2024/09/16 のログ
ご案内:「『数ある事務所』」にDr.イーリスさんが現れました。
■Dr.イーリス > 『数ある事務所』の応接間。
PCの前に置かれている椅子に座るイーリスは、工具を使ってエルピスさんが海で拾ってくださった真珠を加工していた。
「出来ました。黒真珠、ナナさんのイヤリング。白真珠、私のイヤリング。お揃いです」
イーリスは柔らかく目を細めて微笑んだ。
■Dr.イーリス > 二つの真珠のイヤリングをキーボードの傍に置く。
スマホに目を移した。SNSの画面が映し出されている。
「ああぁ! 凄く可愛らしいうさぎプリンです! ぷるぷる揺れるのがとても愛らしいんですよね! 異邦人街で新しく出来たカフェでございますね!」
うさぎさんプリン。うさぎさんの形をしたプリンで、特にうさぎさんがぷるぷる揺れる様子は凄く可愛らしい。
音楽に合わせてぷるぷる揺らす動画なんて、とても癒し。すき。
でも最終的には、そのお体をスプーンで切られてお口に放り込まれる……。
「コズミックエレトクロニクス社で開発されているパワードスーツの新モデルの新情報ではないですか! 素敵なデザインで、かっこいいです!」
イーリスは瞳を輝かせている。
アメリカ発足の世界的大企業コズミックエレクトロニクス社。パワードスーツなどの開発もしていて、メカが好きなイーリスもいつもチェックしていた。
今回の新情報は、一般販売されるパワードスーツの新モデルについての情報だった。
■Dr.イーリス > 「聖歌チャンネルの処刑配信……。確か、悪名高き覇伝洲幹部さんの配信チャンネルでしたか。悪趣味な配信を致しますね……」
SNSに流れてきた、動画配信の情報。
覇伝洲。麻薬売買、武器の密売、人攫いなど、様々な犯罪ビジネスを行っている半グレ組織。
幹部の木曽山清華さんが配信する動画は、視聴者も多くて、スパチャがよく投げられているらしい。
「……本日は、とても美人な方が処刑される配信」
思案。
本当に処刑を行うなら、風紀委員として報告を行うべきだろう。
処刑風のエンタメで、実際に処刑をしないなら、別段何かする必要はない。
■Dr.イーリス > 配信チャンネルを開く。
スラムの廃ビルで対峙する二人。その片方はイーリスもよく知る人物だった。
「な、ナナさん……!?」
イーリスは、眉をつりあげつつ驚く。
そこに映るのは、イーリスの大切な家族。
どうやら処刑を行う事自体は、本当なようだ。
ただし一方的な処刑というよりは、決闘。それでも処刑というぐらいなのだから、覇伝洲はナナさんを殺害するつもりなのだろう。
「ナナさん……どうか、生きて帰ってきてください……」
祈るようにスマホを握りしめる。
■Dr.イーリス > 「覇伝洲の子供を攫う悪事をどうにかしようとナナさんが立ち上がったのですね。立派です、ナナさん……」
ナナさんの意志もある。
ナナさんを応援しつつ、ナナさんが殺害されないよう祈りつつ戦況を見守る。
「あぁ……! ナナさん……!!」
下半身が吹き飛ばされるナナさんを見た時は、心配して声をあげてしまう。
ナナさんがずば抜けた再生能力を有しているのは知っているけど、実際に下半身が吹き飛ばされる光景を見るのは、凄く辛い……。
再生能力があると言っても、ナナさんには痛みがあるはずだ。
■Dr.イーリス > それでも、ナナさんは覇伝洲の清華さんに勝利した。
「……ナナさん、がんばりました。お見事です」
目を細めて微笑み、ナナさんの勝利を祝福した。
ナナさんが帰ってきたら、いっぱい褒めよう。
■Dr.イーリス > 「さて、覇伝洲……。よくも、うちのナナさんに酷い事をしてくださいましたね」
イーリスの瞳が凛としたものになる。
今回はナナさんが勝利して、話も合意がついているようなので、今は見守る事にしよう。
処刑配信とは言うものの実際には決闘。その決闘も綺麗に纏まっており、スラムでの決闘ともあっては、報告は野暮だろうか。
今回の件においては、風紀委員の介入で話がややこしくなる可能性もある。
だが──。
「あまりうちのナナさんにふざけた事をしていると、いずれ落とし前をつけていただく事になりますね。どの道あなた達はロクでもない半グレ組織。逮捕も風紀委員の権限です。私はナナさんと違って、あなた達のような手合いとの全面戦争も辞さないですからね」
覇伝洲による子攫いを止めるための決闘でもある。
イーリスは十年前に、落第街の巨大な組織に誘拐された事がある。その時は正義のロボットさんに助けられたが、子攫いという卑劣な行為を絶対に許せないのはイーリスも同じ。
紅き屍骸と全面戦争したイーリスだ。
今更、中規模の半グレ組織の一つや二つを相手にする事に、何の躊躇などない。
■Dr.イーリス > 少し気になったのは、覇伝洲の勧誘にナナさんがあまり悪くない反応示していた事だ。
覇伝洲の活動を見る限り、法より人情で風紀を正す事を信条にするイーリスとしても今のところ見過ごせない存在。更生の余地、情状酌量の余地あらばいいのだが……。
つまりナナさんが覇伝洲に入れば、大切な家族と敵対してしまう可能性も高い。
イーリスの瞳から光が消えて、天井を仰ぐ。
「事務所に集う人達は訳ありで、それぞれ生き方があります。しかし、あんまり考えたくないですね」
もしそうなったら、イーリスは彼女を正しき道に戻せるだろうか……。
ご案内:「『数ある事務所』」からDr.イーリスさんが去りました。