設定自由部屋です。常世島内であるならご自由に設定を考えてロールして戴いてかまいません。
また、ここでは回想的なロールも可能です。ですので常世島の外でも構いません。しかし、あくまでメインは常世島の内部でお願いできればと思います。
その他常世島内の特殊な場所や、シチュエーションなどにご利用ください。
参加者(0):ROM(1)
Time:08:15:00 更新
ご案内:「橋の上」からネームレスさんが去りました。
■ネームレス >
『――もしもし。
やあ、サラザール。珍しいね、キミから直接なんて。誕生日は来月だぜ?』
軽妙なイングリッシュで応じ、踵を返す。
立ち止まる時間は終わり。
少しだけ濡れた地面を、颯爽と踏みしめて。
『びっくりするくらい順調だよ。もうすぐアレの編曲も仕上がりそうだ。
次のプリプロダクションは――O.K。ひとまず今晩はMTGだね。
モーニングコールは必要ないよ。ちゃーんと起きてるからさ』
何事もなかったように、大胆不敵に笑って――
空を見上げた。分厚い雲の向こうに、眩い星を探して。
■ネームレス >
「…………魂が、腐り堕ちる……」
いつかの誰かさんの言葉を、なぞって。
飲み込んだ。濡れた前髪をあげて、視界を開く。
「誰しもそうなりかねない」
不変のものなどない。つまらない。
すべては振動で、力学だった。
大切なのはそうあることではない。
本当に大切なのは、
「――ん……、」
振動は二度まで。アプリが停止し、静かになった学生手帳をポケットから取り出す。
■ネームレス >
「……クソが」
言えやしない。こんなこと、だれにも。
高説垂れるその裏の、こんな体たらく。
ネームレスは、こんなんじゃない。
「ああもう……~~ッッ……ホンットに……イヤになる……」
こんなときにも――あいつは、めそついて。
つらそうな顔で、しかし、肝心なことを忘れたままなのか。
最悪な気分だ。弱い。弱すぎる自分に。
じわりと滲む殺意で重くなった身体を、しかし。
欄干にかかったままの腕に、力が籠もって。
倒れそうになる身体を、引っ張り上げた。
■ネームレス >
片方の手は、唇を覆い、呼吸を落ち着かせる。
ウーファーから響いてるみたいな、暴れる心拍が、身体を押し破りそうだった。
(……さいきん、特にひどいな……)
悪い時期に入っている――だけではない。
こんなふうになっている理由は、よくわかっている。
わかりすぎているほどだった。
それが、
いつかの誰かさんたちのせいで陥った不調であったのなら、どんなに良かったろう。
「……感謝の念と恨み言が同時に溢れてきやがる。
フザけんなよほんとに、殺人鬼……」
幻視するようになったきっかけ。
苦過ぎる珈琲みたいな、真っ赤な夜。
勢い任せの全能感に浸っていたシンガーが殺された日。
人を呪うのに、特別な力など必要ない。
人を殺すのに、異能や魔術なんて要らないように。
■ネームレス >
「――――ッッ」
意識の混濁は、一秒にも満たない。
欄干に、白い手が更に白くなるほど強く捕まっていた。
進んで身を乗り出さなければ落ちようもない柵の高さであるというのに。
ぽたり。
よく磨かれた手すりに、雫が落ちた。
雨粒――ではない。全身からぶわりと浮き上がった汗の粒が、顎へと伝い落ちたのだ。
「…………はぁ」
その場で、膝をつく。
片手だけが欄干にかかったまま、ずるりと歩道の端にへたりこんだ。
いつものやつだ。
■ >
■ネームレス >
雲の向こうからの日差し。
水面に映る儚い光が、遠ざかっていく。
ごぼ、と唇から、酸素が泡となってあふれた。
空に向かっていくそれとはさかしまに、落ちていく。
深い、深い水の底。
遠ざかっていく。
自分を失うことになる、世界から。
昏い水底。
深淵の闇。
熱を冷まして、奪う。
痛みのない国
優しいねむり
永遠の……
■ネームレス >
なにかに引っ張られるでもなく、そうなることが自然であるように――
ぐらりと傾いで、こぼれるように、欄干から川へと落下した。
なにひとつためらいもなく、勇んだ勢いもない身投げで、重力のガイドとともに。
――とぷり。
まるで雨粒のような小さな波紋だけを残して。
揺らめく鏡の国へ。常世と幽世の境を超える。
水中では、音が数倍の速さで駆け抜ける。
世界が塗りつぶされる。
■ネームレス >
「……………」
静かで、どこか眠たげな自分の顔。
少しだけ水位のあがった川に映り込む鏡像が、ぽつりと落ちた雨粒にかき乱される。
ゆらり、ゆらり。落ちるたびに。
ぼやけていく。歪んでいく。なにもみえなくなる。
冗談のように清らかなその水は、しかし随分と深く、底までを見通すことはできない。
「……………、」
だから。
■ネームレス >
"彼女――彼?の勢いは、留まることを知らないね。
まったく新しいようで、デロリアンに乗り込んでみたような、不思議な世界を魅せてくれる"
"この前の新曲もクールだった。再生ルーティンに迷わず追加したよ。
でもこうなってくると気になるのは、新作の発表はいつになるのか――"
「ふぅ」
学生手帳で立ち上がっていたテレビ・ラジオの受信アプリを、ポケットの上から指を滑らせて停止した。
ヘッドフォンを外して、重たげに肩にかけると、身体の向きを九十度転換。
ここはちょうど大橋の中腹。欄干に手をかけて、突っ伏すように脱力した。
■ネームレス >
頭に被った、旧式デザインの無骨なヘッドフォンの奥で、音が氾濫している。
モノラルでもおかしくない外装の内部、そしてワイヤレスで接続されている再生機器は最新式で、
チャンネルそれぞれで別のラジオ番組を流し、それらを聞き分けることで、
効率よく、同時に、島内外の時事を咀嚼していた。
広い歩道とはいえ、目を閉じて歩くのは随分な不用心であろうが、
ちょうど車通りも人通りもない時間帯だったようだ。
橋上の散歩の静寂のなかで、情報の洪水にまみれる様を咎めるものはなかった。
"――――それにしても、未だにHOT100にランクインし続けるだなんて。
祝すべき生誕祭にもたらされたのは、まさに伝説的なプレゼントだったね!"
「………………」
代わりに。
最も慣れ親しんだ言語で騒ぎ立てる、コメンテーターの上機嫌な声に、
その足が、止まった。
■ネームレス >
昼過ぎ。灰色に濁った空から、時折雨粒が落ちてくる。
九月も半ばだというのに常世島はじっとりと蒸され、天候は落ち着かない。
これも現在の日本本土の気候を魔術・科学双方から再現したものだという。
赤道付近のこの島の本来の姿よりは――おそらく、過ごしやすいのだろう。
歓楽街から学生居住区のほうへ向かうと、途中で大きな川に差し掛かる。
交通のため、陸と陸の間に渡された大橋のひとつ。
人造の楽園の、色の抜け落ちた曇天の昼下がりに、
そこだけ塗り間違えたように鮮やかな真紅が揺れている。
時折落ちてくる雨に濡らされては、髪も、白皙の肌も、滴る雫がその艶を際立たせるようだった。
ご案内:「橋の上」にネームレスさんが現れました。
ご案内:「白兔偵探社」からウィンドミルさんが去りました。