2025/11/01 のログ
ご案内:「居住区の一角にて」に大神 璃士さんが現れました。
ご案内:「居住区の一角にて」に神樹椎苗さんが現れました。
大神 璃士 >
学生・教員の居住区は広い。当然ながら、其処に立つ物件も様々だ。
どれだけの諸費用がかかるのか分からないようなマンションから、防音性能などが大丈夫なのか不安を
覚えそうなタウンハウス状の集合住宅、小さいながらも贅沢な一戸建てまで。

そんな居住区の一角に位置している、とあるアパート。
建築費用などを安く済ませる為なのか、外壁は飾り気というものがまるでない、灰色の壁。
割と年月が経っている為か、補修跡が所々に見られる。
新築時代は兎も角、現在では何処か草臥れた感の否めない見た目の、アパートだった。

「…今日は、思ったよりも早く帰って来られたな。」

秋の日、太陽が沈む時間が日増しに早くなっていくこの頃。
珍しく早い帰宅の途に就く事が出来たのは、黒いジャケットに制服姿の青年であった。
業務外であるので、風紀委員の制服は来てはいない。

普段よりも業務が早く終わったとはいえ、辺りはすっかり薄暗くなってきていた時間帯。
もう少しすれば、街灯が仕事を始める頃合いだろう。

神樹椎苗 >  
 ――秋風で夜も冷えるようになりました頃合い、いかがお過ごしでしょうか。

 居住区の片隅、街の喧騒からも離れた、静かな一画。
 暗くなった街角で、人の往来も殆どない大きくはない通り。

「――――」

 黒いドレスの小娘が、草臥れたアパートの少し手前に落ちている。
 どこからどう見ても行き倒れ。
 ただ、それにしてはやけにいい物を身につけている。
 しかし、ピクリとも動かない辺り、やはり行き倒れの落とし物のようだった。
 

大神 璃士 >
さてあと少しで住居のアパートだ、食事はどうしよう――などと考えながら歩いていた黒いジャケットの青年。
住居が見えてきた所で、少し早く仕事を始めたらしい街灯が、「それ」を照らしているのを思い切り発見してしまった。

「………………。」

アパートの少し手前。黒いドレスを着た行き倒れが、街灯に照らされて倒れている。
何を言っているのか自分でも分からなくなりかけたが、紛れもない事実だ。
二回ほど見直したが、生憎と幻覚の類でもなさそうである。

「……何時の間に、この辺は行き倒れが出る程治安が悪くなったんだ。」

日々、という訳ではないが、それでも巡回やら緊急出動やらをしっかりこなしているという自覚はあった。
自慢をするでも誇るでもないが、その業務の成果を思わず疑いたくなる光景である。
しかし、発見してしまった以上は何とかせねばならない。

「………。」

倒れている少女…というか、背格好としては幼女か…。
兎も角、行き倒れに向かって歩を進め、仰向けに寝かせ直して脈のチェックがてら、頬を軽く叩いて
反応を確かめてみる。
黒いレザーのグローブをつけた手が、ぺちんぺちんと見た目幼女の頬を軽く叩く小さな音が響く。

神樹椎苗 >  
 黒いドレスの落とし物は、ひっくり返されても、ほとんど反応を示さない。
 背格好の幼さに見合わないドレス姿で、ぐったりと転がされるまま。
 脈は問題ないようで、呼吸も出来ているが。

「――ん――ぁ――」

 頬を叩けば、薄っすらと目を開けるが、いまいち焦点が合っていない。
 か細い声は、喘ぐよう。
 青年の嗅覚を擽るのは、染み出るような薄い血の匂い、化粧の匂い。
 そして、見た目にそぐわぬほどに濃い、濃密な雌の匂いだった。
 

大神 璃士 >  
「――生きてはいるか。」

確認がてらに軽く声をかける。
脈も呼吸も問題なし。……問題があるとすれば、嗅覚に来る方。
推測だが、不届きな輩に狼藉にでも遭ったか、と疑いたくなる。

(……居住区はいつから治安が悪くなったんだかな。)

