2024/06/09 のログ
ご案内:「「とこコレ!」会場」に長身の匿名モデルさんが現れました。
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ご案内:「「とこコレ!」会場」から長身の匿名モデルさんが去りました。
ご案内:「「とこコレ!」会場」にハイヒールの匿名モデルさんが現れました。
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長身の匿名モデル >  
 
 
―――「LIBERTY(リバティ)」。
 
 
 
芸術学部生徒によって発足した少人数部活。
服飾デザインおよび縫製、販売を行う。
少し手の出しづらい高級路線(ハイブランド)でありながら、
明確なコンセプトのもとに制作される尖ったデザインの制服は、シーズンごとに一定の人気を博している。
発足四年目。卒業後に欧州圏への招聘も決定している者たちも多い実力派集団。

然し――部員の性格の終わり方が軋轢を生んでいる。
発足一年目のにおいて既に片鱗は見えていたが、
二年目に言い放った「黙って私達の服に着られてろ」という言葉によって、宣伝モデルの生徒たちと決裂。
製品の人気と反比例して、周囲からの部員たちの評判は悪く、
今年度から開催される新規イベント「とこコレ」という晴れ舞台の開催直前に至っても、
新製品への期待をよそに、共同作業者であるモデルが捕まらない事態に陥っていた。

彼らが執った最終手段――それは外部からのモデル(・・・)の雇用だった。
製品を宣伝するための(こえ)が出るマネキン――
そうして雇用された、コンテストに参加しない匿名モデルを利用したプロモーション。
本土の無名な零細芸能事務所との契約のもとで、
冠した名に対して、自業自得の不自由(コンストレインド)のなかで打ち出した苦肉の策。
ミス/ミスターコンテストという、投票――競争の面白みを付与しない、不利を背負った勝負。

長身の匿名モデル >   
直前の手番を担当した生徒たちが、背中に黄色い歓声を浴びた直後。
会場が暗転する。

吹き上がるスモークを背後から照らす青白い光が、薄闇のなかにふたつのシルエットを浮かび上がらせる。
硬質で冷たい空気。まるで、そこは――アルカトラズ島の監獄(・・)のようだ。

BGMも、閉塞感を感じさせる、周囲から迫る立体音響。
囚人たちの行進と整列を思わせる、動と静の緩急が明確な、重々しくも規則的なパーカッション。

スモークが、晴れる。
それを突き破るのは――まず、(こえ)だ。

ハイヒールの匿名モデル >  
熱いくらいのスポットライトが瞼を焼く。
数か月ぶりの感覚に汗ばむ手をグッと握って声を張る。

「━━今しかないこの瞬間(とき)に」

■■■ >  
かつて――『大変容』起こるより、ずっと、ずっと前のこと。
映画がはじめて音を手に入れたとき。
観衆は、沈黙を破ったその第一声に――
あまりに有名すぎるそのフレーズが起こした波に、魅了されたのだ。

心をつかむには一声で十分(・・・・・)
鮮烈なチカラで、その心に訴えかければよい。
磨きに磨いた金剛石の武器(・・)でもって、歓心を攫う。

長身の匿名モデル >  
背中合わせの影はしかし。
なにひとつ迷うことも恥じることもなく――照応する。

「新世界の、その未来(さき)へ」

ハイヒールの匿名モデル >  
一呼吸、場内の熱が伝播するその瞬間にアイコンタクトを交わし、
突き出した人差し指を地平の果てを指し、寸分違わぬタイミングで響かせる。

「「解き放て!!」」

フェミニンで柔らかなデザインの制服と、ジャケットスタイル。
対照的な二つの印象を与える二つの衣装に輝くエンブレムは服飾部活「LIBERTY」。
翼を模した自由のロゴを纏った二人が紡いだのは、待望の新作のキャッチコピー。

