所に案内するだけだから、火の粉が降りかかる要素はないと考えた。
「異邦人じゃなくて、正道から生徒として入学する。
この場合も、少なくともいのはちさんを受け容れないことは無いと思うから、大丈夫。」
現代のものとして正門を叩いても、多分出自や身分はそう問われないだろう。
この場合も、自分は案内するだけでいのはちさんの力で入学するのだからなにもない。
(……本当に姿通りなら、身分や名前をでっちあげるのは僕より上手い気がする。)
(細かく言及されることは、ほとんどないから猶更。)
「僕やイーリス、あるいはこの島の誰かから偽造の学生証を調達する。
この場合は……出所を言ったら、多少は振り掛かるかも。」
偽造の学生証を使う場合はリスクがあると伝える。
それでも何度か"やって"いる。
いまさらと言えば、今更。
「……どうするかにもよるけど、こんなところだと思う。
真正面から異邦人として保護を申し出るなら、僕は知識を伝えただけで、なんもしてないからね。」
暗部に身を置くからこそ、暗部に触れないための知識もある。
正道と正門を叩き、その後に彼個人が裏で動く分には、彼の介在は見えないもの。
「イーリス、ほら、たぶん……ニンジャだから……
ニンジャは闇に紛れるものだし、念のため?」
冗談めかして伝える。
聞いている限りそうなのだろうけれど、敢えて明るく誤魔化す。
■里中いのはち >
教えを乞うている身につき、どうぞ存分に、と、口を衝いて出そうになる言葉を今は呑む。
かわりに、垣間見えるそれは和やかな目をして見守るのだが。
そんなほんわかとした気配は為りを潜めて、善良なる少女のかんばせは物悲しげに翳る。
良人たるエルピスへ瞳を差し向ければ、
(成る程、そういう対応か。)
ならばそれに従うべく。
「然り!念の為でござるとも。拙者は忍び、忍びは微に入り細を穿ち、白も黒も等しく疑うが性なれば。
備えあれば憂いなしというでござろう?」
刀印を結んで、ニンと嘯く。
そうして此方を見てもらえたならば、印を解いて返した掌を二人へ。
赤い組紐の蝶が羽搏き、舞い踊るが如く。放置していればそれはそのまま二人の間を飛び回り、するりと解けて互いの小指を結ぶだろうか。クサすぎるやもしらんが、まあヨシ。
解けた姿はただの紐故なんの力も在りはせず、また蝶を模る間も払うは容易。ちょっとした余興でしかない。
さて、そんな戯れの中で忍びが下す決断は、
「一先ず気になっていた事柄は概ね解消されたでござる。
が、何せ今後を左右する重大なる事案。持ち帰り、吟味に吟味を重ねたく。」
パンと明るく掌を合わせ、エルピスへの目配せ。イーリスを見、またエルピスを見る。
心の内は半ば定まっていようとも、此の場を辞す理由はそれで察せようか。
■Dr.イーリス > 「確かに、忍者さんは隠れ潜むものでございますからね。私もそう健全とは言えない身分で正しい行いをしているとも言い難いですので、例え降りかかる火の粉があってもそれはお互い様という認識ではあります」
エルピスさんの明るい解説に、なるほど、どこくこく頷いていた。
イーリスはイーリスで、義理人情を重んじるけど法の方面でいえば無法者。
そしていのはちさんに向き直る。
「事情は人それぞれあるのは先程言った通りですね。詮索するような聞き方をしてしまい申し訳ございません」
ぺこり、いのはちさんに頭を下げる。
■エルピス・シズメ > 「わっ、すごい……」
いのはちがみせた術技に、純粋に感嘆する。
紅く結ばれる紐と蝶の興は、彼の目にはとても綺麗なものとして映ったらしい。
少しの間そのままにして、話を続ける。
「そうだね。ゆっくり考えると良いと思う。
老境に入ってから入学するひとも、いるぐらいだしね。」
質問の方向性と振る舞いで、何とはなく推測は付く。
そのことについてはおくびにも出さない。
「もしまた気になることがあったら、いつでも聞きに来てね。
僕もイーリスも、ここに居ると思うから。」
とは言え、折角の縁。
紐をもう一度みてから、その縁が途切れることを惜しむように、再来や邂逅を歓迎する意を示した。
「他になにもなかったら出口まで送るよ。
一緒に見送ろ、イーリス。」
■里中いのはち >
「否否、謝ることなぞござらんよ!いぃりす殿の心根はまっこと清らかで尊きものにござる!」
明るく声を転がして、ついでに手もぱたぱたと否定の形に扇ぐが如く。
尚もイーリスの旋毛が此方を見るなら、「カオヲアゲテー。」とやたら高い裏声が降る。従って顔を上げたら手犬がワンワン口を開閉させているという。
影がなければ若い子には通じない可能性も考慮の上。
「うむ、お心遣いに感謝するでござる。」
今度は此方が頭の天辺を晒す番。
開いた膝にそれぞれ己の手を預け、深く首を垂れて謝意とせん。
にこやかなる顔を上げ、ついでに反動を利用しての起立。此の侭応接室と、事務所を後にすることになろうか。
「心が定まった折にはまたご厚意に賜りたく。
嗚呼、もし拙者にお手伝いできることが在らばなんなりと。我が忍術、惜しみなく揮わせて頂くでござるよ。」
別れの言葉代わりにそんな言の葉と、片手をひらりと気さくに振る動作。
忍びの姿は存在しないとされる街の夜闇へ溶けていく。
終ぞ手をつけることのなかったペットボトルが、所存無さげに佇んでいたのだといふ。
■Dr.イーリス > いのはちさんにお顔を上げる。
「いのはちさん……。お心遣い、とても嬉しいです」
そして、笑顔を浮かべてみせた。
いのはちさんが印を結ぶのを眺める。
すると、いのはちさんの掌から赤い紐糸の蝶が羽ばたき、エルピスさんとイーリスの間へ。
きょとんと、そんな蝶を眺めていた。
「これは……」
やがてエルピスさんとイーリスの小指が赤い糸で結ばれた。
その様子をイーリスはぱぁっと明るい表情になる。
「む、結ばれました! 私達、結ばれました……」
瞳を細めて、頬を染めつつ微笑んでみせた。
そしていのはちさんに向き直り。
「ありがとうございます、いのはちさん」
にこりといのはちさんに笑みを向けてみせた。
一緒に見送ろう、というエルピスさんにイーリスは頷いてみせて。
「気になっていた事が解消されたなたよかったです。また何かありましたら、いつでもご相談にのりますね。それではまたです、いのはちさん」
そうして、いのはちさんを笑顔で右手を振り見送ったのだった。
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