2024/09/09 のログ
ご案内:「魔法少女マリアさんの体内に注入されたナノマシンの電脳空間」にバーチャル・イーリスさんが現れました。
バーチャル・イーリス > マリアさんにより殺されかけたイーリス。
もはや死の運命からは逃れられない程に、イーリスは臨死だった。
だが、エルピスさんが臨死状態のイーリスの体内コンピューターに訪れ、さらには奇跡の薬品《科学配合エリクサー・エキス》を完成させるためにタイムマシンで十年前に飛んでくれて、そしてエルピスさん自身も自我を損傷させるダメージを負ってまでイーリスを救った。
蒼先生がイーリスの死の境界を破壊してくれた事で、死の境界を越えようとしていたイーリスを生きる方向に戻してくれた。
そうしてイーリスは臨死の状態から復活を遂げられた。

バーチャル・イーリス > 青白く光る『0』と『1』が無数にあたりに浮かび、また無数の光の粒が漂う電脳空間。
光子が集まり、そしてイーリスを象っていく。
バーチャルのイーリスが電脳空間の白い床に足をつけた。
ゆっくりと、イーリスは目を開ける。

「随分と闇に染まってしまったようですね……マリアさん」

神妙な表情でそう呟く。

バーチャル・イーリス > 「えいっ」

イーリスが指をひょいっと動かすと、ナノマシンの機能によりマリアさんの体内にある呪いウイルスが活性化する。
突然、呪いウイルスによる症状が急激に悪化。呪いがマリアさんをより強く蝕み、苦痛を与える事になるだろう。

『ごきげんよう、魔法少女マリアさん。突然の伝達で驚かせてしまっているかもしれませんね、申し訳ございません。私を覚えておられるでしょうか? Dr.イーリスです』

マリアさんは脳裏に声が直接響くような感覚を陥るだろう。
この声はナノマシンによるものだが、呪いウイルスの活性化と共に、その呪いウイルスを注入した張本人たるイーリスが話しかけている。
声が呪いによるものと錯覚してしまうかもしれない。そこは些細な事だが。

バーチャル・イーリス > 『呪いは随分とあなたを苦しめていたようですね。さぞ、お辛かったでしょう。データがちゃんと、呪いがどれぐらいあなたを苦しめているか示しているのですよ。あなたはあなたで随分と抵抗している様子も見られますけどね』

呪いウイルスを注入した張本人が『さぞ、お辛かったでしょう』と言っても、ただの皮肉にしかならないだろう。

『その呪いを解きたければ、私とお会いしてみませんか? 私、あなたにやられて死にかけてましたけど、愛と友情でなんとか復活したのですよ、魔法少女さん』

そう口にして、電脳世界で微笑んだ。

バーチャル・イーリス > 『魔法少女の大戦と言えばどこがよろしいでしょうか。天翔ける魔法少女ですから大空でしょうか。そうしましょう。それでは私は今宵、お空でお待ちしておりますね』

マリアさんの脳裏に声が直接響く感覚が収まる。
さらに、イーリスの伝達が終わると同時に、マリアさんの呪いウイルスの活性化はぴたりと止まり、普段程度の苦しみに抑えられていく。

「マリアさんとお会いしたいという事もお伝えしましたし、私の体に帰りましょう」

バーチャルのイーリスは光子となり、そしてこの電脳空間から消えた。

ご案内:「魔法少女マリアさんの体内に注入されたナノマシンの電脳空間」からバーチャル・イーリスさんが去りました。
ご案内:「落第街の上空 《小型空中要塞アルカンシエル・フォートレス》」にDr.イーリスさんが現れました。
Dr.イーリス > マリアさんの体内に注入されたナノマシンの電脳空間からログアウトし、イーリスは自分の体に戻ってくる。
ゆっくりと瞳を開けた。

イーリスは今、お空にいる。白のロンググローブにつけているのは、風紀委員の腕章。
自らが開発した《小型空中要塞アルカンシエル・フォートレス》、その端で、空中に足を投げ出す形で座り、雲の合間から落第街を見下ろしていた。
そんなイーリスの背後に、《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》が佇んでいる。

