2024/09/05 のログ
■イーリス(4歳) > ヒガサ「うふふ。正義のロボットさんでオリオン座の戦士。貴方はあの子の心を掴むのが上手いのかもしれないわね。あの子、あの年でロボットを造る事に興味を抱いているのよ。そんな正義のロボットさんが遠くの星からきたのだと、とてもわくわくしたのでしょうね」
目を細めて、祭壇の前で機械のクマさんと遊び少女に、優しく目を細めるシスター。
置かれたものを手に取り、「あけるわね」と一言断って中身を取り出す。
中に入っていたのは試験管。中身はオレンジ色の液体。飲むと美味しそうな色ではあった。
ヒガサ「薬品ね。成分を調べてみてもよろしいかしら?」
■エルピス・シズメ >
『……ええと、少し恥ずかしくなってきました。
はい。……調べていただければ、分かると思います。』
振り返って悶えそうになる気持ちは、ぐっとこらえます。
同時に焦りながらも会話も必要だと、逸る気も抑えます。
そのまま封を解いて試験管を取り出て確かめるまで、見守ります。
陽光のような赤色の髪に、優しげな瞳。
言葉も含め、一つ一つの仕草から丁寧さと穏やかさを覚えました。
このシスターこそがイーリスの義母であること、記憶ではなく感情で確信しました。
『なので、お願いします。……問題は、時間が1日もないこと、です。』
認めて、託します。
残酷なタイムリミットも、告げます。
■シスター・ヒガサ > 「貴方がこの薬品をどこに持って帰るかその距離までは分からないけれど、私にかかれば材料さえあればお薬の調合にそれ程時間はかからないわ。ものにもよるけれどね」
穏やかな笑顔で頷き、祭壇へと向かっていく。
材料の用意は不安材料だとしても、シスターは化学薬品、魔法薬その両方を調合する事ができる。
こう見えて機械にも魔法にも強い。一人で高性能なメカを楽々造れるぐらいに。少女がもってるクマさんもシスターが造ったもの。
「イーリス、少しあちらの方で遊んでなさいね」
イーリス「はぁい」
少女は言われた通り、祭壇から少し離れて端の方に行った。
シスターの右手人差し指が太陽のように煌めく。その煌めく人差し指で、シスターは祭壇に六芒星を描いた。
その六芒星の真ん中に《科学配合エリクサーエキス》が入った試験管を置く。
続けて、シスターは太陽のように光人差し指で空中に直径三十センチほどの火の輪をつくる。
シスターの右手人差し指の光が消え、両手を組んで祈りはじめる。
「主よ、我に真実を伝えたまえ」
シスターは両目を瞑り祈り始める。
すると、試験管がひとりでに浮きはじめ、コルクが勝手に開き、中の液体が宙に浮き、火の輪を潜っていく。
火の輪潜りを終えた液体は試験管に戻り、コルクも再び閉じられて、試験管が祭壇に戻った。
シスターの双眸があいて、両手が解かれる。
その後シスターが祭壇の布を捲って取り出したのは、なんとノートPC。物凄くファンタジーな事をした後に、ノートPCである。
ノートPCを祭壇に置いて立ち上げた。
シスターは火の輪からコードを伸ばし、ノートPCに差し込んだ。
「さて、解析結果はどうなっているかしら」
PCをカタカタと叩き始める。
なお、このノートPC、シスターが自分で造った。
■アルターエゴ・サイキッカー >
再び姿が緩みました。
ここまで長時間の上書きは、彼にとっては未知のものです。
ただ、不思議と、今の所は大きな苦痛を感じていないようにも見えます。
麻痺しているだけかもしれないと、深く理由を考えることはしませんでした。
(……イーリスのルーツは、ここから。)
科学、魔法、機械。
少なくともそれらのイーリスの技術は、シスター・ヒガサが起源であることを改めて認識しながら、見守ります。
ノートPCの形状も、見た事がありません。
ここまでくると、特注の──というよりは手製のものであると考えた方がしっくりきます。
解析結果が出るまで、静かに見守ります。
■シスター・ヒガサ > カタカタとノートPCを叩いて、シスターは目を見開く。
