2024/10/20 のログ
ご案内:「常世島 貿易港」に橘壱さんが現れました。
ご案内:「常世島 貿易港」に狐宮 ルナさんが現れました。
橘壱 >  
鈍い汽笛の音が青空に響いた。
常世島、某貿易港。今日も忙しなく多くのものが動いている。
そんな港の一角、大型船の運搬作業を眺める少年が一人。
企業の子飼いである以上、社会見学めいてこういう場所には良く来る。
自分の使うパーツも入っているんだ。リストくらいは確認する。

「……と言っても、それくらいなんだけど」

生憎子飼いなだけで厳密な就職もしてないし、
何よりなーんの資格もない。何も無いやつに、
大事な商品を任せるような企業でも無いということだ。
そう、結構暇なんだよな、これ。

退屈な表情で、リストを指でなぞりつつ、
向こう側で忙しなくコンテナを運ぶ従業員を眺めていた。
此の時期の潮風は、嫌に肌寒く感じてしまう。

「急に冷え込んできたなぁ……帰りに何か買うか。
 いっそ今夜鍋にしようかな。メールで連絡しないと……」

狐宮 ルナ >  
コンテナの横に、人だかりが1つできていた。
人だかりというと、語弊があるか。

1つのチーム、だ。
先頭には、金髪をした、糸目の女。
そしてーー後ろに控える、白髪の体格がいい老けた男。
ロングヘアーの黒髪をした、高身長の女性。
そして、その後ろには多種多様な国籍の何人かが、控えていた。

その、金髪の女性が、何かを喋りながら、あなたを視た。
少し遠いから、それがあなたを捉えた視線だと、わかるだろうか。

そして、頬を上気させて、どかどかと大股で近づいてきて。

「Champ, Champ! ? Why are you here? I'm honored!」
(チャンプじゃないですか、どうしてこんなところに、出会えて光栄です)

握手を求めるように、手を差し出して。

橘壱 >  
とりあえずメール送っとくか。
こっそりタブレット端末を起動し、
ルームメイトにメールを送信。『今日鍋な』

「これでよし、と……ん?」

視線を感じる。碧が流れると、糸目の美人。
と、なんだか取り巻きみたいなのが数名見える。
作業員……という雰囲気ではない。
一体何なんだと思った矢先、こっちに近づいてくる。
なんだ、と思わず身構えて差し出されたとは女性の右手。

「え、あ、お、おぉ……?」

一瞬何のことか分からなかった。
英語、英語だ。しかもなんだか懐かしい単語。
そう、かつての現役時代に呼ばれていたものでもある。
玉座に座り続けた、文字通りのチャンプ。
ちょっと呆気にとられつつ、咳払いで気を取り直す。

『Hi, ……ah~……Who are you people?』
(どうも、……えっと……どちら様でしょうか?)

現役時代に培った言語だ。
此れくらいは話せる。困惑しつつも、
おずおずと此方も手を差し出し、握手に応じた。

「(本当に誰だ此の美人……金髪糸目とかこう、なんか……あれだな)」

オタクくん、すぐ変なこと考える。

狐宮 ルナ >  
やれやれと、肩を竦める男と、ニコニコで女性は後ろに控えていた者たちに指示を出していく。

「あー、すみません。つい、テンションが上り、母国語で。私、こういうものです」

名刺を差し出す。狐宮重工ーー今日の、取引相手、だ。

「この島への先遣、とお考えください。あなたのプレイが、大好きで。つい、お声がけしてしまいました。仕事中、なんですが」

橘壱 >  
なんか周囲の人達が呆れてる。
勢いか、これ勢いなのか。勢いだった。

「あ、ど、どうも。一応英語は話せるけど、
 確かに日本語のが僕もやりやすいかな、ハハ……」

受け取った名刺に書かれている『狐宮重工』の文字。
確か、今回のエレトクロニクスの取引相手だ。
扱う商品的に同じ総合軍事企業の中小だ。
企業の規模は絶対ではあるが、規模だけが全てではない。
此の島にを支部を設けている積極的な企業姿勢な会社だ。

「狐宮ルナ支部長……支店長、かな?
 僕のプレイが好きってことは、現役時代の僕を知っているワケか。
 いや、なんだかこそばゆいというか……此の島にきてその反応初めて受けたな」

結局の所その界隈で有名な人だし、
そのゲームをやっていなければ意味はない。
照れ臭そうに頬を掻く壱の姿は、現役時代の
何処か尖ったような傲慢さは見えず、年相応の姿にも見える。

