2025/03/03 のログ
ご案内:「Gibson House 201」にネームレスさんが現れました。
■ネームレス >
――時は少し遡って、2月14日。
リビングのいつものソファで、腕にはネコマニャンを抱きしめながら午睡している。
なんとも無防備な寝姿だ。部屋着のまま。
いろいろと多忙に過ごしているのもあるだろう、それでもこうして時間をただ過ごすのは珍しいほうだ。
時刻を指定せず、来れたら来ての調子で要件も告げず相手を呼びつけたにも関わらず――
静かに過ぎる時間のなか、暖かい部屋には寝息ばかり。
コーヒーもお茶請けも飲みさしで、本当にすとんといってしまったらしい。
ご案内:「Gibson House 201」に緋月さんが現れました。
■緋月 >
「お邪魔しまーす…。」
と、部屋にやって来たのは和服に袴、レザーのマント姿の少女。
まだまだ寒い季節。防寒用の上着が手放せない。
やって来たのはいいが、呼び鈴を鳴らしても返事がなし。
とはいえ、お呼び出しもあった上、日時が日時である。
手にはそこそこ名前の有名な和菓子店の名前が入ったビニール袋。
中身は上品な包装紙で包まれた箱と、包みに入った三色団子だ。
いずれも生菓子。早い内に食べてしまいたいものなので、ちょっと無礼を承知で部屋に上がると、
「……疲れてるんでしょうか。」
リビングのソファで、以前にプレゼントしたビッグなネコマニャン人形を抱っこして寝ている部屋の主の姿。
此処で「こっそり撮影してやろう」とか考えないのが、和服の少女のお人好しぶりである。
「お茶か何か、あるといいですけど。」
とりあえず無礼ついでにビニール袋を手近なテーブルに置くとキッチンに足を運ぶ。
一番いいのは日本茶だが、駄目なら駄目で紅茶位はあると思いたい。
流石にこの島での暮らしも長くなったので、それ位淹れる事はできる。と、思う。
■ネームレス >
耳はとても良い。
遠くで響いた音や、雑踏の中でも小さな音さえ聞き分けるほど。
それが、扉の開閉にも、足音にも反応しない程度には寝入っているらしい。
家人は、コーヒーメーカーを動かして、挽いた豆から淹れるのは日常であった。
すぐのみたい時のため、とインスタントのソリュブルも用意している程度に、
常飲しているのは、酸味控えめのコクの深いコーヒーのほう。
果たして、自分の領域で紅茶を飲んでいるところは―――なかった。
――が。
おそらくキッチンに立ったことがあるなら、見慣れない缶がひとつ。
上品なラベルには"ASSAM TEA"とある。
ティーポットも用意されていた――正確でなくとも、緑茶の要領で淹れられるだろう。
あとキッチンに目立つのは、製菓材だ。
パイやクッキーを時折振る舞うこともある程度に、簡単なものなら作れるが、
デコレーション用のペンなどは、普段は置いていないもの。
■緋月 >
「――あれ。」
キッチンに向かえば、見慣れない缶。ラベルも上品。
少し失礼して缶を開け、軽く香りを嗅げば、甘い花か果実を思わせるような香り。
缶の雰囲気から見ても、中々お高いお茶と見た。
見れば、ティーポットもある。これでお茶の用意でもするつもりだったのだろうか。
「…紅茶の淹れ方に詳しくないのが、ちょっと申し訳ないですね。」
緑茶などは兎も角、紅茶などの厳密な淹れ方は分からない。
とはいえ折角あるものだ。お菓子のお供には丁度良い筈。
缶に蓋をし直し、ヤカンを探して先ずはお湯を沸かす所から。
「それにしても…何を作ったんでしょう。」
ヤカン探しとお湯を沸かす用意の間に、キッチンに目立つ製菓材の類は目につく。
流石にこれらがお菓子作りの品だとは、少女も分かっていた。
つまり、何かをこれで作っていたという事。
「……本人が起きてからにしましょうか。」
好奇心任せにそこらを漁るような真似はしない。
とりあえず、今はお茶の準備である。カップなども探しながらお湯を沸かし始めにかかる。
温める分のお湯も要る筈なので、沸かすお湯は多めに。
■ネームレス >
いつものケトルは相変わらず熱伝導が良く、
すぐにしゅんしゅんと湯気を立てて鳴き始める。
