2025/01/25 のログ
ご案内:「Free2 傍若無人とぽっぽやさん」に神樹椎苗さんが現れました。
ご案内:「Free2 傍若無人とぽっぽやさん」に鶴博 波都さんが現れました。
ご案内:「Free2 傍若無人とぽっぽやさん」から鶴博 波都さんが去りました。
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神樹椎苗 >  
 それは春節の時期の、とあるよく冷えた日の朝の事です。

 長らく各方面を悩ませていた、汚染物質。
 その汚染源が討伐されたとの知らせが、正式に関係各所へと通達されました日の朝となるでしょう。

 今後の汚染生物らの掃討作戦のための準備が始まる中、勤勉な人々は救護室や除染室、作戦室など、防護壁の中を行ったり来たり。
 勿論、普段なら壁の内外にも出入りが多いものですが、陽が昇ったばかりの早朝ともなれば、寒さのために屋外へ出る人も少なくあります。

 そのためでしょうか。
 不運なのか、幸運なのか。
 恐らく、大多数の方々には幸運だったことでしょう。

 人差し指を真っすぐ立てて、左手を挙げた姿勢でうつ伏せに倒れております、なにやら見るからに高級そうなドレスを着た少女は、誰にも見つからずに済んだようでして。
 身体に霜をくっつけたまま、行き倒れておりますれば。
 もし、もしも、見かけてしまう人が居ましたら、悲鳴の一つも上がりかねないという有様でございます。

 その霜の降りようからすれば、どうやら深夜から今まで。
 倒れてからそのまま、誰にも見つからずにいたようでありました。

 さてさて。
 そんな異様な光景を、この日最初に目撃してしまうのは、一体誰でございましょうか。
 願わくば第一発見者となるその人物に、不運が無い事を祈るばかりでございます。
 

鶴博波都 >  
「ついに汚染源を除去できたんですね。」

 汚染源の除去に成功した、との報せを受けたのが昨日未明。
 残存する汚染物質の掃討・除去のフェーズに進むとなれば必要となるものも変わってくる。
 次なる準備の立ち上げのために輸送と準備を終え、朝帰りの前に一息付こうと周囲を散策。

「確か、事故発生が11月23日の13時45分頃だから……丸々二ヵ月。」

 丸々二か月。
 初動を凌ぐ為に六日も寝ずに動き詰めて倒れて、後輩に担ぎ込まれた事もあった。
 安定を見せた今ではそれほどの無茶はせず、本業の合間にボランティアとして出る程度。

「……このままみんな無事だと、良いんですけれ……。」

 何ということでしょう。
 冬の霜を踏みながら歩いていたら、無事ではなさそうな少女が居ました。

(……人……?)

 確かに冬の未開拓領域の空気は散策したくなる位には住んでいるけれど、
 備えも無しに過ごしていたら洒落にはならないもの。
 せめて綺麗なドレスじゃなくて山行服位は無いと、命に関わる。

「あの……生きてますか……?」

 懐から業務用の貼らないカイロを取り出しながら近付き、状態を見る
 保険委員程の見識はなくとも、乗客の具合を診る為の状態の確認位なら自分での可能だ。
 

神樹椎苗 >  
 少女が近づき声を掛けるものの。
 まことに残念なことに、返ってくる声はありません。
 見事な行き倒れ、いえ、凍死体だったかもしれません。

 何かを指し示すように伸ばされた左手は。
 人差し指で、何かを書いていたようです。

『しにたい』

 ダイイングメッセージではなかったようです。
 遺言でしょうか。
 ただ幸い、行き倒れの背中は僅かに上下しておりまして。
 どうやら、息はしているようでした。
 

鶴博波都 >  
「え……」

 不穏な書き文字。
 生真面目なぽっぽやさんにとっては困惑と不安を覚えずにはいられない。
 そのままにしておけない。善意の一心で行き倒れの身体を起こします。

「死ぬのはだめです。
 事情は分かりませんけれど、お話なら聞きますから……その……。」

 鶴博波都は難しい事を考えるのが苦手です。政治も分かりません。
 でも自分より小さな子が、行き倒れて死にたがっているのは違う。

 何とかしなければ。
 その一心で、全身で冷えた幼子を暖めながら、声を掛け続けることにしました。
  

神樹椎苗 >  
 抱き起こされた幼い身体は、すっかり冷え切っていました。
 抱き起こしただけでもわかるほどに、希少な生地で仕立てられたドレスは、見るも無残な有様です。
 幼子の非常に整った顔立ちも、冷えて土気色となっていれば鳥肌ものでありましょう。

「う、うぅ」

 そんな幼子も、抱き上げられれば、ぶるりと震えて呻きます。
 どうやら意識が無かったわけではないようです。
 もしかしたら冷え切って動けなくなっていたのかもしれません。

「――は」

 うっすらと開いた瞳が、自分を抱き上げてくれている少女を見上げます。
 すると、土気色の表情が、強張りながら動きました。

「び、びしょーじょの、うでに、だかれて、しぬのは、わ、わわ、わるく、ね、ねーですね」

 凍えるように震えて強張りながら笑いました。
 どうやら、見た目と違って意外と元気そうですね。
 

鶴博波都 >  
 ひとまず返事があり、生きていることに安堵しました。
 ぷるぷると震える幼子の顔色は青を通り越して土気色。
 笑ったかと思えば、諦観のような言葉が返ってきました。