「なにかしら……この薬品……。随分と……摩訶不思議なものを持ってくるのね……。この薬品……化学薬品やら魔法薬やら異能者の細胞やら複雑に混ざり合った難解でとてもでたらめなものよ。異能者の細胞は、バイオテクノロジーで生み出されたもので、特定の誰かの細胞ではないみたいね」
シスターの額に少し汗が流れる。
「手に入り辛い珍しい素材を使って高度な技術で調合しているわりに完成に全然届かず、未完成……。素材は、転移荒野あたりで偶然見つけたのかしら……。失礼ながら、調合した人は頭良いのか悪いのかよく分からないわね……。頭のネジがとんでないとこんなものできないでしょうけど……」
カタカタとPCを操作し続ける。
「おまけに用法がよく分からないわよ。飲む、体内に注入、体にかける、その全てが有効そうに見えて……効果を生み出す期待は薄いわ……。例え完成させたとしても回復を促すには足りないものがあるわね……。本当にこれで、あなたが救いたい人が救えるのかしら……。私が直接、その人を治療しに行くわよ?」
シスターの知識では、凄い薬品だけど、もはや完成させても何かが足りない欠陥品。
それもそのはず。十年後のイーリスが、カプセル型医療機器に差し込んで中の治療促進液に流し込む事でようやく効能を発揮する、いわばカプセル型医療機器用につくられた薬品だからである。
この時代にはカプセル型医療機器なんてものはなく、《科学配合エリクサーエキス》は無駄に複雑で高度で珍しく、そして全く意味のない薬品だ。
正義のロボットさんが助けたいと思っている人がどれほど重症かは分からない。だが、こんな意味のない薬品に頼るよりかは自分が直接赴いた方がその人が助かる可能性が高いと判断してしまう。
■イーリス(4歳) > 義母の「失礼ながら、調合した人は頭良いのか悪いのかよく分からないわね……。頭のネジがとんでないとこんなものできないでしょうけど……」という言葉に、一瞬振り返ったが、自分には関係ない事であるとすぐに機械クマさんに視線を戻す少女。
■アルターエゴ・サイキッカー >
『……では、これを。
どうしても、ここで作って、僕が持ち帰らないといけないんです。
誰が、どこで、何も考えず、これを見てください。』
矛盾を作る訳にはいけません。
少なくとも彼女のタイムマシンでは、大きな矛盾を処理することができません。
出来たとしても、
エルピスが元の世界に戻ることが叶わなくなるかもしれません。
『カプセルで生き長らえさせてなお、助けたいものがいるのです。
……お願いします。この通りです。』
彼は机越しに、大きく頭を下げました。
要望通りに動いて貰う様、出来ることは、情に訴えるしかないと判断したのです。
■シスター・ヒガサ > 「私の治療ではなく、この薬品でなければいけない……というのもまた貴方の事情なのね。正直なところこの薬品を調合した人の事は気になるところよ。一部、私が用いている技術にも似ているわ。本当に一部だけではあるけどね……」
普通なら、眼前のパワードスーツの人物は怪しい人になるのだろう。
だが正義のロボットさんからは悪しき心を感じられない。シスターが感じられない程に巧妙に悪しき心を隠しているという可能性はあるだろう。
だがシスターには、どうもこの人が悪意で行動しているようには思えなかった。むしろ、その必死さ、純粋さに好感すら持てる。
命を助けたい人がいる、ならば助力してあげたい。
「カプセル……。そこは何を言っているか分からないけど……ひとまず頭をあげてちょうだい」
シスターは正義のロボットさんに歩み寄り、その両手を自身の両手で包み込むように掴んだ。
「貴方がとても懸命に誰かを救おうとしている事はとても伝わったわ。貴方にとって、とても大切な人が命の危機に瀕しているのね……。とても辛い想いをしているのね……。私はどうか……貴方の大切な人が救われるよう、主に祈るわ」
目を細めて微笑むシスター。
そうして両手を放し、ノートPCに視線を移す。