直径二十メートル程の半球に、機械で出来た二階建ての建物が複数並ぶ空中要塞としては小さい。
雲で隠れている事もあり地上からは視認し辛かった。

風に靡くブロンドの髪をイーリスは右手で軽く抑える。

「おいでくださいませ、闇に堕ちし魔法少女さん」

イーリスは、ふふ、と声をあげて微笑んだ。

ご案内:「落第街の上空 《小型空中要塞アルカンシエル・フォートレス》」からDr.イーリスさんが去りました。
ご案内:「落第街の上空」にDr.イーリスさんが現れました。
ご案内:「落第街の上空」にマリアさんが現れました。
Dr.イーリス > 夜。落第街の上空。
イーリスが開発した《小型空中要塞アルカンシエル・フォートレス》。
それは、直径二十メートル程の半球に、機械で出来た二階建ての建物が複数並ぶ小さな空中要塞。
空中要塞では所々ライトがついており、雲で隠れている地上はともかく空中において目立つ。

お昼頃に空中へと飛ばして、マリアさんの体内に注入したナノマシンを通じて、『呪いを解きたければ、夜にお会いしましょう』と通達。
待っている間あのままずっと空中要塞の端に座って落第街を見続けるなどという無意味な時間を過ごすわけもなく。
イーリスは、空中要塞に建てられた機械式の建物の一つで時間まで過ごしていた。
クーラーが効いていてモニターが複数とPCが置かれたお部屋でゆったり甘いお菓子を食べつつ、開発中メカのシステム構築やら、科学者の知的好奇心を満たす研究やら、エルピスさんと通話でお喋りやら、ネット閲覧やら、ゲームやらで数時間過ごした。

そして夜になってお外で待ち構えている。

「…………」

風紀腕章をつけるイーリスは、夜風に髪を靡かせながら、凛と佇み、落第街を見下ろしている。
そんなイーリスのすぐ後ろには、《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》がいる。

マリア > 夜空を飛ぶ黒い翼
魔力の放出が蝶の翼に近い形で重力から少女を引きはがす
先の方に見えてくるのは空に浮かぶ歪な物体
あんな物が空を飛んでいるとは、なんて笑ってしまいそう

「…あぁ、居た居た。
また会いましたねゾンビ娘、気色悪いブリキも連れて。
お前のせいでストレスが留まる所を知らないですよ。」

以前見た事のある女
腕にはまたもや風紀委員の証
風紀委員、切ってみ切れない面倒な奴等の巣窟

Dr.イーリス > 先日のイーリスはあえて風紀委員の腕章をつけていなかったので、マリアさんがイーリスの風紀腕章を見たのは今日が初めてになるだろうか。

「お待ちしておりました、魔法少女さん。あなたは、随分と変わってしまいましたね」

マリアさんを見て微笑んでみせる。

「闇にとらわれてはいけないと私言いましたのに、あなたは随分と闇に堕ちてしまったではございませんか。あなたの大事なステッキはどうなされたのですか?」

きょとんと小首を傾げる。
マリアさんの体内にあるナノマシンにより、ステッキのある所は把握しているがあえて聞く。

「私にストレスをぶつけられたらいいですね。えっと、私は魔人でしたか? 魔人さんの退治は捗っておりますか?」

マリア > ここ数日、風紀委員の連中やお腹の相手ばかりで辟易している
その上死んだはずの相手、しかも厄介な置き土産までしてくれた相手
見ているだけで嫌になる、なんであの状態から生きているんだ

「お前、頭沸いてますか?
会った事も無いガキに従う程暇でもないので、バトンならもう私と一心同体です。」

そんな事どうでもいいだろうとは思っても、一先ず話は聞いておく
地味に昨日の化け物との邂逅がトラウマでもある

「魔人なんて、もうどうでもいいんですよ。
私は魔法少女として人間を殺して回るのが使命であり趣味であり生きがいなので。
お前みたいな化け物ば人間に数えていいのか知りませんけど、とりあえず邪魔なので殺しに来てあげましたよ。」

Dr.イーリス > 「闇を、受け入れてしまいましたか。バトンを体に入れられて、その後もおそらく色々あって……。凄く、変わってしまいましたね……」

この前会った時は、もう少し魔法少女やっていた。
もはや変わり過ぎである。

「人を殺しまわる……。魔人なんてどうでもいい……」

目をぱちぱちさせて、マリアさんを眺める。
違和感が凄い。
そもそも態度も大分変っている。いや、イーリスが屍骸化した時のマリアさんの雰囲気が近いだろうか。

なるほど。信念の根幹から思想が変わっているとなると、何者かの洗脳だろう。
思想を入れ替えるという分かりやすすぎる洗脳術を施すなんて、洗脳者はあまり深く考えないタイプか、あるいはあまりに余裕がない状況に陥りそうせざるを得なくなったといったところ……。
誰彼構わず魔人扱いして攻撃していたのも、洗脳を考えれば合点がいく。

