2024/06/29 のログ
ご案内:「学生通りのどこか」にシャンティさんが現れました。
■シャンティ > 学生通りのどこか――
さり気なく、自然に、そして目立つことなく
その建物は存在した
平生であれば見落としてしまいそうな、その建物の前に女は立っていた。
女がいなければ、気が付かなかったかもしれない。
女はあなたをいつもの笑顔で迎え、
大きくも、小さくも見える奇妙な建物の内へと案内する
■シャンティ > 本棚が、並ぶ
どこまでも続いているようにも、すぐに終わってしまうようにも見える
置かれている本の背表紙を見れば、今見た本が別のタイトルに変わったような気がする
気づけば、気になる本が増えているような気がしてくる
――女は、迷わず前を行く
歩いていけば、真っ直ぐなようで曲がっているような気がしてくる
進んでいけば、登っているようで下っているような不思議な感覚を味わう
―ー女は、迷わず前を行く
「さあ……どうぞ?」
奥の、一室へと招いた。
ご案内:「学生通りのどこか」にノーフェイスさんが現れました。
■ノーフェイス >
――こんな場所あったっけ。
何度も通ったはずの場所でさえ、有無の如何を悩むほど。
それなりに風景も人々も視ているほうだと思うのに。
日陰のような彼女が立っていることで、ようやく文脈を得たようだ。
そうしてやっと成立できるような、そんな文脈だと。
「やほ」
手をあげて軽く挨拶。いつもの調子。
そして導かれるがまま続いた。
いつも引っ張り回すんだ。それを嫌だというような自分ではない。
紙とインクと、それが時間を経てうまれるにおい。
空気。
じぶんは――本は読むほう、であるらしい。
好きでなければ読まないという考えがしばらく理解できなかったのを覚えている。
気になったものは迷わずに本棚から引き抜いた。
片手で抱えられる程度に我慢しておいた。
前後関係、歩き方が叙述されない。
どう歩いて進んでいるか、ここでは関係がないようだ。
大切なのはここにいるのが彼女とじぶん――であるということ。
そして、
「ああ、うん」
本を抱えたまま、体が傾く。
半身を本棚に預け、ぴんと伸びた軸足に、浮かせた足を交差させて。
画になる仕草、訝る表情。
「ここドコ?」
解答にはなんとなく予想はついてるのだけど。
本人の言葉で頸を刎ねておいてもらうことにした。
■シャンティ > 「―ー此処?」
振り向いた格好で、小さく首を傾げ言葉を返す。
そんなもの、もう自明であるでしょう? とでも言いたげに
「でも……そう、ねぇ……
答え、る……なら。此処、は……私、の……本棚。
そし、て……其処、は……私、の……置き場。
と、いった、ところ……か、しら……ね?」
手を広げ、演劇じみてくるりとその場に回って見せる
そして、示した先の其処、は――
何もなかった
「遠慮、なく……どう、ぞ?」
いや――
正確には。
扉も、床も、壁も、ある。
ただ、それだけ
肝心ななにかがすっぽりと抜け落ちていた
■ノーフェイス >
「そうだろうさ……」
苦笑が浮かんだ。
だが、そうとわかればキャップを取った。
軽く揺すって、流血のような髪がまっすぐに揃う。
「ミニマリストにも限度ってモンがあるんじゃなあい?」
キレたとこ棲んでんなあ、と思った。
無法地帯にアジトを築くという反骨とはまた違った。
「――おうちにご招待なんて大胆じゃん、お姫様。
床ですると体痛くなるからな~……。
たとえば、」
遠慮なく足を踏み入れた。重ねた本の上にキャップを乗せて。
「そこには」
ひとさし指を立てた手を、魔術のように。
「本狂いの住処らしい、
烏檀木の読書机とリラックスできるソファ――
はじめて覗く、シャンティ・シンの日常の風景が、
つね日頃どのように時を過ごしているのだろうかと想像を働かせてくれる」
くるり、と同じく芝居がかった所作で振り向いて。
「とでも描写すれば、ひょこっと生えてきたりしない?」
お茶も持ってきてんだけど、と肩を竦めた。床に座れと……?
■シャンティ > 「あら、あら……」
くすくす、と笑う
「大きなつづら、を、選、んだ、ら……
魑魅、魍魎……が、現、れる……かも、しれ、ないわ、よぉ?