「微力ながら協力はさせていただくわ。ただ現実的に問題点があるのよ。一つ目は、先程私が言ったようにこの薬品を仮に完成させたところで役に立つかは分からないわ……。二つ目の問題は完成できるかどうかだけど、これについては主が貴方達を祝福してくださっているのかしらね。確約はまだ出来ずとも、なくもないわよ」
そう口にして穏やかに笑うシスター。
■アルターエゴ・サイキッカー > 『構いません。』
彼は手段を選びません。罪の自覚はあるでしょう。
彼は社会を意識します。善悪の両方を抱くでしょう。
ですが純粋な善なるものでなくとも、
彼の心には悪意はありません。少なくとも、今はそのようにあります。
包んだ手は、機械の壁を超えて仄かに暖かいです。
『……はい。』
彼も祈りを捧げます。
その先にあるものがわからなくとも、ヒガサの信仰の先に届くようにと祈ります。
『その時は……その時です。
……貴方が気に病むことは、ありませんから。』
その時は、彼も最期を択ぶでしょう。
幼き心は、喪うことに耐えられません。
■イーリス(4歳) > 二人で、祈りを捧げる。
いや、少女も混ざって三人で祈りを捧げていた。
「正義のロボットさんの大切な人、助かりますように……。どこの誰かは分かりません……。でも、誰かが死んでしまうのなんて嫌です……。正義のロボットさんはとても良いロボットさんです……。助けてあげてください……」
少女はそう口にして、真摯に祈っていた。
■シスター・ヒガサ > そうして三人での祈りを終え。
「協力を頼まれて、それはあんまりだわ。助けられなかったら、私も悲しんだりするわよ。それは万策尽きた時ね、今は貴方の大切な人が救われる事を信じて手を尽くしましょう」
穏やかに笑ってから、薬品が入った試験管を持って出口の方に向く。
「完成した薬品は元来無意味なもの。だけど、そこは貴方に何か考えがありそうだから、そこは貴方を信じる事にするわね。私は薬品を完成させてみるわ。ついてきてちょうだい」
そう言って、出入り口の方に歩いていき、外へ。
■アルターエゴ・サイキッカー > 『ありがとうございます。』
謝礼の言葉の後、彼は静かに、シスターヒガサへの後ろをついて行きます。
案内されるがまま、外に出て、過日のスラムを見渡しました。
(なんとか、なりそう……)
シスターヒガサの力に感謝を示しながら、
強化外骨格を解かぬままその後ろを歩くでしょう。
■イーリス(4歳) > 「正義のロボットさん、お義母さん。いってらっしゃい」
4歳ながら深刻さを感じている少女。
自分は教会で待つことにして二人を見送った。
■シスター・ヒガサ > 教会からしばらく歩いたところに石碑があった。
「ここよ」
十年後も残っているので、正義のロボットさんの記憶にある可能性は十分にある。単に石碑があるだけなので目に止まる事もなく、記憶になくても不思議ではない。
シスターはリングケースを取り出し、宝石がはめ込まれた指輪を取り出す。
その指輪を石碑に近づけた。
すると石碑が動き、その下に階段が出現する。
「暗いから気を付けてね」
シスターは右手人差し指から光を発生させて、暗い下り階段を降りて行った。
降りて行った先には、あまり広さのない地下聖堂があり、祭壇の上に緋色の小石が置かれていた。その小石は緋色に光っている。
■アルターエゴ・サイキッカー > (こんな仕掛けが……)
隠し通路に驚きながらも石の回廊を進み、地下聖堂へと辿り着きました。
同時に10年後にもこの地下聖堂が存在するのかと、微かな疑問も抱きます。
『地下聖堂、ですね。……その石は。』
緋色に光る石。
不思議な輝きを見せる石は、彼にとっては不思議なものであったようです。
■シスター・ヒガサ > シスターが祭壇に歩み寄る。
「《ラファエル結晶》。私が島の外で退魔師として活動していた時、ある邪神を討滅した際に天より授かった結晶……。解析をしてみた結果、とてつもなく神聖なものではあるけどこれといって用途もない、ただ信仰に用いるための結晶ぐらいでしかないと思っていたわ」
試験管の《科学配合エリクサーエキス》を眺める。