狐宮 ルナ >  
「現役時代、もう引退の悲報を聞いたときは三日三晩泣きました。それほど衝撃でした。まだ、全盛といっても差し支えなかったですし」

同じ軍事企業。
しかして、まだ、こちらは新参。
だから、こうして少しずつ少しずつ、名を広げていく。
その橋渡しになっていただきたいとい、う、意図がある。

「あまり、こちらでは流行してなかったんですかね。eスポーツ」

ふぅ、と少し落ち着いたように息を吐き。

「ルナで構いません」

橘壱 >  
「そんなに」

そんなに。思わず声に出てしまった。
そこまでのファンガールだったのか、彼女。
人気があったこと自体に自覚はあるけど、
改めてこうして面と向かって言われると中々恥ずかしいな。

「すみません。今でもまだ、メタラグには未練はあるけど、
 今は見ての通り、もっと別に世界(舞台)で羽ばたいているので」

より広く、より自由な世界へ。
はにかみ笑顔を浮かべ、人差し指を口元に立てる。
現役時代、良くメディアに出てきたポーズだ。

「けど、今でも僕が"最強"なのは変わりないよ」

実際はやってみるまではわからない。
だが、その自負と自信には裏付けされた実力がある。

「ハハ……狭いようで広い島だからね。
 じゃあ、ルナ……さん、かな?僕も壱でいいよ。
 ウチと取引はちゃんと上手く行ってる?」

狐宮 ルナ >  
「今のチャンプを見ているとそんな気はします」

尖りはなくなり、傲慢さもない。
なんだか、『人として』、成長したようにも見える。丸くなった、と称する人もいるかもしれないが。
しかして、そのままであり続けろなんて願うのは少年には酷だ。
変化が、より、よくあること。大人になるということが、彼にとってよくあり。
また、それがーーワレワレの利益に繋がればよりよい。

「ふふーん。それなりに、です。この度はいろいろと、ご購入いただけましたので。
また、私も今の出会いがありましたし」 

取引は、ここから。

「よろしければ、チャンプ個人に。オファーをしても?」

橘壱 >  
「……学園都市ですから、学ぶ事も多かったですよ」

現に"答え"に至るまで、随分と遠回りをした。
両極端な道を両方取る答えを取ることにした。
思えば、それを進言したのもあの人だった気がする。

「(今度、悠薇先輩にもう一度会わないとな……)」

謝るべき事も多い。

「そうですか。まぁ、何かとクセの多い人材がは多いと思うけど、
 そちらに企業にも良い影響があったなら幸い……って、僕が言うべきことでもないか」

大企業なれど、社長を筆頭にクセが強い。
いや、本当に強い。思いつくだけで色々出てくる。
口元も少し引きつるが、続く言葉に自然と引き締まった。

「……僕個人に?どういった内容を?」

狐宮 ルナ >  
そう、学園都市。
だからこその選択肢。

聞こえは、とてもよい。
とても。

学ぶことが多くてなによりだと、笑みが深まる。

「実は私、eスポーツ部門の担当もしておりまして」

さて、そんなーー自分の胸中などさておき。
ビジネス、の話。

「オリジナルPCと、チェアの開発をしておりまして。もし、よければ……チャンプセレクト、というオリジナルを、作成できたらな、と」

これには、ただのeスポーツへの宣伝だけではなくーー

「その、フィット感は今後……パイロットへのプラスに働く可能性もあると、思います」

橘壱 >  
「…………」

橘壱はまだ人生経験の浅い子どもではあるが、
同時に今は多くのことを経験した装着者(パイロット)でもある。
その勘の良さ優れた装着者(パイロット)の才能でもあった。

「(美人で可愛い人ではあるんだけど……)」

この笑みの深さ。なんだか漂う胡散臭さ。
気のせいでなければ良いのだけれどな。

「eスポーツ部門、ですか。
 まぁ確かにPCとその周りの機器っていうのはよく聞くなぁ。
 オリジナルっていうことは所謂、コラボモデルってことですか?」

まぁよく見かける商法ではある。
所謂プロゲーマーコラボや、可愛い美少女コラボ。
ウチのチームもそう言えば出してたっけ。
自らの顎を人差し指で撫でながら、その糸目をじっと見やる。