洗脳者は十中八九、ギフトを授けている人物。
マリアさんと信頼を全く築けていないイーリスでは、言葉による洗脳解除はまず不可能だろう。

「私は人間でございますよ。それはそれとして、お越しいただけた事は嬉しく思います」

にこっ、と笑みを浮かべた後。
空中要塞に建てられた機械式の建物、その無数の砲門が開き、砲口が一斉にマリアさんへと向く。

言葉が届かないのは明白なので、まずは無力化。

「呪いを解きたければ、私を倒してごらんなさい」

砲口の一部がマリアさんにレーザーを発射した。
マリアさんに迫りくるレーザーはまず二発、時間差で後発三発。

ちなみにイーリスはいじわるな事を言っており、別にイーリスを倒しても呪いウイルスはどうにもならない。
ウイルスを造った人を殺害しても、既に体内に回っているウイルスはどうにもならないという事になる。
しいて言えば、イーリスは呪いウイルスを駆除する薬を有しており、今も持ち歩いているのでそれを奪えば呪いから解放される。わざわざ薬持っているなんて親切に教えないので「毒薬を扱う人は、同時に解毒薬を持つ事も多い」という理屈に気づけるかどうか次第。

マリア > 「…お前、どこかで見てました?」

一心同体とは言ったが体に入れたとは言っていない
死にかけてたはずなのにこちらの状況を把握している辺り、気に入らない

「えぇ、人を殺して回る事こそ我が使命。
加えて、常について回る痛みを一時でも忘れられる最高のストレス発散ですね。」

さて、話している間にも後ろの機械、後は要塞みたいなのが気になる
機械の方はまぁいい、バラしても所詮は機械
もう一度組み立てたか新品かだろう
問題はその更に後ろ

あの要塞はどうすればいいか
そもそも個人がなんであんな物持っているのか
風紀委員とやらはこんなのばっかりなのかと歯噛みする

「人間は半分以上体がなくなったら死ぬんですよ。
あ、頭が軽く飛んでおバカさんになりましたぁ?」

そう嗤う
向けられる砲口、やはり見掛け倒しではない様で

「舐めないでもらえます、ブリキ人間。
眠たくて欠伸が出るんですよ!」

背中から魔力が溢れ出る
ひらりくるり、地上に居るより機敏にレーザーを躱し接近を狙う
先ず狙うべきは本体ではなく隣にいる機械の方
手に黒いガントレットが現れ、拳を見舞う

Dr.イーリス > 「し、しまったです……」

お口を思いっきり滑らせてしまった。イーリスは咄嗟に、自身の口を塞ぐ。
直接見てはないけど、バトンが体内にある事は元から知っていた事を暗に打ち明けてしまっている。
色々あって、というのは単なる推測だが今のマリアさんの状態を見れば色々あった事自体は想像に難くない。細部までは分からないけど。

「物騒な使命を抱いてしまい、随分と悪役怪人になられたではないですか。首領さんのお顔が気になりますよ」

洗脳されているとしたらなんとでも変わるのだろう。

本当の(・・・)あなたはどこにいきましたか?」

もはや初対面の時のマリアさん自体、それぐらい本当の彼女なのか分からない。
あの時にはおそらく洗脳を施されているだろう。

「私、人間は人間でも改造人間ですから、生身の方よりは耐えられるのですよ。それでも、私がここまで復活するのにはとても苦労致しましたけどね。大切な人をも、とても苦しめてしまいました……」

暗く視線を落とす。
エルピスさんがいなければ、イーリスは今頃死んでいた……。いっぱい感謝。けれど、エルピスさんにはとても無茶させてしまった。
視線をマリアさんに戻す。

マリアさんは洗脳されている被害者だろう。
ならば悪いのは誰かと言えば、マリアさんに洗脳を施した者、つまりギフトを与えているギフト騒動の黒幕。
凛と、マリアさんに視線を戻す。