だいぶ綺麗に整えられてはいるが、生活感を感じさせる品々。
壁のフックにかけられているミルクパンは、普段は弱火にかけられて、
クリーム色のエッグノッグをふつふつと揺らめかせているものだ。
茶葉の缶は開封済みを示すように封のシールがやぶれていて、
透明なガラスのティーポットは、茶葉の動きや水の着色が楽しめるつくりになっている。
趣きとしては家主の好むところで、自分用……と買ったことはわかりやすいかもしれない。
ポットをしっかり暖めてやれば、準備も万端だ。
生真面目で丁寧な仕事に応えないような、気難しい茶葉ではないようだった。
スプーンすりきり、2・3杯。
緑茶と同じ加減でやっても……色合いはなるほど良い感じになる。
水色は、どこか血液を思わせる深く美しい赤。ぶわり、と花開くように香りが立つ。
■緋月 >
部屋の主は何分、公の顔が顔である。
オマケに仕事も色々と多い。
時折しっかり食べて寝ているのか、心配にならないと言うと嘘になる位には心配する事もあった。
普段であれば気配や音に敏感な筈が、ネコマニャンを抱き枕にすっかり熟睡状態なので疲労が心配である。
「――と、こんな位ですかね。」
一度温めておいた、透き通ったティーポットに茶葉を入れ、お湯を投入。
勝手があまり分からないので、緑茶などの要領でやる事にしたが、幸いと正しい手順でなければ
駄目になるほど融通の効かない難物ではないようだった。
「……いい匂い。」
そんな事を呟きつつ、色と香りがついていくティーポットの中身を眺める…と、暢気をしてはいられない。
ティーカップふたつを持ってきて残りのお湯を注ぎ、温める事も忘れない。
用意が出来たらトレイに載せて、ゆっくりリビングへ持ち運ぶ算段だ。
■ネームレス >
すん、となにかを嗅ぎ分けるように鼻を鳴らし、
まつげが震えてすぐ、瞼が重たげに開く。
いつものように起き抜けは碧眼で、何度かの瞬きのあと、炎の黄金に。
その瞳に、お茶を用意する姿はしっかりととらえられていたようだが、
それに驚くことも、なにか言葉を差し挟むこともなかった。
ここにいる――ことに、あるいは、だいぶ慣れてきたのかもしれない。
護衛が傍にいるならばこそ、熟睡もできよう。
「……おはよう。 いま何時……?」
身体を起こして、ぐいーっと伸び。
完全に部屋着。手ぐしで髪を整えながら、まだちょっとおねむな様子。
「すごくいいニオイした」
■緋月 >
「おはようございます。
ずいぶんとお寝坊さんでしたね。」
揶揄う、というには少しばかり柔らかい調子の声。
運んできたティーポットと二人分のティーカップをそっとテーブルに置く。
「もう午後の3時過ぎですよ。夜、眠れなくならないか心配になります。」
伸びをする部屋の主に、軽く示す時計表示状態のオモイカネ。
既に15:00を割り合いと過ぎてしまっている。
おやつの時間にはちょうどいい時分だろう。
「これでも、今日が何の日か知らない訳ではないので。
少し前から随分と商店街も賑やかでしたし。
…生憎、あまり洒落た品や手作りの洋菓子なんかは得意ではないので、申し訳ないですが。」
お茶の用意が済めば、テーブルに置きっぱなしのビニール袋から中身を取り出す。
そこそこ名前の知れている和菓子店の名前が入った包装紙に包まれた箱と、
竹の皮…を模した包装で包んである三色団子の箱。
勿論、透明なプラ容器ではなく、しっかりした箱入りだ。
「台所、ちょっと失礼しました。いい具合になりましたし、お茶の時間にしましょう。」
紅茶に和菓子が合うかはともかくとして。
■ネームレス >
「いろいろ済ませたら、夢の世界にお呼ばれしちゃった。
……かおにアトとかついてない?指とかの……」
自分の頬を撫でつつも、悪くない目覚めではあるらしかった。
もぞりとソファにスペースをつくって、彼女が座るところを確保。
「出迎えなかったばっかりか、おめざまで用意させちゃって悪いね。
……、……あ、んー」
何の日か知ってる、と言われると、ぼんやりしていた瞳がぱちっと開いた。
少しばつが悪そうに顔をそむけてから、
テーブルの下に置いてあった小さいブリーフケースを取り出す。書類を持ち運ぶためのもの。
