2025/01/26 のログ
鶴博波都 >    
 早朝の時間帯と言うこともあって、特に問題もなく部屋の中へ。

 ルームメイトもおらず、遊びも少なくかわいさも無い部屋は年頃の女子からぬもの。
 棚の中の雑誌や書類のジャンルは薄く広く学業の参考書と同列に並べられており、
 置かれているパソコンやVR機器やゲーム機も使用感の無いもの。
 
 自炊の痕跡は電子レンジやケトルで湯を沸かす程度。
 乾ききった調理器具は、長らく食器棚に仕舞い込まれている様に見えます。

 予備のマグカップを食器棚から取り出してから水で洗い、
 普段のマグカップをシンクから取り出して、ココアを淹れるために並べます。
 少し高そうな、缶入りの粉ココア。

「お待たせしました。……えっと……まずは呑んで、ゆっくり暖めてください。」
 
  

神樹椎苗 >  
 少女の好意に甘えるまま、少女の部屋へとまんまと侵入する行き倒れ。
 正直に言ってしまえば、殺風景な様子に眉をしかめるものの。
 そこに文句をつけるほど、無礼ではなかったのは幸い。

「――あぁぁ~」

 冷え切った手で直接持つと、確実に痛いので、毛布越しにマグカップを両手で包むように持ちます。
 すると、伝わってくる熱がじわじわと、凍りかけていた手をほぐしてくれました。
 思わずだらしない声が出るのも仕方ないのです。

「ほにゃぁぁ」

 普段なら出ない声が漏れ出ておりますね。
 手からじんわりと暖まって。
 その代償に温くなってしまったココアを、ようやくちびっと、舌先で舐めます。

「――はぁぁぁ~」

 あまりにも幸福そうな声が飛び出ました。
 温かさと甘さで多幸感が爆発です。
 表情がすっかり蕩けきっていました。

「はぁ――てまを、かけました」

 そう、やっと口に出来たのは、何口か、ちびちびと舐めるようにココアを飲んだ後です。
 寒さで強張っていた表情も、寮の中の温かさにようやく解れてきたようで。
 ほんの少し恥ずかしそうな表情で、少女を上目遣いに見上げながら、また小さな舌先でココアをちょっとずつ舐めるように飲みました。
 耳でもあれば、まるで子猫、捨て猫でも拾ったかのような心地になるかもしれません。
 

鶴博波都 >
「ふふ。」

 マグカップの熱を受けて、解れたような蕩ける声。
 子猫の様にちびっと舐めて、暖まる仕草。

 可愛らしく思えば、無意識のうちに笑みが零れるもので。
 動物を飼った記憶はないけれど、子猫を飼ったらこのような感じなのかな、と想起するもの。

 ほんの少しだけ鉄道委員の後輩のことを思い出したけど、
 よく考えたらしっかりものだと思い直します。

「ん……私は気にしてないから、大丈夫です。
 話せたらでいいんですけれど……その、何かあったんですか?」
 

神樹椎苗 >  
「――んに」

 少女の問いかけからのお返事には、鳴き声が返っていきました。
 ますます猫っぽいかもしれません。
 まあ、数日前は子狐だったのですが。

「んと――べつに、大したことじゃ、ねーんです。
 ただそう、仕事がありまして。
 接待が、ありまして。
 ふっ――あのロリコン親父ども」

 段々、見上げていた視線が落ちて行って、表情が暗くなりつつ。
 あっという間に、光を失ったような諦観の瞳に、自嘲するような笑み。

「ふ、ふふ――いいんです、今の仕事は大事ですから。
 クソロリコン共にベタベタ触られて、セクハラされて、そんな連中に媚を売るのが、しぃのくそみてーな大事な仕事なんです。
 はっ、情けなくて涙もでねーですね」

 と、どんどん表情が死んでいってしまいます。
 そのお口の悪さや内容から、本当に不愉快な思いをしたのが伝わるかもしれません。
 それゆえの、『しにたい』気分だったのでしょう。

「まあ、いいんです、ええ、いいんですよ。
 髪を舐めてきたクソ野郎はその内ぜってーぶちのめします。
 どクズどもめ――ラブドールにでも大人しく突っ込んで腰振ってりゃあいいんですよ」

 幼い少女から飛び出してはいけない言葉が出るわ出るわの大惨事でございました。
 普段なら我慢して黙っている事まで、普段より弱っているせいか、ぼろぼろと小さな口から飛び出していくのです。
 

鶴博波都 >  
「……。」

 微笑ましく感じたのもつかの間。
 衝撃的な身の上に、左手で自分の口を抑えます。
 
 想像より上のもの。
 口に出すのも憚れるような接待と、その不快。
 『しにたい』と思うことを止められないだけのもの。

「……ぶしつけに聞いてしまって、ごめんなさい。
 その……死んででほしくはなくて。話すだけでも楽になるかなと思ったんです……でも。」

 口から出たものは謝罪の言葉。
 無遠慮に踏み込み、不快感を思い出させてしまったと感じたのでしょう。
 自分では解決のできないもので、話して楽になるどころか不快になるもの。
 怒りのようなものが生きる活力になれば、みたいな周到な考えはなかなか出来ない。

「ちょっとおいしいものでも食べていってください。
 出前でも、取っちゃいましょう。なにかたべたいもの、ありますか?」

 おいしいもので元気になってほしい。
 素朴だが、彼女なりの精一杯の提案。
 

神樹椎苗 >  
「あぁ~、いーんです、ほんとうに。
 あのままだったら本当に凍死してましたし。
 まあ、久しぶりに死にたい気分ではありましたが」

 そう言った時には、また緩んだ子猫の顔。
 ココアは甘くて美味しいのです。

「憂さ晴らしに軽く暴れに行こうと思ったんですが。
 その前にうっかり力尽きちまいまして、あのザマです。
 お前のお陰で救われましたよ、『ぽっぽや』」

 ゆるりとした、懐っこい子供らしい表情で微笑みながら、少女に感謝をするのです。
 死にたい『気分』だったとしても、今はもう無暗に死にたいわけでもない。
 当然、自殺となれば――今となってはそれを繰り返していたのも昔の話なのです。