「貴方達に主の祝福があると言ったのは、このためよ。この薬品の未完成部分を《ラファエル結晶》で補える可能性があるわ。確立そのものは低くないとは言っておくけど、絶対であるとは限らない……とは付け加えておくわね」
■アルターエゴ・サイキッカー >
ラファエル結晶。
天使の名を冠するその石の由来を記憶に刻み込みながら、その結晶の奇蹟に望みを託します。
『僕たちのために使ってくれて、ありがとうございます。』
用途が分からずとも、貴重な筈の結晶を誰かもわからぬものに費やしてくれることへの感謝を、
彼は忘れませんでした。大きく頭を下げて、礼を述べます。
■シスター・ヒガサ > 頭をさげる正義のロボットさんに、シスターは微笑んで。そして《ラファエル結晶》に視線を戻す。
「時間がないと言っていたところ申し訳ないけれど、時間が掛かるわ。数時間ぐらいのものよ」
正義のロボットさんのリミットは一日未満との事。
それなら間に合うだろうという判断。
「これから数時間祈りを捧げて、《ラファエル結晶》の聖なる力を引き出すわ。申し訳ないけれど、貴方は一旦教会に戻って、あの子の事見といてくれないかしら? もうすぐ夜よね……。夕食をあの子に食べさせてあげないといけないわ。このお金で、あの子に何か食べさせてあげて。あなたの分の夕食もそのお金を使っていただいても構わないわ。お願いね」
そう言って、小銭入れを正義のロボットさんに差し出す。中に入っているのは、大人一人子供一人ならぎりぎり足りる金額。
シスターは貧乏。それでもなんとか少女を育てていた。
■アルターエゴ・サイキッカー >
『分かりました。』
差し出された小銭入れを両の手で受け取ります。
この時代で使えそうな金銭は持ってきていますが、敢えて彼はこの金銭を使う事にしました。
『では、行ってきますね。』
考えた末、幼きイーリスを買い出しに同行させることにします。
買い出しの時に目を離すことになってしまう、と考えたのです。
「行こう、イーリス。」
無意識のものでしょう。
当たり前のような調子で、彼女のことを呼んで、屈んで手を差し伸べます。
『背中に乗ってね。』
■イーリス(4歳) > 教会に戻っ正義のロボットさん。
だが、教会の近くまできた正義のロボットさんは異変に気付くだろうか。
教会の外に、無数の黒服を着た人がいた。黒服の人達は、カラスを思わせるマスクをしている。
そのカラスマスク黒服集団、なんと少女をつれていこうとしていた。
「い、いや……! は、放して…………。放してください……! 助けて……。助けて……正義のロボットさん……!!」
少女は恐怖で脅えて、泣きながら叫ぶ。
教会は迷える子羊を拒まない神聖な場所。だが今回は招かれざる客に入られてしまった。
■アルターエゴ・サイキッカー >
鴉を髣髴とさせる、ペストマスクにも似た黒服の集団。
招かれざる客が訪れたと判断すれば、迷わずにこの身としての力の名を叫びます。
これはメカニカルサイキッカーと違い、無数の兵器をもちません。
これはメカニカルサイキッカーと違い、数多の異能を持ちません。
これはメカニカルサイキッカーと違い、4つの異能を搭載しています。
その4つは、違法改造異能に匹敵する──特別な異能です。
「《リミットイグノア》!」
尋常とは思えぬ速度と技で、誘拐しようとする黒服の一人を殴って、
その余波で他の黒服も吹き飛ばします。少女にはそよ風ひとつ届きません。
その威力と速度は、並のものには認識すら出来ぬものでしょう。
《リミットイグノア》。
一時的に肉体と技術の成長係数を極端に引き上げ、
ポテンシャルの上限を撤廃する、異邦の能力覚醒異能。
同じ様で違う、アルターエゴ・サイキッカーとして搭載された機能のひとつ。
■黒服 > カラスマスク黒服集団は、高速で近づく存在に気づくも手遅れ。
まず一人が殴られ、吹き飛ばされる。
その余波で無数の黒服が吹き飛んだ。
黒服達「ぐわあああああああぁぁあぁああぁぁああああ!!!」
黒服達が吹き飛んでいく。