風紀委員としては頭痛を感じる事態だが、兎も角放置は出来まいと判断する青年。
何しろ、ここ数日で夜は寒くなって来ている。放置は凍死の危険が現実的なレベルだ。

「仕方ない…少し我慢して貰うぞ。」

色々と危ういかも知れない幼女を左手で担ぐように肩に抱き上げ、そのまま自身の部屋に向かう。
右手が空いていれば、部屋の施錠の解除も難しくはない。
そのまま部屋に運び込んだら、すぐさまエアコンを全開にした上で、普段使っているベッドに寝かせ、
しっかり毛布と布団をかけておく。
拾い「者」については、とりあえずは温めて様子見の構えだ。

神樹椎苗 >  
「ぅ、ん」

 やけに艶っぽい呻き声と、どことなく熱の籠った吐息。
 狼藉された、何か薬を使われた、そう言われても納得するような様子かもしれない。
 青年が担ぐように抱きかかえると、雌の匂いは寄り濃く、蜜のようにまとわりつくようだった。

 ベッドに寝かせられれば、しばらく、うなされる様に荒い吐息が漏れていたが。
 そのうち、うっすらと目を開けて、ぼんやりと周囲を見渡した。

「ん――、ぁぁ」

 ぼんやりと、紅潮した表情で部屋を眺めて、青年の姿を見つけると、小さく声を漏らした。
 

大神 璃士 >  
「目が覚めたか。」

視線が向けられた事に気が付けば、軽く声をかける。
相変わらずあまり愛想のよくない雰囲気ではある。

(「匂い」がやたらと鼻につく…今日が満月でなかったのは幸運だったな。)

もしも満月であったなら、双方とも色々と只事では済まされなかっただろう。
月齢としては、既に半月を上回っているが、充分に自制が効くレベルの範疇だ。

「……さて。」

軽く居住まいを正して、ベッドに横になっている少女を見返す。

「こちらの言葉は分かるか?
 受け答えが出来るなら、返事…が無理でも、何かしら反応を貰えれば助かる。」

既に本日の業務は終了したというのに、風紀委員の姿勢に入ってしまう自分に内心で苦笑してしまう。

神樹椎苗 >  
「ああ」

 青年の言葉をぼんやりとした意識で聞きながら、口から漏れ出たのはやけに艶のある、熱の籠った吐息。
 自分の状態が異常なのは理解できていたが――それがなぜなのかは、判然としなかった。

「ええ、まあ――」

 青年の言葉に答えながら、毛布の中から、無意識に腕を伸ばしていた。
 青年に触れようと、何かを求めるかのように。
 

大神 璃士 >  
「――――。」

少し考え、ベッドに寝ている少女の方にレザーグローブをつけたままの左手を軽く伸ばしてやる。
とりあえずこちらの言葉は認識できている、と思えそうだ。
どう事情を聞けばいいか、と多少悩みながらも、取調の雰囲気が抜けない黒いジャケットの青年である。

「……治安が悪い場所ではなかった、とは思うが、何であんな場所に居た?
言い辛い目に遭ったなら、風紀委員会の適切な窓口に口利き位は出来るが。」

男性に話すにはデリケートな事情というものもある。
当然、風紀委員会には女子の委員もおり、「そういった」事件に巻き込まれた者の応対に
当たる事も少なくはない。
同性でなければ話せない事柄などは、世の中珍しくもないものである。

神樹椎苗 >  
「ああ――いえ――」

 青年の手を無意識に掴む。
 そのまま、弱弱しく、自分の方へ引き寄せようと、細い小さな手で引っ張っていた。

「べつに、そういう――ああいや、そうでないとも、言えねーんでしょうか」

 自分が直前に何をしていたのか、記録(・・)にノイズが掛かっていて、奇妙な気分だった。
 最近、こうした不調(エラー)が多い。
 本体(・・)との接続に不具合があるのか、それとも、別の何かの影響か。

