2024/09/03 のログ
ご案内:「駄菓子屋『おおげつ』」に宇賀野 実さんが現れました。
■宇賀野 実 > ザムザは大きな毒虫に変わってしまっていた。
李朝は虎となっていた。
そして、自分は可愛らしい姿となっていた。
変化というのはある時突然、不条理に発生するものだ。
…もちろん、それが1回で終わるなどという保証はどこにもないのだが。
「なんじゃこりゃあ!!!!」
ある日、宇賀野実が夢からふと覚めてみると、
自分に動物の耳と尻尾が生えてしまっているのに気がついた。 である。
開店も迫っているなかテキパキと、反射的に準備をこなして、
どうにか開店にこぎつけるも、不安と疑問は拭えない。
大きな房状の尻尾、そして三角形の獣耳…触り心地は抜群だ。
いや、触り心地を気にしている場合ではない。
まだお客さんが来ていないのをいいことに、検査を受け付けてくれている
研究機関に電話をかける。
回答は『異能の暴走の一つの形では』ということであった。
愛らしい姿になってしまった現象のバリエーションということだろう。
「いや納得できるかあ!?」
叫ぶと同時に、尻尾と獣耳がピンと立つ。まるで本物のようだ。
■宇賀野 実 > ぺたぺたと自分の手で獣耳・尻尾に触れる。
「ん…!」
くすぐったいような、心地よいような妙な感覚。
体の弱いところを撫でられているような、
それでいて落ち着くような心地がある。
「…あんまり触らんとこ…」
お客さんが来る最中に尻尾を触って喘いでいたら
色んな意味でおじさんはおしまいである。
次は手鏡で尻尾と耳の形を確認。
尻尾の形が特徴的であり、様子を見るに…狐のようでもある。
そういえば、狐は豊穣神の化身とされることがあるという。
となると、やはり自分の中の血が覚醒したのだろう。
実家にも聞いてみると、秋口になるにつれて
血が強く発揮されるらしい。
豊穣・そして実りの季節だからではないか、とのことだった。
「…しばらくこのままとか? あるいは…」
もっと進んだら困る。手が可愛らしい肉球を備えたらどうしよう。
品出しとか大変になってしまう。 あるいは、さらにケモ度が上がったら?
不安に表情を曇らせる。気づけば自分の尻尾を抱きしめていた。
■宇賀野 実 > 「言い訳も考えておかないとな…」
幸い、異能が暴走するときのリミッターとして獣耳を付けていたことがある。
それだと言い張ればなんとかなるだろう。 …触られたりしなければ。
「よし、じゃあ開店だ! まだ体に異常もないし、大丈夫だろう…。」
異能が暴走して人に迫ってしまったり、あるいは人を誘引してしまったり、
そういう事が起きないだけでも行幸だ。 尻尾を揺らしながら
せっせとアーケードゲームなどを外に出す。
そろそろ夏休み用の商品もしまわないといけないし。
■宇賀野 実 > 「いらっしゃいませー。 あっ、これ?いや、売り物じゃなくてね。
なんかこんなんなっちゃって…こんなんなっちゃったからには、ね!」
お客さんが入ってくるたびに、事情を説明することになる。
当然の結末であった。
営業が終わることにはぐったりしていたのは、言うまでもない話である。
ご案内:「駄菓子屋『おおげつ』」から宇賀野 実さんが去りました。