2024/08/24 のログ
ご案内:「Free3 どこかの夏祭り会場の上空」に杉本久遠さんが現れました。
ご案内:「Free3 どこかの夏祭り会場の上空」にシャンティさんが現れました。
■杉本久遠 >
縁日で買ってきた屋台物が詰まった袋を片手に。
久遠はしみじみとした気持ちで、祭りの灯りを見下ろしていた。
「なるほど――こんなふうに祭りを見るのは初めてだな」
この日身に着けている魔道具は、エアースイムの競技用ではなく、他の物と干渉しない魔道具。
アメリカンドッグを大きな口で食べながら、貴重な光景を眺めている。
「まさか君の方からこんなお誘いを貰えるとはな。
昨日も、サプライズで嬉しかったぞ」
納涼祭の会場に顔を出してくれた彼女が、自分の様子を見に来てくれたのだろう、という結論に至れるくらいにはうぬぼれている。
お陰で気力がすっかり充実したものだ。
■シャンティ > 「そう、ねぇ……私、も……はじ、めて――だ、わぁ……」
眼下の景色。正確には、下に存在する景色を読んでいる、のだが。
それは、現実でありながら、どこか物語のような幻想を抱いていた。
ただの、夏祭りに過ぎない一風景だというのに。
「考え、て……み、たら……一緒、に……空、に……あが、った、こと……は、なかっ、た、かしら……と……ね?」
そもそも、エアースイムは競技であり、運動である。
そういった性能においては、一般人か、それ以下の能力しかない女には荷が勝ちすぎる。
それゆえ、ただ浮かぶ、そういったことにだけ利用していた。
それゆえ、競技者に声をかけることはなかった。
「あぁ……えぇ、まあ……流し、素麺、という……もの、も……興味、が……あった、し……ね?」
昨日のことを、そう評した。
「ふふ……忙し、そう……だった、わ、ねぇ?」
■杉本久遠 >
「不思議なものだよなぁ。
見る角度が違うだけで、普段と全く違う景色に見える」
それは競技スイムばかりをしてきた久遠にとっても、はじめての光景だ。
そもそも、こんなふうに競技や練習以外で空に上がる事も珍しいのだ。
「ん――そう言えばそうか。
そう言われると、オレときたら、競技スイムばかりだったな――その、なんだ。
退屈させたりとか、しなかったか?」
寂しかったか、と聞けない辺りは、仮にも恋人として自信がないからなのか。
なんにせよ、男女としての付き合い方にとにかく不器用なのは相変わらずだ。
そうでなければ、彼女をこうした穏やかな空に誘うくらいは出来ていただろう。
「たはは、流し素麺、見た事なかったのか?
なかなか面白い光景だっただろう」
日本での非常に独特な文化の一つだ。
避暑と食、娯楽の全てを兼ねようという欲張りな文化。
「はははっ、君が来てくれたおかげて忙しさなんて忘れてしまったぞ。
それに、オレは半ば遊んでいたようなものだしな」
頑張ったのは主催チームとして企画運営した後輩たちだ。
そのおかげで、参加者たちを楽しませる事が出来たと思うと感無量だった。
「それで――何かあったのか?」
すぐ隣で寄り添うように浮かびながら、少しだけ気遣うように訊ねた。
彼女の方から久遠を誘ってくれる時――それは、多くの場合、『会いたいだけ』ではない事が多い――と、久遠は感覚的に学んでいた。
■シャンティ > 「そう、ね……ただ、軸の、位置が……かわ、る……だけ、で……描写、は……かわ、る、のよ、ね」
位置関係が変わっただけ。言葉の上、理屈の上ではそうである。
ただ、そこに現れる視界は、また別の話になる。
描写一つで、意図も意識も認識も、すべてが変わることと、似ているかも知れない。
「ふふ。別、に……気に、して……ない、わ、よぉ……?
見て、いる……の、も……おも、しろい、もの。
ん……そう、ねぇ……私……退屈、は……好き、では……ない、わ?」
くすくす、と女は笑う。
正直な感想。エアースイムは、ただ空を飛ぶだけではない。
その躍動が面白かった。自分が空を飛ぶこと自体は、おまけのようなもの。
「まさ、か……食、事……に、異能、を……つか、う……人、が……いる、なん、て、ね……
ずいぶん、と……賑や、か……だ、った……わぁ?」
振り返ってみれば、本当に賑やかだった。
様々なタイプの存在が集まり、どれもこれも興味深くはあった。
ただ、眺め続けるには少々疲れてしまう。
「あ、ら……?」
久遠の問いかけに、くすり、と笑う。
「なん、だと……思う……?」
■杉本久遠 >
「――一緒に見る相手でも、な」
などと、下心がないため自然と言えるところだけは、久遠のいいところだろうか。
下心がなさすぎるのも、問題かもしれないが。
「たはは、よく知ってるさ。
だからうん、オレも君を退屈させないように、自分を磨いているつもりなんだが。
あー――その、君を楽しませて居られるのかは、まだ自信がないな」
などと、真っ正直に苦笑しながら言う。
この裏表がなさすぎる正直さを面白がってくれているとは、流石に思ってもいないようで。
当然、自分がはたから見て面白みがあるとも思っていないのである。
「いやあ、最初に挑みに来た子が遠慮なしに来たからな。
オレも異能を使って全力になってしまったよ。
普段使わないが、たまにはああいうのも面白いな」
久遠の異能は、とにかく地味なのだ。
便利ではあるのだが、普段の性格では然程使い道がない。
その上、競技では使用禁止の異能分類でもあるから、異能を使って競う事にはまるで縁がないのである。
「もう少し静かなイベントだったら、君を誘っていたんだけどな。
あれだけ賑やかすぎると、苦手とはいかなくても疲れてしまうだろう?
