2024/09/22 のログ
ご案内:「落第街/街角」にギジンさんが現れました。
ご案内:「落第街/街角」にフィスティアさんが現れました。
フィスティア > ここのところ自信がついてきました。
何も出来ずにいた現状を変える事が出来ようになってきたからです。
ですが、慢心はいけません。出来るは続けなければ意味がありません。

「風紀委員会です!今すぐその子を解放してください!」

だから今日もこうしてこの街に来ています。
確かに存在する誰かが暮らしているこの街で、住んでいる皆さんを守る為に。

今私の目の前にいるのは、幼い子供を足蹴にする男性の方です。
1人ですし、特別屈強であったりするわけではありません。
ですが、このままでは子供の身が危険なのは明らかです。

いつでも抜剣出来るようにはしながら駆け寄ります。
男性の方は駆け寄るとすぐに去っていきました。

「…!」

抵抗も何も一切ありませんでした。
ただ…一瞬こちらを見たその目は…一瞬だけ、少しだけ…怖いと思ってしまいました。
ですが子供を助ける事には成功しました。私は子供の様子を見る為に屈んで声をかけます。

「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」

ゆっくり声をかけながら回復魔法を準備し、詠唱します。
その間に気づいたのですが…これは骨が折れています。
流血している傷も多いです。おそらく女の子でしょうに…こんなひどいです。
小さい子です。放っておけば命にもかかわるでしょう。
どうしましょうか。

ギジン >  
騒ぎが落ち着き、周囲の人が去っていく中で。
一人の女が現場に近づいていく。

「風紀委員の騎士様ですか」

治療現場で声をかけて、その様を手を出さずに見守っている。
女からは煙草の甘ったるい匂いを感じるかも知れない。

「その子を助けてどうするのですか?」

学生しかいない街。常世。
だからこそ、彼女も学生である。

二級学生、だけれど。

「申し訳ありません、単なる興味本位でして……」
「答えにくいなら答えなくても結構です」

空には厚い雲が立ち込めている。
どこまでも憂鬱な曇り空。

フィスティア > 私に出来る治癒は簡単なものだけです。
痛みの緩和だって、骨折ともなれば全て取り除くのは殆ど無理です。
幾つもある傷のうち本当に小さなものだけ消えて、骨折も流血も見ている事しか出来ません。
歓楽街の病院にでも連れ込むべきでしょうか。とるべき行動を考えていた時でした。

「は、はい
私でしょうか?」

知らない声です。
初対面の方のようです。落ち着いた方です。
この街ではこうして話しかけられるのは少し珍しいように思います。

「この子をですか…?」

質問の意図が分かりませんでした。
目的も、真意も。

「このままでは死んでしまうかもしれません。
ですので、そうならないようにする…だけです」

助ける理由はあります。命を落とさせない為です。
ですが、助けてどうするかは…考えていません。何もできないでしょうし、何も求めるつもりはありません。

ギジン >  
口の端を持ち上げて僅かに微笑む。

「これは失礼しました、僕はこの街の住民……ギジンと言います」

屈み込んで傷の様子を見る。
やはり見知った子だった。

「この子は二級学生で、先程の男子生徒が飼い主だっとしてもですか?」

女の子の額を撫でて痛かったね、と声をかける。

「横槍が入って追い払われたことで怒っているかも知れません」
「それが彼女にさらなる八つ当たりを招くかも……」

「彼も小心で良くない人格を備えてはいますが」

空が鳴る。
暗雲は雷を孕んでいた。

「貴女のしたことは本当に正しい行いだったのでしょうか?」

詭弁。
しかし、覚悟を問う言葉。

フィスティア > 「私は風紀委員会のフィスティアと申します。お見知りおきを…」

やはりこの街の住民だったようです。
私も名乗りを返します。

「飼い主…ですか?」

ギジンさんはこの子を傷つけようとする意志は無いようです。
それは良いのですが…
飼い主、とは…そういう事でしょうか。

「それは…」

そんなことは考えていませんでした。
誰かにそういった形で従属している方を助けた事はありませんでした。
極端な言い方にはなるかもしれませんが、私は奴隷の子を主から無理やり引き離した可能性がある…という事でしょう。
正しい行いであったかと問われると、答えが出ません。