「たぶん、クスリか、魔術か――普段なら、影響、ねぇんですが」

 いつも通りの口調で話しているつもりが、男を誘うかのように艶っぽく、甘ったるい声になっている気がした。
 疼くような、この発熱のせいだろうか。
 

大神 璃士 >  
「薬か魔術、か……。
違反組織…ではないよな。連中だったら無事に済ませる訳がない。」

性質の悪い連中であれば、重りをつけるかコンクリートで固めて、海の中へさようなら、も普通にやらかすだろう。
そういう目に遭わず放置で済んだ、という事は、恐らく不良か性質の悪い二級学生の可能性が大きい。
もし犯罪者だとしても相当に迂闊な輩辺りだろう。

(顔貌は決して悪くない。そのまま拉致されててもおかしくはなかっただろうからな。)

引っ張られるまま距離を詰めつつ、そんな事を考えてしまう。
業務終了だというのにすっかり風紀委員の方の思考にスイッチされてしまった。

「……誰にやられたとか、そういうのは分かるか?
言いたくないなら、話し易い相手を紹介する位はする。
流石に今すぐ…は辛そうだから、明日辺りになるだろうが。」

言いながら、風紀の窓口か、それでなくても生活委員会あたりに連絡を入れなかった事を
今更だが少しばかり後悔していた。
最も、肝心の相手がこの様子である。無理をさせるのはよろしくないのだろうが…。

神樹椎苗 >  
「ん――」

 とろん、とした目で見上げながら、青年の手を毛布の中に引っ張り込んで、両手で握っていた。

「気にしなくて、いーです。
 ごーほーですし、一応、ゴーイの上、ですし――んっ」

 そう言いながら、むず痒そうな声が上がる。
 全身が疼いて、身体が熱い。
 普段なら流れない汗が、身体から染み出て、それがますます、甘く香る雌の匂いを濃くしていた。
 年頃の少年、ともすれば少女であっても、理性を揺らすような匂いだった。
 

大神 璃士 >  
「合法……。」

少女の返事に思わず眉を顰めてしまう。
それはそれで、相応に問題があるように思えてならない。
主に発言者の背格好など。

「……そう口にするという事は、風紀委員会の手の届かないような相手か。
ああ、気にするな。雑用係のような立場だが、これでも風紀委員だ。」

世の中、風紀委員でも手の出せない所と言うものはある。
風紀委員の力で清く正しい学園都市を――などと甘っちょろい理想論は、端から持ってはいない。
そういう理想論を活動の気力の源泉にするには、既にお釣りが来るほどに溝の中を浚ってきてしまった。
無論、理想に燃える他の委員達をそれで否定するという気持ちなど毛頭ないが。

(…それにしても、凄い匂いだ。
気を入れてなければ…いや、嗅覚の強くない人間でも、耐えられるかどうか。)

――全開にした暖房の影響も少しばかりあり、じわ、と軽く額に汗が浮いてしまう。
最早何かしらの異能か何かを疑うレベルの「匂い」だ。

神樹椎苗 >  
「あー、まぁ」

 そんな溜め息のような声にすら、熱が籠っていた。
 青年の手をゆっくり自分の身体に引きよせて。

「手は出せても、相手にしねー方がいいやつら、ですね。
 出資者ってのは、たいてー、どーしよーもねえやつらですか、ら――っ」

 青年の手を体に触れさせると、その想定以上の衝撃に、身体が跳ねた。
 全身が痺れるような、脳まで揺さぶられるような衝撃だった。

「――っ、あー、これは」

 なんとなく、自分の状態が分かってきたような気がする。
 これは、発情(・・)しているのだ。
 植物に近い生態の小娘からすれば、香りを発して受粉を促しているようなものだろう。
 異能と言えば異能、より正しく言うのであれば、神権(・・)のようなものだろうか。

「お前、しぃから、離れたほーが、いーです。
 というか、外にすてちまうのを、すいしょーしま、す――っ」

 そう言いながらも、青年の手が触れたところから、どんどん熱が広がっていく。
 呼吸も荒くなっており、その表情はいつの間にか蕩けていた。
 

大神 璃士 >  
「離れた方が……ああ、この「匂い」の問題か…。」

最初に発見した時から、ひどく鼻に来る甘い「匂い」。
どうも、当人の方でその原因らしいものに思い当たったようだ。
それは良いが、流石に外に捨てろというのは風紀委員としてもあまり気持ちのいいものではない。

(……どれだけ効くか分からないが、やってみるしかないか。)

軽く息を止め、精神を集中させる。
出来れば呼吸が欲しいが、この「匂い」を過剰に吸ったらどんな影響が出るか分からない。
まだ少しばかり余裕はある所だが、不測の事態は避けたい所だ。

(今は学外だからな…人目を気にする必要もない…!)