マリアさんはレーザーを躱し、接近を試みている。
速い……。だが……。

「迂闊でしたね、マリアさん。アルカンシエル兵装・イリデッセントスカイフィールド!!」

マリアさんは《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅲ》を目掛けて突撃している。
だが、マリアさんが空中要塞に接近しようとした時、七層もの障壁が不意に現れる。
イーリスの右腕につけている《イリデッセント・リング》、そのシールド機能を応用して空中要塞を守る障壁にした兵装だ。
そして展開した七層バリアは、バリアによるシールドバッシュのようにして迫りくるマリアさんへと体当たりする。
高速で突進するマリアさん、体当たりする七層バリア、それらがぶつかれば大きな衝撃となりマリアさんに手痛いダメージを与えるだろうか。

マリア > こいつ、割と抜けてるかもしれない
本当にそうなら色々と隙も出来るはず

「悪役?大いに結構。
あの方も私の好きに生きればいいと仰ってくださいましたもの!」

顔、そう言えば彼の素顔はどんなのだろう
無駄なノイズだとしても、少し気になってしまう

「なら、素直に死ねばよかったのに。」

死んでくれていればこの痛みも消えたかもしれないのに
本当の所は分からない、けれど可能性が有るなら是非ともあのまま死んでいて欲しかった

「ほう、バリアですか…なんだか似た様な物を持ってる奴を相手にしたことありますねぇ!」

迎撃かカウンター位は有ると思っていた
バリアに弾かれガントレットに亀裂が走る、ただそれもすぐに元通り
魔力の塊故、修理は容易い

「確か、同じようなバリアを張る装置を持った奴も居ましたねぇ。

あぁ思い出した、私が片目にしてあげた男はお元気ですかぁ?
以前より見れる顔にしてあげたんですが。」

そうマリアは嗤った

Dr.イーリス > あの方……。
まず間違いなくマリアさんを洗脳した人だろう。

「あの方というのは、あなたを魔法少女にした方でしょうか?」

小首を傾げた。

「あの人を置いて、私一人死ぬわけにはいきません。きっと、凄く悲しんで……傷ついて……常世まで私を向かいにきてくださいますから……。私は、あの人に生きてほしいと願ってます」

柔らかく目を細めて、微笑んだ。
そんなあの人への想いによりイーリスの心臓近くにある《パンドラ・コアMk-Ⅱ》が桃色に輝く。あの人への愛情が《パンドラ・コアMk-Ⅱ》でエネルギーに変わっていく。

バリアによるシールドバッシュ、思ったよりも効果がない……。
前よりも強くなっている……? 内心では、少し余裕がなくなる……。

「お元気でございますよ。私の大切な家族が随分と苦しめてくださったようで、その節はどうもです。悪竜さんには、随分と無茶な事を頼んでしまいました。あなたを闇から解き放つのは普通の方法では無理だと気づきましたよ。よくも、大切な家族の片目を潰してくださいましたね」

凛と言い放つ。

「……《オーバーリミット・キャルキュレイト》!!」

それは、発達した電子頭脳、その演算による未来予測。
少し先の未来を瞬時に予測するもの。

砲口が再びマリアさんを向いた。
今度は先程よりも多く、時間差で無数のレーザーがマリアさんへと放たれる。
まるで雨のような量のレーザー。それも時間差で後続が何度も放たれる。
イーリスは未来予測をしている。マリアさんが避ける方向、そこに先に後続のレーザーが置かれるように放たれる。
幾度も幾度も、マリアさんの避ける先へとピンポイントにレーザーが放たれていく。

ちなみに今回の未来予測は、マリアさんの回避方向しか予測していない。回避以外の方法で防ぐなら今回は予測できない事になる。

マリア > 「どうなのかしらね?
私は最初から魔法少女で、あの方は色々と私を助けてくれているの。
魔法少女がやるべき事を教えてくれたりもしたわ。」

今でもとても感謝している
彼が居なければ私は今どうなっていたか…

「なら2人仲良く死ねばいいですね!

