2024/11/01 のログ
リリィ >  
「むっ。」

怯んだ様子で半端に零れた声と息をのむ。
ちいさなへの字に曲がった口を暫し捏ねては極々軽くタックルめいて肩をぶつける姿がオレンジ色の光に照らされていたに違いない。



「即決!和菓子好きなんですか?」

それとも物珍しさからだろうか。
ちらりと少年の手元を見つめていたが、少年の言葉にそれはいけない!と慌てて並ぶお菓子たちを改めて吟味する。

「ぷり……いえ、タル……ケーキ……ぐぬぅ……!」

うんうん唸り声をあげ、眉間に深く皺を寄せて悩みに悩む。
悩み過ぎて段々前のめりになっているのにも気付かない有様だったが、結局プリンとマフィン、クッキーの三つを購入することにした。
みっつに絞るので精一杯だったのは、めちゃくちゃ苦渋の決断みたいな顔してるからよく分かる。



さて、そうしてお菓子を入手した後は、お行儀わるくも道の端で舌鼓。
時間が経つにつれて人は減るどころか増えているようだ。
やれあのヒトかわいいだの、あの仮装はどうなっているのかだの、賑やかな人混みを眺めては楽しい時間を過ごすのだろう。
仮装コンテストなんて垂れ幕を見つけたら少年の背中を押したりなんかもしたかもしれない。

そうして過ごした賑やかな夜が、楽しい思い出として刻まれるのならばいいなぁ、なんて。
口の端に食べかすをつけたポンコツ淫魔が思ってたかどうかは謎である。

武知一実 >  
「あんだよ……」

肩をぶつけられながらも眺めるランタンはどこか暖かく感じた。
もう少し大人しく見てられねえのか……!


「ああ、洋菓子よりはな」

別段甘いものが嫌いなわけではないが、選べと言われりゃ駄菓子を選ぶ。
そういや理由は自分でも考えた事無かったな……餡子が好きなんだろうか。

「ぐぬぅじゃねえよ……まったく」

よくもまあこんなに悩めるもんだ、と思いつつどら焼きを手に、リリィが決めるのを待つ。
次第に前傾になっていく姿を見れば、やっぱりストールを買い与えて正解だった、と自分を褒めざるを得ない。
来年はもう少し露出低い衣装を選んでやるべきだな……。

その後カボチャ菓子を選んだリリィと共に道端で甘味を補充する。結局どら焼きも半分はリリィの胃に納まったが、まあ想定内。
夜も深まっていく毎に仮装した人々も増え、賑やかな夜の街を十二分に楽しんだのだった。

こうしてオレの初めてのハロウィンは過ぎて行った。
来年もまた、同じように楽しめればと思いつつ……。

ご案内:「常世渋谷 トコヨ・ハロウィン・ナイト」からリリィさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 トコヨ・ハロウィン・ナイト」から武知一実さんが去りました。