「…分りません。
ですが、あのまま見て見ぬふりは出来ませんでした。
あのような暴行は許される事ではありませんし…
それに、本当にそういう関係であるならば猶更何もせずにはいられません」

それが正しいかは分かりません。絡まったような思いが溜まります。
ですが、私にとっては暴行も、その関係性も見て見ぬふりが出来る物ではない事は確かです。
…先ほどもでしたが、質問の筋から外れた回答ばかりしてしまっていますね。

ギジン >  
「フィスティアさんですね、よろしくお願いします」

先ほど暴行を受けて負傷した少女を前にするには、
少し安穏としすぎた響きの言葉を返す。

しかしここで声を荒げてもどうしようもない。
何も変わりはしない。誰も喜ばないし、好転はしない。

「僭越ながらフィスティアさんにアドバイスをするなら」
「わかりません、では済まない場合がこの世界には往々にしてあるものです」

「……すいません、貴女を責めるつもりはないんです」

両手から光を発して二級学生の子を治療する。
彼女を治療するのは初めてではないけれど、
これくらいならまだ治療限界は起こらないだろう。

「僕はこの子のことを考えるとやるせない気持ちになります」
「どう足掻いても悲劇から避け得ない運命を持った幼子ですから」

「僕は、貴女は、何をしたらこの子を暴力と痛みのない場所へ連れていけるのでしょうね」

額に汗が浮かぶ。
骨折部位が荒い。少し時間がかかるかも知れない。

フィスティア > 「…仰る、通りです」

ギジンさんの言う通りでしょう。
こんな煮え切らない覚悟では出来る事も出来ません。
いっそ…しないほうがいいかもしれませんね。

子供を治療してくださっているギジンさんに感謝を伝えます。
この場で私にできる事はもうなかったので、手を貸していただけるのは本当にありがたい事です。

「どうすれば、良いのでしょう。
避け得ないという事は…無いと思います。
ですが、今すぐに出来る事があるとも思えません…」

一時的に風紀委員会で保護する事や生活委員会に頼る事は出来るでしょう。
ですが、それは単なる先延ばしにしかならないでしょう。
委員会は慈善団体ではありません。私も子供を1人支え続けるだけの力はありません。
希望を捨てたくはありませんが、今この場から見える希望も小さな小さなものです。
そこに辿り着くのは容易ではないでしょう。

治療してくださっているギジンさんの様子も辛そうです。
他者の治療というのは簡単な事ではありません。それでも尽力してくださっているギジンさんには感謝しかありません。

ギジン >  
「どうすればいいか迷ったら」
「まずはこの子にどうしたいかを聞けば良いのではないでしょうか」

「このお姉ちゃんに話ができますか、かなみさん」

治療を続けながら考える。
どうして僕はこんなことをしているのだろう、と。

「坂村かなみ、彼女の二級学生としての名前です」
「本名は王 可昕(ワン クァシン)で」

「先ほど逃げていった飼い主は斎藤康弘です」

情報を風紀に渡して、何になる。
何ができる。僕にはなにもできやしない。

ただ、かなみさんの死体を見たくないだけの気持ちでしかないのに。何故。

「治療を終えるまであと4分20秒いただけますか」

フィスティア > 「!
そうですね、当人の意思は大事ですからね…!」

そうです。頭から抜け落ちておりましたが、この子がどうしたいかは大事です。
かなみさんというのですね。

「情報ありがとうございます。
後ほど確認致しますね」

坂村かなみさん。本名はワン クァシンさん。
先ほどの男性は斎藤やすひろさん。覚えました。

「分かりました。お願い致します」

相応に時間がかかるようです。
ではその間に…

「かなみさん…と呼んでも良いでしょうか。
かなみさんは……どうしたいですか?」
「風紀委員会で保護したり生活委員会で生活の援助を受ける事は可能です。
場合によっては二級学生ではなく、学生の身分を得る事も出来るかもしれません」
「私は…出来るだけかなみさんの意思を尊重します」