家族ぅ?血縁には見えないですけど、どうせなら彼も纏めて皆仲良死すればいいです。」

芸の無い砲撃とまた躱そうとする
が、動いた先に予め攻撃が差し込まれている
次もその次も、反応して撃たれたにしては初動が早すぎる

「何か、見えて!ますね!」

回避は諦めガントレットで弾き、逸らす
にしても矢張り、あの後ろの要塞も含め面倒な事が多い
となればじり貧の前に大きく仕掛ける必要が有る

「舐めないで下さいよ、こちらにもそれなりにここに来た理由があるので。」

回避を捨て真っ直ぐイーリス本人へと迫る
砲口を向けられても予測が見せるのは変わらず突貫する姿

Dr.イーリス > 「魔法少女って最初からなっているものではないでしょう、普通。そこからの記憶しかないというのは違和感ありません?」

きょとんと小首を捻った。
魔法少女にしてくれる妖精さんとか、そういった存在に何かしら力いただいて云々かんぬんが魔法少女でしょう、という主張。

「嫌です、死にません。血縁ではないですが、ご一緒に暮らしておりますからね。誰も死なせません。私達も、そしてあなたも。あなたにもこれ以上、誰かを殺めるような真似はさせません」

未来予測でマリアさんの回避方向は把握している。
だが出来るのは、回避方向を予想してレーザーを撃つのみ……。
ガントレットで弾かれた光景を見れば、イーリスは一歩後ずさりつつ冷や汗を流してしまう。

「……ぐ…………」

悔し気にそんな声を漏らしてしまう。
さらにである。
未来予測した結果が真っ直ぐ突進である。

「直進は無駄であると、先程理解していただけたはずです……! アルカンシエル兵装・イリデッセントスカイフィールド!!」

レーザーの雨がぴたりと止み、代わりに突進するマリアさんの前方に七層の障壁が現れる。
先程と同じように、シールドバッシュの要領で障壁が要塞に迫りくるマリアさんに突進する。

マリア > 「そう?
でもそんなのどうでもいいわ。
忘れているって事はその方が都合がいいか、どうでもいい事。
私が魔法少女になる前の記憶なんてその程度の物なんでしょ。」

忘れている事ならそのまま忘れていればいい
それで困った事なんてないのだから

「なら、殺してみればぁ?
私を止めたいのなら殺せ!殺してみろよぉ!!」

轟音と共に障壁に阻まれる
しかし、マリアは知っている
この障壁の限界を、絶対不可侵の領域では無い事を
この近距離、破れるというのであれば引き下がる理由は無い
ガントレットの爪を突き立て、無理矢理にこじ開けにかかる

Dr.イーリス > 「……そうなのかも……しれませんね。あなたは薬品依存症だったのでしょう……。薬に手を出してしまったあなたの人生は、悲惨なものだったとも推測できます……」

イーリスは悲し気に視線を落とす。
マリアさんがどのような人生を歩んできたかは分からない。
だがおそらく現実は、過酷だったのだろう……。

凛と、マリアさんに視線を戻す。

「殺しなんてしません。しかし、痛い目を見てもらわないと、あなたは何も現実を見れないようですからね」

正面突破を試みる姿に、イーリスは目を見開く。
強引だ……。そこまでの絶対的な自信があるという事なのだろうか。
しかし、イーリスが驚いたのはそこではない。

「なるほど……。私はあなたが闇に堕ちて強くなったと誤解してしまったようです。素早い動きや、レーザーを防ぐその防御力にばかり目がいっていました」

確かに無防備に待っていれば、七層の障壁はこじ開けられるだろう。
要塞にある機械式の建物のハッチが次々と空いていく。

「バトンを体内に入れてしまい、肝心の強力な光のビームや散弾は使えなくなりましたか? しばらく戦ってみたら直情的に真正面から突っ込んで障壁を割るだけだなんて、あの時より随分と歯応えがなくなっているではないですか」

驚いてしまった理由、それは先程まで内心凄く焦っていたイーリスの予測が外れてしまったからだ。勝負事的には良い意味で。

「あの時のあなたの方が強かったですよ、魔法少女さん」

直進的な打撃一辺倒、それで安易に突破される空中要塞(強固なる場所)でもない。
マリアさんが割ろうとしているのはただの壁ではない。様々な武装が施された要塞の兵装である。

「アルカンシエル兵装・アルテミスミサイル!」

発射されるのは視界を埋め尽くす数のミサイル。
普通のミサイルではなく、赤き菱形の先端で後ろに棒状の金属がついた、矢にも見えるミサイルだ。
矢の形状から分かるように、貫通力を備えている。対象を貫いて爆発させるという機能は備わっているが、そんな事したらマリアさん死ぬかもしれないので、爆発する機能は停止させて刺さるのみ。
そしてマリアさんのどこを目掛けていると言えば、体内のバトンである。位置はマリアさんの体内にあるナノマシンが把握している。

