2024/11/02 のログ
ロベンツ・カーティマン >  
青白い稲光が車輪付近から迸る。
最大加速によるGが全員に襲いかかり、衝撃に震える。
その迷いない加速が一直線に突き抜け、最早爆音は聞こえない。
無我夢中だったのだろう、目標エリアに到達したのだろう。
気づけば窓の向こう側には、調査団と思わしき数名と大型トラックが見える。

「…………お見事、でしたな」

ロベンツはある意味での戦慄を覚えていた。
彼女に戦闘経験はなく、初経験だったはずだ。
なのにこの一切の戸惑いもなく、突っ切ってみせた。
何ならば、橘壱の介入がなければ一矢報いる気兼ねも見えた。
末恐ろしさだ。何故彼女が選出されたか、よく分かる。

「拡大表示してみた所、間違いないようです。
 未開拓地区の開拓班の皆様も首を長くしてまっていた頃でしょう」

「ところで、壱殿は……」

橘壱 >  
『──────僕がどうかしましたか?』

まさに狙ったかのように、回線モニターに笑みを浮かべる壱の素顔が映った。
程なくして空気を切り裂く音と共に、蒼白の機体が並走する形で飛んでおり、
格納車両へと問題なく着地する。ふぅ、と壱は一息を吐いた。

『無事ですよ。あの程度、逃げ切れないほどじゃない。
 ……ちょっとヤバかったけど、妙に諦めも早かったしね』

あの直後、弾切れは一瞬だった。
全兵装を排除(パージ)し、内蔵火器を使って囮になる予定だったが、
妙に相手の食いつきが悪く、向こうから撤退してくれた。
此方としてはありがたい限りだが、明らかに"作為的"な何かを感じる。

『(さっきの狙撃といい、狙われていた……?)』

この未開拓地区といえど、人がいない訳では無い。
寧ろ、身を隠すならある意味、落第街(アソコ)よりうってつけだ。
事実、変わり者や危険な違反組織も潜んでいる事も多いのだ。
一連の出来事には、間違いなく人為的要因が絡んでいる。
とは言え、襲撃や追撃の気配はない以上、今は考えることではない。
軽く首を振れば、モニターの向こうに見える波都にはにかんだ。

『……お疲れ様です、波都先輩。
 約束は守りますから、任せてください。
 さ、これからが大変でしょ?何せ、物資は山のようにあるんだから』

こういう所には滞在する側も命がけだ。
故に、此方の物資もそれこそ"多め"に持ってきている。
ある種潤沢な組織力の強みとも言えよう。
エリア到着とともに出迎えた開拓班と共に、激動の日々は過ぎ去っていくのである。

鶴博 波都 >  
「……ふぅ、到着しましたが、見たままの状況です。
 物資は……たぶん、問題ないとおもいます。」

 車両を降りて、待機人員と視線を合わせて敬礼。

 レーザ―による破壊と炎上、最高加速による負荷。
 それでも物資は"不自然なまでに無事で、欠けていない"。
 何なら物資は"多めにもってきている。"

 多めに持ってきた物資は人為的な細工がなければ大したことのないものだ。

 疲れた顔つきでゆっくり降りる。 
 橘壱の話題が出たところで表情に陰りが見えかけたが──

 ──当然の様にモニター越しに彼の声が届く。
 既に車両から降りているため、声だけ聴いている状態。

 慌ててモニター前に戻って、通信機越しに声を返す。

「はとちゃんも無事です。壱さんも無事でよかったです。
 今度、食事のお礼ぐらいはさせてくださいね。」

 仕事とプライベートの半々の感情。
 仕事意識でギリギリ理性を保っている。

「ですね。こっからが本番です。
 でも……あの、でも、ちょっとシャワーを借りたいです。」

 荷下ろしを行う前に、彼女らしくないお願いを申し出る。

「あの、汗かいちゃって……(すこし漏らしちゃって)……。
 ……それで着替えも一式借りたいんですけど……。」

 何故か、シャワーを借りたいらしい。
 初陣に心を落ち着かせる為だろうか。あるいは、別の理由か──。
 
 ──鶴博 波都が一般鉄道委員上がりだったことも幸いしてか、
 大体を察して慣れた所作で先輩方が気を利かせてくれたとか。


ご案内:「未開拓地区-Assault Waves-」から橘壱さんが去りました。
ご案内:「未開拓地区-Assault Waves-」から鶴博 波都さんが去りました。