集中と同時に、練り上げた自身の「波動」を先ずは自分の頭に向けて、洗浄するような形で一気に流し込む。
種族的に的確な「特効」をかけてくるようなものなら兎も角、単純に発情を促すだけなら、まだ抵抗が効く。
その間に頭の中を一息に洗い流して、余裕を保てるようにしておくのだ。
勿論、ある程度無理は通すので鋭い頭痛辺りは伴うが、理性が押し流されるよりはマシな程度である。

――青年が自身の身体に波動を流した瞬間。
少女が引き寄せている左手から、一瞬、激しい熱が風のように放たれる。
敢えて例えるなら、野性の獣が狩りの時に放つような、緊迫した雰囲気の熱。
密着していれば、それを感じ取る事も容易いものだろう。

神樹椎苗 >  
「お前――」

 青年から伝わった熱に、少しだけ、意識の中の雑音(ノイズ)が薄くなった。
 青年の手を改めて両手で握り、ふぅ、と息を吐く。
 同時に、いくばくか、青年の感じる匂いは薄くなっただろう。
 青年自身がどこまで耐えられるのかは分からないが、多少は楽になっただろう。

「お人好しなやつですね。
 馬鹿を見てもしらねーですよ」

 そう言いながら、青年の手を強く引っ張り、毛布の中へと引きこもうとする。
 抵抗するかどうかは青年次第。
 ひ弱な小娘の手、その気になれば簡単に振りほどける。
 

大神 璃士 >  
「お人好し、大いに結構。
拾った相手を捨てた、なんて真似は「ニンゲン」としたら最悪だろう。」

左腕を引っ張り込まれながら、少女に対して青年はそう返事を返す。
頭痛の反動はあるが、それも込みで理性は充分強まった。
後は――駄目だった時は駄目だった時、と割り切る覚悟位だろう。

「さて…このままズルズル流されるままと、効くかどうかは分からないが頭が少しなりすっきりする手立て。
どっちの方が好みだ? 後者の場合、ある程度痛みが来るかも知れないが。」

自分の身体は兎も角、他人への「干渉」は説明と了承を取らねばなるまい。
前者であれば…「時間切れ」までの時間稼ぎを続ける位である。
もしかしたら生体波動の使い過ぎで気絶するかも知れないが、その時はその時だ。

ともあれ、青年はその決断を少女に一任する事にした。

神樹椎苗 >  
「ふふん、そこらの人間よりもニンゲンらしーです。
 悪くねーですね、イヌガミ」

 頭が働いて来れば、徐々に理性も戻ってくる。
 とはいえ、全身を焼くような疼きが消えるわけではないし、身体から発される匂いが、甘い蜜のような汗が止まるわけでもないのだが。

「んー――しぃは、前者が好みですね。
 まあ、お前が乗り気なら、ですが?」

 そう言いながら、抵抗されないならそのまま毛布の中へと引っ張り込むだろう。
 小娘と近づけば当然、蒸れた毛布の中に入れば強烈に、情欲を誘う香りが青年の脳を強烈に揺さぶるだろう。
 

大神 璃士 >  
「――その呼び方については、後で少し話し合いの時間が必要かもな。」

この段階で、明らかに只の人間ではないと分かる少女。
一時とはいえ、能力行使の反動で「刻印」から漏れが出てしまったので、それを感知して
察されたと考えても…違和感は然程でもない。

「生憎、前に似たような事をやってしまっていてな。
あの時は諸々の事情で碌に抵抗も出来ないまま、その場の勢いに流されたが…似たような事があったら、
なるべく流されないようにしようと心がけていてな。」

