2024/07/02 のログ
ご案内:「医療施設群 一般病棟 とある個室」に緋月さんが現れました。
緋月 > あの戦いから随分と経ち。
ようやく、一般病棟への移動となった少女。
当然刀も一緒である。

面会には身分証明が必要なものの、事前予約は必要とはならなくなっていた。
それでも、委員会の思惑やら上の事情やらで、さりげなくであるが警備はついている。

そんな、未だに多少の窮屈さを覚える環境の中、当の少女は――

「――は~、ごちそうさまでした…。」

ご飯のおうどんを完食していた。
まだ消化に良いものが中心の食生活だが、以前よりは少しばかり食のバリエーションが増えている。
豊かな食は穏やかな心を育む。良い事である。

食事が終わって暫くすると、看護師が食器を下げて行った。
さて、暇な時間の再来である。

「随分と線は少なくなりましたが、これはまだ外れないんですね…。」

未だに腕に繋がれている点滴のチューブを眺めて、ちょっとだけため息。

ご案内:「医療施設群 一般病棟 とある個室」に蒼き春雪の治癒姫さんが現れました。
蒼き春雪の治癒姫 >  

 
「 緋 月 さ まぁぁぁあああ~~~~~~!!!!」

ドタバタ!!ドタバタ!!ドタバタ!! 


 

蒼き春雪の治癒姫 > そいつは。
その女は。
看護師との入れ違いで、
まるで風速340mの猛吹雪のような勢いで貴女の視界にやって来た。

「お目覚めになられていたのですね!!」
「あぁ良かったお元気そうで何よりですッッ!!」
「いやはや一時はどうなる事かと思っておりましたがッッ!!」
「流石ですね!!」

真っ蒼なロングヘア。
雪柄に塗れた着物。

そして妙に荒い鼻息。

不審者?

…多分そう。部分的にそう。わからない。

緋月 > 「――――――。」

沈黙。
沈黙である。

とりあえず落ち着こう、はい一、二、三。

もの凄い奇声が聞こえてきて、突然入って来た謎の女子。
少々、いや結構声量が高いので病院内秩序が気になる所である。
いやそれはさて置き、この大声を発しているのは、突然病室にやってきたこの方であろうか。
恐らくそうだろう、口を開けば声が大きい。

見た目だけで判断すれば、恐らく清楚な美人さんではなかろうか。
多分おそらくきっと、そうだと思う。
ただ、先程からの大声量とやけに荒い鼻息が、それをひどく台無しにしている感が強い。

「――えーと、」

返事に困った少女は硬直から立ち直りつつ、

「どちらさまでしょうか?」

そう訊ねる。さりげなくナースコールに手を伸ばしつつ。
傍から見れば不審者だ。
そもそも見覚えがない。あちらは少女の事を知っているようだが。

蒼き春雪の治癒姫 > 「ふむ」
「"どちらさまでしょうか?"」

二秒。
思考。

「―――ハッ!!」

閃いた。
頭の上に電球が出た。

(わたくし)にご興味があるという事ですかッッ!!?」

恐らく、それは違う。

「………わ、わたくしですね、その…ッ!!」
「貴女様の大ファンなのですよッッ!!」

「緋月様。」

煌めく瞳。

「こうして…言葉を…交えたくて…ッ」

暑い語り口調。
握る拳ッ

「あっどうかその手を止めてください。(わたくし)怪しいものではありません。」

まずい。
まずいまずいまずいまずい。

一旦落ち着こう。
冷静になれ。
雪のように。

冷静に。

―――。


ふむ。
やはり緋月様はお美しい。

「んはぁー…ッ」

いいにおいだ。

緋月 > どうしよう。
あちらもこちらも日本語を喋っている筈なのに、まるで意思疎通が出来ている感じがしない。
なんだか、完全にこちらの言葉が想定外の方向に解釈されている気がする。
たすけて宗主様、こんなときはどう斬ればよろしいのでしょうか?