言葉を遮らないように、焦らせてしまわないように慎重に伝えます。
これが正しいかは分かりませんが、私なりの声のかけ方です。

ギジン >  
僕には治療しかできない。
この子に他に何もできない。

ただ、風紀委員なら。
彼女の正義ならかなみさんを救えるかも知れない。


自嘲した。
終わってしまった女が。
春を待っているだけの女が何を期待しているのか。

期待すれば裏切られてきたのに。
今更何を。

「かなみさん。治療を終えます、しばらくは激しい動きを控えてください」

彼女の汗と汚れをハンカチで拭って立ち上がる。

坂村かなみ >  
「うん……私は今はその名前がいい」

座り込んだままフィスティアを見上げる。

「私はね、まずおくすりが欲しい」

家族を助けられるだけの知識と学歴を得るためにこの地を踏んだのに。
まだ何もできていないから。

「私のバカが治るおくすり」


その言葉に、彼女が普段どのような痛罵を受けてきたのか。
それが伝わるだろうか。

フィスティア > 私は託されたのでしょうか。
ギジンさんから、かなみさんを救う事を。
自意識過剰かもしれません。ですが、違ったとしても応えましょう

「分かりました。ではかなみさんと呼びますね」

こちらを見上げるかなみさんの目に内心冷や汗が出ました。

「  」

それは、言葉に詰まるなんて言葉では形容出来ない感情でした。
かなみさんの言葉は、どう答えれば、どう応えればよい物か
さっぱりわからない、重たいものでした。
私はかなみさんの事は何も知りません。ですから、勝手な事は言えません。

「……バカだなんて言わなくてもいいんですよ。
今ここにかなみさんの事を罵る人はいません」

何を言えばいいのか分からないなりに、ゆっくりと話します。
黙っていては、不安にさせてしまうでしょうから。
緊張、しますね。

「私には遠慮も何もする必要はありません。私もギジンさんもかなみさんを決して傷つけたりはしません。
ですから…思っていることを聞かせてもらえませんか…?
話したくないなら、それでも…大丈夫です」

これで合っているか分かりません。
まずは安心してもらえれば良いでしょうか。

ギジン >  
かなみさんは日常的に言葉の暴力も受けているようだ。
想像以上に時間がない。

そんなことに耐えられる人間なんていない。
まして、幼い少女にどうしてそこまでの業苦に耐える体力と気力があるだろうか。

「これは不安神経症もありますね……」
「日常生活に支障をきたすのも時間の問題でしょう」

そうなれば破綻は目に見えている。
破綻した弱者がどうなるかも火を見るより明らか。


時間がない。
しかし……しかし。

坂村かなみ >  
暴力のショックに蒼白な顔のまま。

「私は……大丈夫です…」
「あと四年間……大丈夫です…」

大丈夫です、と只管に繰り返す。
そう言うように“教育”されている。

そして、そう自分に言い聞かせている。

フィスティア > どう見ても大丈夫ではありません。
ですが、それを一方的に否定してしまうのもかなみさんにはショックかもしれません。
強い言葉は使えません、使いたくありません。
下手な言葉も、触れ方も。彼女を傷つけるだけでしょう。

ギジンさんが言うように、このままではかなみさんの心は身体より先に壊れてしまうかもしれません。
そんなことはさせません。

「かなみさんが…何かをしたり、何かを言って…誰かがあなたを攻撃しようとしても私が必ず守ります。
ですから…取り繕う必要はありません」

ゆっくり、それでもははっきりとした意志で言葉を紡ぎます。

「今のかなみさんは…大丈夫には見えません。
ですが…まだ抜け出せます。私は助けたいです。
かなみさんを暴力も罵倒も無い場所に連れていきたいんです」

手を膝の上で開いて、動かさないように。
焦らせないように、不安を与え過ぎないように…
どうにかして、埋もれてしまった本音を掬い上げようと…

ギジン >  
目を瞑った。
彼女を救ったら終わりか。
飼い主に“補習”を受けさせたら終わりか。

違う。
断じてそんなことはない。


風が吹き、雲を流していく。
どこまでも続く、曇り空。

この世界が本当に地獄であるならば。
この世界が本当に楽園であるならば。

僕はどちらかである確証が欲しかった。

坂村かなみ >  
心臓が痛い。
諦めていたのに。
どうして。どうして。

「お姉ちゃん」

今まで言えば殴られていただけの痛い言葉。

「たすけて……」

涙が溢れてその場に蹲った。
心は閉ざしたままのほうが簡単なのに。
希望なんて持たないほうが気楽なのに。

フィスティア > 少し心が痛むような気はします。
かなみさんはこのままでは壊れてしまうでしょう、死んでしまうでしょう。
ですが、元より苦しむかなみさんにこの選択を半ば強いている私の行動は、彼女に一時的とはいえ苦しみを与えているでしょうから。