「死んじゃダメです! えっと……スタッフ!スタッフー!!」

 声をあげてみれど、誰かが来る気配はありません。
 散策にでも出なければ一晩中放っておかれるような場所ですから、
 人の気がないのはさもありなんです。

 そもそも、自分がスタッフでした。
 動転していた気を取り直し、強引に担ぎ上げます。

「私が使ってる列車がありますから、一旦そこに担ぎます。」

 補給線の維持のために駆り続けている深緑色の電磁列車。
 気が付けば、すっかり私物の様に扱っていました。

 抵抗が無ければ仮説の仮眠フロアに担ぎ込んで寝かます。
 ぼろぼろのドレスごと何重にも毛布で包み込んで暖めることにするでしょう。

「一旦最寄りまで戻りますから、安静にしていてくださいね。私の寮と病院、どっちがいいですか?」

 本人の意思は分からないけれど、ゲート前の救護室に寝かせるとまた荒野を彷徨いそう。
 一旦暖かい所まで連れ込んでしまうべきだと、強引に話を進めます。

「今から運転しますから、飛び降りちゃダメですよ。」

 仮眠室には重そうな腕輪と、ジャンルがバラバラな専門誌と飛び飛びの新聞紙が転がっています。

 メタラグと呼ばれるVRゲームの娯楽を取り扱った月間誌。
 ややマニアックな、格闘技のものと思わしき専門誌。
 ミュージシャンを名乗る不法滞在者の自首を大々的に報道している新聞紙。
 年の瀬の歌番組需要に備え、流行りの音楽をランキングしたと思わしき新聞の一面。

 どれもそれなりにくたびれており、
 休憩中に何度も読んだのだろうと分かるものです。
 

神樹椎苗 >  
「おぅ――列車。
 れっしゃ?」

 冷え切った小娘に、抵抗などとてもできるはずもなく。
 運び出されるまま毛布でくるまれて、ようやく朝の冷たい空気から逃れられるのです。

「あー――びしょーじょの部屋で」

 視線がうろうろ。
 問いには先ほどよりもしっかりと答えていた。
 案外放っておいてもよかったのかもしれません。

「はぁーい」

 そんな気の抜けるような返事を出来る程度には、少女の体温でもって落ち着いたようでした。

「――ぁー」

 ぼんやりと周囲を眺めれば、恐らくはこの列車とやらを動かす少女の生活の痕跡。
 どうやらこの仮眠室という場所は、少女が休憩するための場所のようだった。
 

鶴博波都 >   
「わ……分かりました。」

 冗談を言えるぐらいに元気になってきた。
 自分を美少女だと思った事は一度もないけれど、
 それで元気になるのならいいのかな。

 胸に複雑な感情が去来したが深く考えずに列車を動かす。
 この列車を動かすのも、勝手知ったるもの。

「音楽でも聴きますか?
 私はあんまり詳しくないので、ネットラジオの音楽局になりますけれど……。」

 何処に着くにしてももう少し時間が掛かる。
 場を保たせる為の、ささやかな提案。

 流行りの音楽を聴くにしても静寂のまま進むにしても列車は進む。
 学生街付近にある、めったに使われない業務用の駅舎に列車を止めれば、
 毛布に来るんだお姫様を迎える。
 体温を確かめながら抱きかかえることにする。

「少し埃っぽいですけれど、我慢してくださいね。
 その代わり、着いたら甘いココアを淹れてますから。」

 一瞬だけこのまま担ぎ込んで良いのか悩むものの、
 他に思付かないし何より場所を変えたら騙すことになる気がする。
 そう思えば深くは考えず、毛布に包んだ幼女を女子寮に運び込む込みます。
 

神樹椎苗 >  
「あぁ、い、いいですね。
 きがま、まぎれます」

 ガタガタ。
 美少女のあったかな抱擁で(おおげさなひょうげん)少し元気になりはしましても。
 身体が冷え切っている事には変わりなく、車両の外との温度差に、冷えを思い出したかのように震え出しました。
 生理現象ですから、仕方ないのでした。

 ぼんやりと、若干朦朧とする意識で流行りの曲を聞き流しつつ。
 時折、苦手な女(超売れっ子)の曲に眉をしかめたりしながら、再び抱きかかえられるまで、静かにしていたでしょう。
 というよりは、寒さに震える以外に出来なかっただけでありますが。

 優しく抱き上げて貰えたなら、その体温はやはり、まだ著しく低温となってるのがわかるでしょう。
 とはいえ、病院は嫌なものですから、その腕の中で少女に縋りつくようにするのです。
 あるかわかりませんが、生存本能という物かもしれません。

「んっ、甘いものは、すきです」

 震えつつも、少女の体温を感じられるように、自分からも身を寄せます。
 それは幼い子が、甘えるような仕草にも見えるでしょう。
 そうして、少女に身を任せ、運ばれるままに部屋まで連れていかれる事になるのです。