「――は、はぁ。ふぁん、ですか…?」

ファン。
聞いた事がある。
あいどる、というような、テレビに出て来る、歌って踊る顔の良い男子や女子に
憧れるような人々の事を指すのだと思う。
自分の知識に間違いがなければ。

だが、自分は別にテレビに出た覚えもないし、歌って踊れる訳でもない。
やはり何かを勘違いしているのではないだろうか。
そもそもにして――――

「えっと……私の記憶違いでなければ、お会いした事はないと思うのですが。」

首を傾げながら、とりあえずそう一言。
怪しいものではないと言われても、知らない相手なのだから困る。

――――なぜ匂いを嗅いでくるのだろう。

やはり不審者では。
ナースコールを握る手の力がちょっと強くなった。

蒼き春雪の治癒姫 > 「あっちょッ」
「待って待って待ってくださいお願いですからわたくしで良ければ何でもしますからッッ!!」

それはダメだつまみだされるこうしてお会いできたのにッッ!!
そういうわけで懇願である。

「あっ………そっか。そうですね。…失礼致しました。」

そういえば…向こうはそういう認識か。
それはそうだ。
…でもちょっと悲しいな、と、しゅんとする。

冷静に。
今度こそ。
雪のように。

んんっ、とどこからともなく出てきた扇子に口元隠して唸ってから。

「―――緋月様がそのようにお思いになるのも、ご無理はありません。」

「貴女様の事を、私が一方的に知っているだけ…です。」



「かの悪しき…貴女様が、それはそれは凛々しく」
「"鉄磯巾着"と吐き捨てられた魔人」

「テンタクロウを覚えていらっしゃいますか?」

「あの戦いを、見ていたんです。私。」

あの時に野次馬に着ていた蒼いやつなんて――

頭の片隅にも、ないだろうか。

緋月 > 「あ――――」

指摘されて思い出す。
確かに、かの鉄腕の怪人――今となっては、ただの一人の人――に最初に遭遇した時、そんなやり取りを
した覚えが確かにあった。

あの時は寸での所で襲われる筈だった女生徒を逃がす事と、風紀委員を呼ぶ為の時間稼ぎに終始していて、
周りに気を配る余裕などはまるでなかった。

という事は、この全体的に青っぽい人は自身が気付かない所でそれを見ていたという事だろうか。

「――確かに、そんな事もありましたね。」

少し遠くを見る目。
あの後に起きた戦いは――今でも傷はこうして後を引いているが、世間では今はどう扱われているのだろう。
ちょっとだけ、気にはなっていた。

「すみません、あの時は私も周囲に気を払う程余裕というものがなくて…。
えー…と、その服装などから察するに、異邦人街にお住まいの方ですか?」

あの現場を見ていて、かつ目立ちそうな着物姿。
恐らくは異邦人街の住人であろうかという予測が先に立つ。

蒼き春雪の治癒姫 > 「いえいえ。少しでも分かっていただけたのでしたら…んん。」
「…ん?えっ」

今ッ!!
緋月様に
住まいを聞かれたッ!!
確かに聞かれたッ!!
これは―――つまり…何を意味する…?

「えっえっえっ―――」

蒼き春雪の治癒姫 > 「わ、(わたくし)の家にご興味があるのですかァッッ!?」
蒼き春雪の治癒姫 > 「そ、それはその…!!世間一般ではもう少し…段階を…踏んでからではッッ?!」

照れる。

「いえ…ッッ!!」

首、ぶんぶん。

「緋月様が、その…わ、わたくしを…お求めでしたら…」
「よ、喜んで…!」
「退院なされましたら…是非……ッッ……ご案内いたします故……!!」

「―――その、それでよろしいでしょうか?」

煌めき、照れたまなざしを向ける。
なにが、どうよろしいのかは、分からぬ。

緋月 > 「――――」

どうしよう。また変な方向に話がこじれている気がする。
たすけて宗主様。
ちょっと此処まで強く迫られる理由がわかりません。

無意識にナースコールを握る手が、ちょっと汗をかいている。

「いや、その、そういう訳ではなく――。」

ああどうしよう、どうやってこの流れを変えればいいのか。
斬って済むならそうしたいが、話の流れを斬る技術は生憎と心得ていない。
そもそもまだ怪我も治っていないので、刀を握る事ができない。
本当にどうすれば――――あ。

「えっと、そういうのは、まだ早いと思うのです!
第一、私、あなたのお名前も存じていないので――。」

よし、これで少しでも会話の流れが変われば――!

