2024/09/15 のログ
■紅き機械ノ女王 > 突然、緋月さんが苦しみだした。
何が起きたかは緋月さんの口から語られていた。
(治癒の反転……!?)
「……ちゆきさん、これ程だなんて……」
ちゆきさんは紅き屍骸の誰かに殺害されたから、今こうして殺害欲に苦しめられているのだ。
では、これ程の実力を有するちゆきさんを殺害できるだけの強大な力を持つ屍骸は誰だ。
イーリスには心当たりがある。
「《月輪の王》! あなたがちゆきさんを屍骸にしたのですか……!!」
イーリスにとっては、既に亡き者にしたと信じたい相手《紅き月輪ノ王熊》。
(あなたは、死してなお私をを不快にさせてくれますね……!!)
因縁へ向けたその怒りは一層強いものであり、イーリスに浮き出る紅き文様と紅き右目が一層紅く光った。
もしアンデッドの“王”でなければ、さらに恐ろしい事実が待ち受ける。
《紅き月輪ノ王熊》に匹敵する紅き屍骸の存在……。
■紅き機械ノ女王 > ひとまず今は《紅き月輪ノ王熊》への怒りは抑え込んで……も湧き出るけどなんとか抑え込んで二人を見守る。
「斬魔刀……ついに抜きましたか」
イーリスにも見せてくれた、九字が刻まれし大太刀。
名称から、魔を断つものというものだという事は察している。
緋月さんには、治癒の反転がかけられている。
凄く辛いはずだ……。
「緋月さん……負けないで…………」
祈り続けている。
ちゆきさんが扇子を仰いで、黒い蝶が出現させる。
対する緋月さんは、さらなる奥義を繰り出している……。
それは、あまりに広大な範囲への斬撃!
二人を見守っているイーリス、そのモニターの映像には、まさにこちらに斬撃の一つが向かってくる光景が映っていた。
「え……!? さ、撮影用のドローンが……!?」
二人を見守るのはここまでかと思ったけど、引き続き撮影を続けられている。
「な、なんともないです……?」
きょとんとしてしまった。
どうやら、永遠の間にあるものは何も斬られていない。ちゆきさんすらも斬られてない。
■紅き機械ノ女王 > 極大なる範囲斬撃。
緋月さんが斬ったのは、ちゆきさんが出現させた千近くの蝶。
だが次の瞬間、驚くべき光景を目にする。
「……治癒しすぎでしょう!?」
この決戦で緋月さんが斬ったもの、それらがヒーラーちゆきさんの手により全てが蘇っている。
予想外な事が多すぎる……。
そんな強力な治癒を用いながら、ちゆきさんは直接的な斬撃を繰り出している。剣士でもなんでもないであろう者の一振り。
(……あの緋月さん相手に、無茶でしょう……!? いえ……ちゆきさんは、まだ完全に殺害欲に飲み込まれているわけではないのかもしれません……!)
