2024/09/05 のログ
ご案内:「商店街にある本屋」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「商店街にある本屋」に黒條 紬さんが現れました。
■伊都波 悠薇 >
とある、休日。
学校が休みである、まだ、暑さも残る日。
お昼手前に、商店街の本屋。
その近くにあるベンチで、待ち合わせ。
ーーというのも。
今日は、自分が推している作家の最新刊が発売する日。
いつもなら、一人で買いに行くところだが。
今日は勇気をもって、友人を、誘ってみたところ、快諾してもらったため、こうして待っているところである。
……格好はいつも通り、制服、だけれど。
■黒條 紬 >
「いやー、待たせちゃいましたかねっ」
悠薇の背後から。
彼女が座るベンチの背凭れに指をかけて、
ひょこりと顔を出せば、悠薇の顔を覗き込むように
笑顔を向ける紬。
彼女は、うるさすぎない程度に元気な声でそのように第一声を放った。
前回はフレアワンピースを着ていた彼女だったが、
本日は悠薇と同じ、制服だった。
「まさか、悠ちゃんの方から誘ってくれるとはっ
いやぁ、嬉しさ倍増ですねーっ」
そのようなことを言いつつ、ととっと歩いて
ベンチの前へ。
■伊都波 悠薇 >
「わぴょ!?」
ひょこっと顔を出されると、びくぅと、立ち上がる。
吃驚仰天とはこのことだ。
「ま、まって、ない、です。い、今来たところ、です」
お決まりの言葉を口にしながら、どっどっと、跳ねる胸を、手で押さえる。
ひっひっ、ふー。
「こ、この前、誘って、もらったので……」
キョドりつつ。
今日は何時にもまして、緊張する。
■黒條 紬 >
「お、おお……!?」
びくっと身を震わせて立ち上がる悠薇。
同時に、周囲を行き交う学生達が、
一斉に悠薇の方を見やる。
集まる視線、視線、視線。
その視線を遮るかのように彼女の前に経った紬は、
語を継いでいく。
「……いやぁ、すみませんっ!
まさかこれほど驚かれるとはっ」
両手を合わせて謝罪しつつ。
「誘ったら誘い返してくれる。
それだって十分嬉しいものですからっ。
それに、お友達なんですから、遠慮せずいつでも呼んでくれれば
良いんですよっ」
挙動不審の悠薇を見て、自らの頬に人さし指を添えて
困ったように笑う紬は、
言葉尻に合わせてビシッと親指を立てて見せた。
■伊都波 悠薇 >
「い、いえ。私こそ、その、す、すみません……」
集まった視線に、恥ずかしそうに身を縮めつつ。
「き、きんちょ、してまして。い、いきましょ、か」
あわあわ、と正直に話しながら歩き始める。
びしっと、掲げられた親指に、にへらーと笑みを浮かべながら、親指を返しつつ。
「黒條さんは、本、よく読みますか?」
■黒條 紬 >
返される親指に、満足げな笑みを浮かべる紬。
そうして問いかけられた質問には、輪郭をなぞるように
頬から顎へ人さし指を移して、紫の瞳をすい、と空へと向けながら、
言葉を紡いでいく。
「そうですねぇ……
映画だったら、ホラーが好きなんですけど……
小説だとうーん、冒険ものだとか、少年漫画だとか、
最近は結構読みますねっ。恋愛ものなんかも好みですがっ」
視線を戻し、ぐっ、と拳を握る紬。
「悠ちゃんは結構、本好きそうですよねっ。
今日も、本の発売日ってことで、呼んでくれたんですもんね?」
わざわざ発売日に本を買いに行く。
紬からすれば、それは相当な本好きの証であった。
■伊都波 悠薇 >
相変わらず、ひとつひとつの所作が『丁寧』、だと感じつつ、ふぅと一息。
「冒険物、だと最近は、転生物とか多いですよね。強い人が蔑ろにされて、見返す系、とか」
旬な、ウェブから書籍になる作品を思い返しつつ。
「少年漫画…………なにか、オススメ、ありますか?」
自分があまり触らないコンテンツに興味を示したタイミングで本屋の中に。
涼しい店内。ほぅと、自然と息を吐いてしまう。
「私は……雑食というか。暇、なことがあるので、自然とというか。その、き、嫌いでは、ない、です」
好きという言葉が恥ずかしく、なかなか、素直に言えない。今日である。
■黒條 紬 >
「あー、読んだことあります。
何かこう、勇気を貰えましたね、私も見返してやるぞーって」
シャドーボクシング、というにはあまりに弱々しい形だけの
それだが、宙に拳をひゅんひゅん、と振る紬。
「いやぁ、渋谷分署の同僚に漫画好きの方が居て、
最近机の上に漫画を置いていくんですよー。
オススメポイントと一緒に。
最近読んだものですと、そうですね、アドベンチャー嵐とか……。
ありがたいんですけど、読みきれないんですよね、なかなか」
たははー、と柳眉を下げながら笑顔を見せる紬。
アドベンチャー嵐。数十年前の、熱血冒険ものだ。
今もなお一部のコアなファンを獲得している、
知る人ぞ知る作品である。
「暇な時間を無為に過ごしている人達だって多いんですから。