毛布の中に引っ張り込もうと自身の腕を引く手になるべく抵抗しながら、横になっている少女の
首の後ろに手を回し、指先から自身の生体波動を流しつつ、少女の「点穴」に探りを入れる。
人間でなかったとしても、意外と似たような「孔」を持つ者がいるというのは風紀委員の業務の中で分かった事。

(さて…引っ張り込まれるまでに、見つかればいいが。)

こればかりは、主に相手の反応と修行で培った自身の勘頼みだ。

神樹椎苗 >  
「そうですか?
 なら、二人きりの時だけにしておきましょうか」

 くすくす笑うだけの余裕が出来た小娘は、大分、正気に戻っている様子ではある。
 ただ、それはそれ。
 生理現象、生態に関しては、自己制御できるものでもない。

「ふむ、紳士ですね?
 しぃみたいなチョーゼツ美少女を相手に大したもんです。
 まあ、流石に密着しちまえ――ひゃぅんっ!?」

 首を触れられた途端、蕩けるような衝撃が神経を焼く。
 大きな嬌声を上げて、身体を震わせ、小さな両手に力が入った。

「はぁっ、んぅっ」

 ある意味で、反応は良好だった。
 青年が『点穴』を探るたびに、小娘の身体は跳ね、子供らしからぬ嬌声を上げ、震える。
 青年が小娘の『発情』を抑える秘孔を見つけた時には、すっかり、その呼吸は乱れ、顔は赤く染まり、ぐったりと力が抜けているだろう。
 

大神 璃士 >  
「…少々複雑だが、緊急避難という奴だ。悪いが少し我慢をして貰うぞ。」

現状の少女の敏感さに助けられた形になった。
反応が良いので、点穴の位置の確認が速やかに進む。
その代償ともいうべき事態には――申し訳ないが、我慢して貰うしかない。

目的の「孔」と思しい箇所を見つけた所で、少女はすっかり呼吸が乱れ、力が抜けている有様。
絵面があまりにもあまりで申し訳ないが、これならば後が楽になる。

「少し痛みが来るぞ。気を付けろ――!」

改めて波動を練り直す。本来は取り込みやすいよう外の波動も同時に練り込むのが良いのだが、
この現状で外部から波動を取り込んだらどうなるか分からない。
そのまま、適切な強さに調節して、指先から点穴を通じ、少女の身体を洗い流すような形で一息に波動を流し込む。

直後、少し引っ掛かるような小さな痛みを伴いながらも、身体中の余計な熱を一息に吹き飛ばす、
風のようなモノが身体中の管という管を一気に吹き抜けていくような感覚が、少女を襲う事になるだろう。

神樹椎苗 >  
「おまえ、むちゃい――ひゃんっ!」

 びく、と震えながら、我慢出来るはずもなく、喘いで悶える。
 小さな手には力が入り、青年の手を強く握っていた。

「ひゃ、んんっ、も、き――ひぅっ!?」

 全身を駆け抜けていく、青年の波動。
 それが、小娘の発情を抑える結果にはなったものの――。

「はっ、はぁ――」

 間違いなく、青年の手で強烈に達していた。
 それはもう、見るからに間違いなく。
 潤んで赤くなった瞳で、青年を見上げ。

「――エロイヌ」

 少しむくれた様子で、青年の手を握りしめながら言った。
 

大神 璃士 >  
「他にやり方が見つからなかったからな。
その位の汚名なら甘んじて受け入れるさ。」

ふぅ、と、とりあえず落ち着いたので一息。
流石に自力だけでこういった能力を扱うのは多少なり、疲労が来る。
最も、人間であれば疲労程度で収まる話ではないのではあるが。

「……さて。」

す、と紺碧の瞳が少女を改めて捉える。
落ち着いた所で、糺す所は糺さねばならない。

「お前、何処まで知ってる……いや、「何者」だ?
初見で俺をそう呼ぶ奴は、まずいない。「それ」を知ってるのは、学園の上のお方々か一部の教師位だ。
――聞かせてもらうぞ。」