違法改造異能に匹敵する力。
その力は、あまりに強大であった。
大半の黒服はもう動ける状態ではない。
だが少女を気づつけないようにした攻撃。
つまり少女を捕えていた人達も無傷だった。
黒服A「ひぃっ……!? ば、化物だ……!! ワイズマン様に授かったあの機械を使え! あの方はあの機械の実験をしたいと仰っていた。実験結果と実験体、その両方を提供できればさぞお喜びになる」
黒服B「そ、そうするしかない……。誰が死ぬ?」
黒服C「お前とお前が死ね」
黒服A「ぐがっ」
黒服B「げはっ!」
なんと黒服Cがのこぎりを取り出し、黒服AとBを斬りつけた。
その後、少女の胸部に円形の黒い機械をつける。
黒服A「ぐわああああああぁぁぁ!!!」
黒服B「ぐおおおおおおおおぉぉぉ!!!」
黒服AとBは悲鳴をあげながら液状化し、少女の胸部に取り付けられた機械に取り込まれていく。
■イーリス(4歳) >
「うぅ……。痛い……!! く、くるしい……。いやいや……いやああぁ……!!! 助けて、助けてたすけてたすけて……!!!」
少女は黒服Cに取り押さえながら、泣き叫びながら正義のロボットさんに右手を伸ばす。
■アルターエゴ・サイキッカー >
彼の雰囲気が豹変します。
柔らかい物腰は、ここで鳴りを潜めました。
本来は、掴んでいた黒服にも衝撃を与え、
文字通り少女だけには気概を与えぬ埒外の力。
だが、長きに渡るオーバーライドと初めて使う力故に、
不完全なものとして、最も狙うべきものに衝撃を届けることは叶わず。
(加減が甘い……!)
激情と共に、少女のもとまで駆け寄り──。
「……いま、たすける!」
──黒服Cと機械から少女を引き剥がし、距離を取る。
■黒服 > 正義のロボットさんは黒服Cから少女を剥がして奪還する事には成功する。だが円形の機械については安易に外してはならないと感づくかもしれない。
黒服C「待て、そいつを助けたいなら機械を外すな。今強引に外すと、その嬢ちゃんがでたらめな次元に飛ばされて高確率で死ぬ!」
黒服Cとしては、外される事は望んでいない。
だが、正義のロボットさんは少女が死ぬ事を望むか? という脅しをかける。
その脅しは真実であり、強引に外すと少女がでたらめな次元に飛ばされて死ぬ。
そんな時、黒服Cの持っている端末から突然声がした。
???『ほう……。そのパワードスーツ……実に興味深い。お主は、何者なるか? 我はワイズマン! 人は余を悪の科学者と呼ぶが、大いなる賢人である!』
■アルターエゴ・サイキッカー >
「こいつ……!」
無茶を通すべきではない、と判断したのでしょう。
滾る激情で、すべてを見据えます。
今にも風が駆け抜け、全てを灰とするような、強い怒りです。
「お前たちに名乗る名前はない!」
会話の否定。
問答する理由はないと、予め告げる。
■エルピス・シズメ >
(……また、イーリスに痛い思いをさせちゃった。)
(ぼくのせいで……まちがえたから。)
■黒服 > 端末『かっはっはっはっは!!! 名乗らぬか、それも良い。余は俄然、お主に興味を抱いた。今日のところはその小娘をいただくだけとしておこう。いくら攫っても実験体は足らぬからな』
ワイズマンと名乗る存在は、余裕を感じさせる高笑いをしていた。
そして──
■イーリス(4歳) >
正義のロボットさんに助けられた少女。
少女は機械のくまさんを抱きしめつつも、もう片方の腕で正義のロボットさんを抱きしめながら酷く震えている。
酷く脅えていているが、どうやら苦痛は収まっているようである。
しかし。
少女のからだが少しずつ消えていく。
「な、なんですかこれは……。わ、私の体がどんどん消えて……、嫌です……こんなの……消えたくないです……。正義のロボットさあぁん!! いやあぁぁあ!!」
そうして少女は消滅した。
■アルターエゴ・サイキッカー > 「……どこにやった。言え。
さもなくば──ぜんぶ、めちゃくちゃにしてやる。」
強引に外してはいない。
言葉通りにしたはずだ。
なのになぜ、消えた?