「……プラス、ですか。
 ゲームとしての名声はともかく、詳しくお話を聞きたいですね」

そこでAF、装着者(パイロット)としての自分に繋がるか。
彼女、何を考えているのだろう。

狐宮 ルナ >  
「VR。今は、端末と身体が別々である点がネックになります。また、脳波等の意志疎通。そういった、波のキャッチにより、速度を増すことは出来ていますがまだ、ラグ、があるところも否めない」

だから。

「そういった、機械、電子……との境目を無くした、VR機器、の作成を最終的な目標としています。その第一世代を、チャンプとのコラボとしたいと」

それが及ぼすプラス、は。

「より、精密な操作が可能になるのでは、と。まだ、あくまで机上、ではありますが」

橘壱 >  
外付けの機械というのは、
大小あれど操作感にラグが生まれる事がある。
直接埋め込む、或いは直接機械にすげ替える方法もある。
最も、競技シーンにおいては公平性に欠けるので、
基本的に禁止されているものではある。

「……成る程。外付けにおける操作ラグの解消。
 技術的ブレイクスルーを狙っているのは確かに魅力的ではある」

そうすれば一気に飛躍出来るだろう。
企業としても、かなり注目される。
要するに、その被検体(テストパイロット)というわけか。
……兵器に転用すれば、恐ろしいものはある。

「まぁ、その、僕の一存では決められません。
 僕自身は悪くないと思うけど、一応クロニクスの所属にはなるので……」

正式にではないとは言え企業の子飼い。
独断で何か出来るわけはない。

「にしても、随分と思い切ったことをいいますね。
 まさか、そのために僕個人に会いに来たんですか?」

なんだか大胆だなぁ。
だからこその支店長なのか。
……この逞しい取り巻きって、彼女の趣味なのかな。

狐宮 ルナ >  
「ええ。我々には名前がありませんから」

知名度。そういった意味で彼は最適だ。
だから、見かけたとき、ある意味で賭けにでることを決めた。
そも、今日の取引も。ひとつの賭け、だったのだ。

「ひとつ。選択肢にしていただければ。あなたの翼をより羽ばたかせたいとおもっているのは、ひとつ、ではないのです、と」

橘壱 >  
「知名度、か……」

確かにこの混沌とした時代、商売の形も多岐にわたった。
そこで太く、大きく、所謂大企業に成り上がる。
或いは未だそれを維持しているというのは、
それだけの何かがなければ無理だ。
"野心"。そのうえで彼女は、成り上がろうとしている。

「僕はまだ、そのへんの機敏はわからないけれど、
 キミのそのハングリー精神は理解できる。……そうだね。
 戦う世界が違っても、その羽ばたく精神性には共感出来るよ」

そのために如何なる努力も惜しまない。
寧ろ惜しむような奴が、成り上がれるはずもない。
ふ、と僅かに口元ははにかんだ。

「そうですね。僕の方からも打診はしてみるので、
 なんとか形になるようにはしてみます。
 最終的には、企業側の判断になっちゃうけど、それでも良ければ……」

狐宮 ルナ >  
「ありがとうございます」

にこやかに笑みを浮かべた。

「このスタイルは、あなたへのリスペクトから、です」

リップかそれとも……?

「今日はあえてよかったです。また、電子の海でもその翼が見れたらと思いますーー」

話が弾ませようとしたとき。
とんとん。後ろからーー男に肩をたたかれ。
ぎゅんと。かおをそちらに。

少しの間。

「……失礼。時間でした。では、また。チャンプ。次はお食事でも」

ペコリとお辞儀して、去っていこうと。

橘壱 >  
思わずちょっと苦笑い。

「……良く見てらっしゃる」

口達者(リップサービス)でも、本質を見抜かれてると気恥ずかしい。

「それはまぁ、機会があった、ら……!?
 え、あ、ああ、はい……ぜひ……」

真正面に美人の糸目。
ドキリと緊張して頷いてしまった。
なんだか不思議な人だったな。
去っていく背中を見ながら、ふぅ、と一息。

「……僕の翼、か……」

もう一度、あっちの世界でも頂点を目指してみるのもありかもしれない。
いいじゃないか。元ではなく、現役チャンプの最強装着者(パイロット)
ぐ、と拳を握り込み、青空を一瞥すれば反対側へと歩を進めていくのであった。

ご案内:「常世島 貿易港」から狐宮 ルナさんが去りました。
ご案内:「常世島 貿易港」から橘壱さんが去りました。