目つきは鋭い。先程のような発情を誘うような手立てで誤魔化すのは…無理そうである。

神樹椎苗 >  
「むう――まあ、そうですね。
 しぃは半神半霊(ヒトデナシ)ですから、お前の力をなんとなく感じた、そんなところです」

 別に、それ以上何かを知ってるわけじゃない、と念を入れるような言い方をする。
 実際、今の不調(エラー)が起きてる状況で、青年の事を調べる事は出来ないし、肌で感じたモノだけで予測するしかないのだ。
 青年の来歴や本分を知っているわけではないのだ。

「それより、エロイヌ」

 むすっとした顔のまま、青年の手を、自分の平たい胸に押し付ける。
 脈拍は早く、体温は熱いまま。

「――これだけ、喘がせといて、これで終わりなんていわねーですよね?」

 じっとりと。
 さっきまでの発情とは別の意味で、身体が疼いてしまっており。
 責任取れ、と言わんばかりの視線を青年に向けるのだった。
 

大神 璃士 >  
「――そういうカラクリか。
今度からは、そういった「勘」の強い相手にも気を払わないといけないな。」

理由を知れば、空いた右手でがしがしと頭を掻きながらため息ひとつ。
と言っても、右手にはレザーグローブを着けたままなので、半ば癖のようなものだろう。
ともあれ、後で他言無用を言い含めなければ、と思った所で、むっすりしたままの少女に呼ばれ、
同時にこれまたレザーグローブを着けたままの左手をボリュームのない胸に押し付けられる。
続くのは、じっとりした視線と言葉。

「………はぁ。」

またしても頭をがしがしと掻く。
相手から迫られれば、既に間合いの内側も内側。
強引に切り抜けようとすれば、恐らく相手に怪我を負わせる事になる可能性が非常に高い。

(……どっちにしろ向かう先は同じだってか。)

諦めた様子で右手のグローブだけを外してそこらに放り、素手となった手を
むすくれているお嬢様の顎に向けて伸ばす。

「――どういった事がお望みでらっしゃるのかな、お嬢様は。」

神樹椎苗 >  
「むふー」

 青年が観念した様に言うと、傍若無人なお嬢様は満足げ。
 自分からも青年の頬に手を伸ばして、触れながら。

「紳士なエロイヌなら、淑女の扱いも、とーぜん知ってますよね?
 ちなみに、しぃは少し乱暴なくれーが好みです」

 なんて言いながら、ご機嫌そうに、けれどすっかり出来上がった(・・・・・・)表情で青年を見上げ。

「しぃの身体は丈夫ですから。
 思う存分、可愛がりやがれですよ、エロイヌ」

 そんなふうに強よ――お願いするのでした。
 

大神 璃士 >  
「……全く、困ったお嬢様な事で。」

言いながら、少女に捕まったままの左手に少し力を入れて動かす。
背中に腕を回し、少々強引に引き寄せる形に。

「あまりこういうのはどうかと思うが……まあ、仕方がない。
なら、少しばかり狼藉を働かせて貰うぜ。」

少女が身に着けている、お値段の張りそうなドレスを破かないよう気を払いつつも、
力強く腕を差し込んだ所で――

「ところで、灯りは落とした方がお好みだったか?」

最後の確認、と言わんばかりに野暮な質問をひとつ。

神樹椎苗 >  
「――そんな、可愛げのある娘に見えましたか?」

 なんて、にんまりとしながら人差し指を唇に当てた。
 

大神 璃士 >  
「左様で。なら――――」

右手の範囲にあった、部屋の証明のリモコンを軽く操作し、常夜灯のみを点灯させる。
夜の闇が押し寄せる事も無く、かといって作り物の明かりが昼を造る程でもない、半端な明るさ。

その明るさと暗さが入り混じった、部屋の中で――――

とある一室にて >  
――其処から先は、語られる必要のないお話。
お花畑の我儘なお姫様が、偶然現れた狼を誘い込んで、存分に戯れる。

そんな、よくあるようなお話のひとつ。

めでたし、めでたし。

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