蒼き春雪の治癒姫 > 「はいッ!そうですよね!早いですよね!分かります!」

うんうん。首振る。

「まずはお友達から始めて頂き…」
「親睦を…深め…その暁には…」
「軈ては緋月様の美しき斬閃により…」
「私を斬って(救って)頂きたいと思います。」

真剣である。
斬られるだけに。

「―――は、名…ですか。」
(わたくし)の名は蒼春(あおはる) 千癒姫(ちゆき)でございます。」
「まっ、やけに長ったらしい上に、漢字の画数が多いので、お忘れください。」

ふい、と。視線が斜め上を向いた。

「貴女様の緋月という素晴らしき名に準えッッ」
「敢えてッッ」

「蒼雪……と呼んでいただくなど―――いかがでしょう?」

…何だか、妙に名については思うところがあるようだ。
それはそれとして、提案された妙な言葉は恐らく、多分、理解出来なかろうて…。

緋月 > 「――――はぁ…。」

ちょっとだけ引いてしまった。
話題の流れを変えられたのは良かったのだが、よりにもよって「斬ってくれ」と言い出すとは。
自分も誰かを深く理解しようと思うと無性に斬りたくなるが、流石にこれは…うん。

「えー、その…とりあえず、斬る斬らないは置いておき、友人からというのであれば吝かではないです、ハイ。」

色々と話の筋が明後日の方向に飛びがちであるが、悪い人ではなさそうである。
単純に、理解の方向が明後日に向いているだけで。
悪い人ではない。筈だ。多分、おそらく。

「えと、あ、はい、よろしくお願いします、その――蒼春さん、じゃなかった…蒼雪さん、でよかったですか?」

と、其処まで口にしたところで、今更気になったことが。

「そういえばこの病室、面会の手順が面倒になってるとの話の筈ですが…蒼雪さんは大丈夫だったのですか?
…ああ、もしかして学園の生徒さんだとか?」

であるならば、時間は取られるだろうが正規の手続きで面会には来られる筈。
軽い疑問ではあったがそれが正なら問題ないのだろう。

蒼き春雪の治癒姫 > 「ひっ、ひかないで…。置いておかないで…、でもお友達にはなってくださぁいぃ…」

切なる願い。
……でも緋月様のこのような顔、初めて見たッ
引いた顔も…良いッ!

「はい、ここの生徒ですね。」

少々。
逡巡。
学生証とか…見せていいのかな。

……。

いいか。
緋月様は、確か学生さんではなかったはずだし。

「申し遅れましたが、こういう者です。それなりに、手続きも手慣れていまして。」
「自慢じゃないんですけどね、えへへ。」

秘密ですよーって、古いタイプの学生証をお目にかけよう。
―――『蒼春千癒姫』
―――『公安委員会 総合………… 副部長……

緋月 > 「ああっ、そんな声を出さないで下され…何だか私が悪い気が…。」

切なる願いに罪悪感が割とくる。
でも流石に、今までにない迫られ方なのでやむなし。そう言う事にして置きたい。

「あ、やはり学生さんでしたか――公安、委員会、ですか。」

ちょっと思い出す。
――その名に関わりの深い知人の微笑みがちょっと脳裏を過ぎったが、口にする事ではない。
話に聞いてる事だけで充分だろう。

「――あまり詳しくはないですが、風紀委員会と似たような立場の組織、でしたか。
私も下手したら、お世話になってたのかも知れませんね…。
うぅ、変な真似するまえにこちらの常識が分かって良かった……。」

まだ此処にきて間もなかった頃を思い出し、しみじみ。
古いタイプの学生証であるのが気にかかったが、古い方が使い易い人もいるだろう、と深い疑問にはならなかった。

「風紀委員もですが、職務などが大変そうですね……。
蒼雪さん、私とそう変わりないお年に思えますけど、すごいなぁ…。」

しみじみ。
自分は完全に責任とかそんなのを投げ出してのワンマン活動だったので、組織人の大変さに
つい思いを馳せてしまう。特に責任の所在とか、そういうもの。

蒼き春雪の治癒姫 > 「はいッ、公安です、一応。」

…厳密には今は少し違うけれど。公安委員会に籍はあるし、使えるものは使っている。

「どっちかっていうと、風紀は実働、公安の方は監査的な役割なんですけれど。
私のところは少し変わってまして。怪異への対策に動いてるものですから、
そうも言ってられない事も多かったり。
荒事も結構ありますゆえ、必然的にやっぱり風紀に似てはいる…でしょうか。」