お客、様?」
手に、いつもと違う本が現れた。
重厚で、歴史の重みが感じられそうな……
まるで遥か古代から伝わっているかのような
「此処は、此処は、遥かなおとぎの国よりも、近くの退廃の街よりも
小さく、乾いたお部屋
お客様は言いました
床には敷物を
窓には窓帷を
上には立派な読書机を
横には素敵なソファーを
物語を紡ぐに相応しい舞台を
これは……我が書に記されし……真実の一遍なり」
謳うように、紡ぐように
女が言葉を口にする
すると――
■シャンティ >
まるで、最初からそこにあったかのように
それとも、今まで幻を見ていたかのように
思い描いたような、部屋が其処にあった
■ノーフェイス >
首をかしぐ。見つめたるはその書物。
普段のおしゃべりとは違う滑らかな謳に聴き痴れるよう。
幻出した――ならば思い描いた室内の様相に。
ほう、と感嘆、見渡すように、くるり――
スニーカーの柔らかい踵を打ち、つま先を彼女のほうに揃えてから。
ひゅう、と茶化すように口笛を吹いた。
大道具――高らかと名乗るに偽りなしの技芸である。
彼の大劇場を思えば、ほんの一端でしかないだろう。
「フライングだったかな」
道化のように大げさに、身をすくめて罰を恐れる姿。
べえ、と赤く長い舌を出してみせた。切られるのはごめんだ。
「気分ひとつで模様替え、なんとも現代的なお部屋でありますこと~。
お邪魔します――ああ、これ。このまえゆってたヤツな」
ソファの左側にすとんと腰かける。
座り心地は上等のハズ――抱えた本の束をテーブルの上。
そして、ショルダーバッグを体の前面にずらすと、一冊の本。
闇市場に流れる品だ。厳密に封がされてるので中身は視てない。自分も知らない。
雑談の種にあがるような代物で、おみやげだ。市場には自分も顔が利くので。
■シャンティ > 「今日、は……特別。
あなた、ってば……こう、いうの……こだわ、るの……だ、ものぉ」
虚無の部屋の主は、小さく首を傾げながら右手の人差し指と中指を小さく動かす
ちょきん――
そんな音が響きそうな
「ああ――これ、ね……ふふ
素敵、な……本、ね……きっと」
ソファの右側に座り、くつくつと女は笑った
「いい、わぁ……ふふ。気に、なる……本が、増えて、きた、しぃ……
あぁ……でも」
今にもその本に触れようとしたが……ぴたり、と動きが止まる
「……これ、だけ……か、しら?
まだ、なに、か……あった、り?」
小さく首を傾げて見せた
■ノーフェイス >
唇を閉じて舌を巻く。ぷるるる、と音を立てた。
舌使いも慣れたもの。声を武器にしているがゆえ。
「どんな環境にも適応できるのがニンゲンって生き物だけど、
日頃どういうものに囲まれて過ごしてるか……そーゆーの、けっこうだいじなんだよ。
アジトごとに様式は変えてるし。
むしろキミはよくオーダー通りのもの、出せるよな……」
あの書物、いったいどうなっているのやら。
自分では使いこなせる気がしないのは確かだ。
何に使うんだそんな禁書、という疑問は口にしない。
読むだけでも満足するタイプだろうし、的外れだとはわかっていた。
「ん?」
これだけ、と問われると。
バッグのなかにはペットボトルのお茶。言った通り。
「キミ、お菓子とかは――、ああ」
あまり食には拘らない相手だ。だからあんなに軽い。
その疑問にそんな言葉を返したあとで、はたと気付いた。
「このまえの用件?
うやむやになったもんな……ケガ、どう?」
■シャンティ > 「そ、う?
私、を、囲む、もの……なん、て……其処、が……あれ、ば……十分、よぉ?」
扉の外
先程の異様な空間に並ぶ書棚のことを示し
「ふふ……なん、なら……なく、ても……此処、に、あるの、だ、けれ、どぉ」
そういって、右手の人差し指は女自身の頭をとんとん、と打つ。
まるで、書棚すら飾りに過ぎない、とでもいうように
「お茶、は……出さ、なく、て……よさ、そう、ね。
おもて、なし……しな、くて……いいの、は、楽、ね?」
くすくすと笑う
そもそも、ティーポットどころかお湯や水を調達する場所があるかも怪しい室内。
本当にもてなせるのか
「け、が……?
