2024/09/07 のログ
セレネ > ふわ、と社の中から蛍のような淡い蒼の光が揺蕩う。
ポンと弾ければ、女が一人小さな神社に現れた。

『……』

社の主である月女神。信者は居ないが不思議と廃れていないこの社は
己の良い居場所となっている。
しかし今回は何だか浮かない顔。
胸の下で腕を組み、神妙な表情で古びた石畳を眺めている。

セレネ > 悩みの種は先日、禁書庫に不法侵入した際の出来事だ。
黄緑髪の彼の失われた記憶に関する情報収集の為に忍び込んだが、
結果的には己にはしこりの残るものになった。
彼は少なからずキッカケを得られたようだけども。

『…何が目的で、何をしたいのか全く判らない人ね。
それは兎も角性格が悪いのは充分に解ったけど』

赤い髪に、金色の目。
黙っていれば美形だろうに、口を開けば残念極まりない。
…それに、如何にも彼を知っている口振り。
疑念は募るばかり。

セレネ > そうやって色々と思いを巡らせていた所、
蒼月色の猟犬が影から出て、わふわふと小さく傍で鳴いた。

『あら、なぁに?
……は?あの子が?』

この猟犬は己の僕である。
故に伝えたい事も、五感も、主である己に伝わるのだ。

己が娘のように想っている幼い子が一度死に。
またその場に現れたらしい。
場所は博物館のようだ。

『……。
あの子ねぇ……』

眉間の皴がまた増えた。
深い溜息もまた増えた。

セレネ > 蒼目を閉じる。
少し集中すれば、かなり低い視点が黒き神を見上げている様が視えた。

『…貴方の大事な信者を放っておいて良いのかしら』

呟いた言葉は小さな僕を通じ、
かの死の神と会話を交わしたかもしれない。

会話を終えれば共に猟犬を影に戻して
一つ指を鳴らし、身を月の光へと変えた。

悩み事は、悩んだとて解決する訳ではない。
あの赤髪の男の言う事が本当であるなら。

己がする事は――。

ご案内:「街の一画/月の社」からセレネさんが去りました。