……あ、ちょっと喋りすぎたかな。
いや、良いか。どうせ……

「大変…と言いましても。私は完全に後方で、ちょっと組織の構成員への治療担当を―――」

「そうでした。」

思い出した。身を乗り出す。
貴女様へ向かい。
前へ。

「私、こちらに来たのはですねッ!」

前へ。

「緋月様をですねッ!」

前へ。

「私の異能によってッ!」

前へ。

「そのおいたわしいお体をッ!」

前へ。

「治癒して差し上げたいのです―――ッッッ!!」

ぴたり。

緋月 > 「ほうほう、色々と違っているのですね――――って…!」

ずい。

「あの」

ずい。

「ちょっと」

ずい

「距離が、」

ずずずい。

「ち、ちかい――!」

どすん、背中が壁と接触。これ以上は逃げられない!

「――って、治療、ですか? 異能で?」

思い切り迫られてちょっと頬に汗しながらも、お話はきちんと聞く。

「え、と……事実でしたら有難い事ですが、蒼雪さんはよろしいのですか?
その、公安委員の立場の事とか、異能の副作用みたいなものとか。
立場が悪くなったり、それでなくても何かしら反動があると、その、流石に申し訳ない気がしまして…。」

随分長く入院してるので、申し出としては有難い。
が、相手の立場や体に悪影響が出ないかが心配になる。

蒼き春雪の治癒姫 > 「……素晴らしい。素晴らしいですねッッ!!」

瞳、きらり。
追い詰められた反応……!これも良いッッ!!

「素晴らしい反応です、緋月様。」

親指、グッ……!
やけに力強い。
嗚呼ッ!このまま貴女様のお美しいお顔に迫れば―――

―――確実にナースコールを押されるな。やめとこ。

「はいッ」
「もちろん、代償は存在します」
「それは治癒対象者の血液」

「治癒すべき相手の血液を私が啜り取り、啜り取った分だけ治癒の効果を高められるのです。」
(……そう言ってるだけだけどね。)

「それ以上を求めると、少し大変ですが。」
「公安では、これで怪異との荒事で傷ついた所属者を治癒して、幾度となく再起させております。」
「体に大穴空いた方や、複雑骨折した方、呪縛を浴びた方、毒に侵された方―――全て。」

「私、治癒能力だけは自信があるのですッ!なんか妙な二つ名まで貰うくらいに!」
(……今はもうないけどね。)

ともあれ、反動については、私の方は心配いらない。
お相手様が代償を支払うだけである、とお伝えしよう―――

蒼き春雪の治癒姫 >  


    零 距 離 で ッ ッ

 

緋月 > 「ち、ちかい、近いです――!」

流石に距離が近すぎる。
パーソナルスペースというものはあるのだ。
もうちょっと、距離を、距離がほしい!

「むぅ……血、ですか…。」

代償について語られれば、ちょっとだけ思案顔。
あまりに量を使っては、今度は失血で隔離病棟戻りになるかも知れない。

しばしの思案。

「――それでは、お願い出来ますか?
あまり多くは、私も仮にも怪我人なので無理ですが、多少の効果ならばこちらの先生方にも
怪しまれずに少しなり、退院時期も早く出来そうですし。」

量を絞れば、それ程大きな代償でもあるまいて。
そう判断し、提案に頷く事にした。

それはそれとして、お願いですからもう少しだけ離れて。

蒼き春雪の治癒姫 > 「はい。近いですね。うふふ。近いですよ私達ッッ」

近いと言われて嬉しそうにほほ笑む。


暫く。
……そ、と引き下がった。

「やっぱり…お優しいですね。緋月様。」
「……今の、初対面の人間にされたら、突き飛ばすか、嫌な顔をするか。」
「拒んでもおかしくはない事、沢山しましたのに。」
「…だから、……かの魔人も―――いえ。」

