2024/07/18 のログ
ご案内:「薄明りの数ある事務所」にエルピス・シズメさんが現れました。
ご案内:「薄明りの数ある事務所」にDr.イーリスさんが現れました。
■エルピス・シズメ >
発電機を持ち出しており最低限の電力で稼働しているため、薄暗い事務所。
掃除などもあまりされていないのか、生活による汚れが目立つ。
『人が居ない事による埃汚れ』とは別種の汚れ具合だ。
「……。」
そんな事務所の主である彼は応接間のソファーで眠っている。
応接室の机の上には書類と、学ランはその辺に放り投げてある。
錠剤が入っていたであろうプラスチックとアルミの包装紙も転がっている。
誰も居ないと思って、完全に気を抜いている状態だ。
■Dr.イーリス > 最近まで、所々肌が溶けて中の機械が剥き出しなっていたけど、今は修理してちゃんと元の肌に戻っていた。
メカニカル・サイキッカーの修理も大分終わり、今は一緒に行動している。このメカニカル・サイキッカーは戦闘のみならずイーリスの助手の役割があり、つまり発明などをする際このメカニカル・サイキッカーがいるといないのとではかなり効率が変わる。
ここ最近は、再起を図るための準備に利用している魔術研究所廃墟の地下ラボ、部品集めのスラムの廃品置き場、エルピスさんと共に過ごす数ある事務所を転々としていた。
最近、少し事務所にいる時間は減っていたかもしれない……。
少し長く地下ラボにいたわけだけど、メカニカル・サイキッカーや色んな機械を入れた《タンスガーディアン》(タンス型のメカ)、借りていた事務所の発電機を入れたカート型メカと共に事務所に帰ってくる。
「ただいま戻りました。発電機を借りっぱなしで申し訳ございません……」
発電機……エルピスさんから同じく借りていた《感情魔力混合炉》共に必要だったとは言え、エルピスさんに凄く不便な思いをさせてしまった……。
薄暗い灯りが電力不足を印象付ける……。
しかし、王様を倒せる算段がつき、準備も大分整った。
発電機を長く借りっぱなしにするのも、エルピスさんに申し訳なさすぎる……。
事務所に帰ってくると、生活感ある汚れ。
ひとまず応接間に向かった。
エルピスさんはソファーでぐっすり眠っている。
次に目がいったのは、錠剤が入っていたであろう包装紙。
「お薬……」
心配になり、拾い上げて、どのようなお薬かを確認する。
エルピスさんは呪いを半分背負ってくれている。動力炉もエルピスさんから借りている。
自身の体をも改造しているイーリスは医療知識があり、薬ならどのような効力が働くか把握している。
■エルピス・シズメ >
薬品は──ありふれた鎮痛剤と鎮静剤。
知識があれば直ぐに思い当たるし、無くとも聞いた事はあるようなものだ。
効果も品質も薬局で手に入るもの。
鎮静剤に関しても、処方箋抜きで購入できるギリギリのライン。
"引き受けたもの"を含め、これで抑えていたのだろう。
中身は空っぽだ。
「……ん、……いーり、す?」
寝ぼけ眼を左手で擦り起きる。
一瞬だけ、瞳の色が赤を多くの色で塗りつぶした様な、濁った黒の様に見えたかもしれない。
「えっと、おはよう。
……いつの間にか寝ちゃってたみたいかな。
じゅんび……は進んだ?」
■Dr.イーリス > 「……う…………。無理、なされていたのですね……」
罪悪感がずんと重くのしかかる。
エルピスさんはイーリスに植え付けられた“王”の殺害欲を取り込んでおり、相当無理している事が窺えた……。
イーリスが帰ってきた時、エルピスさんは眠りについている事が多き気がする……。
事務所の様子を見ていると、お掃除もあまり出来ていないのだろう……。
エルピスさんの学ランをハンガーにかけて吊るしていると、声が聞こえた。
「エルピスさん、おはようござ……エルピスさん……!?」
エルピスさんの瞳が一瞬、紅くなったのを見て駆け寄る。
呪いが、エルピスさんを蝕んでいる……。