「これは、あした。開けてくださーい」
真面目な用事。なので、特別な日が終わったあとに。
急ぎの用事ではないらしく、見せたケースを、彼女側のテーブルの下にするりとすべらせた。
「あっ! いろとりどりでカワイイやつじゃーん。
これ気になってたんだよねー。んで、そっちは……」
笹葉の包みから現れた三色に喜色が咲いた。
あまり和菓子の類には親しんでいないようだ。
意味ありげな箱も――視線が傍らの緋月に移り、にまりと笑う。
「あとのお楽しみと見た」
■緋月 >
「よだれの跡が。
――冗談ですよ。」
つい悪乗り。勿論そんな跡はない。
と、取り出されたケースを目に、言葉を耳にすれば、少し真剣な雰囲気。
「分かりました。明日、ですね。」
滑って来るケースを器用に手で止めると、忘れないようにマントの近くに。
お団子を目にしてくるりと表情と雰囲気が変わる様子に、少女の方も和む。
「生菓子なので、今日中に食べないといけないのは一緒ですが。
お団子とお茶で寛いでから開きましょうか。」
ちなみに三色団子はよくある桃・白・緑…ではなく、桃色の代わりに黄色の団子が刺さっているもの。
中身も、それぞれごまに胡桃、つぶの餡が包まれている、ちょっと贅沢な代物だ。
「それじゃ、頂きましょうか。」
ポットから紅茶をそれぞれのティーカップに注げば、漂う良い香り。
これはお菓子も進むだろう。
■ネームレス >
親指で自分の唇のまわりを拭う動作。
釣られたのか、わざとなのか。じぃ、と薄くひらいた流し目で見つめる。
ネコマニャンをつまんでひょいと持ち上げてみる。
……うん、よだれの跡はない。良かった。ぽすん、と落ち着けた。
「あ、でもいちばんうえのやつ。桜じゃなくて黄色……キャラメル……?
この日のコトは知ってるんだね。てっきりキミは……うん、知らない想定でいたよ」
見通しが甘かったな、なんて笑いながら、カップを取り上げる。カップも耐熱ガラス制だ。
鼻先を近づけて香りを楽しむと、表情が安堵に似て綻ぶ。
ひとくちすすれば、眠って渇いた喉に、暖かな滋味が染みた。
噛みしめるようにして眼を閉じてしばらく……ふう、と息を吐いて。
「あれだ」
ソーサーに戻すと、指を立てて。
「……けっこうなお点前で」
だろ?と言いたげに、顔を向ける。とくいげ。
■緋月 >
「学園でも、割と噂で回ってきますからね。広告も出てますし。
あ、黄色のものは人参を使って色付けしたそうです。」
バレンタインデー。その噂がお年頃の学生たちの口に上らぬ訳がない。
誰に送るだの、誰から貰えるかだの。
そんな噂を耳にして、広告も打たれていれば、如何に世事に疎い少女とて情報は仕入れ、理解はするもの。
「練習の時間がなかったですし、手作りは諦めました。
その分、良い所のお菓子を選んできたつもりです。」
「手作りの良さ」が無理ならば、「売られている物の良さ」で勝負をかける。
そう言うやり方もありだ、と、これまた情報を仕入れていた。
詳しい事を知った時点で、満足する出来の品を作るだけの試行錯誤に割ける時間がなかったので、
割り切って美味しいお菓子の店を探す事に時間を当てた和服の少女であった。
そして、中々時代のかかったお茶の評価が来れば小さく笑い返す。
「紅茶の類の淹れ方が分からなかったので、ほぼ緑茶のやり方でしたけど。
そう言って頂けるなら有難い事です。」
さ、と、一緒に持って来ていた小皿に、三色団子を上品になるよう盛り付け。
「お茶のお供に、どうぞ。」
■ネームレス >
「日本だと、女の子が渡す側なんだよな」
流石に数年いるのだ。異文化への順応もそれなりにしている。
そのうえで自分が故郷の様式に拘るのは、自己表現の一貫でもある。
チョイスの基準には、ふぅん、と気のない返事だが、機嫌は良い。
ずいぶん真剣に選んでくれたものだと、嬉しくないはずもなかった。
「ちょっと濃いめで、いい感じの加減だな。こんどからお茶はキミにお願いしよっか。
……紅茶は、ミルクで煮出したりするケド。案外、緑茶でも美味しくなるかもね」
淹れ方が似通ってるなら、案外そういうのもありかも?