ん……うご、かせる、し?」
手のひらは出ているが、まだ固められたその腕を動かして、女は答える。
しかし、以前のままであれば完治はしていないはず、である
「へいき、だし……前の、話……聞かせ、て……もら、って、いいの、よ?」
■ノーフェイス >
「脳領域にある宮殿……キミのは特にいっかい覗いてみたくはある。
蔵書量だけでなくって、その内装もね」
獄中の名探偵ってガラじゃなさそうだけど、と彼女をみつめた。
真相を解き明かしたいなんていうタイプでもないだろう。
「そ、……」
そういうタイプに会ったよ。
と言いそうになって、口をつぐんでからペットボトルの蓋をあけた。
レモンティーを含む。自分が彼女に言った言葉と、そういうタイプに殺されかけたから。
喉を潤す。
「食べ物も出せるのか……そーいえば。
ないと思ってたからもってきたんだ。キミは?いらない?」
考えたことなかった。うそだ。考えないようにしてただけだ。
「固定されてるならあーんまり動かすなよ。
へんなふうにくっついちゃったら後が大変なんだからな」
横目で。
そして、顔を向けてから。
大丈夫そう、といえばそうだ。
「……そか、いや、このまえのは――」
と、視線を斜め上に動かしてから。
「――――」
■ノーフェイス >
「――いつになるかはわからないケド、目処がつきそうなんだよね。
だから、将来のことをいろいろと……
キミとは、相談しとかないとなって」
ちゃぷ。
減ったボトルのキャップを閉めて、デスクの上にそっと置いた。
事もなく。当たり前のように。
■シャンティ > 「ふふ……見て、も……いい、もの、は……多分、ない、わ、よぉ?
特に……あなた向け、には……ね」
小さく首を傾げ、くすくすと笑う
無数のノイズの海と、一握りの陸
探偵は海の溺れるのか、陸にたどり着くのか
はたまた……
「いた、だく、わ?
一人、だと……億劫、に、なる、もの」
それは何に対してか
いつの間にか現れたカップを手にして、女は微笑んでいた
そして――
■シャンティ > 「ああ――」
小さな吐息が漏れる
なんとなく、想像はしていた
なんとなく、予想はしていた
その、言葉
この相手は、そういうことをする存在だ
だからこそ、見つめていたいと想ったのだし
「そう、なの……ね。
それは……相談、しないと……よ、ねぇ……」
そして、右……はやめて、左の手の人差し指を唇に当てる
何かを思案するように……
「な、ら……私、も……考え、ない、と……か、しら」
ぽつり、とこぼした
■ノーフェイス >
彼女に語った理想を実現するなら。
その必要がある。それだけの話だった。
眼を輝かせはしない。ただ、切符を手にしただけ。
価値を示したがゆえの。
「…………」
視線を横目に。
そのあと、ソファのうえであぐらをかいて。前をみつめた。
「キミには感謝してる」
ふ、と息がこぼれた。
ほんのわずか。ほんのわずかな時間。
十代半ばからすれば、長過ぎるほどの。
「ボクにはなんもなかったから」
あの劇場なんて、大きすぎるくらいの。
でも、――――。
「…………」
考える。
自発的な意思。
言葉は告げず、あなたのほうを向いた。
その言葉のつづきと、奥意を、うながした。
■シャンティ > 「ふふ、いい、わぁ……それぇ……あ、は」
物語が好きだ
他人の人生が好きだ
輝いていく姿が好きだ
濁っていく姿が好きだ
この先の、この相手の人生はどうなっていくのか――
ああ、楽しみで仕方がない
どちらにころんだとしても
「なんに、も……ね、え?」
くすくすと笑う
くつくつと笑う
そんなことはありえない そんなことはまちがっている
だって
「あなた、には……熱、が……あったの、では……なく、て?」
理想とも 夢とも 人は言うかも識れない
その、ただ一つ輝ける何かを追いかけようとする、その意志
「……あ、ら……聞き、たい……の?
どう、しよう……か、しらぁ……」
小さく、首を傾げる
此処で、語るべきことか
物語の些末ではないか――けれど
「そう、ねぇ……ふた、つ……
ひとつ、は……あなた、への……贈り、もの……
ひとつ、は……私、の……先
その、ていど……よ?」
■ノーフェイス >
「どうだろう」
天井を見上げた。
熱はあった。熱しかなかったといえた。
何をするにも自分ひとりでは足りなかった。
だから求めた。最初は場所を。そこに誰かがいることは想定の外だった。
「必死だったのは確かだよ。
どうすればいいかなんてよくわかってなかったからな」
なにひとつ保証のない旅だった。
これから先どうなるかわからなければ動けません、
と言っていたら、なにもはじまらないことが確かだった。
「こんな場所に辿り着くなんていうのが、そもそも予想外だったし。
……望外のことも、もちろんあった」
たとえば、と横目。
それこそ。
「ただ、そうだね。……そうだ。
魂の羅針は、ずっと理想を指し示してた。
それは間違いなかった。それを確かに、強固にする時間だったかな」
磨き続けた。研ぎ澄まし続けた。
……それは、それだけで終わることもないのだ。
突き立てなければならないのだ。
「語れるのなら」
ふたつ。
餞は、ともかくだ。
もらいすぎているくらいだから。
「キミのことは、気になるさ」
■シャンティ > 「ふふ。私、は……ね。
大道具。舞台、を……整え、るの、が……オシゴト、な、の」
それは、演劇だろうと、人生だろうと変わらない
ただ、そこに酌むべき物語があったのなら――仕事をするだけだ。
それが、外野である自分の仕事
「たとえ、たどり、つけな、かったと、して、も……
いい、え……一生、つかめ、なか、ったと、して、もぉ……
あな、たは……星、を……求め、る、のだと、思う……わ
だから、幕が、上がった……それ、だけ……の、こと。」
演者が演じなければ、始まらないように
人生も、進もうとしなければ停滞するだけ
それはもうよく知っている
幕開けとなり、つかめるものをつかんだのは演者の功績なのだ
「……そう、ね。」
一つは、語るべくして語ること、だろう。
もう一つは?語るべきことだろうか。
今、この時に?