首元に、腕に、脚に。
輝きを跳ね返すシルバーのアクセサリーは、制服に似つかわしくない拘束具のモチーフ。

爆発音を伴うエアバーストの演出を背に、二つの対照的な影が歩き出す。

長身の匿名モデル >  
ジャケットとスラックスを基調に、硬質なメタルフレームのスクエア眼鏡。
男子向け(・・・・)の制服を身に纏っていた、性別不詳の立ち姿。
顔立ちからも中性的な風格を持つそれは、片側に寄せたアシンメトリーの黒髪の毛先を揺らした。

本体は制服としての機能をしっかりと備えながらも、付属している各種のメタリックかつパンクなアクセサリと完全な調和を取る。
カジュアルとフォーマルの表裏一体。無限のカスタマイズ性を誇る入魂の最新作。

膝同士を結ぶ長いレザーのストラップ。そして無造作にポケットに突っ込まれた両手のリストからは、輝く鎖が左右を繋いでいる。

当然――ローファーにも金属質な装飾とソールが施され、がつん、と甲高い音とともに一歩を踏み出した。
舞台より観客を見下ろす。煽りの構図。どの角度からでも、完全なる精巧さを示す非凡なる顔貌(ルックス)
きつく引き結んだ口元。立ち姿は、知的(インテリ)抜け目のない(スマート)
炯々と灯る蒼い(・・)眼光は、狩猟動物(オオカミ)めいた危うげな輝きを湛えている。
戒めのなかで雌伏しながら、刻一刻とその時を待つ――叛逆者(リベレイター)がそこにいた。

ハイヒールの匿名モデル >  
キメ細かな刺繍柄の入った白のブラウスは清楚さを。
ステージ上では危うい程折りに折ったミニ丈のパニエスカートは露骨なくらいに扇情的に。
黒のリボンタイを添えて丈を元のままにしっかりと着れば制服としての外観を保てるそれを、清々しいくらいに着崩す(アレンジする)
女の子が気合いを入れて誰かに見せたい(魅せたい)、そんな勝負服として、制服を飾り立てる。

そうして仕上がった制服の輝きの上で、歩みの度に並び立つ狼とお揃いの鎖がジャラリと揺れる。
歩調を揃える為にやや大きく踏み出す一歩一歩は大きく、スカートの裾が揺れる事も計算づくで、堂々と。
可愛くて、綺麗な服を、私を見ろと主張するように。
しかし、それらの一歩一歩は可愛さだけでなく、飾り立てる銀鎖によって引き締められる。
可愛さ、美しさのその先の情欲を煽るインモラルさを、惜しげもなくひけらかしていく。

照明の白に負けない濃さのチークの上でに輝く瞳でステージを見上げる瞳を視線で撫でていく。
憧れて焦がれて、こっち側に来たくなる(着たくなる)ように。
モデルは笑わない。その鉄則を、踏みにじる

より対照的に、引き立て合うように。
そう長くはないそのランウェイで、めいいっぱいに。

長身の匿名モデル >  
かたや蠱惑の小悪魔が。かたや冷徹の知能犯が。
そうしてともに並び立ち、脱獄(かたやぶり)でもってその威を示す。

やおら、拘束された両腕を前方へ伸ばす――鎖が重力に従って逆さの三日月を描いた。
そして、思い切り腕を開いた。鎖が音を立てて引きちぎられた(・・・・・・・)

()はスピーカーから放たれた。演出だ。

重力に対して高性能の物理演算装置が内蔵されたホログラフィック投影機能搭載のブレスは、触れ得ざる幻想の鎖を演出する。
そうして解放された両手は、窮屈にぴったりと湿られたジャケットのボタンを外し、脱ぎ捨てた。
夏用の黒いワイシャツに、女性的なシルエットが浮かびあがる。
袖口から伸びた引き締まった前腕は、黒服にしまい込まれていた時とは一転、生物的な躍動を魅せた。
隠された色気は、暴いて見せつける相手を選ぶ、シックにキメるオトコの嗜み。

隠されていた牙を剥く――
そして、ばさりと音を立て、肩にジャケットをかけたまま踵を返す。

ついて来い(・・・・・)。その勇気があるのなら――

誘うのではなく、導く。しなやかに堂々と、知性の獣は還るのだ。

LIBERTY(自由)という名の闇のなかへ。