なんて、ひとくち。キャロットで着色されたらしいてっぺんの黄色に歯を立てて。
串から引き抜いて口に含むと……。
「……あ、美味しい!なんか香ばしい感じ……
――――ん、……こっちは味違う。ナッツ……クルミだ。
これみっつとも味違うんだな。こういうの楽しくてスキ」
三色団子は、いたくお気に召したらしい。
「先手を打たれたから、キミの本命のまえにボクの手札を切らないとだな。
紅茶に合うヤツ用意してて良かったよ」
空の串を、専用の台にからん、と休めて、立ち上がる。
台所のほうに向かっていく。どうやら用意はあるらしかった。
■緋月 >
「らしいですね。休み時間に、他の生徒の皆さんが色々と話してました。
流石に誰に渡すとかまでは話してませんでしたけど。」
答えつつ、少女もティーカップを傾けて紅茶を一口。
良い香りが鼻に抜ける。上手く淹れられたようで一安心。
「緑茶がどうかは知りませんけど、抹茶ラテ…でしたっけ。
あれは人気みたいですね。私は飲んだ事ないですが。」
人気であるのならば合うのだろう、とは思う。
色々と未知の組み合わせであるという印象は否めなかったが。
流石に緑茶で試す度胸はない少女だった。
「はい、中の餡がそれぞれ違うんです。
胡桃に胡麻の餡、それとよくある小豆の餡子ですね。」
個人的には小豆餡入りの緑の団子が好みの少女。
よもぎ餅とかも好きなタイプである。
「お茶の用意をしてる時に、もしかして…と思ってましたけど。
期待させて貰いますね。」
あまり深くは突っ込まず、お茶と三色団子を交互に頂きながら、部屋の主の「手札」を待つ。
それにしても美味しいお茶とお団子。ほ、と思わず満足げな吐息。
■ネームレス >
「ああ、カフェのメニューにあったな。飲んだコトある。
シブいのかと思ったけど、まろやかで甘くてさ。
キミは苦いお茶とかイケちゃうタイプだケド、甘いのもスキだろ?」
ケーキとかパフェとかも好んでいると記憶しているし、エッグノッグもだ。
……スパイス系の香りが、独特なものはあまり得意ではなかったようにも思う。
「ボクのトコだと、女性に感謝を伝える日なんだ」
棚にしまってあったものは、正方形のケース。
ケトルに残っていたお湯をマグカップに注ぎ、水で適温まで割ると、
チョコレートのペンを口を上に向けて差し込み、ケースとともに持ってきた。
「カンバセーションハート、っていうんだ。
ハート型のお菓子にメッセージがついてるヤツが、お約束。
砂糖を固めた感じのヤツなんだケド……手作りだと難しいしな」
大きなハート型のクッキーだった。
オーソドックスなバターと砂糖に小麦粉。黄金色の生地がさっくりと焼けている。
それだけのシンプルな焼き菓子に、ペンが添えられているというコトは。
「ちなみに義理って文化はない。
なんかやたらもらったケド、ボクにとっちゃそういう日じゃないんだな」
秘めた想いを打ち明けるとか、そういう日でもなかった。
適温で融解したペンをカップから抜くと、
「キミにとっては?」
振り向いて、問うてみる。
■緋月 >
「うぅむ…それでは次に機会があった時にでも、挑戦してみましょうか。
全く未知の世界です。」
お言葉通り、甘いもの大好きな少女である。
郷にいた頃の甘味は希少品であった為、その反動というのもあったが、元から甘味が好みでもあった。
自覚したのは甘味が一般的な環境に来てからだったが。
「ふむ、その辺りはお国柄の違い、というものでしょうか。
学園では時折、「お菓子会社の陰謀」という声も聞こえてきましたけど。」
口にするのは大体男子生徒だったような記憶もある。
それはそれとして、持ってきたものには軽く目を丸くした。
「――随分と、大きいですね。
これを作っていたんですか。」
流石に驚く。シンプルとはいえ、物が大きいのだ。
そうして伝えられる事に、まずは紅茶を一口飲んでから。
「――私も、義理で渡す様な事はしませんよ。
感謝を以て、というなら、そちらの文化に似たような所です。」
其処まで言葉にして、目を閉じながらまたお茶を一口。
「…言葉が足りなかったら、すみません。
もっとハッキリ言え、というなら、改めて言い直します。」
散々血の色の髪のひとに言っている事だった。
言葉が足りなかったのなら、我が振りも正さねばならない。
空気が読めなくてごめんなさい、と、怒られた子供みたいな小声も少し。
■ネームレス >
「チョコを贈る日……ってなってるのは、お菓子メーカーのマーケティングみたい。
あっちでもチョコはわりとポピュラーなギフトだったとおもうケド……」
あくまで、贈り物のひとつだ。
「パパはママに花束とか、よく贈ってた。でもほら、花は世話をしないとだし?