思考より先に感情が言葉を作る。
自分で何を言っているのかすら、理解できていない。
■黒服 > 端末『先程、余の手下が小娘につけたものは余が造った転移装置だ。人の生命を糧として発動する。実験中の装置ではあったが、今のところ特に不具合もないようだな、上出来。強引に外さないのは正解だった。もし外していたら、転移先が不安定になり、最悪次元空間に転移して死ぬ……。どこに転移させたかについては、教えてやる義理もないのでな。機会があればまた会おう。興味深きパワードスーツ君。かっはっはっはっは!!!』
端末から音声が途切れる。
黒服C「そういう事だ。では俺は帰らせてもらう」
なにくわぬ様子で帰ろうとする黒服C。
■アルターエゴ・サイキッカー >
「──連れていけ。」
黒服Cを引っ掴んで、声を荒げる。
「さもなくば────」
■黒服 > また黒服Cの端末から声が聞こえる。
端末『おっと悪かった。余とした事がうっかり伝えて忘れてしまった。許してくれ。そいつの体内に仕込んだ自爆装置のスイッチを先程押した。では今度こそさらばだ』
音声が消える。
黒服C「へ……?」
黒服Cはぽかんとしている。ご本人、そもそも自爆装置を仕込まれた自覚すらない。
■アルターエゴ・サイキッカー > 「──」
何も言う気にはなれなかった。
ただ、その場で立ち尽くしている。
「滅べ……何もかも虚しく──」
彼の雰囲気が、またひとつ変わります。
ただならぬ後悔と絶望が、感情が、2つ目の異能を起動させかけます。
強い『哀』と『悪』は、風に乗って、シスター・ヒガサの所まで届くでしょう。
──悲しき、滅びの風の前触れ。
名も知れぬ異邦の神が、すべてを終わらせる為に駆け抜けさせる風。
まだ発動していないが、それは間際です。
《ミュートスガイスト》。
二つ目にあたる、異邦覚醒異能です。
神秘覚醒異能に分類し、想起した感情に基づく神の加護を行使する力でした。
感情に紐づくため、コントロールは難しいものでしょう。
故に、堪え切れない感情に応じ、何かの神話が発動しかけてしまいました。
■黒服 > 黒服C「へ? え……?」
黒服Cはぽかんとしたまま爆発してしまった。
その爆発は、黒服Cを引っ掴んでいた正義のロボットさんを巻き込んだ。
■シスター・ヒガサ > そして『哀』と『悪』。
それらを感じたシスター・ヒガサは祈りを中断した。
「……!? とても哀しい気配……。祈りを捧げている場合ではないわね……」
《ラファエル結晶》への祈りが中断された事で、これまで《ラファエル結晶》から引き出していた聖なる力がまた戻っていく。
中断してでも、行かなければいけない。そう予感し、シスター・ヒガサは地下聖堂を出た。
■エルピス・シズメ >
滅びの風が時を駆け抜け、全てを灰と化すその前に──
──シスター・ヒガサが彼のもとにあらわれたことで、"それ"は中断されます。
「ごめん、なさい。ゆうかい、されました。」
「やくそく、まもれなかった……」
彼女の正義の夢を叶えることのできなかった、幼い少年の、懺悔の声。
強化外骨格があるはずなのに、中の幼き少年が透けて見えるような弱弱しさと、
そして懺悔と、悔悟がありました。
……10年前のお話は、もう少し続きます。
■イーリス(4歳) >
to be continued.
ご案内:「【10年前】常世島 タイムマシンで過去へ」からエルピス・シズメさんが去りました。
ご案内:「【10年前】常世島 タイムマシンで過去へ」からイーリス(4歳)さんが去りました。