2024/09/22 のログ
ご案内:「違反部活群 地下の一室」に真詠 響歌さんが現れました。
真詠 響歌 >  
━━チャプン。

水で満たされた白磁の器の中。
縛りもせずに投げ出した髪が水面に浮いて。
ほどけて張り付いて、ばらばらに。

『あげるよ、もういらないから』

耳の奥、頭の奥のずっとずっと深い所。
ヘドロみたいにへばりついた甘い声色が、ずっと消えない。
遠くをなぞるように指を伸ばしても雫が滴るばかりで。
落ちた雫が瞳の端に触れて、瞬き。

詠 響歌 >  
━━ザブン。

ドロドロと溶けるように、融けるように。
沈んで沈んで、水の中。
唇が、頬が冷えた水に抱かれて。
耳まで沈んで、じきに鼓膜も覆われる。
息を吐けばぶくぶくと、呼吸の跡が水面で爆ぜた。

詠 響 >  
━━

もっと。
沈んで、沈んで、水の中。
要らない物を置き去りに、呼吸も止めて。
全部を、脱ぎ捨てて。
恐れも、過去という光も届かないくらい、深い深い所へ。

くらくらするくらいの息苦しさと、鼓膜を揺らすただ確かな波の形。
どれだけ削ぎ落としても消えない、たった一握りの音を。
ノイズの向こうにある、たった一つの温度を。

取り戻さなきゃ。

>  
ザパンッ

「━━っ」

人間、生きていれば呼吸はするもので。
水の中で呼吸なんかできる訳なくて。
当然の帰結としての急速浮上。
自問自答を死因にするのはロックが過ぎる。

「まだ……駄目」

死ねない。
とっくにショートしていた私に、種火を付ける怪物がいた。
きっかけは苛立ちで良い。舌打ちからパーカッションを始めるくらいの荒さで良い。
純度100パーセントの私を、洗い出せ。
虚飾も要らない、偶像なんかじゃない。

心臓が早鐘を打つ。
浴槽から水が溢れ落ちる。
水面に落ちた水滴が不規則なリズムを刻む。

全部を感じて、受け入れて。
がなり立てるようなインスピレーションを、その細い糸を掴んで。
私の中にあった一番初めの音を、取り戻せ。

━━バチャン。

もう一度。
ただ、もう一度。

ご案内:「違反部活群 地下の一室」から真詠 響歌さんが去りました。