マリア > 「薬物依存…?訳の分からない事を!」

突然何を言い出すのか
そんな覚えはない、意味の分からない事を
けれど、そんな戯言を聞いているとイライラする

「殺さない…へぇ、なら好都合ですね!」

殺さないでいてくれるらしい
なんて好都合、なんという好機

舐め腐っている相手を叩き潰す、そう怒りに頭が染まりかけた時要塞が動く

「がっ…あぁっ!!」

質量攻撃
ミサイルが爆発せずそのまま衝撃と共にマリアを引きはがす

爆発もせず形もこちらが怪我をしない様気遣われている
あぁ忌々しい、こんなに気遣われるなんて

推進剤を燃焼し終えればミサイルは勢いが消え落ちていく
深呼吸、そして見直す視線には明確な殺意

「良いでしょう、温存は無しでやってあげましょう。」

両の手に黒い粒子が集まり始める
背中の魔力放出の為制限していたが、仕方ない
舐め腐られたまま負けるなんて我慢ならない
こちらを殺す気が無いというのなら十分それに甘えさせてもらおう!

「またもう一度バラバラにしてあげますよ、今度はゾンビみたいに起き上がれられないようにねぇ!」

両手の間に黒い粒子は集まり蠢き、黒々とした球体を形作る

Dr.イーリス > 「あなたが魔法少女になってからの記憶しかないようですからね。ではさらに衝撃の事を教えてさしあげますね。あなたの言うあの方は、あなたの事を洗脳して自分の思い通りにしてますよ」

凛とそう口にする。
おそらくマリアさんは信じないだろうし、洗脳されていると口にするのは下策なのかもしれない。
イーリスは冷静でいながら、それでもどこか感情が動いてマリアさんに事実を伝えた。

「あなたを止めるなら、何も殺害すればいいというわけでもないですからね」

相手は、あの厄介な光のビームや散弾を失い、直情的に攻めるだけになった魔法少女。
要塞にいるイーリスにとっては、冷静になれる要素。

「そのミサイル、追尾式ですよ」

そう簡単に推進剤を燃焼し終えて落ちていくミサイルではなく、ターゲットを追尾して追い詰めていくタイプのミサイル。それがアルテミスミサイル。
ミサイルは通過した後も落ちていかず、それどころか戻ってきてマリアさんのバトンを狙い続ける。

「もし私があなたの事を舐めているとお考えでしたら、考え直した方がいいでしょうね。徹底的にあなたを追い詰めますので」

マリアさんが黒い粒子を集めている間も、アルテミスミサイルが次々とマリアさんを追尾する。
黒い粉子を集めている猶予なんてない、と言わんばかりの言葉通り徹底して追い詰めていく構え。

マリア > 「へぇ、そうなんですか…」

静かな答え
荒ぶる激情は殺意となって両の手に注がれる

「私とギフターさんの事を何も知らない小娘が、よく言いましたね。
もう薬なんかどうでもいい、汚い油を巻き散らして死ね。」

背後からこちらを狙うミサイルに背中から再度凄まじい勢いで魔力を放出し焼き焦がす
そして放出の勢いそのまま距離を縮め…障壁が出るであろう直前に黒い球体を前にだす

「吹き飛べブリキ女ぁ!」

近距離からの圧縮魔力の放出
勿論近距離からそんなものを出てくるであろう障壁に打ち出せば自分だってただでは済まない

だが彼を、恩人が自分を洗脳し走狗にしている等のたまった相手に報いれるなら他はどうでもいい

Dr.イーリス > 「え……」

イーリスは茫然となる。
ギフターさん……?

「ギフターさんが…………マリアさんを……」

どうして……ギフターさんが……。
動揺している間に、マリアさんが迫っていた。

「!? ……そんな…………!?」

障壁の展開は間に合わない。
メカニカル・サイキッカーは待機しているが、イーリスは要塞の方を激しく稼働させていて、黒幕の正体に動揺もありメカニカル・サイキッカーを咄嗟に動かせない。

(今度こそ、私……死んでしま…………)

再びの死の直面……。

(エルピス……さん……。せっかく救っていただいたのに……ごめん……なさい……)