■シャンティ > 「そう、ね……贈り、もの、は……
あなた、が……羽ばたく、とき、が……いい、か、しら……ね?」
くすくす、と女は笑った
何かを、考えついたように
「それ、と……先、ゆき。
あなた、が……あなた、の……道を、行く、のは、ええ。あなた、の、自由。
その、あと。私が、どうする、か……これ、は……考え、ないと……だ、わ?」
熱を 輝きを 失ったのなら
他の光を、曇らせるのか、輝かせるのか
それとも、はたまた
「そう、なる、と……あの、舞台、の……こと、も……考え、ない、と……ね。
そろ、そろ……」
ほんの少し、遠くを見るように
■ノーフェイス >
「辿り着くために……でも、辿り着いたら、またその先へ。
理想は追いかけることに意味があるんじゃない。
……実現するために生きなければ、意味がない」
――自分の生にも。
そして、野望にも。
夢の残骸に成り果てる可能性を、常に孕みながらも。
ショットガンをくわえるのは、ごめんだ。
「そのあと……?」
首をかしぐ。
「思ったより、キミのなかでおおきい存在になってたのか、ボクは」
まえをみた。
すこしばかり、気になった部分だ。
数多くある娯楽のひとつ。そんな程度かと。
そうあることを望んでいた。ノーフェイス。本当の名ではない。
記号的なものを求めたのは個人という実像を他人に与えないためでもある。
「……………」
考える。
すこしだけ、息を吸って、吐いて。
そして。
「……これからも、変わらずに」
―――息を吸って。
■ノーフェイス >
「…………」
沈黙ののち。
「胸に抱いた造花になぐさめてもらう日々を過ごすのか」
…………絞り出すように。
吐き出した。
「――そのあとも……?」
■シャンティ > 「あは、あはは、ふふ、ふふふふ、あはははは」
わらう 笑う 嗤う
女が、笑った
強い 強い 意志
曲げず、折れず
夢を騙るのではなく、野望のままに燃える理想を抱く言葉
嗚呼、なんと輝かしいことか
「そう、ねぇ……
私、が……見た、物語、の……中、では……とて、も……良い、線……だわ?」
まだ、噛み締めていられる
どこまでも、しゃぶりつくせる
その意味では、存在としては大きいのかも識れない
それより、なにより
「あの、場所を……貸し、た……の、だ、もの。
あれ、は……本当、なら……終わった、モノ……
終わる、べき、モノ……私、の……恥」
本当であれば、跡形も無くすべきだった
それが、終わるということ
それすら、できなかった。自分の恥ずべき過去
「……?
ええ、そう……ね。
いつもの、ように……変わ、らず……に。
平穏……と、いう、の……かし、ら?」
それが、自分の生き方なのだから
それが、自分にふさわしいのだから
■ノーフェイス >
身の丈にあった生き方。
彼女は彼女自身をわきまえている。
……そう、言いたいように聞こえた。
その森に踏み込んで、時に膚を切られながらも、常々。
欠けて、失くした彼女に、これ以上なにを求――
「共感」
視線を向けた。
そういう瞳だ。言葉より燃えていた。
「憧憬、そして夢想」
あのとき。
――とられた、と感じて歪んだ心が。
とらえきれなかった部分。
「だったよな」
時計の音すらない場所で。
「教えてくれないか」
じきに針が終わりを指し示すなら。
「灰のしたには、なにが眠っているの」
すぐ間近、傍らに、相手をみつめた。
恥。終わるべきもの。
自分が――意図せずして永らえさせてしまって。
終われなかったものが、ここにいるのか。
■シャンティ > 「……………」
沈黙
いつも笑ってばかりの女が
いつもはぐらかしてばかりの女が
只々、黙って、其処に居た
まるで、彫像のように
まるで、凍りついたように
微動だにもせず、語りもせず――
どれだけ時が過ぎたか
ほんの一瞬だったかもしれない
一時間が経過していたかも識れない
その後に
「……つまら、ない……物語、よ?」
女は口を開いた
■シャンティ > 遠くを見ていた女が
あなたの方を向く
「なにもない女は、美しいものには、なれなかったのです」
■シャンティ >
【一時、閉幕】