ちゆきさんには、緋月さんを想う強い気持ちがきっと残っている。
緋月さんは黒い風となり、蘇りし攻撃をまたもや斬り裂いてみせる。
風にしか見えない……。斬撃なんて、見えはしなかったのだ……。
(緋月さんは……やはりすごいですね)
イーリスは、緋月さんを尊敬の眼差しで眺めていた。
ちゆきさんの拙い斬撃は、やはりというべきかあっさりと刀を弾き飛ばされてしまう。
「……今度こそ、決着がつきましたね……」
哀し気な形相で、イーリスは二人を見守っている。
ちゆきさんは、これで祝福される……。
■紅き機械ノ女王 > 「緋月さん、殺害欲の呪いだけを……! 見事です……! 今なら、ちゆきさんの元あった感染源を、《紅き機械ノ女王》の感染源で侵食させられます!」
緋月さんが斬った時に殺害欲が巡る呪いを断ち切った。
そんな今ならイーリスの方で女王の感染源を浸食させて元の感染源を呑み込む事ができる。
「……ちゆきさん、今……あなたの感染源を取り除きますからね」
イーリスは祈るように両手を組んだ。
《紅き機械ノ女王》の紅き文様が輝く。
前回試した時は、《紅き機械ノ女王》の感染源は、ちゆきさんの感染源に反発されてしまった。
だが今は緋月さんが殺害欲を斬ってくれた。
女王の感染源がちゆきさんの感染源を呑み込み、そしてちゆきさんの感染源を消し去る。
「ちゆきさんの感染源を取り除く事に成功しました……! やりました! あとは、《紅き機械ノ女王》の感染源を取り除けば、ちゆきさんは紅き屍骸ではなくなります」
女王の感染源を取り除く事は動作もない。イーリス自身が操っているのだから。
ちゆきさんから女王の感染源を取り除く。
そして緋月さんが殺害欲を斬ってくれた事も相まって、ちゆきさんを単なる屍骸に戻す。
■紅き機械ノ女王 >
「あとは、医療用ナノマシンを取り除くだけですね」
ちゆきさんの体内にはナノマシンも残っているが、それもイーリスの体内コンピューターが遠隔操作して全て外に排出する。
紅き屍骸でもなくなり、そして簡易の改造人間でもなくなった。
■紅き機械ノ女王 > 《紅き機械ノ女王》の役割を終えた。
イーリスの体から紅き文様が消え、右目の紅が青に戻る。
「……はぁ…………はぁ……。これで、ちゆきさんは紅き屍骸ではなく、人として祝福してあげられます」
呪いの苦痛で息を荒くしてしまう。
「緋月さんは、私の想いを……ちゃんと継いでくださいました。私の想いが、無駄にならずに済みました」
緋月さんはイーリスの想いを継いでくれて、そして緋月さんのお陰でイーリスがちゆきさんを助けようと手を尽くした事が無駄にならずに済んだ。
呪いの苦痛で額から汗を流しながらも、イーリスは引き続きモニターから永遠の間を見守る。
■Dr.イーリス > 冥界での出来事は、ドローンのカメラからしか永遠の間を見ていないイーリスには分からない事。
イーリスの目からは、ちゆきさんが蘇ったかのように見える、そのような光景だった。
「ちゆきさんが……目を覚ました……」
イーリスの目から、涙が溢れてくる。
「ちゆきさんが、生きてます……! 《埋葬の仮面》の継承者さんである緋月さんが、ちゆきさんを生に戻してくれたのですね……!! よかった……! よかったです……!!」
奇蹟のような光景だった。
死者が蘇るなんて、ないと思っていた。イーリスは死者が蘇る事はないという結論を出してしまっていた。
だけど。
奇蹟でもなんでもいい! 今は科学で証明できなくていい!
とにかく、ちゆきさんは生きている!
■Dr.イーリス > 「ちゆきさんが生きていてよかったです。うわあああぁぁぁん!!!」
声をあげて泣いていた。
本当は生きているちゆきさんに泣きつきにいって、緋月さんにお礼とか労いとかいっぱいしたかったけど、今は二人の時間。
それに今のイーリスは風紀委員のお仕事の真っ最中。
何もかも、“見なかった事にする”。
これ以上は眺めるのは野暮だと思い、イーリスはモニターを消しながらハンカチを取り出して涙を拭う。
「さて、風紀委員のお仕事をこなさなければですね」
スマホを取り出し。
「こちら風紀委員ゴミ処理係《フェイルド・スチューデント組》組長Dr.イーリスです。申し訳ございません……! 私、無能すぎて侵入者に逃げられてしまいました……! 始末書は明日までに提出します……!」
謝罪するイーリス。
ちゆきさんと緋月さんはその後、《フェイルド・スチューデント組》の手引きで安全に禁書図書館を出られた事だろう。
ご案内:「 禁書図書館・閲覧室/永遠の間を観戦」から紅き機械ノ女王さんが去りました。