「エルピスさん……私の呪いを背負わせてしまっただけに……申し訳ございません……。あなたのお陰で、準備は順調に進んでいます」
罪悪感とエルピスさんの容態への心配が合わさって涙が出そうになるが、こらえる……。
《タンスガーディアン》から飲み薬が入った小さな瓶を取り出し、エルピスさんに差し出す。
「お飲みください……。私が調合した、呪いの苦しみを一時的に抑えるお薬です……。急いで作った薬で……私自身でしか試していませんから、どれ程効果があるかは分かりませんが……」
作ったばかりのお薬だ……。
効いたなら、呪いの苦しみを一時的に抑えられる。
臨床試験なんて全然出来てない……自分でしか試した事がないような薬品。
安全性はある。悪化する事はないだろうけど、効き目があるかは、エルピスさんの体質次第だろうか……。
もしかしたら、お薬と体質が合わなかったら効果が全くないかもしれない……。
■エルピス・シズメ >
「無理、と言うか、感受性というか、かみ合わせというか……」
ゆらりと、起き上がる。
要領を得ない言葉で、無理していることを否定しようともする。
「呪いは、そこまででもない……んだけどね。昼は軽いし、夜も流行り病程度。」
「でも貰っておくね。少なくても、飲む薬は減らせるから。」
曖昧な動作で受け取り、慣れた仕草で蓋を開けて水なしで飲む。
……『呪いそのもの』に関しては、それほど彼の負荷になっていない。
市販薬以上の薬があれは、呪いそのものの負荷はゼロに近くなる。
「もんだいは……どうしても、思い出しちゃって。あれるぎー……ううん、トラウマ、かな。
『エルピス』が本気で『僕の異能』を使ったのは……はじめてだから。」
ただ、彼はそれでも不安の色を隠さない。否、隠す余裕がない。
少々呂律の回らない素振りは、彼を多少幼く、弱く見せるか。
「もしもさ、僕が……『エルピス』が、既に死んでいる人間だとしたら、どう思う?」
この場この状況においては、『とても不適切な言い回し』だ。
だが、そこまで気を回している余裕はなかったのだろう。
故に、栗色と黒の間で揺らぐ瞳で見つめて、そう告げる。
……勿論、生体反応は正常なものを示している。
■Dr.イーリス > エルピスさんが起き上がれば、そのお隣に腰を下ろす。
「…………中々気づいてあげられなくて、申し訳ございません……」
エルピスさんに希望をいただいたあの瞬間は、エルピスさんがどれ程無理しているかほとんど気づいてあげられなかった……。
イーリスを匿って無理しているというのは理解していたけど、エルピスさんが呪いを取り込んでからの症状については、想像する域を出ないという状態だった。
とは言えエルピスさんが無理をしている……という可能性はもちろん考えたので、薬自体は早急に用意できた。
事務所に帰ってくるごとに、エルピスさんの異変にだんだん気づいてきていた。
「……流行り病、それはとても辛いものです……。準備とは言え、長く事務所を空けてしまって申し訳ございません……。地下ラボですべき事は終わりました。発電機も持って帰ってきましたし、今日からはずっと事務所にいます」
今日からはずっと、エルピスさんの看病ができる……。
もう、エルピスさんを一人で苦しい思いはさせない。
「エルピスさんが知る記憶ではない、既視感みたいなものを思い出すのですね。それも、思い出すのがトラウマ……となれば、とても辛い……ですね」
不安の色を濃く見せるエルピスさん……。
そっ、とお隣に座るエルピスさんの上半身を抱き寄せて、エルピスさんの頭を自身のお膝にゆっくり乗せようとする。
それで少しでも、精神的に落ち着ければと願って……。
「別の人格による異能発動……それによる負荷がエルピスを苦しめているのですね……」
思わぬ質問に、イーリスは驚く。
エルピスさんが、既に死んでいたら……。