ですが

「分かりました…!
私がかなみさんを助けます」

心を開いて貰ったからには、その言葉を引き出したからには…
覚悟を決めましょう。その準備は出来ています。

かなみさんを助ける為に出来る事は決して少なくありません。
この島はそれほど無慈悲ではありませんから。

「後悔はさせません」

こうして苦しんでいる人がこの島には大勢いるでしょう。
そのすべてに目を瞑るつもりはありません。ですが、中途半端にはなりたくありません。
まずは、目の前のかなみさんからです。

力強く頷いて安心してもらいましょう。

ギジン >  
泣きながら助けを求める少女を見て一瞬だけ表情を歪めて。
すぐにいつもの素知らぬ顔でフィスティアに近づいた。

「フィスティアさん」

そして、声をかけておいて言葉に迷った。
自分には何もできなかったから。


「貴女は成すべきことを成しました」
「ですが、かなみさんにとってこれは始まりです」

「人は生きている間にどれだけの数の悲劇を止めることができるのでしょうね」

薄い。薄っぺらい。
僕の言葉は詭弁だ。
詭弁遣いだから。人擬きだから。

「彼女をお願いします」

そう言うと、雲の切れ間から陽光が差し込んだ。
もう、雷の気配は消え失せていた。

フィスティア > 「そうですね。やる事は沢山あります」

まずは風紀委員会で相談して、保護をして。
住処と身分も用意しなくてはいけません。
逆恨みや次の被害者を防ぐ為に斎藤さんの身分も抑えなければいけません。

そういった事務的な話のみではなく、かなみさんの治療と精神面のケアも欠かせません。
身体の傷を癒すのはそう難しくないでしょうが…心の傷を癒すのは簡単ではないでしょう。

「出来る限り、止めてみせます」

限界はあるでしょう。ですがそれはやった後に分かる事です。
今決める物ではありません。

「はい、任せてください」

確かに託されました。
しっかりと頷きます。

「ギジンさんもありがとうございました。
ギジンさんが居なければ治療も情報も…この状況も何も無かったかもしれません。
私1人ではこうはならなかったでしょうから」

頭を下げます。
この言葉に嘘偽りはありません。
私一人の力ではこうはならなかったでしょう。

ギジン >  
「僕には何もできませんよ」

僕は終わってしまった女だから。
ただ日常を煙に巻いているだけの。

だから、僕は彼女のことを忘れることはないだろう。
真っ直ぐな瞳で、痛いくらい僕を見つめてきたフィスティアという少女のことを。

「僕はもう行きます」
「それでは……」

その瞳から一秒でも早く逃れるために。
僕は去っていった。


その日は夕陽を綺麗だとは、思わなかった。

フィスティア > 「そんな事はありませんよ」

私は理解できませんでした。
ギジンさんが合わせる視線の真意が。
だから、こうしてギジンさんを励ます様な言葉をかけたのでしょう。

「ありがとうございました。
お気をつけて」

去っていくギジンさんを見送ります。
その背中は何故か小さく見えました。

「私たちも行きましょう。
かなみさん、立てますか?」

いつまでもここにいては別の危険と出会うかもしれません。
かなみさんを助けると言ってすぐです。かなみさんを危険にさらしたくはありませんから。
結局、騎士さんを1人呼んでかなみさんを運んでもらいました。

曇っていた空はいつの間にか晴れていて、その日の夕日は何だか清々しく感じました。
ギジンさんも同じ夕日を見ているでしょうか。

ご案内:「落第街/街角」からフィスティアさんが去りました。
ご案内:「落第街/街角」からギジンさんが去りました。