世界で一番美しい花がそうやって花を贈るってのも、なんかヘンだしな」
造花は少し、味気なく思えて。
なんて笑いながら、バター生地にスイートチョコが丁寧な筆致で動いていく。
無地にメッセージが記されていって、ただのクッキーがカンバセーションハートへ化身する。
彼女の返答にはすこし気を良くして、鼻歌交じりにペンを走らせていたものだから。
「……いわないケド」
少し不思議そうに、そちらを見た。
自分のペースを崩さず、崩さないこの存在は、その直後に表情を緩めて。
「もしかして、照れていらっしゃるのカナ?」
■緋月 >
「まーけてぃんぐ。」
また難しい言葉が出て来る。幸い、授業で習った所ではある。
「……確か、商品が売れるようにするための活動など、でしたっけ。
陰謀とまで大層なものではないけど、企業努力…というものですか。」
それなら納得。売れなければ大変なのだ、その為の努力は惜しまない方がいい。
「気持ちを込めて贈るのが大事で、形は問わない…という事ですか。
しかし、こう大きいと…その、食べる時に、割らないかが心配ですね…。」
形が形である。特にど真ん中から割るのは、とてもよろしくないように思える気持ち。
そして、ご指摘を受ければ少し顔を赤くして口元を組んだ腕で隠す。
「………散々自分で言ってる事ですから。
照れるというか、気にはなります。同じ事して、心配をさせないか。」
それを照れているというのでは。
ともあれ、体育座りで口元を隠しつつ、すらすらとクッキーの上を滑るチョコペンの軌跡を眺めている。
■ネームレス >
「それが、ひとつの文化的慣習にまでなったワケだ。すごいコトだよな。
異文化ではあるケド、想いを伝えるきっかけの日ってのは…素敵だと思うしね」
後世の創作も大きかろうと、恋人たちを守護して殉教したとされる聖人の逸話は、
現在に生きる者たち、それも宗教圏にないとなればノイズになってしまうのかも。
日本という国は、そう、なにかと……理由を探している国、でもあるように思えた。
常世島でも、しばしばそういう気風を感じるところは、ある。
「…………」
横目でその様子を伺いながら。
器用にも、ペンを握っていないほうの手でほっぺをぷにぷに。
「かーわいい」
わかりやすくはっきりと伝えた。上機嫌だ。
そうして、ハートのうえに綴られるもの。
"Without contraries is no progression"――とある。
「知らぬまま果たされぬゆめ雪と墨、とかな」
異なるもの、相反するもの。
そうしたものに触れなければ、完成し得ない、理想は実現しない。
始まりは共鳴から始まり似たように道を歩みながらも、
自分に持ち得ぬ刃を秘めた少女もまた、自分を随分と成長させてくれている。
そんな感謝の意であるらしい。
「チョコ、固まったかな。どうぞ召し上がれー。
割らないように、はしっこからじょうずに食べてね。
……さて、こいつは開けていいのかな?」
さっきから気になっていた、意味ありげな箱。
知っている店名が箔を押されているものだから、これもお菓子だろうけども。