その自由時間を読書にあてるって、なかなか素敵じゃないですか」
ふふん、と上機嫌に笑う紬であったが。
嫌いではない、と口にする悠薇の前にとと、と歩を早めて
先んじると。
「ふふーん。素直になってくださいよ、好きなんでしょーっ?」
そう口にして、顔を覗き込むように小首を傾げてみせる。
ピンと人さし指を立てると同時に、
一つだけ覗くアメジストが、悪戯っぽく細められる。
■伊都波 悠薇 >
「見返してやる、ですか。黒條さんが?」
そういえば、自己評価が低いのは彼女も一緒だった気がする。
よほど、自分よりすごいと思うのだけれど。
少年漫画のエピソードを聞くと、探してみようかなと呟いた。
「うぇ……?!」
好きなんでしょっと追撃されるとおどおどして。
もじ、もじと。体を揺らし。
前髪に隠れた視線を、地面と、黒條をいったりきたり。
頬と耳が少し、赤くなり、まるで……告白のシーンのようで。
「す……」
ちらり、前髪から、覗く左目。
伺うように、上目になり、見える泣き黒子。
「すき、でしゅ……」
ようやく、口にした。
■黒條 紬 >
「ふふふ。渋谷分署のMost Valuable Ponkotsuですからね、
私は……」
どよんと曇った、ハイライトのすっかり消えた瞳を
見せつつも、人さし指を振ってちょっと格好をつける黒條であった。
「ですよね、私も好きですっ」
しっかり認めてくれたので、紬は満面の笑みを見せる。
しかしこれは、前後の文脈というものが、
如何に偉大であるかを知らしめる会話である。
実際、何人か立ち読みしていた生徒が、
二人の方へ顔を向ける始末であった。
「ところで、今日はどういった本の発売日で?」
悠薇の隣へとポジションを戻し、そのように尋ねてみる紬。
■伊都波 悠薇 >
「ぅぅ……」
言わされたことに、顔を赤くしつつ。
本のことを聞かれると。
「あ、えと。ちょっと違うんですけど、異種族恋愛、みたいなやつ、です。
ホラー謎解き濃いめの」
今日の本のことを聞かれると、気を取り直したように答えて。
「ありました、これです」
手に取り、表紙を見せる。
タイトルはーー
『トイレの神様』
「トイレの花子さん、って怪談を軸にした作品なんです」
■黒條 紬 >
「ホラーとミステリーに恋愛まで混ぜ込んでるんです?
結構なごった煮感ですが……結構癖になる作品多いんですよね、
そういう作品……」
悠薇が真面目に話し始めれば、紬もまたしっかりと話を聞く姿勢。
顎に手をやり、彼女が話し終わった後に相槌を打つのである。
「トイレの花子さん……というのは聞いたことがありますが……
ええとつまりこれは、
トイレの花子さんと主人公が恋に落ちる……
……的な話なんでしょうか?」
紬自身、あまり己の趣味が良いとは思っていない人間である。
普段見ている映画が映画である故に。
しかし、眼の前の友達からこのようなタイトルが飛び出してくるとは
思わなかったのであろう、少々驚いているようであった。
「意外ですね。悠ちゃん、私に白馬の王子様が~!
的な、こう……そういう恋愛もの読んでるイメージを
私は勝手に持っていました。脳内の悠ちゃん辞書を
訂正しておきますっ。なるほどなるほど……」
ふむふむ、と表紙を見てみる。
それから、悠薇の顔をちら、と覗く。それを数度。;
■伊都波 悠薇 >
「恋愛、というとちょっと歪、かもですけど」
意外と言われるとそうですか? と首を傾げた。
「ど、どういうイメージ、ですか。た、確かに悪役令嬢転生物、とか好き、ですけど」
いろんなの読みますよ? と付け足して。
「この作品、よく、憑かれちゃう女子高生が主人公で。それが、トイレでイジメられちゃうところからスタートなんですけど。
トイレで、時間潰してた神様になったとある女の子を、花子さん、って勘違いしつつ、かつ。いろんな怪談を解決する、みたいな感じです」
■黒條 紬 >
「へぇ、オムニバス形式みたいな感じなんですかね?
良いじゃないですか、バディもの的な感じで。
トイレの神様というタイトルと、
神様を花子さんに勘違いする設定こそ少々奇抜ですが、
後は結構王道な感じなんですかねっ」
ふむふむ、と。
紬は近場に置かれていたその本を手に取り、
裏返してみるなどしつつ。
ちら、と悠薇の方を見やる。
「主人公は女子高生……
花子さんは女の子……ですよね?
ははぁー……」
すいすい、と悠薇のところへ歩を近づける紬。
「……ふぅーん?」
そうして自らの唇に指を添えて、
悪戯っぽい笑みを浮かべるのであった。
いつも元気いっぱいの笑顔を浮かべている少女の顔が、
それはそれはとても蠱惑的な笑みを浮かべて、
悠薇を品定めするように、じっとりと見ているかのように――
「それ――」
伏し目がちな紫の瞳を細めながら、艷やかな唇。
そこにやっていた白い指を、悠薇へと近づけて――
■黒條 紬 >
「――意外・オブ・ザ・イヤー!