エルピスさんにはおそらく前世の記憶か、あるいは記憶の乖離か、つまりは何らかの理由で記憶が一旦途切れている瞬間がある……。
「……今ここにいるエルピスさんは生きていらっしゃいます。私にとっては、それが重要な事でございますね。私は、今ここにいるエルピスさんと、大切な友人になりました。助けていただきました……。あなたに希望を感じて、そしてその希望をわけていただきました。私は、ここにいるあなたのために何かしてあげられたら、と思っています」
右手をエルピスさんの髪に伸ばし、そっと撫でようとする。
前世かあるいは記憶が途切れる以前が、どのようなエルピスさんだったかは、イーリスが知るものではなかった……。
だけど、今ここにいるエルピスさんはとても大切な人……。それだけは揺るぎない。
前世などが関係ないとは言わない。前世を含めて大切と言えたらいいとは思うけど、まず目の前にいる今のエルピスさんがとても大事だ。
■エルピス・シズメ >
「気にしないで。僕の見通しが甘かっただけだから。
僕はいつも判断が遅くなくても、甘いみたいだ。」
"天狗になっていたのを叩かれそうだ。" 軽口を叩き、冗談めかして振舞う。
少しでもイーリスの罪悪感を取り除きたいのだろう。
「ありがとう、イーリス。
イーリスが居てくれるだけでも、とても心強いよ。」
居住まいを直し、隣り合う形で座る。
上半身を抱き寄られてからは流れるままに、甘えるようにゆっくりと頭を乗せた。
「別の人格による、と言うのはちょっと違うかな……ただ、」
今生きているエルピスを、僕として認めてくれる人がいる。
そして、大切に思って、何かしてくれたらと想ってくれる人がいる。
そのことが、とても嬉しく思う。
他の言葉では上手く飾れないけれど、とても嬉しい。
濁った瞳は普段の栗色に戻り、
彼の表情や調子も、普段のような落ち着きを取り戻す。
「イーリスのことばが、凄くうれしい。
……僕もエルピスも、うん。イーリスのことはとても大切だ。
だからそれだけで、前を向けるよ。」
普段なような、と言うには語弊があった。
……感極まって、とても嬉しそうな瞳と声だ。
緩やかに髪を、頭を撫でられている。
完全にイーリスに身体を許している状態だ。
■Dr.イーリス > 「あなたのお陰で、私は助かりました。誰も殺さずに済みました。エルピスさんを傷つけずに済みました。次は、私があなたを助けます。あなたの負担を少しでも早く減らせるよう、必ず“王”を撃ち滅ぼします」
エルピスさんが苦しい思いをしているのは、イーリスを助けてくれたから。
ならば、今イーリスがやるべき事は少しでもエルピスさんの負担を減らせる薬や医療機器などを造る事。そして、“王”を倒す事。
エルピスさんからのお礼の言葉に、瞳を細めて微笑んだ。
「別人格、という表現は少し語弊があったのかもしれませんね……」
前世の記憶みたいなものを別人格、みたいな言い方をしてしまった。
エルピスさんの瞳が輝きを取り戻していき、表情もだんだん良くなっていく様子に、安堵を覚える。
エルピスさんが元気になってくれている。その事に、嬉しさを感じた。
「ありがとうございます、エルピスさん。あなたが何を思い出したとしても、あなたがあなたである事は変わりませんからね」
にこりと笑い、エルピスさんの髪を撫で続けながらそう口にする。
「そういえば、スラムの知り合いから聞きましたよ。私、スラムではそれなりに顔が広いですからね。エルピスさん、私を守るために凄まじい剣幕で啖呵を切ってくださったそうではないですか」
■エルピス・シズメ > 「助けられたのなら、良かった。
誰かを殺したり、傷付ける事は辛い事だから。イーリスちゃんが背負わなくて、よかった。
……僕の事を想ってくれるのも。とても嬉しいな。
でも僕のためだけじゃなくて……イーリスと、お友達のためとしても、王と戦わないとね。」
上半身を預け、緩やかに髪を撫でられ続けている。