…貴女様に斬られた機界魔人が…少し、羨ましいんだ。
どうしようもない…雁字搦めの状態から、解放されたように見えたから。

「はい……!」

受け入れて、くれるんだ。
それに、また違った意味で瞳を輝かせた。

「喜んで。」
「怪しまれずに…といえば、効果は幾らでも選べますよ。」

治癒の効果は、複合的にで色々と。
怪しまれないようにする部分だけ、治癒すればいい、と。

「指定した部分の痛みを感じなくする。自然治癒力を増やす。即死しかねない攻撃を耐える程の活力。低くなった抵抗力の治癒。疲労感や眠気を和らげる。立ち眩みや不安定な感覚を正常に戻す―――希望される治癒。なんでも、どうぞ。」

緋月 > 「いえ、如何に初対面でとんでもなく迫られたからと言って、
突き飛ばしたり何なりはいくら何でもあんまりではと…。」

やっとパーソナルスペースが取れたのでほっとする少女。
確かに普通の手合いなら嫌な顔をするだろうが、明後日の方向だろうが好意を持ってくれる相手を
無碍にするのは流石に良心が咎めるというものである。

「おぉ、随分と便利な。
では傷ついた経絡の修復――――は、さすがにあからさま過ぎて怪しまれますよね…。」

其処に思い至らない程、少女は馬鹿ではなかった。

「それでは、経絡系の治りを少しばかり早く出来る位、でお願い出来ますか?
今はちょうどこの薬品を使っていて…食が進んで効きが良くなったと思わせられる位でよろしいので。」

言いながら、ひょいと点滴を指す。
東洋医学の思想を中心に作られた、経絡系の治療薬である。

蒼き春雪の治癒姫 > 「経絡系の治りを早く―――であれば、自然治癒力の増加ですか。
例えば、1か月かかるものを、2週間に。
そういった程度なら怪しまれませんし、あまり血液も要りません。貴女様のおっしゃる通りかと。
ふむ…そういう。実のところ…薬学は詳しくありませんけれど…」

…そういえば、今も貴女様には点滴、刺さってるんだってことを改めて理解する。
…そういえば、大声出しまくってたけど、ここ病院だって事を思い出す。

「経絡。エネルギーの通りかな…」

呟く。
あの戦いでよほど消耗―――持てる力を使い尽くしたのが、よく分かる。
本来の許容量を大幅に超えていたのだろうから。

「私としましては。痛みを和らげるのと―――余計な心配でしょうけれど。
傷がつきにくくなったり、死が遠のくおまじない、なんてつけて差し上げたいところです。
まっ、貴女様程の方には余計も余計なお世話なのは、承知しておりますけれどッ」

「緋月様にはお元気でいて欲しいッ」

切なる願い。

「お元気で…」
「またあの…」
「美しく」
「凛々しい」

…切、なる…願い…?

蒼き春雪の治癒姫 >  


    「全てを斬らんとする顔で(わたくし)を見て欲しいのですッッ!!」


 

緋月 > 「は、はぁ……。」

何故にこの人は此処まで迫って来るのか。しかも時折、凄く物騒な方向性で。
誰かを斬りたくなる衝動は、どうしようもないものとはいえ、それでもあまり表には出したくないものなのである。

「えーと、その…そちらのお話はまた今度、という事で…!」

どう反応していいのか困り切ったので、とりあえず話の流れを変えてみる事にする。

「あ、その位の速度なら怪しまれないかも知れないです。
こちらに移って、ご飯もおいしくなりましたし、食が進んだので薬の効きも良くなったと誤魔化せそうで。
――後の方の効果は、お気持ちだけで十分です、はい。」

ちょっと苦笑い。
彼女はどうしてこうも自分に巨大な感情を向けて来るのか。
世の中、分からない事がとても多い。

「――さてと。
では肝心の血の量ですが、どの位必要でしょうか?
指の辺りやら掌を軽く斬る位なら、私の方で何とか出来ますので。」

量の確認は大事である。
ついでにベッドを汚さない事も。
血のシミが出来てたら、看護師さんが大騒ぎになりそうなので注意しておかなくてはならない。

「…と、布団とかが汚れると後々まずいので、そちらに向かって貰えますか?」

ベッドサイドの丸椅子を示す。出来る限りベッドの端で事に及んだ方がいいだろう。