……って感じですね!
でも、素敵だと思いますよ、色々なジャンルの本を
選り好みせず読まれているんですねっ」
ぱあっと目を開き、ぐっと拳を握る紬であった。
■伊都波 悠薇 >
「そうなんです。それで、主人公が、神様に抱く感情とか、神様が主人公に抱く感情の矢印が面白いんですけど、時間ー、怪談が許してくれない、みたいな感じでーー」
説明に熱が入り、早口になりかけたときに。
いつもと違う雰囲気に、目をぱちくり。
指、唇に視線が移り。
ぐっと拳を握ったタイミングで、ほっと、息を吐いた。
「は、はい。その、つい、興味があると、読んじゃうので」
■黒條 紬 >
「恋愛ものの面白いところですよねっ!
複雑な人間関係、次どうなっちゃうんだろー、って。
めちゃくちゃ気になりますもんねっ。
面白そうだし、私も買っちゃいますかね~っ」
悪戯っぽい笑みは何処へやら。
からっとした笑顔で、本を両手で大事そうに抱える紬であった。
「しかし、やっぱり良いものですね、
本なんて無数に世にあるじゃないですかー。
自分ひとりだとなかなか手が出ないであろう本も、
こうしてオススメして貰うことで知ることができる。
お友達と本屋に来るっていうのも、いいものですねっ。
またいつでも誘ってくださいねっ」
そう言って、満面の笑みを見せながら。
「今日買いに来たのは、これだけなんですかー?」
■伊都波 悠薇 >
「あ」
オススメした、本を買ってもらえる。
布教成功。なるほど、これは。
つい、笑みが浮かんでしまう、嬉しいものだ。
「はい。また、タイミングあえば」
姉にはよく、成功するけれど友達にできるとそれとは違う、喜びがあった。
「私は、これで終わりです。黒條さんは、なにか買いたいのないんですか?」
■黒條 紬 >
「そうですね……何か見逃してる新刊などは……」
そう言われると、歩きながら周囲の本棚を見渡してみる紬。
ふいふい、と視線を動かしていたが、遂に何か見つけたようで、
ぴたりと足を止める。
「あっ、新刊出てたんですねっ……」
そう口にして、横積みされていた本を一冊持ち上げて、
悠薇に見せる。
表紙には、スーツを着た若い男性と、
十字架を持った、くたびれたコートを着た壮年男性が描かれている。
何だか描かれている二人の距離が絶妙に近い。絶妙に。
「紅のアンチクロス……これはなかなか面白いですよっ。
表紙の二人は兄弟なんですが、兄だけ吸血鬼化してしまいましてね。
兄と弟の歳の差がどんどん開いていってしまうんですが、
それでも二人して吸血鬼を狩り続けていくんですよ!
そして強まる兄弟愛! ……的なお話ですっ」
悠薇の早口には及ばないが、紬もそれなりの熱量を持って語る。
本気で好きなようであった。
■伊都波 悠薇 >
「おぉ」
熱が入った、説明に、目がキランと光る。
「私も買います。一巻」
オススメされたものを2冊、手に取り。
「楽しみです。黒條さんのオススメ」
少し、慣れてきたのか普段の感じで。
「レジ行きますか」
うんと、嬉しそうに笑いながらレジへと向かい始めた。
■黒條 紬 >
「私も家に帰ってから悠ちゃんのオススメ読むの、楽しみですよっ。
今日は帰ったら読書デーとしますかね」
自身も手に取った二冊の本を大事そうに持って、
そのまま悠薇へとついて行って、レジへと向かう。
「悠ちゃん、慣れてきましたねっ。
緊張、解けてきました~?」
ふと、普段の様子で話している悠薇を見て、紬はそのように声をかけた。
周りに沢山人が居る中。それも彼女からすれば大きな一歩であろう、
『友達との買い物』。
それを自然にこなし始めている。そのことを見ての、言葉であった。
■伊都波 悠薇 >
「うぇ!?」
そうなのかな、と呟きつつ。
慣れてきた、と言われるとそうなのかもと思いながら。
レジで、本を購入して。
「そ、それじゃあ、か、かえり、ますか」
言われると意識してしまって。
また、もとに戻ってしまったようだった。
■黒條 紬 >
「……あちゃー、逆効果でしたね、これは」
言わなければ最後まで自然体だったかもしれないな、と
顎に手をやり思う紬。
――とはいえ、自信持たせるには。
『出来てる自分』を意識して貰わないと、ですねぇ。
まだまだかかりそうだけれど。
「はい、帰りましょー帰りましょーっ」
――でもま、久々に楽しかったですねぇ。
紬は紬で満足したようで、悠薇の後をついて、
本の入ったビニール袋を両手で持って、歩いていくのだった。
■黒條 紬 >
秋を運んで来る風の中に、確かな日差しを感じながら――。
ご案内:「商店街にある本屋」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「商店街にある本屋」から黒條 紬さんが去りました。