微笑みを向けられると、幸せそうに目じりを下げた。
段々と、元気になっていてはいるが……
「少し補足をするとね、エルピスの人格を再現しちゃった以上、もう僕の自我は塗り潰されている。」
声が震える。自分の自我が塗りつぶされている事を自覚するのが、とても怖かったのだろう。
「『エルピス』は、落第街で引き受けた仕事の一つの途中、黄泉の穴に落ちて死んだ。」
「僕の異能は、"想いを継ぐ"ためだけに仕組まれた複合異能で、僕の自我と記憶は此処にない。」
「僕のことは何一つ思い出せないけど、『この異能がマトモではない』だけは記憶している」
「何せ『異能を除いた、エルピスのすべてを再現する事が出来たのだから』」
「そして、英雄開発プロジェクトももう存在しないから、腕を直せる人もいない。
……とても一人で向き合えそうになかったから、聞いてほしくて、今、話しちゃった。」
彼の不調と不安を齎す、向き合いたくない現実を伝える。
異能の行使と呪いの影響により剝き出しになった、彼を苦しめている苦痛の根源。
……そして、この苦痛をイーリスに聞いて欲しかったのだろう。
このことを話す時ばかりは、再び声色に不安が滲んだ。
スラムで啖呵を切ったことへ言及されると、顔を赤らめとても恥ずかしそうに目を泳がせる。
「あはは……スラムのみんなにとっては、さざなみの中でビーバーが威嚇しているようなものかもしれないけど……
でも、せずにはいられなくってさ……いま思うとすごく空回りな気もして、恥ずかしい………」
先生も含めて、どんな目で見られていたのだろう。
思い返して、ちょっとだけ足をじたばたさせる。
■Dr.イーリス > 「……呪いの負担は、それ程大きくはないという話ではございましたね。私は、お薬や医療機器を造るのは得意ですからね。呪いをどうにかした後、さらなる治療を進めましょう」
“王”の撃破で回復するのは、あくまで呪いの部分のみ。
今、エルピスさんを蝕むのは、呪い以外の部分が大きいらしい……。
どのような治療が有効かは分からない……。そもそも、イーリスがどうにか出来るものなのかも分からないけど……手は尽くしたい。
「自我が……塗りつぶされている…………」
驚きで、トクン、と一際大きい心音が鳴る。
エルピスさんの人格を再現……。
先程の質問の続きで……かつてのエルピスさんはもう死んでいる……?
目の前にいるエルピスさんは、過去にいたエルピスさんの再現……?
「……え………………」
驚愕が隠せない。
つまりだ。
目の前にいるエルピスさんは、元々いたエルピスさんのコピーのようなものという事になる……。
それは、過去の記憶が思い出したくもないものになるはずだ……。
自分がコピーであると気づいてしまったのなら、酷く不安にもなる……。いや、それどころか酷く絶望するかもしれない……。
「エル……ピス……さん……。そん……な……」
涙が溢れ出る。
頬を伝った雫が、エルピスさんの顔に落ちていく。
「私にとっては……あなたが“本物”です……! あなたが、私の大切なエルピスさんです……! 私が希望を抱いたエルピスさんは、あなたです……!」
膝枕しているエルピスさんを抱いて、そう想いを口にする。
誰でもない、目の前にいるエルピスさんが、大切な友人……。
かつてのエルピスさんの最期は不憫ではあるけど、イーリスにとってのエルピスさんは今生きている……今、この両腕で抱きしめている人、ただ一人。
「スラムもまた無法地帯ではありますし、私には敵がそれなりにいます。配信を見て、無視の息である私を狙う人は多いです。あのような啖呵は危険な行為なのに……それなのに私を守るために体を張っていただいて、嬉しいです。あなたが私をそうやって守ってくださっていたから、これまで大事にならずに済んでいたのかもしれませんね。ありがとうございます……エルピスさん」
感謝を述べて、ぎゅっ、と抱きしめる力を強める。