「ん、そんなに気を使わねーでいいですよ。
 むしろ、しぃが礼をするべきですし。
 んん――体も少し動く様になってきましたし」

 凍えていた体は、何とか体温を取り戻しつつありました。
 これもそれも少女のお陰なのです。
 ふにゃん、と笑って少女の行動をふわりと留めます。

「あー、でもそうですね。
 少し甘えていいなら、もう少しここにいていーですか?
 あと、あー」

 そう我儘を珍しく控えめに言いつつも。

「ドレス、脱がしてもらってもかまわねーですか?
 これ複雑でクソったれなんで、はさみか何かで斬っちまっていーですので。
 霜が溶けてずぶ濡れで、きもちわりーんです」

 やっぱり、あっさりと我儘を重ねていくのです。
 

鶴博波都 >  
「それなら……。」

 憂いながらに視線を落とし、誤魔化すようにココアを飲む。
 ココアの甘さと暖かさで人心地付いて、気を取り直した。

「……うん、良かったです。着の身着のまま転移荒野を歩くのは大変ですから。
 暫くここに泊まって、休んでいってくれたら私も安心です。ええと……
 ……私は鶴博波都です。名前、聞いても良いですか?」

 視線を戻す。しにたいと言っていた子は大分活力を取り戻しているように見えた。
 精神的なことは分からないものの、病院に連れ込むほどの重体でなくて良かったと素直に思う。

「分かりました。ボロボロですし、拘る必要もないなら切っちゃいましょう。
 良かったらシャワー浴びていってください。その間に着れそうな衣類とインナーを探してみます。
 大きくなるけど、ワンピースとキャミソールならないよりマシだと思うので……。」

 裁縫用の鋏を取り出して丁寧に衣服を切りながら話を続ける。
 オーバーサイズも良い所でもないよりは良い筈だ、と。

「要所を切りました。後は引っ張れば脱げると思います。
 シャワーはここから左手の脱衣室の奥です。アニメティもタオルもあるものを使って大丈夫です。」

 

神樹椎苗 >  
「む、しばらく泊っていーんですか?
 ふむ――ならそうさせてもらいます」

 なお、この外見幼女も女子寮住まいなのだが。
 ここは言わぬがなんとやらだと思うのでした。
 それに、他人の部屋に居座るのは好きな事の一つなのです。

「知ってますよ、鉄道委員の。
 しぃは、かみきしいな。
 神なる樹木、椎の樹の苗と書いて、神樹椎苗です。
 よろしくですよ、『ぽっぽや』」

 実は普通の人間よりもいくらか丈夫なのです。
 それが災いして、只管、凍えて行き倒れる事になったのでしたけれど。

「おー、思い切りがいいですね。
 好きですよ、そういう勢い。
 しぃが着てるモノを見ると、大抵、一歩引かれますからね」

 それもそのはずでしょう。
 普段から一点もの、特注のオーダーメイド――それもハンドメイドしか着ないのですから。
 素人でもわかる高価なものを着ていれば、それを切っていいと言われても、気が引けてしまうのが大多数でしょう。

「気遣いもありがてーです。
 ただ、ちょっとじじょーがあって、シャワーはむずかしーですね」

 そう言って、マグカップを一度、身体を引っかけない所に置いてから、もぞもぞと少女に近づきます。
 脱がしちゃってくれ、と言わんばかりです。

「――あ。
 ちょっと驚くかもしれねーですけど、気にしなくていいですからね」

 脱がして、とは言いませんが、明らかに脱がしてもらうつもり満々でした。
 しかし、少女には不運な事に。
 椎苗のドレスを脱がせば、露わになるのは、首から下、腰骨までを包帯でぐるぐる巻きにしてある姿なのです。
 

鶴博波都 >
「うん。どうせ一人部屋ですし……。」

 子猫みたいな感じがほっとけなくて、ここで休んで欲しい。
 これ以上話を聞くのはこわいけれど、なにかしてあげたい。

 そんな思いで、何も聞かないことにしたのでしょう。

「はい。『鉄道委員』のぽっぽやです。
 神樹椎苗ちゃんですね、。改めて、宜しくお願いします。」
 
 ぺこりと頭を下げる、鉄道委員の赤い髪の少女。
 丈夫であることに気が回らないぽっぽやは、特段疑問を抱かず受け容れました。
 
「確かにそうかもしれませんけど……。
 もうボロボロですし、着ているのも嫌だと思いましたから。」

 高級な衣装を見慣れている、と言わんばかりの不思議そうな顔。
 鋏の入れ方も、手間取るのことのないスムーズなものでした。
 服飾の技術は学んでいないので、感覚によるものです。

「ひっ………あっ、ごめんなさい。びっくりしちゃって……。」
 
 促されるままにドレスを別けるように脱がします。
 切れなかった装飾や留め具をかわしながら脱がす手つきは慣れたものですが、
 それが却って心の準備をする暇を与えませんでした。

「これでよし……感覚がなかったり、痛むところはありますか?」

 全身包帯の姿は、普通の少女にとっては衝撃的なもの。
 反射的に怯えた声をあげてたことに謝りながら、衣装を脱がし切りました。
 

ご案内:「Free2 傍若無人とぽっぽやさん」から鶴博波都さんが去りました。
ご案内:「Free2 傍若無人とぽっぽやさん」から神樹椎苗さんが去りました。