正直な、君が顔を出してくれてすごく嬉しかったよ」
そう、だからこそ顔を出してもらえるとは思っても居なかったのだ。
それだけでとても久遠の活力になったのである。
まあ、張り切り過ぎた結果、イベントの後でやりすぎと注意されたりもしたのだが。
「――いやいや、それがわかれば聞かないで済むんだけどな?」
なんだと思うと言われると、困ったように頭を掻いた。
「ただ、その――オレが聞いていい事なら、聞きたいと思う。
知っていい事なら、だけどな」
良くも悪くも、自分から深入りをしない。
信用してもらえれば、話したいと思ってもらえたら話してもらえるだろうという、受け身の姿勢。
臆病と言われればそれまでだが、この男の場合、純粋に不器用なのである。
■シャンティ > 「ふふ……いう、わ……ね?」
くすくすと笑う。本当に心から、自然に漏れ出てくる言葉としては気障である。
それが、そう取れないのはなかなかに面白い。
「あ、ら……な、ら……私……帰ろう、か、しらぁ?
楽し、く……ない、なら……当然、よ、ね?」
本気とも冗談ともつかない、普段通りの口調。
表情からも、内心は伺いづらいかも知れない。
「そう……」
久遠の異能。それを発揮する機会、というのは確かに少ないのだろう。
便利ではあるが、扱いは面倒くさい。
それが全力で発揮されたのなら……もう少し見ていても良かったかも知れない。
「つい、で……だ、し。
たいし、た……こと、では……ない、わ」
喜ぶ相手に首をふる
「ふふ。少し、だけ……踏み、こん、だ……わ、ね?」
くすくす、と笑う。
ややもすれば、話す気になってくれた時に聞く、と立ち入る前に後に退くことがある人物だ。
素直に聞きたい、と意思表示するのは珍しい。
「そう、ね……久遠。」
見えない目を、男に向ける。
「あな、た……演劇、は……好き?」
■杉本久遠 >
「たはは、そう言われると参ってしまうな!
楽しんでもらえる努力はする――と、前も同じような話をしたなあ。
オレもまだまだ成長が足りんみたいだ」
どことなく情けない顔になるのは、やはり恋愛経験値の低さゆえか。
低いどころか皆無に近かったのだから、仕方ないとはいえ、だ。
「まったく踏み込まないのも、まあ、なんだ。
君を信じていないようで、少し、な」
受け身であるのは変わらないが、思うところはあるようで。
彼女に対して、久遠は全幅の信頼――たとえ裏切られても後悔しないだけの信頼を寄せている。
「ふむ――演劇なあ。
嫌いではないが、どうにも見た事すら少ないからな。
ただ、面白い物だとは思うが」
そう正直に答えつつ、意図を測りかねて首を傾げる。
光のない視線に、細い目で真っすぐ答えつつ。
■シャンティ > 「『中庸之為徳也』……過ぎ、ても……足り、なく、ても……だ、め。
久遠、は……客観……した、方、が……いい、わ……ね?」
くすくす、と笑う。
現状の認識。それをどう評価するか。自分の視点ではなく、他者の目線では?
それが飲み込めれば、変わるのだろうか。
いや、変わらない気もする。女は薄く笑う。
「あ、ら……信じ、て……くれ、て……ない、の……か、と……思った、わ?
信、じて……くれ、て、る……の、ねぇ……驚、き……だ、わ」
誂うようにくつくつと女は笑う。
「えぇ……演劇、よ……
私、の……半分、を……つく、った、もの」
虚ろな目は真っ直ぐに向いている。
しかし、それはどこを見ているのか……
■杉本久遠 >
「客観視なあ。
本当に君は、難しい事をいう」
たはは、と情けなさそうに――けれど嬉しそうなのは、彼女がこうして忌憚ない言葉をかけてくれるからだろう。
もし興味を失われていれば、こんなことすら言ってくれないのだろうと思っていた。
「信じていなかったら、毎日のように連絡しているだろうな。
君が離れて行ってしまう事が怖くて、な」
そう言う不安が無いと言えば嘘になるが。
少なくとも、彼女を束縛しないでいられるだけ信頼しているのだ。
とはいえ、やはり、ふらりと突然消えてしまいそうな不安は常にあるのだが。
「君の半分か。
なんというか、オレにとってのエアースイムのようなもの、か?
演劇――演じる側からすると、どういうものなんだ?」
自分の顎をさすりながら、興味深そうに。